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第1章
射法八節まとめ
第2章
射法八節で工夫できるポイントまとめ
第3章
弓道で重要な体の部位を理解しよう
第4章
射法の勉強の仕方を理解しよう
第5章
弓道用語について理解しよう
第6章
弓の達人について理解しよう
第7章
道具の基礎知識を理解しよう
第 1 章 射法八節まとめ
・執り弓の姿勢
まず、左手に弓の握り革の所を握り、腕に弦をピタリとつけて、右手に矢の射付節を執り、腰
の左右につけます。弓の末弭(うらはず)を体の中心線上に置き、床上5センチ程の高さに保
ちます。
・足踏み
的心と左足の親指頭と右足の拇指節とを一直線にします。両足の親指頭の間隔は自分の引
く矢の長さに同じになります。両足のつま先は外八文字に開きます。
・胴づくり
足踏みの上に上体を正しくのせて、弓の本弭(もとはず)を左膝頭に置き、右手は右腰骨の辺
におさめます。背骨を伸ばし、うなじを立てて、体を柔らかくして、呼吸を整えて、気持ちをお
へそ3センチ下付近に納めるようにします。
落ち着いて、なお下半身がどっしりした状態をつくることは次の活動の動作の大前提になりま
す。上体は左右に傾いたり、前後に反ったり、屈んだりしないよう真っ直ぐに保ちます。これを
胴づくりの心得として「五胴」と呼ばれます。
五胴・・・「伏さず、反らず、懸らず、退かず、直なるのを良とする」
胴づくりするときは三重の体構(三重十文字)を意識します。これは足踏みの線、腰の線、肩
の線を平行に重ねて、これらの中央を貫く脊柱を正しく垂直に保持します。
足踏みして立った時の体の重心は、左脚のつま先と右足の踵を結んだ線と、右足のつま先と
左足の踵とを結んだ線の交点上におちるくらいが良いといわれていますが、むしろ土踏まず
の前縁くらいが良いです。
重心が会、離れの問に前後に移動しないように心がけることです。臍下丹田とか下腹部に力
を入れるような無理はせず、下腹部の力が抜けないように、また上半身ばかりに力が入らな
いようにするべきです。
・弓構え
この中には取り懸け、手の内、物見のみっつの動作が含まれています。
取り懸け
懸けの親指の弽帽子についている懸け溝に弦を当てて、人差し指の第一関節が矢はずに当
たる程度の位置に拳を持っていきます。三つ懸でも四つ懸でも引き始めから離れに至るた
め、弦と懸け口との十文字を崩さぬことが大切です。
弓を引き絞っていくうちにこれが崩れてしまうと筈こぼれしたり、矢口が開いたりして射が失敗
に終わることがあります。懸け口の十文字は十分に注意しなければいけません。
四つ懸の場合、右手の小指はその付根の関節で、できるだけ手のひらを曲げ、小指の先端
に力が凝らないようにします。小指と薬指は別々に動かしにくいので、小指を曲げると薬指も
自然に懸の帽子に軽くしっかりおさえることになって、右手の働きが冴えてきます。三つ懸の
場合は薬指と小指はしっかり握り締めます。
矢番え
矢を弓に対して十文字になるようにつがえます。これで,筈の方が上がり気味、下がり気味に
かけると、矢の進行に障りが出るので注意します。
取り懸けの際の懸の捻り具合は人差し指の側面を矢幹に軽くかたむけかかる程度に圧する
のが適度で、人差し指に力をいれてはいけません。捻りすぎると矢を強く圧し、それにより、箆
じないが出ます。又ひねり少なければ平付になって矢口が開き、矢こぼれが生じます。
手の内
弓構えの弓の握り方は、中指以下三指をぴったりつけて、その第三関節を弓の内竹の右角
にあてて、弓を軽く握るが、手首をやや外片にして、右手と相対するようにします。
人差し指は中指の上に軽く重ね、手首を少し、起こし、その胸の中筋が、握っている中指に一
直線になるようにすると、弓と直角になります。これを手の内の十文字と言います。手の内は
弓をかたく握らないことが重要です。
物見
頭持(ずもち)といって的を見るために左方をむけた頭の向き具合によって、弓を引く姿勢に
狂いを起こさないように正しく顔を的に向けることです。頭持が悪いと狙いにも狂いが生じま
す。弓構えの際の用語に弓懐(ゆみふところ)というのがあります。
弓を握った左腕を弦にかけた右腕とで囲む空間が緩やかな楕円形をなすことです。掌心は手
の平の中央くぼんだ所をいい、掌根は、小指の第一関節の内側よりやや手首によった肉の
厚い部分を言います。
・打ち起こし
打ち起こしには正面打ち起こしと斜面打ち起こしがあります。正面打ち起こしは弓構えの位置
から両拳を同じ高さにして弓を持ち上げます。
拳の高さは頭より高く、弓懐の形を崩さないで上げます。要するに弓と体が平行になって上が
ります。
弓はその弦が体の正面から見て、垂直であるようにします。こうするには、右手を主として弓
に持ち上げるとよいです。弓を上げるとき、肩根を後ろに落とさないようにすると良いです。
・引き分け
打ち起こした弓を左右に引き分ける動作です。現代弓道では間に大三という動作がありま
す。左手で弓を圧し開き、右手はその弓弦の力で腕関節の所で左方へ降り曲がり、矢束の三
分の位置ぐらい弓が引きひらかれます。
やや、間をとって左手は人差し指と親指との間で弓の握りを押すとともに右手は肘の力でひ
っぱり、左右対称に残り三分の二を引き分けます。
引き分けのとき、矢筈の方よりも矢尻の方が低いのを水流れ、これに反して矢尻の方が高い
のを鳥差しといいます。
矢をかけるところを中仕掛けといい、これより上部を上弦(うわづる)、下部を下弦(したづる)
と言います。
弓を引き分けていく道筋を弦道(つるみち)といい、練習によって、この弦道が同じ道を通るよ
うになるように努力することが大切です。
・会(かい)
仏教用語の会者定離(えしゃじょうり「あうものはかならずはなれる意味、会うは短く、離れは
長い」)から転用された言葉です。
この会が充実したとき、離れが生じます。
離(はなれ)
会の結果にくるものが離れです。矢飛びが真っ直ぐではなく。矢が泳いだり筈が振って飛んだ
りするのを矢色と言います。
角見(つのみ)は左親指根が弓の内竹右角に接するところを言います。角見がきかないと前
矢が出やすいです。前矢とは向かって的より右手に矢が飛ぶことです。
残身(心)・・矢が放れ終わった後の射手の姿であり、心です。少なくとも姿の精整の度合いに
よってその射全体の判別がなされるほど重要です。
残身においては矢所を見定めるとともに充実した気息をもって目を的に注いだまま弓倒しを
し。息を吐きつつ物見をおもむろに脇上面に戻し、右足より半歩ずつ閉じます。以上で一射を
行じ終わったこととなります。
残心(身)、弓倒し
左右に開いた両腕(残身の姿)をそのままの位置で 2~3 秒伸びたままにして(残心)、その
後、関節を折り曲げ、両拳を腰に執る。この腰に於ける位置は最初の執り弓(とりゆみ)のとき
の場所であります。
第二章
初心者ができる射法八節工夫ポイント
弓道を上達するために、射法八節の内容を理解することは大切なことです。八節の内容をし
っかり理解すれば、射形はキレイになります。その結果、的中率は向上してきます。ここで
は、初心者でもできる簡単なプチ理論を紹介していきます。
・足踏み
両足の拇指の間隔を自分の引く矢と同じにする。
狭すぎると上半身に力がかかりすぎて、逆に広すぎると下半身に力がかかりすぎるからで
す。足を自分の引く矢と同じ幅に立つと、どこにも力が凝らない幅になります。
両足のつま先は外八文字、60度くらい開く
つま先の間隔が狭すぎると、下半身が引き分け以降ぶれやすいです。間隔が広いと引き分
け以降、拇指球に力がかかりすぎます。
・胴づくり
足踏みの基礎の上に上体を正しく載せ、弓の本はず(もとはず)を左膝頭に置き、右手は右腰
骨に収める。背骨を伸ばし、うなじを立て、体を柔らかくして、呼吸を整え、心気を丹田に収め
る。
アゴを引き、頭を10センチ真上に吊り上げるように首の筋肉を上方に伸ばす
胴づくりをするときに背筋を伸ばす人がいますが、大事なのは頭も伸ばし、上半身を一直線
にする気持ちで背中を伸ばすことです。
頭が前に出ていると、顔を的方向に向けにくいです。さらに、頭の体重を肩で支えるようにな
り、肩がつまり、背中が曲がりやすくなります。順番でいうと、アゴ引く→首を伸ばす→背中を
伸ばす→上半身を真っ直ぐに伸ばすという流れで伸ばしてください。
膝の裏を伸ばす
膝の裏をしっかり伸ばし、下半身の力が弓に伝わるようにします。膝が屈んでいると、弓を引
く上で下半身が安定しないからです。ただし、自ら膝の裏をピンと張るようなことはしません。
上半身を一直線に伸ばし、下半身に体重がしっかり乗れば、ひかがみが伸びると考えます。
・弓構え
弓構えでは円相(弓懐)を心がける
