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昇段審査例題
・足踏みについて述べなさい
足踏みとは正しい姿勢を作るための基本となる動作である。正しい射をするためには、正
しい姿勢を造る必要がある。つまり、正しい足踏みをしなければならない。足踏みとは単に左
右に開くだけではいけない。
射位から脇上面に向かって立ち、両足先が的の中心と一直線上になるようにする。また、こ
のときの角度は約60度程度で幅は自己の矢束と同じようにする。
足踏みには二通りのやり方がある。一つは的の方を見ながら左足を半歩分的の方に出し、
次に足元に目線を落として右足を半歩分的とは正反対に出すやり方。もうひとつは的の方を
見ながら左足を的の方へ半歩分出し、そのまま右足を一度左足と合わせてから的と反対方
向に右足を開くやり方がある。また、この時は自身の足元をみないようにする。
足踏みが広すぎたり狭すぎたりすると、後の姿勢に影響する。足踏みが広すぎると左右に
対しては強くなるが、前後に対して弱くなるため、反る胴や屈む胴になりやすくなるため安定し
ない。
逆に狭すぎると前後に対して強くなるが左右に対して弱くなるため、懸る胴や退く胴になりや
すく安定しない。
中胴を保つためには、正しい足踏みをする必要があるということである。五胴の使い分けは
連達者の応用技術なので正しくない姿勢というわけではない。またこれらの動作は男女とも
に違いはない。
・弓道修練をする心構えについて述べなさい
<解答例>
私が日頃弓道を修練する上で心がけていることは基本を学び、ひとつひとつの動作を大事
にすることです。たとえば射だけではなく、射法八節に含まれるすべての所作を呼吸を入れて
丁寧に行うこと。
試合の選抜期間中の時や何十本引いても掃けてしまう時は、射の方ばかり気にしてしまい
がちです。的に囚われると、心が焦ったり、疲れたりしまいますが、そのときに基本にかえっ
て、普段より丁寧に引くことを心がけています。自分の心を落ち着けるほかに、誰かに弓道を
教えるときや聞かれたときのことを考えて、今まで以上に入場や退場の所作も丁寧に行うこと
は大切であると感じています。
また、私がもう一つ心がけていることは、「見えないもの」を大事にすることです。弓道は的
前に立つと誤魔化しはきかないものであり、引くときの気持ちや普段の礼儀正しさなどは弓道
の作法で出てしまうもとと考えました。だから、私は射をするときには見えない「心」を意識して
日々稽古を重ねています。具体的には日常生活から「礼儀正しく」することを心がけていま
す。
特にあいさつです。「心」を意識したり、整えたりすることはとても難しいです。緊張して思う
ように引けなかったり、まわりの人の的中されてしまったりこともたまにあります。弓道を始め
た頃よりは集中力がつき、そういったことが減ったので、これからも「心」を意識して、整えられ
るように修練していきたいです。
・胴造りについて述べなさい
<解答例>
参考
弓道教本1巻 107,108 ページ
「足踏み」を基礎として、両脚の上に上体を正しく安静に置き、腰を据え、左右の肩を沈め、脊
柱および項を真っ直ぐに伸ばし、総体の重心を腰の中央に置き、心気を丹田に納める動作で
ある。この場合、弓の本はずは左膝頭に置き、右手は右腰の辺りにとる。全身の均整を整
え、縦は天地に伸び、横は左右に自由に動けるような柔らかくなければならない。そのため、
「胴づくり」は、行射の根幹であり、射の良否を決定すると言われる。
胴づくりには反る胴(上体が後方に反るもの)、屈む胴(上体が前にかがむもの)、懸る胴(体
が的のほうに傾くもの)、退く胴(体が右に傾くもの)、中胴(中正な胴づくりで体の重心の最も
安定したもの)の五つの胴づくりがあり、これを五胴という。
・残身(心)について述べなさい
参考
教本第一巻 120,121,122 ページ
教本第二巻 163、166,167 ページ
<解答例>
