11月号 本会記事 - 粉体粉末冶金協会

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本会記事
分科会紹介
磁性材料分科会
フェライト委員会
東京工業大学 中川 茂樹
近年の社会の省エネ意識や環境保全意識の高まりに伴い,再生可能エネルギーを利用するためのエネルギーマネージメントや
高効率なエネルギー変換技術がますます重要視されている.また同時に CO2 排出抑制などの環境への負荷を低減させる種々の
技術開発もより一層の向上が求められている.エネルギー変換技術とみなせる車載用モーターや電力コンバータ等に関しては,
そこに使用される高性能磁石や軟磁性材料は,モーター,アクチュエータ,磁心回路などの効率を高めるためのキーマテリアル
として研究開発が不可欠な材料である.フェライトは比較的低コストで作製できる化学的安定性に優れた高性能磁石や軟磁性材
料としてこれらの応用に広く利用されている.また,フェライトの化学的特性・安定性やその磁性を利用した環境浄化プロセス
や生体・医用応用などの新分野も開拓されつつある.一方,フェライトのもつ特異なスピン分極性を利用した新しいスピントロ
ニクスデバイスも種々提案されている.
本分科会では上記のような様々な応用の広がりを見せるフェライトに代表される磁性酸化物の基礎的な物性・作製法・評価技
術・特性向上に関する研究を促進している.たとえば,コストパフォーマンス向上など,実用化・産業化を指向した研究分野を
活性化させ,磁性酸化物の新規な応用,例えばスピントロニクス用に提供できる新規な機能発掘や,環境やエネルギー問題に資
する応用の開拓を行うことを奨励している.さらに現存する工業材料の高性能化,小型軽量化,低価格化,環境適応性,等の研
究開発を支援する。これら研究分野を活性化させるために講演特集とシンポジウムを開催し,議論および情報交換を行っている.
また,2017 年(平成 29 年)にインドで開催予定の第 12 回国際フェライト会議(ICF12)の開催準備と世界的なフェライトの研
究動向の調査を行っている.
自動車焼結部品分科会
日立化成株式会社 筒井 唯之
自動車の普及により,私たちは自由により遠くまで移動が出来るようになり,人々の生活に利便性と豊かさをもたらしてきた.
しかし,その一方で化石燃料を大量に消費するため,都市の大気汚染や温室効果ガスである CO2 の排出源となっている.この
ような状況の中,環境自動車に関連する技術開発の取り組みが加速している.ハイブリッド車,燃料電池車,電気自動車などの
開発が加速する一方で,従来の化石燃料エンジンの低燃費化に関しても研究がなされており,内燃機関の燃費向上,次世代動力
自動車の開発が平行して進められている.自動車へ広く採用されている粉末冶金製品も環境自動車に対応した製品開発が求めら
れている.これらを実現させるためのキーワード技術には,軽量化,低フリクション,耐熱耐摩耗,断熱,低損失高効率の磁気
部品等があり,これらの特性を有した粉末冶金製品の開発が進められている.
自動車焼結部品分科会では,このような自動車の変化に対応する粉末冶金製品の研究・開発に関する情報交換を行い,自動車
の動向や最新の技術情報の共有化を図り,焼結部品の採用拡大を図ることを目的としている.
このような目的のもと,昨年の粉体粉末冶金協会秋季大会では,「自動車の変化に対応した焼結材料の新たな展開」と題した
講演特集を企画し,自動車に関する内容の講演を募った.その結果,既に実用化されている技術から今後期待される技術に至る
幅広い内容の発表および意見交換を実施することができた.これらはいずれも,自動車の変化に必要な技術であり,いずれの講
演内容においても多くの質疑があり,熱心な意見交換,情報共有化がなされた.また,自動車メーカからの招待講演では,粉末
冶金に求められる機能を実例を交えながら講演していただき,今後の開発において大変参考になる内容を聞くことができた.ま
た,本講演特集への参加者は約 140 人と多く,立ち見で聴講される方も多く見られる程であり,関心の高さが感じられる講演特
集にすることができた.