肘と肩を楽にして、少し肘を外に張るような気持ちで円を作ります。このときの弓と弦を持つ
手は固く握りすぎないようにしましょう。
拳が前に出しすぎると上半身が前にかがみやすく、近すぎると、反ってしまいます。弓を軽く
握れて、肘と肩に無理のない弓懐をつくるように心がけましょう。
取り懸け(三つ懸け)では小指、薬指は握る。中指の第二関節の指の側面で取り懸ける。
小指、薬指を握ると自然に中指も曲がります。これにより、中指を親指に取り懸けやすくなり
ます。小指、薬指を曲げ、その流れで中指を取り懸けるようにしましょう。
取り懸ける位置は第二関節の指の側面で取りましょう。指先近くで取り懸けると、引き分けで
力が入りやすくなります。その結果、離れがたぐったりゆるんだりします。
手の内は何も考えずに軽く握る。中指、小指、薬指は中指につま先をそろえるだけでよし。
手の内は弓を固く強く握らないことです。 固く握ると弓の反動力や左腕の押す働きが殺され
てしまうからです。昔の弓術書の本を見ても「弓を軽く握る」ことを文章にはっきり残してある
ので、間違いありません。
そして、最初握るときに「小指」「薬指」「中指」をそろえることだけ行えば問題ありません。指を
そこまで強く締めようとしなければ、そろいやすいです。
初心者の内は天文筋に当てて、引き分けのときに握らない。なるべく、大三のときも握らな
い。「ぎりぎり~」と握りしめた音がならないように、軽く握ることを心がけてください。
物見は右目頭が的の中心に入るくらいしっかり的方向に顔を向ける。
目頭とは、目の部位で鼻に寄っている方です。これを的の中心にくるように顔を見てください。
よく、自分の射形を見るために、打ち起こし、大三で顔を的ではなく、正面に向け、鏡を見なが
ら引いている人がいますが、それはよほど矢数かけた人に限ることです。
初学人はなるべく、射場で引くときは鏡を見ないように、射を行ってください。これは、審査の
感覚と普段から養うためです。
「物見」は顔を向けたとき、顔が左右どちらかに傾かないようにしましょう。顔が傾くと導繰りも
一緒に前や後ろに屈んだり反ったりします。
打ち起し
肘の角度は後ろから見て、45度以上にくらい、とにかく高く上げる。
打ち起こしはなるべく高く(肘の角度が45度になるくらい)上げましょう。右手からすくいあげる
ようにあげるとなお良いです。
肘の角度が45度となっていると大三の形がキレイに整いやすく、引き分けも「肘で引く」という
感覚を養いやすいです。
大三
打ち起こししてから、まず、左手を体と平行に的方向に移動する、これにつれて右手は肘から
折れて左方に傾く。
左肘は完全には伸ばさず、少し曲げる
左肘を完全に伸ばすと、引き分けで左腕は突っ張ってしまいます。なので、ほんの少し曲げた
状態で大三をとります。ほんの少し曲がっているだけで良いですが、最初はできなくても大丈
夫です。
右肘は打ち起こしからの高さをなるべく変えない。右拳は額の一個空ける
右肘が下がると、力こぶの裏の筋肉(上腕三頭筋)がゆるみます。大きく引くためには上腕三
頭筋肉を活かして肘で引くイメージが必要です。右拳は額の一個程度間隔を空けます。距離
が近すぎると、引き分けが小さくなってしまいます。
引き分け
左手は人差し指と拇指との間で弓の握りを押すとともに右手は肘の力で引っ張り、左右に残
りの三分の二を引き分ける。
右肘はただただ真横に押し続ける気持ちで後ろに引き続ける
右拳はなるべく力をいれず、右肘を右肩の後ろまで引きつけていきます。最初はなかなかここ
までいきません。何回も引いて慣れましょう。動作を覚えてきたら、右肘が自分の右肩より後
方まで引きつけられるようになります。
このときのポイントは「先に肘を落とそうとしない」ことです。右肘は後ろに押し続ければ骨の
長さ、関節の関係で自然に「落ちてくる」ものなので、自分で意識することは肘を真横に押し続
けることです。
左拳はいきなり的方向に押すのではなく、始めは足踏み方向に押し、徐々に的方向に押して
いく。
いきなり的方向に押すと、手首に力が入ってしまいます。大三から、真横に押すのではなく、
始め足踏み方向(つまりななめ45度方向)に押します。徐々に的方向に押すようにしていけ
ば、手首に無駄な力を入れずに引くことができます。
ただ、これも最初はできなくても良いです。動作に慣れて引き分けの軌道を考えられるように
なって初めてわかってきます。参考程度に眺めましょう。
会
とにかく左右対称に押し合う
引き分けで大きく引いたら、そこから別に力を持つのではなく、引き分けで引いてきたときと同
じイメージで引き続けるようにしましょう。別に肩根をはずしてまで押さなくてもよいし、右肘に
力を込めて力むことでもありません。
何も考えずに引き分けで引いてきた力をそのままに左右対称に押し合いましょう。
離れ
引き続けて離す
初心者は離れを「引っこ抜こう」という感覚で離す人が多いです。それは引き分けのときに弦
をつかんでいるからです。離れを離しやすくコツは取り懸けです。取り懸けで中指はなるべく
深めに取り懸けます。すると、引き分けで指先に力がこもりません。
取り懸けで浅く握っていると、指先に力がこもります。すると、弦をつかんだ格好になり、離せ
なくなります。
しかし、取り懸けを深くすると、指先に力がこないので、大きく引き分けることができます。すつ
お、ちょっとの意識でポンと離れが出ます。
離れは上手くだそうとか考えて出すものではありません。小さく引いてキレイに離すことは難し
いです。引き分けを大きく引けば、離れは必然的に鋭くなります。
残心
残心は、2,3秒静止
残心はすでに射が終わった状態であるため、ここで気がゆるんでしまう人が多いです。しか
し、気が緩んでしまうと一生懸命引いてきた射に締りがなくなってしまいます。
離れをしたら、腕をさらに伸ばす気持ちで、2,3秒は静止するようにしましょう。
ぐんぐん伸びてぱっと離す。初心者はこの意識だけで大丈夫です。
第三章 初心者に理解しておくべき射法八節で気をつけるべきポイ
ント
初心者は射型の見方がわからないため、自分の射が正しいのかどうかがわかりません。そこ
で、指導者や経験者に見てもらうと、悪い所を指摘していただきます。ただ、初心者にはつい
てもよい癖があります。
良い癖というのは一生懸命引こうと思っているからこそ出てくる癖です。なので、修正させよう
とすると、一生懸命引けなくなるので、余計に悪い方向に行ってしまいます。稽古していくうち
にそういった良い癖は直っていきます。
ここでは、射法八節において、注意すべきポイントについて解説していきます。
打ち起こしが高いのであれば、肩は上がっていてもよい。
経験者は打ち起こしのときに射手の肩が上がるのを嫌います。そこで、打ち起こしている途中
で肩を下げさせようとします。
初めのうちは上がっていても大丈夫です。なぜなら、打ち起こしで上がった肩は引き分けに入
ると自然と下がってくるからです。
弓を上げる動作に慣れていないと肩が緊張します。むしろ初心者は肩が上がるくらい高く上
げることが大切です。肘の角度が45度以上までくると力こぶの裏側の筋肉が大三以降働き
やすいです。このときに肩関節が後ろに落ちないように、拳を少し遠くするとなお良いです。
これを、見た目の型にとらわれて、打ち起こしの高さを小さくしてしまうと、力こぶの筋肉はゆ
るんだままで、引き分けで使うことができます。この状態で稽古をすると上達が遅くなってしま
います。
右拳はたぐってもよい
引き分けのときに右手首が曲がることを「たぐっている」といいます。経験者はこのたぐってい
る状態を「弓を手先で引いている」ととらえて、初学者にこれを直させようとします。
もしも、引き分けが極端に小さくなければ、たぐりは直させる必要はありません。理由は初心
者の場合、「目いっぱい弓を押し開こう」としているからです。
目いっぱい押し開こうと思ってたぐっているのであれば、離れはあまりゆるみません。大きく引
こうと意識しているのであれば、それを続けさせた方が後々良い方向に働きます。
良くないのが、手首をたぐるのをおそれて引き分けが小さくなることです。こうなると、いくら手
首が曲がっていなくても、会に入ったときの気持ちが「ただ持っている感覚」に陥ります。
ここで、たぐっていても会で「さらに押そう」と意識できているのであれば、問題ありません。会
で押す意識がなくなったら、後に早気やゆるみ離れにつながります。
今は気づかなくても何週間かたつと離れが弱くなってきて、調子を落とします。それならば、多
少形が崩れていても大きく引くことを意識しましょう。
「頬付胸弦」は最初つかなくてもよい
弓道で引き分けで矢がほほにつき、弦が胸につくことを「頬付胸弦」と言います。これは、会を
安定させる一つの方法です。