射の良否が表れ、判断できる行射の結果が残心(残身)である。
射法八節に則り、土台基礎となる足踏み、胴づくりを基に弓を引き分けて会に至る。会におい
て詰め合いが正しく行われ、足底、腰、肩が上から見て一枚に重なる三重十文字と、身体の
縦軸と横軸が不動の十文字となる縦横十文字が構成される。
詰め合いに続き、気力の充実を図り、自己の意志力を練る伸び合いが行われる。これら詰め
合い伸び合いをもって一本の矢に誠を尽くし育て、やがて気合いの発動により離れがおとず
れる。離れてもなお気合いは続き、視線は矢の着点に注ぎ、その射の良否を反省する。この
瞬間を残心(残身)と呼ぶ。形においては「残心」、身体においては「残身」と表す。
詰め合い、伸び合いを正しく、会が充実すれば、離れも立派になり、結果的に残心(残身)も
立派となる。射の良否、中り外れにかかわらず表情を変えることなく、しっかりと残心(身)の
間合いを取り、弓を執り弓の姿勢に戻るように肘をたたむ。さらにゆっくりと脇正面に顔を戻
し、足を閉じる。足を閉じ、次の動作に入るまでが残心(身)であることを心に銘じ、適切な間
合いや気息、目遣いを心がける。残身は射の結果、総まとめである。これらは射法八節の最
後の状態のみを指すものではない。弓道における総ての動作には、残心(身)が伴うと心に銘
じながら行う事が肝要である。すなわちこれを生気体と呼び、形だけに囚われた動作とならぬ
ような心がけや修練が大切である。
・三重十文字について述べなさい
三重十文字とは、「両足底」「腰」「両肩」が上方から見たときに正しく、一枚に重なり、脊柱、
項、が上方に伸ばす。これにより、下半身を安定する。会で縦線を構成するのに必要な条件
である。三重十文字には「ひかがみ」の働きが大切である。「ひかがみ」は膝の関節の裏側の
裏側で、この関節を張ることで両脚の安定をはかることができる。
・残心の重要性について述べなさい
「残心(残身)」とは、矢の離れた後の姿勢をいい、離れからの姿勢を崩さず天地左右に伸び
合ったまま縦横十文字の規矩を堅持していなければならない。目は矢どころに注いだまま呼
吸に合わせて弓倒しをし、静かに物見を戻して足を寄せ、閉じるまでをいう。
形でいえば「残身」、精神でいえば「残心」である。
「残心(身)」は射の総決算であり、故、射の巧拙によって弓倒しや物見返しが乱れてはならな
い。又、基本動作の立つ、座る、回る、礼、揖などにおいても動作の決まるところには気を注
ぎ、残身が伴わなければならない。
「残心(身)」の良し悪しで射全体の判別が出来、また射手の品位、格調もあらわれることか
ら、おろそかにせず良い残心(身)が得られるよう射法射技の基本を正しく守ること
・伸び合い、詰め合いについて述べなさい。
参考
弓道教本 115~120 ページ
<解答例>
会に入ったとき、縦横十文字の規矩が構成されるには、その内容としては各所の詰め合いを
総合して働かなければいけない。
縦線の構成、両足底、腰、両肩が上方から見たときに正しく一枚に重なり、脊柱、項が上方に
伸び、下半身を安定、上半身を伸ばす。これを三重十文字と呼ばれ、縦線を構成するのに基
本となる体構えである。
次に横線の構成は両肩を起点として両肘の働き、左右両腕の張り合い、両腕を貫通している
中筋をもって左右均等に張り合うことが肝要である。
そのさい、拳や手先の力のみで張り合わないように心がける。昔からこれを「詰め合い」とし
称し、五分の詰、あるいは四部の離れといわれる。
伸び合いは矢を引き伸ばすのではなく、気の充実である。縦横十文字を軸として心を安定に
し、気力の充実によって気合いの発動を促し、離れを至らせなければいけない。会において
重要なことは「詰め合い」と「伸び合い」である。天地左右に伸び合うには要所の詰め合いが
重要である。
・基本体型について述べなさい
参考
弓道教本第一巻 100 ページ
解答例
基本体型は縦横十文字と五重十文字が必要になる。
1、縦横十文字の構成
1、自然体を保持することが肝要である。人により骨格あり方が違うため、後天的な悪癖と
