M1 村元君よりフランスの大学

ECL 派遣レポート
Bonjour! 太田研 M1 の村元雄太です.私は,現在フランスのリヨンにある大学の研究所
で研究活動を行っています.大学の名前は Ecole Centrale de Lyon(ECL)といい,研究所の
名前を LTDS といいます.LTDS の専門はトライボロジー(摩擦・摩耗学)で,太田研とは生
体×トライボロジーのテーマで 2006 年来から共同研究を行っています.太田研では,
・より効果的な脳動脈瘤用ステント開発のための血流シミュレーション
・ステント留置後の再狭窄を抑制させるメカニズムを解明するための培養細胞実験
・不整脈治療に用いられる心筋焼灼カテーテル改良のための PVA-ハイドロゲルを用いた In
vitro(生体内の環境を人工的に模擬した実験系)の実験
等の研究テーマに代表されるように,流体力学や材料力学などの知識を使って医療機器の
開発や評価をサポートすることを目指した研究活動を行っています.
私の研究テーマは「顎骨バイオモデルのドリル切削による力学的挙動の評価」です.バ
イオモデルは,ヒトの身体を模擬したモデルのことで,歯科医がインプラント治療の訓練
を十分に積むことができるよう,ヒト顎骨にドリル切削を行ったときと出来るだけ同じ切
削時の感覚を与える材料を調べるための研究を行っています.具体的な実験内容としては,
アクリルベースの複合材料からなる様々な試験片を用意し,圧縮試験や硬さ試験を行うこ
とで強度や硬さなどの力学的パラメータを測定後,ドリル試験にて測定したトルク等のパ
ラメータとの関係を探ることで,異なる材料の違いがドリル切削の力学的挙動に与える影
響およびそのメカニズムについて調べています.
Fig.1 ECL
Fig.2 ドリル試験
LTDS は,金属の腐食や疲労等のトライボロジーに関するテーマを主に扱っており,毎年
多くの業績を上げています.太田研と LTDS は,トライボロジー分野には生体を扱ったテ
ーマは多くないが,今後の医療機器開発にはトライボロジーの知識が必要である,と考え
共同研究をはじめました.本研究において,日本で正確なトルク測定を行う環境を揃える
ことは難しい問題でした.この問題を解決したのが LTDS のトライボメータです.この他
にも太田研では,日本で研究環境を揃えることが難しい場合に海外の大学へ実験装置を使
わせてもらうために学生を送り出す例があります(最近では,M1 佐久間君がドイツの大学
(TU Braunschweig)で骨髄液の流れに関する数値シミュレーションを行いました).
ECL 派遣レポート
また,海外の大学において研究活動を行う上で,日本の大学とは異なる点を発見するこ
とが出来ます.例えば LTDS では、教授や学生の他に技術職員の方々が多く勤務しており,
学生の実験面でのサポートをしてくださいます.他には,いくつかの実験装置が同じ部屋
に集められていることが多いため,実験室で他の学生と顔を合わせることが多く,研究室
の枠を越えてコミュニケーションを取ることができます.フランスならではなのかどうか
はわかりませんが,LTDS では研究者同士のコミュニケーションが非常に頻繁に行われてい
ます.その他にも,昼休みにはフットサルやバレーボールなどのスポーツをすることや,
食後や夕方にはコーヒーブレークの時間を設けるなど,LTDS の学生および職員の働き方を
知り,自分の時間の使い方を見つめ直す良い機会となりました.海外の大学において研究
活動を行うことは,今までの自分の考え方を改めるきっかけとなるかもしれません.
Fig.3 フランスでは毎日会うと握手をする
Fig.4 週 1 のフットサルの様子
太田研究室では,学生が楽しく研究活動を行うことをモットーとしており,太田先生や
先輩方も優しく丁寧に研究面やその他の面でもサポートしてくださいます.まだ解明され
ていないことの多い医工学の分野を,工学の知識を使って発展させたい!もしくは,海外
の大学で研究活動を行ってみたい!と考えている学生にとって太田研は最適の場所となる
でしょう.この文章を読んで少しでも興味が湧いてきた方は,ぜひ 1 度太田研究室を訪ね
てみてください.
Fig.5 コーヒーブレーク
Fig.6 リヨン(フルヴィエールの丘から)