経験者はこの頬付胸弦がついていないと、会で弓が安定していないのを嫌い、なるべく弓を
体にくっつけさせようとする人がいます。しかし、頬付胸弦は初心者はつける必要はありませ
ん。むしろ、つけようと無理やりさせると弊害がでてしまいます。
胸に弦をつけようとして、胸が出てしまうからです。初心者は大きく引くことを意識し、稽古を
続けていれば、自然と弦が胸につくようになります。そのため、最初の内はつかなくても大丈
夫です。
必要なことは目いっぱい引くことです。会でしっかり左右に押し切るということです。これがで
きていれば、大きく調子が崩れることはありません。
打ち起こしは上げられるだけ高くしましょう。
「打ち起こし」を次の離れにつなげるためには、なるべく高く上げるようにしましょう。
多くの人は、打ち起こしをすると、肘の角度がだいたい30度くらいで止まっています。そこか
ら45~50度位まで上げるようにしましょう。バンザイするときと同じようなイメージです。
打ち起こしを高くすると、弓と体が近くなり、引きやすいです。さらに、力こぶの裏側の筋肉(上
腕三頭筋)がよく伸ばされるので、大三をとると、右肘がキレイに曲がります。
最初は左右の拳がずれていたり、弓が傾いたりするかもしれません。それでも問題ありませ
んので高く上げることに心がけましょう。
なるべく胸が前に出ないようにしましょう。
引き分けでは、とにかく大きく引くのを心がけます。大きく引けば引くほど矢は飛びます。離れ
は大離れになり、有段者に必要なすべての要素を手に入れることができます。
たくさん引けば引くほどよいと考えて、どんどん大きく引いて構いません。ここで、意識してい
ただきたいことは「胸が前に出ないようにすること」です。
といっても、弐段までは別に大きく引くために胸が出てしまうのなら、そこまで気にしなくてかま
いません。引きが小さくなることのほうが弓道人には致命的です。
胸が前に出ないようにするためには「首」と「肩」を使います。引き分けのときにアゴを引いて、
首の後ろを伸ばし、肩を楽に落としましょう。すると、胸は出にくくなります。
離れるときは「グー」で離れましょう。
打ち起こしを高く上げたら、大きく弓を押し開いていきます。 そして、その意識いっぱいで引く
力で満たしたら、後はどうだってかまいません。そのまま右拳を後ろに引き続けてポンと離れ
てください。
スッと離れようとか真っ直ぐ出そうと思わないでください。何も考えずに離しちゃってくださ
い。弓を「引くまでが仕事」と思うくらい、胸いっぱい引くことに力を注いでください。
ただ、離れでの拳の形は「グー」にしましょう。なぜなら、グーで離す方がゆるまないからで
す。うまく離そうとか、自然に離そうと思うと離れの形はグーではなく「パー」になります。初心
者は離れのときは「グー」で離すことを意識してください。
引き分けのときに大きく引いて、拳をギュッと握って離れを自分の体真横にグーで握ったまま
引きぬくイメージです。
引き分けで大きく引くことを意識すれば、会に入って離したくなったら、拳を握ってパッと真横
に引きぬいてください。そうすれば拳がグーになります。
第3章
弓道で重要な体の部位を理解しよう
初心者は弓道で用いられる筋肉や体の部位を理解することで、自分の射技の向上につなげ
ることができます。ここでは、射において重要な体の部位について解説していきます。
3-1. 上腕三頭筋肉とは
みなさんは弓道で主となる筋肉はご存じでしょうか。弓を引くときに使う筋肉は「上腕三頭筋」
です。「上腕三頭筋」は力こぶの裏側にあり、腕を伸ばしたときに使われる筋肉です。
普段の生活では物を持ったり、つかんだりするときは力こぶの筋肉である「上腕二頭筋」が使
われます。弓道は日常では使わない上腕三頭筋が主として使われます。
人間の腕で肘から肩の間を「上腕」といい、肩関節から二本、肩甲骨から一本筋肉が出て、そ
の三本がまとまって構成されているために「上腕三頭筋」と言います。上腕三頭筋のように伸
ばすことで使われる筋肉を「伸筋」といい、逆に曲げることで使われる筋肉を「屈筋」と言いま
す。
伸筋は屈筋に比べて、持続力が高いために、長い時間筋力を発揮することができます。よっ
て引き分けに入り、3~5秒会を持つためにこの上腕三頭筋を使うことは理に適っています。
・上腕三頭筋はいつ使われるか?
上腕三頭筋は引き分けの動作のときに一番使われます。なので、引き分けで矢束いっぱい
引いたときに上腕三頭筋が張る感じがあれば、良いでしょう。
ここで、初学者には上腕三頭筋ではなく、二頭筋を使って引く人が見られます。力こぶの筋肉
で無理やり引っ張った引き方です。そういう人は引き分けに入るにつれ、右手首が曲がってき
ます。
これは弓道においては「たぐる(手繰る)」といわれており、手繰った状態だと離れの力が半減
します。矢数をかけるにつれ、この力に頼った引き方はしなくなってきます。
・打ち起こし、大三から上腕三頭筋を使った引き方をしよう
この上腕三頭筋は引き分けで主として働きますが、初学者はこの上腕三頭筋を引き分けでは
なく、打ち起こし、大三で働かせる引き方をオススメします。
具体的な方法としては、打ち起こしで「自分が思った以上に高く上げる」ようにしてください。打
ち起こしは肘の角度が30度を超すと、上腕三頭筋が少し伸ばされる感覚が出ます。そこまで
上げると、自然と大三の形がキレイにおさまります。大三では左拳だけ動かすようにして、右
拳は引かれるようにしてください。このとき、右肘はなるべく下がらないようにしましょう。
そうすれば、大三で上腕三頭筋が効き、引き分けで大きく体を開いて矢束いっぱいに引くこと
ができます。慣れてきたら、弓構えや胴づくりのときにもこの上腕三頭筋を張るようにするとよ
り射は良くなります。
・3-2. 丹田とは?
そして、丹田とは臍下8~9センチ下、体の表面から8~9センチ中程にあたる空間です。決し
てそういう器官があるわけではなく、そうあたりの空間のことを指します。
丹田とはもともと中国の道教の五であって「丹」は赤い仙薬であり、「田」は栽培する地の意味
であるから、丹田は仙薬の畑、つまり健康の泉の意味となっています。
丹田に心気をあつめる、下腹に力を込めるとはどういうことか?
よく「下腹に力込めて」とか「丹田に力込めて」という風に説明して、丹田を意識させる人がい
ます。しかし、実際はそうして無理やり力を入れることではありません。
そういうことをすると、上半身全体が力み、姿勢が崩れてしまいます(具体的にはおしりが出
て、胸が前にでる出尻鳩胸の姿勢になりやすい)。字だけを理解するとそうですが、丹田に力
をこめるとは決して力んだりしません。
丹田に力を込めるとは、下腹に自分で力を入れることではなく、「上半身の体重を丹田辺りに
乗せる」ということです。
例えば、自分の胸を前に出すと、胸が張った感じになります。これは自分の首の重さが胸に
乗っている状態です。首を曲げると、うなじが重く感じます。これは項に自分の頭の体重が乗
っていることになります。
これを、首を上にどこまでも伸ばし、胸をなるべく控えて、肩を落とすと、おへそより、ちょっと
体の中くらいが体重がのった感じになります。
坐っている状態だと、骨盤の一番下の部分である「坐骨」に自然と体重が乗り、立っている状
態だとつちふまずの前縁あたり全体に体重がのるようになります。この状態が丹田に体重を
乗せる、力を入っている状態です。
胴づくりで丹田にしっかり体重を乗せる方法
初めはわからなくてもよくて、稽古してだんだん慣れていくうちにこの感覚がわかってきます。
この丹田が重視されるところは「胴づくり」です。胴づくりで丹田、おへそ下周りに体重を乗せ
る動作を行います。
自分の頭の頂点である百重を10センチ上に伸ばす気持ちで顎を引いて、うなじを伸ばし、肩
を落とします。そうすると自然と足の裏全体に体重が乗るようになります。
この動作を胴づくりで行います。この姿勢で射を行うと、射形が乱れにくくなり、射癖がつきに
くくなります。
もし、わからない場合は「首を伸ばして肩を落とす」ということだけわかっていれば十分です。
その動作が自然と上半身の力みを取り、上半身の体重が下腹部に乗るようになっているから
です。
第 4 章 射法の勉強の仕方を理解しよう
弓の引き方や的中率を今より上げたい場合、本を読んで射形を勉強をすることは大切です。
ここでは、初心者がなるべく早く、実力をつけるための本の勉強の仕方を紹介していきます。
4-1.「あなたの興味のあること」を勉強する。
本の勉強は、基本「あなたが稽古中に興味を持ったこと」「知りたいと思ったこと」を中心に本
を開いて勉強するのが良いです。
今の自分の引き方で引き分けを良くしたいとか、手の内は要するにどう整えるが良いのか?
