- 26 - 5.表丹沢 書 策 新道(廃道)~三ノ塔尾根

かいさく
5.表丹沢 書 策 新 道 ( 廃 道 ) ~ 三 ノ 塔 尾 根
【2015 年 3 月 11 日】
地図上で<廃道>と記された 「書策(かいさく)新道」 に興味を持ち、ヒル(蛭)が活動しない
冬場のうちに歩いてみようと出掛けます。前夜の天気予報は昼前後で雨となり、所によって
は雷雨を報じていました。昼前には登り終えようと、(05:50)に家を出ます。
大倉、風の吊り橋を渡ったベンチで用意を整え、出発(7:30)。戸川林道は春の気配到来
で、水溜りは少なく、小石混じりの乾いた路に、もはや氷った水溜りはありません。
竜
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作治小屋のテーブルで、恒例となった腹ごし
らえのオニギリとドラヤキを食べます。空には薄
雲が、時間とともにその量を増しつつあります。
戸沢出合の派出所のポストに、登山者カードを
投函して出発(08:45)。2週間前の源次郎尾根
と、同じ道をたどります。
本谷と源次郎沢に挟まれた書策新道の入口
書策新道入口(円内黄色テープは通行止表示)
は、黄色いテープによって通行止めの表示があ
ります。テープの左端を迂回して、廃道に入りま
す。
源次郎尾根の分岐点までは前回同様ですが、
霜柱はすっかり消え、乾いた表土に変わってい
ます。少し急な道をジグザグに登り、本谷側へト
ラバース(横断)が始まる、源次郎尾根との分岐
点までは、前回同様です。分岐点(09:05)
分岐点(左=源次郎尾根、右=書策新道)
分岐点を過ぎ、本谷側の山腹を捲く道は、踏
跡の見分けが明瞭な部分と、不明瞭な部分と
が入りまじっているので、熟達者コースの所以。
踏跡が不明瞭なトラバース道
コースを自己判断できる、経験を要します。
落ち葉に隠された踏跡は、切れ切れに続き
踏跡が明瞭なトラバース道
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ます。随所の崩れや、名も無き小沢のガレ場に
は、古びた丸太が渡され、同じく古い固定ロー
プが張られています。私は固定ロープには触
れず、木の根をつかみます。ガレ沢の横断も固
定ロープには触れず、ストックでバランスを図り
ます。転落して、生命に危険を及ぼす箇所で
の固定ロープは止む負えませんが、無差別に
固定ロープを張り巡らすことは、登山者の技術
ガレ場を渡る(丸太橋)
低下を招きます。業務用ルート(昔のマンガン鉱
山採掘用) ならば話は別としても、登山用に固
定ロープを設置する時は、よくよく考えてほし
いものです。過保護は、人間力を弱くします。
体幹バランスが悪くなった高齢者は、雪や
草付、ガレ場の斜面でバランス確保(三点支
持)が危うくなり、ストック補助は有効です。
ガレ場を渡る(古い固定ロープあり)
丸太橋(右奥に本谷 F5 が見える)
崩落地点で踏跡が途切れ、一度高捲くように森
右写真の丸太橋と固定ロープ
林帯へ入りますが、そのまま進むとふたたび本
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谷沿いへと降り立ちます。露出した表土に、
時々靴跡を見い出しますが、今日のものか、数
日前のものかはわかりません。しかし、コース上
であることは示してくれます。
写真を撮りながら、ゆっくりと 1 時間で本谷の
横断地点です(09:45)。二人の先行者に出会
いますが、民間ボランティアの捜索員ということ
本谷へ降りる(円内=分岐点の標識)
です。話を聞くと、高齢の男性一人が行方不
明になっており、表丹沢一帯を捜索していると
言われる。そういえばさっきから警察のヘリコプ
ターが飛来し、周辺を飛び回っている。大倉の
駐車場に車を残したまま、塔ヶ岳からの下山ル
ートが不明だそうで、広域捜索をしているそう
です。ヘリは午後 2 時頃まで飛んでいた。
本谷(書策新道分岐点の標識)
捜索の県警ヘリコプター
捜索ボランティアは本谷から、衛星電話で交信
しています。彼らと別れ、右手の急な斜面に古い
本谷から右手の書策新道登り口
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固定ロープが見える書策新道へと登ります。最
初は急斜面ですが、古びた固定ロープがあり、
同じく古びた丸太階段が続きます。山腹を廻り、
崩れた斜面の丸太橋を渡り、やがて小さな沢
を渡ります。沢上の斜面を捲き気味に歩くと、
セドノ沢左俣にある白竜の滝に出ます。
なんと先行パーティ 5 名が、滝の下で休憩し
ていました。靴跡は彼らのもので、車で戸沢に
通行止の黄色テープ(左へ方向転換)
早朝入ったのでしょう。
丸太を通過(左上に固定ロープ)
トラバースしてからセドノ沢左俣へ降りる
セドノ沢左俣、白竜の滝で休憩する 5 人パーテ
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小さな沢を渡る
白竜の滝、右側のやさしい岩(固定ロープ
あり)を登ると沢筋が広がります。向かう右手
のブッシュに赤と黄色の標識が見えます。そ
の先の赤い標識から、表尾根稜線下の山腹
に取り付きます。右斜上に捲きながら登り、
ガレ場を横断すると、丸みのある尾根状へと
出ます。その尾根状のふくらみの踏跡には、
古びた固定ロープが残されています。シャク
白竜の滝、右側の岩を登る
ナゲの低木が群生し、バラ科のトゲは痛い。
ガレ場の横断に、朽ちた道標がある
赤と黄色の標識(円内)をめざす
表尾根直下、ふくらんだ尾根状の踏跡を辿る
赤の標識(円内)から山腹に取り付く
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空に雲が広がり、見下ろす景色はドンより
している。足元の斜面は、沢登り最後の詰め
と同じ様相で、クライマーならば簡単だ。
表尾根稜線へと抜ける出口(下りは入口)
には、黄色テープで通行止めの意志表示が
されている。その先の、縦走路脇の広場とな
った台地には、書策小屋跡があります。書
振り返る景色(後方は大倉尾根)
策新道は終わり、縦走路には表尾根登山者
が行き交います。(10:50)
昨年に比べ、今年は雪が少なかった。こ
のルートに残雪はなく、表尾根縦走路の雪
も消えている。高層の強い寒気団は、お昼
前後の雷予想を雪雲に変へ、塔ヶ岳方面か
ら次第に下がってきます。水分補給だけで
烏尾山に向かいますが、少し下ったところで、
息子の年代の若き警察捜索隊員 5 名に出
書策新道出口(入口)の通行止テープ(円内)
会います。書策新道付近で、行方不明者は
見当たらなかった報告をしておきますが、相
変わらず搜索のヘリコプター音は続いてい
ます。烏尾山でオニギリの昼食。(11:35)
三ノ塔の登りでは、雪雲に追いつかれま
す。綿が舞うような、大粒でフカフカな、雪虫
の乱舞に包まれ、やっと冬山気分で爽快で
す。休まずに三ノ塔を過ぎ(12:08)、おおすみ
山居着(13:50)。今日も抹茶で一服。
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書策小屋跡(表尾根稜線上)