と興味を持った事柄から勉強していけばよいです。
これは単純に興味を持った内容は勉強したら実践に取り組もうと考えるからです。足踏みか
ら一から学ぼうとすると本で学びたい目的が欠けているため、知識しか身につきません。その
結果、稽古中に忘れてしまい、取り入れることができません。
弓道の本の勉強の仕方は稽古のモチベーションが上がるように勉強することが大切です。な
ので、一から順ではなく、その都度興味が出たことを調べてしていくことが大切です。
たとえば数学は最初の計算の知識(因数分解や三角比の計算など)がわからなければ、その
計算を使った高度の計算はできないです。
しかし、弓道の世界では、いろんなところを虫食い形式で部分的に勉強できます。興味のある
ことを断片的に勉強すれば、ある日実践に結びつけることができます。
・本の勉強は稽古の補強運動と考える
しかし、弓道の本を理解するためには必要なのはたくさんの知識を蓄えることではなく、たくさ
ん稽古することです。人に話す知識がたくさん増えても、射の実力が上がるわけではありませ
ん。
数学の世界はたくさん知識があればそれだけ多くの問題は解けます。知識8割の世界です。
しかし、弓道の世界は知識は2割、実践8割と言っても過言ではありません。むしろ、知識が
たくさんあってもそれがちゃんとできていない人はハッキリ言って邪魔な人です。
そういう知識や口ばかりが達者で何も身についていない人は知識量が多くても、稽古量が足
りません。そうにならないように稽古量がたくさん増えて、できる内容をはっきり説明できるよう
することが大切です。
・射法は逆から考えると射癖を直しやすくなる
多くの人は射法を部分的に考えて勉強します。例えば、引き分けだと、引き分けだけをうまく
やるにはどうしたらいいと、引き分けの部分だけ考えて勉強する方法です。
このように一部分だけを考えていては、射癖を直すのは難しいです。なぜなら、射法の動作
は全てつながっているからです。そこで、部分的ではなく根本的に直せるように考えましょう。
それは、八節をさかのぼって考えることです。
例えば、あなたが「引き分け」の部分が悪かったとします。考え方としては「引き分け」を直す
ためには、前の動作の大三と打ち起こしをどう正せばよいだろうと考えます。
具体的に「引き分け」で肘の位置が悪かったとしましょう。そしたら、その前の大三、打ち起こ
しでの肘の位置を考えます。
下の写真のように持っていきたい引き分けの位置を決めて、そこに来るには大三の拳、肘が
自分の体や額のどの辺りにくればよいのか?引き分けの拳の位置を決めて大三の位置まで
戻して考えてみます。(このとき、弓を持たずにやるとイメージしやすいです)
引き分けで肘を使ってで大きく引くためには、大三でどの位置にくれば良いでしょうか。これは
後ろから見て肩より拳一個、半個程度入っているのが良いです。
大三で拳が顔に近づけすぎると、肘は縦にしか下りません。そこで、少し額から遠ざけてみま
しょう。すると、肘は縦ではなく、ななめ入りやすくなります。
もし、大三での肘の位置が直らなければ、次に「打ち起こしでの肘の位置はどこが良いか」と
いう風に逆算して考えると、自分に合った射法を見つけやすいです。
このように、射法八節は直したい部分から逆算して考えていくと、その人それぞれで適切な直
し方が見つかります。そうして、癖を直すと、再発しにくく的中率も安定します。
・他人の射を見て研究する
弓道でうまくなる近道は他人の射を見て研究することです。
初心者や弓道をこれから研究してみたいと思う人は数秒でも多く「他人の射形」を目で見て勉
強しましょう。なぜなら、稽古数が少ないと、どうしても本で理解した内容が自分の誤解を招く
ことがあるからです。そのため、実際の動きを見て、勉強する必要があります。
研究してその人の良い部分を探すのは大切です。ただ、心構えとしては「真似る」気持ちを持
つことが大切です。
理由は、一部分だけ研究すると射法の動きが逆に悪くなってしまうからです。そのため、動作
全体の動きをイメージして、自分の頭にインプットするようにします。そして、頭で描いた通り
にやることを心がけましょう。
そのように、一部分ではなく全体を見て真似することの方が、理想の動きを取り入れやすくな
ります。
射法を見るときは、とりあえず自分の思う良いなと思う人を真似することから心がけましょう。
決して、有名な先生の引き方を真似しようとしてはいけません。理由は、有名な先生の場合、
射における考え方が違うからです。
例えば、初心者であれば、弓を引く動作に慣れることが大切です。そこで、範士の先生のよう
にゆっくり引く動きを真似すると、逆に引く動作がやりずらくなってしまいます。そのため、自分
の稽古年数と割と近い人の中で良いと思える部分を探してみましょう。
見とり稽古をするときも、いい先生の動きだけ見るのではなく、自分と経験が近い人から初心
者まで幅広く観察するようにしましょう。
これも、良い先生ではなく似た実力の人からの方が射法は学べるからです。考えていることも
やっていることも自分に近いため、射の改善がしやすく、練習にすぐ取り入れることができま
す。
このように、他人の射の動きを研究することで、自分の射形や射技は向上していきます。
射の調子が悪くなってしまったときの克服法
本を読んでその知識を射に生かせない人の特徴として「欲張りにあれこれやりすぎる」ことで
す。知識ばかり詰め込んで、その言葉の通りに体の位置を決めたり、引き方を複雑にさせて
しまうと、自分の体が逆に動かくなくなり、射法に悪影響を与える場合があります。
・いろいろ変な意識してしまったら、何も考えずに最初やってみる
引き分けでは、伸び合うこと、詰め合うことが大事だと言って、引き分けるときに、とにかく引き
絞って体、胸周りを緊張させて、腕ではなく肘で引くと言って、肘を意識したり、狙い目で目を
意識したり・・・・・・
いろんなところを変に意識しすぎると逆によくありません。そうすると、かえって体を固くしてし
まい、離れで変に引っかかってしまいます。
そのため、何かしら動作を改善したくて、稽古中に意識していることがあれば、あえて考える
のをやめるのも一つの方法です。弓を引く動作は一部分を直そうとすると、別の部分が悪くな
ることが多いです。
筋肉や関節を最大限に働かせる射をすることが目的であれば、その過程であらゆる射癖を
経験します。しかし、長くやっているといつの間にか本来の目的を忘れて直すことに意識が行
ってしまうときがあります。
そうした場合は直すことに意識を置くのをやめてみるのも手です。それよりも大きく引くことに
徹したら、いつの間にか射癖を克服していることもあります。
・何かダメになりかけたら「足踏み」「胴造り」に戻ってみる
もし、動きが悪いなと感じたら、意識してきたことを一回忘れると無駄な力みがなくなります。
そして、変だと思ったら「足踏み」「胴造り」に戻ることです。
理由は、手の内や引き分けを維持している最中に上半身に力が入ったり、脚が力んだりして
しまうからです。
私は、「足踏み、胴づくり」から押さえるべきところを学んで稽古をスタートし、そこから弓構え、
打ち起こし、大三と積み重ねていって稽古をしていきました。
他の人に引き分けのときの肘の位置や拳の位置をあれやこれや言われましたが、その言葉
は片隅にいれるだけ、足踏み胴づくりが自然とできるまで、引き分け、大三は特に何もいじり
ませんでした。
引き分けを変えると、大きく調子がぶれますが、「足踏み」「胴造り」をしっかり行えば、大きく
調子を崩すことは少なくなります。
・弓道家が最もいじりたくなる動作は?
一番考えたくなるのは「手の内」と「引き分け」です。私は今までいろんな人にアドバイスや稽
古の直し方を教えてきましたが、その中でもダントツに多いのが「手の内」「引き分け」です。
しかし、手の内、引き分けだけを単独にいじるというのはとても難しいことです。理由は、手の
内や引き分けは胴造りがしっかりできていないと使えないからです。
手の内でいくら指の形を変えても、引き分けの引き方を工夫しても、胴造りで前や後ろに屈ん
でいたら的には当たりません。そのため、あまり手の内や引き分けで細かいことを考えない方
が得策です。
射の調子がすぐれないときは、意識していたことをやめたり、「足踏み」「胴造り」を考え直した
りしてみましょう。直すことにとらわれない方が、改善に向かうときもあります。
教本を使った効率的な射法の勉強方法
まじめな人は、射法八節の動作すべてにいろんなことを意識するようになって、体がガチガチ
になってしまいます。
ここでは教本を使って、勉強しながら稽古をする一例を紹介します。
・短くやる内容をまとめてみる
まずは射法八節の内容を一通り見て、自分の好きなところを探していきます。そして、わかる
ところを取り入れていきます。
そして、そのあと、八節でやる内容を自分の短く言葉でまとめます。
足踏み→幅は自分の矢の長さにそろえる
胴づくり→脊柱を真っ直ぐ伸ばす
弓構え→大木抱えるように両腕を丸くして、取り懸け、手の内を行う。
手の内→天文筋に弓の外竹合わせる
打ち起こし→肘の角度45度程度
大三→三分の二引く
引き分け→左右均等に引き分ける
会→伸びあい
離れ→左右に開くように離れる
こんな感じです、一つの動作を一つだけやることを決めて、射を行います。そうすると、引いて
うちに「動きを取り入れてみる」という習慣や射の工夫の仕方が身につきます。。
稽古するときも一回の射で上の9個の内容を頭に詰めるのではなく、なるべくこのなかの一つ
に絞って稽古をします。
あるときには、大三でやってみようと思うことを稽古してみます。またあるときは会の伸びあっ
てみることを意識的にやります。
できるところ、できないところを把握し、ある程度引いたらもう一回読んでみるので、そうして何
回も何回も読んでみます。すると、射の形は徐々に良くなってきます。
上達する人としない人の違いは「できるところを少しずつ増やすことです」射法八節でそのとき
何をやるか一つ二つ意識して稽古し、自然とできるようになってきます。
また、何ができないのかも明確にして、それを意識して稽古をすれば、毎回の射で課題がで
きます。
ここでは教本を例に上げましたが、教本にはたまに難しい言葉が書かれています。会では会
者定離とか、伸び合いとか、詰め合いとか書かれています。
こういう言葉はなるべく無視してください。なぜなら、実際の意味がわからないからです。全国
にでる選手でさえもこの伸び合い、詰め合いはどういうことか、説明できる人は少ないと思い
ます。
なので、変な言葉にとらわれず、左右対称とか、わかる部分を毎回の稽古で自然とできるよう
にしていくことが上達のカギです。
・稽古の数が増えると難しい内容も少しずつわかるようになってくる
そうして、各動作でやることを一つずつできることを増やしていくと、稽古中に教本に書いてあ
った難しい言葉の意味がどういうことかということも少しずつわかるようになってきます。
わかるようになってきたら、その難しい言葉も少し片隅に入れながら、稽古していくと、そういう
難しい言葉の意味があるときこういうことなのかぁとボンヤリつかめるようになります。
そういう風に勉強した内容がすこしずつ反映されてきます。
いろんな寄り道をしながら射を行なった方が、深い内容に気がつく可能性は上がります。
たくさん引けば、難しい言葉が少しずつわかってきます。理解できる。一つずつわかることをピ
ックアップし、一つ射でできることを積み重ねていけば、何も問題もありません。小さな意識を
一つ積み重ねていけば良いのです。
いろんなところを部分的に一つずつ勉強して、何年後にいろんなことができるようになること
が大切です。
弓の世界は失敗の数だけ上手くなれる
多くの人は、弓を引いて当たらないと、自分は実力がないと嘆いてしまいます。しかし、弓の
世界は失敗の数だけ上手くなれるとと考えてください。
弓道においての結果は「的中」です。たくさん的中を出せば大会に優勝し、昇段をすることが
できます。そのため、自分の事をできない人、と思う人はこう考えます。
中る人 = すごい人
中らない人 = ダメな人
しかし、そうではありません。弓道において大切なことは「自分で失敗した原因」を考え、その
原因を克服する方法や心がけを実践し、改善していくことです。
弓道は失敗をたくさん重ねた方が優秀になれるのです。逆に弓道で失敗しない人は優秀には
なれません。
私的な話をすると、高校二年初めに早気になり、三年間昇段できませんでした。もちろん普段
の稽古は失敗ばかり、大会で終わった後、一人で涙流したことはたくさんありました。先生に
部活辞めろと何度も個別に言われたこともありました。
しかし、結局大学で、三段までとって、全国大会も経験できました。今では、難しい弓道の教
本や弓術書を解読し、HPで公開しています。この事実を見れば、いかに、弓道では失敗を重
ねることが大切かわかります。
1000本引いて、100本中てるのと、100本引いて100本中るのでは、同じ100本でも訳が
違います。
中ったら、そこで終わってしまいますが、中らなかったら「なぜはずれてしまったのか?」と自
分で考え、稽古でいろいろ試そうとします。
弓道では自分で原因を考え、行動することが上達に必要な考えと思ってください失敗の数だ
け、弓は上達します。
第5章、弓道用語を理解しよう
弓道でよく使われる用語を紹介していきます。
かたいれ(肩入れ)
弦を弓に張って、矢をかけずに引くこと。別名素引き。
すんのび(寸伸)
弓の定尺、七尺三寸より伸びた弓、普通二寸伸びを言う。
せきいた(関板)
外竹、内竹、側木、ひごを接着するとき、内竹を上下からせき止めるために弓の上下に接着
してある木板。
そばき(側木)
弓の側面にみえる木部。
は(把)
弓と弦の間の幅をいう、普通藤頭のところではかる、十五センチ前後を普通とする。広いのを
「把が高い」、狭いのを「把が低い」という、余り低いと弓形をそこねる。
なかじかけ(中仕掛)
弦に矢の筈をさしこみ、かけのあたるところを補強するため、また矢筈に密着するように他の
麻で巻く所をいう。
くすね(薬練、天鼠)
「くすりねり」よりの語(謙亭筆記)。松ヤニに種油を混じて適当なかたさに煮詰めたもの、弓弦
にすりつけ弦を保護しまた中仕掛を作るに用いる。最近は木工用ボンドを用いる人が多い。
うちたけ(内竹)、外竹(とだけ)
弓を張ったとき、弦に相対する面の竹を内竹、外側になる側を外竹という。
うらぞり(裏反り)
弓の弦の張らない時、弓は弦を張った時とは反対の方向に反りかえるのを言う。最近の新素
材の弓には裏反りがない。
はず(弭)
弓の上、下端に弦をかけるとがった部分。上を末弭(うらはず)、下のを本弭(もとはず)とい
う。
つるがらみ(弦がらみ)
取りかけのとき、懸け口に弦を内手に強くからめることです。「筈をかまわず弦を折れ」と教え
たもので、弓を引くということは弦を引くので、筈を持って引くのではない。
かえづる(替え弦)
射の最中、弦が切れた時、掛けかえる予備の弦。
かたぼうし(堅帽子)
日本では元来三つ懸(がけ)で、拇指の中関節の内側に弦をかけ、柔皮を重ねて用いた。の
ちに堂射の影響で帽子を角や木で製して用いるようになり、三つ懸けも懸け口が拇指の根元
に移った。堅帽子は元来は四つ懸けに用いられた。中国では古(いにしえ)は決(けつ)とい
い、象の骨で作り右手大指につけて弦をひくに用いたと古書にある。拇指で弦をひく法は、中
国と日本は同じである。あるいは中国からの影響で日本もそうなったのかも知れない。
かけ(懸)
今日一般に堅帽子の懸をいう、正しくは弓懸。
したがけ(下懸)
汗や手あぶらで汚れるのを防ぐためにその下に着用する木綿製の手袋様のもの。
かけぐち(懸口)かけまくら(懸枕)
かけぐちはゆかけの弦のかかる溝、懸溝をいう、かけまくらはそれに沿うたやや高い所を指し
ていう。
かけほどき
懸の栂指が中指(三ツかけ)か薬指(四ツかけ)と磨れてわずかにひき出されるのをいう。
はず(筈)
矢筈、矢羽のついた方の矢幹の末端で弦につがえる所、もろはず(諸筈)といって矢幹の末
端をけずって作ったものと別の品物で作ってはめこむものとがある。竹、角、プラスチック、骨
などで作る。
さしや(指(差)矢)さしやゆみ(指(差)矢弓)
堂射用につくった矢、差矢前は沢山の矢数を連続して射る射法で、三十三間堂通し矢は差矢
前の一種。差矢弓はこの堂射に用いる弓。
ぎちこ(ぎち粉)
ぎちぎち音がするのでいう、近頃ぎり粉という。ぎりぎりは音の形容ではない。
ごうぐし(侯串)
的をとめる串、侯は中国で射布と訳し、むかし布を張って、これに矢を射あてるのに用いた。
虎侯、熊侯、豹侯が用いられたという。これは虎や熊や豹の皮を的のまわりにかざったのでこ
のような名がある。この中央に鵠を設けた。鵠とは射る的のこと。正鵠ともいう。釈文(しゃくも
ん)という中国の書に。「正も鵠も鳥の名なり」とある。小さな鳥で矢が中りにくいので的の名に
したという。
やつか(矢束)
各人の引くべき矢の長さ。甲、乙二矢を一手、この倍数四本を一紙という。
やみち(矢道) あづち(染、安土)
射場と巣との中間の地面。的をおく土手状の所を果という。
やぐち(矢口)
矢を射る時、放れる瞬間かその直前、矢が左手栂指の根元の上から上方か右方へ離れるこ
と、「矢口があく」という。これを箆間きともいう。
やがえし(矢返し)
一手または四本を射る時、矢の足りない場合、一度射た矢を繰り返しまた射るため、梁から
矢をその射手に返すこと。
はけや(掃け矢)
射た矢が地に落ちそのまま滑走して的にあたるをいう。むかしはこれも「あたり」とみなされ
た。これは敵を殺傷する上にかわりはないと考えられたからである。
のじない(箆じない)
矢を引きしぼって放す際、とりかけの具合で箆が頬の方に鸞曲するのをいう。主に右手の食
指で強く矢の箆を押すのに起因する。
そくる(束る)
一手または四本の矢を皆中すること。
はわけ(半別・半分)
的中とはずれと相半ばすること。
かいちゅう(皆中)
所定の数の矢を全部中てること。
からはず(空筈)はずこぼれ(筈こぼれ)
矢を射放す瞬間、弦から矢筈がはずれて矢がとばないで、弦のみもどることをいう。この際弦
が切れたり、矢の羽を損じたり、頻を弦にて打ったりなどが起こることがあるので初心の時、
特に注意するとよい。はずこぼれは射放す前やその瞬間に弦がはずれること。
もちまと(持的)
射手各自が一つの的を受持って射ること。
しゃくに(尺二)
一尺二寸(直径三十六センチ)の略、十五間(二十八米)にて川いる的の大きさ、またこの的。
尺二的。なお尺二的には陰・陽二種あり、陽の的を貧的・陰を星的ともいう。
まえ(前)うしろ(後)
的に向かった時、的の右を前、的の左を後という。
つけ(付け)
ねらいのこと、矢の筈から矢ノ根までを見通して的の中心の垂直線上と矢幹とが一致すれば
よい。
つのみ(角見)
弓手栂指の根を言い、発射の際、弓の右内角をつのみで的の中心にむかって押すのを「角
見をきかす」と言い、この角見の働きは大切である。
たぐる(手操る)
矢を引き、会にはいった時、右手首に力を入れすぎて、矢束より多く引いて手首の折れた形
になることをいう。
てさき(手先)
弓手の手をいう、これに対してひじさき(肘先)は引きしぼった時の右手のひじをいう。手先肘
先は射のもっとも大切な技である。
したおし(下押)
手の内の掌根部を弓につけ、すき間のないようにべたりと弓を握ること。
うわおし(上押)
会に入って持満の時、弓を的の方へ突っ込むように力を働かせる手の内。
ここう(虎口)
左の手の栂指と人差し指(食指)の股の中間を言う。
くちわり(口割)
矢を引きしぽった時、すなわち会に入った時、箆(矢幹)が上下のクチビルのさけ目の高さに
来ることをいう。「頬付け、口割は的中の秘訣」といわれた。
おくりばなれ(送り離れ)
離の瞬間、右手の肘が弦に引かれるようにして離が行なわれるのをいう。
おさまり(納まり)
射法通りに骨法に合って弓を引き納めた形、状態で、すなわち会の内容である。
こっぽう(骨法)
①各関節が正しく祖み合わされて合理的にその射人の骨格に合致した射法をいう。
②流派により骨法は手の内のことをいう。
かね
準、規矩の字をあてる。射法上守るべき基準となるきまり。曲尺からの造語。
きざ(脆座)
片足半足ほど引いて座り、引いた方の脚のひざを床につけ他方のひざを床よりわずかに浮
かして腰を張った姿勢、このひざを浮かすを「生かす」といい、弓を持った側のひざを生かす。
従って、右手に弓を持った時は右ひざ、左手に弓を持った時は左ひざを生かす。
おしで(押手)かって(勝手)
押手は弓を持つ手、左手のことで弓手ともいう、弦を引く右手に対していう。右手は勝手とい
い、また馬の手綱を執る手のため馬手(妻手)ともいう。
おおまえ(大前)
多数の射手が順に射位に立って射るとき、一番先頭の射手をいう。いちばんうしろの射手を
落(おち)という。
うのくび(鵜の首)
弓手の栂指の形の名称で、弓を左手に握った時、拇指の付け根が弓の右角(カド)によく密着
した形で、鵜という水鳥が水中に入って魚を捕り呑もうとして水にもぐり入る時の恰好のよう
に、拇指の先を下方に向け、しっかりと押すのをいう。これに反して拇指の根元の力を抜き上
向きにしたら、手の内は弱くなって押し手が働かない。そればかりか、そのために弓の圧力を
肩で支えようとして、押し手そのものもきかなくなる。拇指を中の関節から折って爪先に力をこ
めて握るのはよくない。
ごしん(五身)ごどう(五胴)
胴作りの注意すべき点である。かかる身、そりかえる身、俯する身、退く身、直なる身の五つ
をいう。
かかる身とは、的の方に上半身を寄せかけることで、ごく手近かの所や、穴中のものを射る
時にする。退く身は低い所から高い所を射る場合の胴造りに用いる。この場合は足踏を少し
狭くする。俯する身はからだをそのまこ則方にかけるのをいう。場合、矢はうしろにとび易い。
(注、うしろは的に向かって的の左方をいう、まえは的に向かって的の右方をいう。)反りかえ
る身はからだをそらすので、矢が前に出易い。この四つの形の中、前二者は、実用上に用
い、後二者は、このような胴造の場合はよくこれを加減して中ごろである直なる身を覚えて練
習するのがよい。従ってかかる身、退く身によって矢は上下し、俯する身、反る身によって矢
は前後するので、直なる身を保持するようつとめること。直なる身は十五間の的前の時だけ
肝要である。
ごみ(五味)
物見(目付)、引分(ヒキワケ)、持(モチ)、伸(ノビ)(この二つは会)見込(残身)の5つをいう。
ごか(五加)
押手の「手の内の作用」をいう。上押、下押、拳の入れすぎ、拳のひかえめの四つの形の手
の内は悪く、これに真中をまっすぐに押す、中押しの形を加えて五加という。初心は前四つの
失をおこさないようにすること。
ごじゅうじゅうもんじ(五重十文字)
五箇所に十文字を重ねた姿勢をいう。
弓と矢の十文字 、弓と手の内の十文字、懸(カケ)の拇指の腹(懸口)と弦との十文字、背
筋と肩骨との十文字、首のすじと矢との十文字、むかしはこのことは大三においてたしかめら
れた重要事項であったが、今日の射方では、会の時の形となるしかし。しかし、会の時では時
ですでに遅く、これをただす暇はない。
しこの離れ(四個の離れ)
切る離れ、払う離れ、肘先の心ない離れ、拳の離れの四つをいう。切る離れは中る離れとも
いう。単に何の考えもなく切り放すのをいう。払う離れは前にあるものを払いのける格好で放
すのでいう。肘先心ない離は勝手の肘先が十分に後ろに回ら手首だけで引いたときとか懸け
口をあけて放すのを言う。拳の離れはどの辺で離そうかと拳に力味を持って懸口を解くだけ
の離れで拳に気合いがのらない。
はやおとや(早矢乙矢)
はやは甲矢、早矢、兄矢、発矢。おとやは乙矢、弟矢。
弓馬問答には内向きを兄矢、外向きを弟矢など人申すとあるが、貞丈雑記には「矢に内向き
というのは矢を弓につがひて羽表(ハオモテ)わが身の方へむいたのをいう、外向きというは
羽表我がむかうの方、外へ向いたのをいう。内向、外向という事。的矢にいう事なり。一手な
る故也。外向をば早矢に射る也。内向をば乙矢に射る也。外向は陽也、内向は陰也、陽の矢
を先にし、陰の矢を後にする志なり」とあり、弓馬問答の人申すことは相反す。貞丈雑記には
更に説明して「外向きを兄矢に射、内向を弟矢に射るという事もきっと定まりたる方式にはあ
らざれども右のごとくするのをよしというなり」と。そしてはや、おとやというのは的矢で一手あ
る矢の時にいうと限定されていた。
第6章、弓の達人について理解しよう
弓道の世界でも弓の達人と言われた人はたくさんいます。あの徳川家康も弓道の達人と言わ
れていました。終始弓を離さなかった人と言われていました。書によると毎日弓を引くことを死
ぬまで続けられたそうです。ここでは明治以降で弓の達人と言われた人を紹介します。
・梅路見鸞
1892-1952 年
弓道家。明治以降、弓道雑誌「武禅」を出版。この雑誌は弓道界に多大な影響を与えた。
伝説
約 50 メートル離れた大きさ約10センチの的を二本連続して射抜いた。見ていた人間が「人
間業ではない」ともらすと梅路は「もちろん」と言った。
門弟が冬の朝、外で弓を射る稽古をしていた。流儀の動作をひとつ省いて矢を射たところ、雨
戸、障子の締め切った家の中で寝ていた梅路が起きて「馬鹿、なんという様だ!」と一喝。家
の中にして、外の弟子が動作を省略したことを瞬時に理解したということである。
・阿波研造
1880 年-1939 年
弓術家。弓聖と称される。術(テクニック)としての弓を否定し、道(精神修養)としての弓を探求す
る宗教的な素養が強かった。
伝説
「心で射る弓」。目をほとんど閉じた状態で狙わずに当てるという射を行った。
ドイツ人哲学者オイゲンヘリケルは日本文化の探求のため弓術を研究することになり、阿波
に弟子入りした。しかし、狙わずに当てるという阿波の教えは合理的な西洋哲学者に納得で
きるものではなく、ヘリゲルは本当にそんなことができるのかと師に疑問をぶつけた。
阿波は納得できないのなら夜九時に私の自宅に来なさいとヘリゲルを招いた。真っ暗な自宅
道場の中で線香の灯がゆらめくのみで的が見えない中、阿波は二本弓を放った。一本目は
的の真ん中に命中。二本目は一本目の矢筈(矢の先っちょと思ってください。)に当たり、その
矢を引き裂いていた。
このとき阿波は「先に当たった甲矢(一本目の矢)は大したことはない。数十年なじんでいるあ
づち(的の後ろの土の壁)だから的はどこにあるか知っていたと思うでしょう。しかし、甲矢に
当たった乙矢(二本目の矢)・・・・・これをどう考えますか?」とオイゲンに語った。ヘリゲルは
この出来事に感銘を受け、弓の修行に励み、後に五段を取得している。
・吉田能安
1891~1985 年
阿波研造に師事を受け、その才能を発揮した弓道の達人
日光東照宮の社前で行われた武道大会において、司法大臣、県知事、弓道範士らが列席す
る中、武将兜を串刺しにつらぬいた。
その他、明治以降で弓道界で多大な影響を与えた人として、本多流という新たな弓道の流派
を確立した「本多利実翁」がいます。
・本多利実翁
1836~1917 年
明治初期は欧化万能のときで、弓道は全くすたれ、他の武道も全くすたれていました。そこ
で、弓道と体育との調和を持たせるのを目的に本多流では、弓の初作に実利的な流派と礼
儀的な流派を取り入れ、新時代に弓道の達見(すぐれた見識)をしました。
第7章
道具の基礎を理解しよう
7.1 弓、矢の基礎知識をおさえる
日本の弓、矢には各部に細かい名前が分けれられています。ここではその名前を紹介していきま
す。
・弓の各部名称
下に弓の各部の名称を記します。
弦と握の下端の間隔を弓把と言います。この弓把は 15 cm 空けます。
弦と上関板は弦が接触しないようにします。昔、上切詰藤には天の神、下切詰藤には地の神が宿
ると言われていました。なので、弦調べにはちゃんとした意義があり、この部位を確認するように
言われていました。
中世までは日本でも丸木弓が使われ、弓の材質としては梓(あずさ)、まき、槻(つき)、柘(つげ)、
桑(くわ)、桃(もも)などが使用されていました。
その後、9世紀、竹の弓がつくられるようになり、最初は木に竹を合わせたものでしたが、次いで、
両側とも竹で作られるようになりました。現在はカーボン、グラスファイバーの弓も作られるように
なっています。
・矢の各部名称
下に矢の各部名称を示します。
板付の構造は巻き藁、近的によって形状が変わります。巻き藁矢の板付は先端が太めに、近的
用は巻き藁用より細くできています。射付け節は取り矢を行うときに、引っこ抜く長さ、ゆがけのは
さむ指の位置の目印として使われます。
矢には甲矢(はや)、乙矢(おとや)と区別があります。その区別は羽の突き方を見ます。矢を番え
るとき、矢尻を左にしてみると、走り羽が裏側に見え、弓摺り羽が表側に見えるのを甲矢、走り羽
が表側に見え、弓摺り羽が裏側に見えるのを乙矢(おとや)と言います。
甲矢は飛行途中、時計回りに回転し、乙矢は反時計周りに回転します。一般的な羽は15間(28
M)で一回転半前後です。
7.2 ゆがけについて基礎知識をおさえる
ゆがけも弓、弦と同様に、中の内容、性質を知ることは、射の実力のためには必要なものです。こ
こでは、ゆがけの基本的な情報をまとめていきます。
ゆがけの各部名称
ゆがけによる皮、製造の仕方の違い
ゆがけの革の素材は鹿の皮です。そして、しかし、私が四つ?を購入したとき、たくさん四つ?を見
たとき、素材が微妙に違うことを教えていただきます。
国内と国外のものもあり、ゆがけの刺繍の精度が国内の方が良く、長持ちするようです。この辺り
はゆがけの見方を弓具店
私が使用している四つがけだと国内と国外では革の色が微妙が違いました。それは素材が微妙
に違っていると説明を受けました。長く使用する場合は国内で長持ちする方を選んだ方が良いで
しょう。
四つがけ、三つがけの特徴
ゆがけには現在よく使われるのは三つがけと四つがけがあります。この二つのゆがけの違いは
取り懸けるときに使う指です。三つがけは中指で親指を押さえます。四つがけは薬指で親指を押
さえます。この取り懸ける指によって、特徴が出ます。
特徴としては、三つがけの方が的中率は高いことです。三つがけは会のとき、親指の向きが的方
向に向くため、余計なことをしなければ矢が真っ直ぐに飛ぶからです。昔、三つがけは一文字かけ
と呼ばれてました。
四つがけの特徴は手の形が合理的になることです。四つがけは三つがけより取り懸けたときの拳
の形が丸くなるために、拳の構造から、使われる腕の筋肉の部位が変わります。そのため引きや
すいです。昔、この四つがけは十文字かけと呼ばれていました。
ゆがけをギリ粉につけるとき
取り懸けのときの摩擦を強めるためにギリ粉をつけますが、このギリ粉はなるべく大目につけた方
が良いです。
ギリ粉は取り懸けた指同士の摩擦を強める以外にゆがけの皮を守る役割があります。ギリ粉をつ
けないまま射をおこなうと革が早くすり減ってしまいます。
目安としては堅帽子が真っ白になるくらいつけます。このくらいつけると、ギリ粉によって堅帽子周
りに一つの層が出来上がります、私は学生時代、稽古が終わった後、ギリ粉をブラシで堅帽子を
削っていましたが、そのようなことはせずに、堅帽子にギリ粉がついたままで問題ありません。
最初、ギリ粉が固まって、堅帽子が滑りやすくなり、取り懸けがゆるむのではと心配していました
が、そのようなことはなく、肩帽子が滑ってしまう場合はもっとギリ粉をつければ締まり、取り懸け
がゆるんでしまう場合は取り懸ける指の位置を変えればすぐに問題は解決されます。
ギリ粉に関して話すと弓具店に売られているギリ粉とそのギリ粉をさらに練られたギリ粉とありま
すが、よく練られたギリ粉は堅帽子がベタベタになってしまいます。なので、普通に売られている
ギリ粉で稽古をして問題ありません。
7.3 グラス弓、竹弓、カーボン弓について理解する
グラス弓、竹弓、カーボン弓をおおまかに三つに分かれます。どの弓も弓具店に行けばだいたい
おいてあり、ネットでも購入できるものもあります。
・グラス弓
グラスファイバーの素材の弓です。竹弓のように製造工程が複雑かつ、時間もかからないため、
大量生産できます。値段も安価なため、学生や初心者など、弓道初めて間もない人たちがこれを
使用します。
長所としては形状が変化しにくいことです。
グラス弓は竹弓と違って、温度、湿度の影響が受けにくく、形状も変化しにくいです。そのため、的
中に影響が出にくく、耐久性もあるので、練習量にも耐えられます。
初心者の方で弓返りがしなくても、矢が真っすぐに飛び、的中も見込めるので、初心者はここから
入るのがオススメです。
そのほかに安価であることが挙げられます。
竹弓も値段はピンからキリまであるのですが、竹弓に比べてグラス弓は比較的値段が安いです。
竹弓のように破損する恐れもないので、一つ持っておくと、長く使用することができます。
短所は、竹弓と違って離れたときの左拳の反動が大きいことです。
近年、いろんな種類のグラス弓が製造されて、その中で引きやすいグラス弓は数々でてきました。
しかし、それでも、竹弓の弾いているときの柔らかさには比較にならないほどです。
グラス弓を使用することで、無意識に変な力む癖があります。具体的には左手、左肩です。学生
や若い人などそれで引ける人は問題ありませんが、グラス弓は竹弓と比べて離れたときの押し手
にかかる反動が強く感じるため、これが、左肩の詰まりになる可能性がおおいにあります。
実際、学生弓道では、グラスの弓で甲的中を出すために、あえて左肩を動かさないように棒のよう
に固めて射を行う高校がありました。それでも確かに高的中はでます。
・竹弓
竹弓は実際に森の中にある木を素材に弓を作ります。工場で製造しているところもあると聞きます
が、弓師さんの話によると1年かけて手作りで作っている店もあります。
長所は引きが柔らかいため、変な力みがつきにくいことです。竹弓のしなりによって、すくない力で
も、竹弓独特の反発によって、矢勢を出すことができます
短所は的中が難しい、形状が微妙に変化することです。
竹弓は季節によって、微妙に形状が変化したり、素材によっては、弓返りのときの反発、しなりが
微妙に代わるため、いつも狙ったところから微妙にずれることがあります。夏になると、湿気をすい、
冬になると乾燥するため、それが微妙に射に影響してきます。
また、裏反りも変化します。裏反りとは弓を張らないときに、反対側へ反りかえることです。この反
りかえりがずっと使用していないと、深くなったり、使用し続けていると浅くなったりします。
これを自分で調整する必要があります。グラス弓と比べて自分である程度手間暇をかけなくては
いけません。裏反りの強い弓となっては、張ったままにしておくこともあります。
・カーボン弓
カーボン弓はカーボン素材の弓です。カーボン素材の弓は、弓の下端に「CARBON」と表記してい
るところもあります。
長所は軽い割に矢勢が出るということです。
このカーボン素材や柔らかさはもはや竹弓の軽さとは全く質が違うため、持ったときに感じる感触
が変わります。近年、カーボン素材のフレームがいろんな部品で使用されているように弓もカーボ
ン素材で作られてきました。
また、竹弓とカーボン素材を合わせた、カーボン竹弓というのも存在します。私は、カーボン弓を
使用していた時期もあり、グラス弓を平行して使用していた時期もありました。
中の素材が変わったので、反発力が変わった、柔らかさが変わったということもあるでしょうが、そ
れは使用中あまり感じることはありませんでした。なので、素材によっての引きやすさはグラスと
は変わりなく、目立って違っていたのは軽さでした。
短所はグラスに比べて、壊れるリスクがあることです。
カーボン素材は劣化するため、強度が弱くなってしまったり、強さが変わったりしてしまいます。弓
や楽器は質が良いものだと何十年と使用したいため、修理や調整の作業が重要になってきます
が、カーボンの場合、その修理、調整が効かないため、壊れる可能性があります。
軽いというのはそれだけもろく、衝撃に弱いということです。
7.4 竹弓の見方
竹弓を購入して、弓具店の人や弓師さんに言われることは、竹弓は形状が変化しやすいので、自
分でメンテナンスしたほうが良いと言われます。形状が変わると矢飛びや狙いが変わるからです。
しかし、そうは言っても、その形状はどこを見ればよいのか、一般人にはわかりません。そこで、今
回は竹弓を購入したときにどの部分を見ればよいのかをまとめました。
・握り皮上部と下部の関係
弓を購入したとき、弓の握り皮の上部、下部がどのようになっているのかを見ます。これを「ナリを
見る」とも言われます。
弓具店で購入したとき、この上部、下部というのは上部が膨らんでいます。弓を最初に購入したと
き、この上部の軌道の曲がり具合を見ます。
この曲がり具合がぱっと見明らかに軌道が曲がりすぎていた場合には一度見てもらう必要があり
ます。
弓具店に売られている竹弓のほとんどは弓の中に胴が入れてあります。なので、握り革の上部~
下部は直線になっていることが多いです。
この直線が何か変わっていたら、一度見てもらうのが良いかもしれません。
・弓自体のねじり
弓の形状を見たなら、次に弓自体のねじりを見ます。
弓というのは、会で角見を効かせ、弓返りのときに矢勢を増すために弓は左にねじれているのが
基本です。これを購入したとき、どのくらいねじれているのかおおよそ見ておく必要があります。
このねじりが購入時よりなくなっていると弓の性能が落ちてしまいます。使用していくにつれ、自分
でこのねじりを矯正しないと、ねじりが少なくなってしまい、弓返りや角見の効きが悪くなってしまい
ます。
弓のねじりに関しては握り皮よりさらに上部で関板に近い部分に「姫反り」という部分があります。
弓返りの運動をさらに固めるため、姫反りがねじれていたり、軌道が変わっている弓もあります。
この部分もチェックし、ねじれが変化しているか、元の形状がどうなっているのか見ておく必要が
あります。
・弓と弦の関係
次に弓と弦の関係です。弓と弦は竹弓の場合、おおよそ関係があり。弦の線が弓より右になって
いることが普通です。
これは、上記にも説明した弓のねじりに関してとつながるものですが、弦が弓より右になっている
と弓が左にねじられます。
なので、弓を張ったままにしておくとき、あえて弦の位置を右にふる方法もあります。こうしておくこ
とで弓のねじれを取り戻すことができるためです。
7.5 入木 出木とは
弦を弓に張った時、弦と弓の裏はずとの位置関係によって、弓の性能が落ちたり、弓返りがしにく
くなってしまうため、自分の射に与える影響があるか知っておく必要があります。
その中で弦を張ったときの位置関係で「入木」、「出木」という言葉があります。入木とは、弦が弓
の中央より右に来ている状態、出木とは弦が弓の中央より左に来ている状態です。
・出木より入木の方が弓の性能、弓返りの能力が上がる
そして、弓の稽古をするときは、出木より入木になっていたほうが、弓の性能も弓返りの能力が上
がるため、稽古をするときは弦の位置を入木気味に振っておいた方が良いでしょう。
入木になると、弓は左側にねじれます。これは、会で弓を押すときの親指の根っこである角見にち
ょうどこのねじれ部分が当たります。
このねじれが大きいほど角見の押しがいが出ます。さらにこれがねじれているほど弓返りのスピ
ードが速くなり、矢勢が強くなります。
反対に出木にしておくとこの弓の角見や弓返りを強めるために弓の左側のねじれがなくなってしま
うので、せっかく会で弓を押してもその押しが矢勢や弓返りに見合ってくれません。
さらに出木になると、強く押しても掌を握り返しても弓返りがしずらいです。グラス弓は竹弓にくら
べ、このねじれ現象が起きないために、弓返りの回転能力はなく、またたくさん引かないと引いた
分の矢勢は出てくれません。出木はまさしく竹弓でグラス弓のような状態を作るイメージです。
反対にこの竹弓で入木の能力を生かせば、少ない力で矢勢を良くすることができます。現代弓道
では弦の位置は上関板の半分につけるように説明していますが、この入木の意味をわかってい
れば、弓の性能を上げ、かつ弓の性能や形が変わってもそれを弦によって自分で修正させること
ができます。
・入木に振っておく方法
そのため、弓を張ったときに弓を入木気味にしておくと弓返りや角見の効きにいい結果をもたらし
ます。
これを入木が強すぎると矯正しようと思う人もいますが、むしろ入木は強い方が角見が効きます。
また、弓は使用していると弓のねじれ部がなくなってしまいます。なので、いつまでも矯正意識を
以て弦を中心に合わせようとするとそれは弓の修正においてはマイナスに働きます。
放っておくとこの弓のねじれは少なくなってしまうので、あえて入木に振っておいて、道具をうまく
使いこなす必要があります。
入木に振っておく方法として、張ったままにしておくとき、あえて中心から右に反らして、つけっぱな
しにしておきます。こうすることで、自然と弓のねじれは出てきます。
中心に合わせるのはあくまで弓がちゃんとねじれていて入木弓の構造が保っている場合の話です。
弓の構造が変わっているのに中心に合わせることを考えるとこの微妙なねじれの修正方法の意
味がわからなくなってしまいます。
7.6 アーチェリーパラドックスを理解する
みなさんは離れたときの矢の飛び方はどのように飛んでいるのか、考えたことはあるでしょうか?
大部分の人は矢はまっすぐ飛んでいると考えます。近年では矢飛びを高速度カメラで観察し、そ
の飛び方を見ると、飛び方に固有の現象がわかっています。
離れた瞬間、矢はくねくねと曲がりながら飛んでいます。この現象をアーチェーリーパラドックスと
呼ばれます。
・アーチェーリーパラドックスはなぜ起こるか?
このアーチェーリーパラドックスはどんな名手でも起こることであり、遠くでも見たら蛇行しているよ
うに見えなくてもズームでも見るとくねくね動いているように見えます。
この奇妙な現象が起こる理由は、離れた瞬間の弦の圧力にあります。
矢は離れたときに弦に押され、放たれるときに圧力がかかります。この圧力によって飛んでいる最
中、空気抵抗による反対方向の力を受け、矢は飛行中両端から押しつけるように働きます。
そうすると矢は外側にたわみます。このたわみは矢の弾性(たわみの量)によって復元します。復
元したら、その復元の反動により逆に弓を巻き込むように曲がります。
ちょうどそのとき、矢は弓から離れた矢はしばらくの間は曲がりの反復を繰り返し、くねくね蛇行し
ながら、やがては修正され、まっすぐに飛びます。厳密にいうと矢はまっすぐ飛んでいるように見
えるのです。
・矢のたわみと弓のバランスが的中にかかわる
理論的には矢のたわみと弓の強さのバランスが合わないと、矢は狙った場所より右に飛んだり左
に飛んだりしてしまいます。
例えば、弓が強くて、矢のたわみ量が弱い。あるいは弓が弱くてたわみ量が強いと矢が狙ったとこ
ろから左右にずれます。
理論的にはそういわれていますが、どれがどのくらいのスパイン量と弓の強さとの兼ね合いはわ
かりません。なので、ほとんどの人はこういったことをあまり気にせず、知識として矢はそう飛んで
いるものと知っておくと良いでしょう。