か、誤った訓練による偏奇な姿勢をさすものではない。他の人からみて、無理がなく、力みの
ない姿勢を保持することが大切である。
2、縦線の構成、つまり、足踏み、胴づくりをしたとき、的に対して、両足先、両腰骨、両肩を結
ぶ線が平行となるようにし、それらが、まっすぐ伸ばした脊柱と、直交しなければならない。そ
して、残身にいたるまでくずしてはいけない。
3、横線の構成、これは左右の両肩、両腕、両肘、両手指を正しく縦線に組み合わせ、前後の
出入りや、上がり下がりなく、左右対称となるようにする。
2、五重十文字
1、弓と矢 2、押し手の手の内と弓 3、ゆがけの拇指と弦 4、首すじと矢 5、胸の中筋と両
肩を結ぶ線、以上の五箇所がそれぞれ直交していなければならない
・基本動作の注意八項目を述べなさい
参考
教本第一巻 62~64 ページ
<解答例>
①体の構え起居進退は「生気体(実体)」を伴うこと。形ばかりに囚われては「死気体(虚体)」
となってしまうので注意する。
②起居進退は正しい「胴づくり」であること。「胴づくり」の完成は自然体であり、容義正しくす
る根本である。
③各動作の意義をわきまえた正しい「目づかい」であること。心のまとまりは目にあらわれる。
目は半眼に開き、鼻頭を通して柔らかに生気に保つこと。
④各動作には「呼吸(息合い)」が大切である。短い動作ほど呼吸に注意し、動作ごとの息合
いを習熟すること。
⑤起居進退は「腰」を基幹とすること。すべての動作の根幹は「腰」であるので、「腰」で据え、
乱れるように注意をすること。
⑥各動作には「残心(身)」が伴うこと。動作の決まる要所には気を注ぎ「残心(身)」が伴って
から次の動作に移ることが大切である。
⑦動作には「間」が重要である。行射の際には自己、相互、全体の「間」を意識すること。
⑧各動作は基本にのっとり、大きく正確に行うこと。
・危険防止についてあなたが考えていることについて述べなさい
<解答例>
危険防止については、三つの面から対策が必要である。
用具の面
①傷がついている弓や出木弓を使用しない
②藤の切れた弓や弓把の低い弓は使用しない
③矢は傷がある矢、板付けの無い矢、箆に傷がある矢、矢羽の擦り切れた矢、自分の矢束よ
り短い矢を使用しない。
行射の面
①周囲に人がいないことを確かめて射手の間隔は 150 cm 以上が必要である。
②他人に向けては絶対に引かない。(真似をしてもいけない)
③矢束の半分以上の空打ち(矢を番えないで弦を放すこと)をしない。
④前の射手の弓と弦の間に自分の弓を入れないようにする
⑤巻き藁矢で的前は引かない
⑥矢取りが出る場合、射手の動作を確認してから連絡しあい、赤旗を出してから矢取りを行う
(赤旗の大きさの大きさは 70 cm 使用とする)
⑦矢を番える場合、低い位置には番えない
設備の面
①巻き藁は安全な場所に設置し、弓一丈の距離はから射る
②巻き藁の後ろおよび左右に低いところは絶対に人が近づかないようにする
③古い巻き藁は中心が固くなって、射る矢が跳ね返ることがあるので、注意する
④巻き藁から外れた矢が跳ね返らないように、また矢が巻き藁に貫通することがあるから、
巻き藁の壁に畳などを立てる
⑤的前行射の際に暴発することがあるので、その外れ矢を防止する設備(防矢ネット)を設備
する。
⑥矢道に人が入らないような設備にする
<解答例2>
現在、スポーツとして世に広まっている弓道だが、矢は弓から離れると飛び道具となるため大
変危険なので、常に危険な可能性には気を配る義務が、弓道をたしなむすべての人に存在
する。たとえば
1、羽のついていない矢は的前で使わない
2、曲がっている矢は使わない
3、矢尻の傷んでいる矢は使わない
4、自らの矢束をよく知り、短い矢を使用しない(長い矢は使用してもよい)
5、初心者は指導者に見てもらいながら的前に立つようにする
6、前や後ろに離れてしまう人はなるべく大前や落ちを避ける。
7、弓の藤が十分に巻いてあることを確認する
8、曲がった弓は使用しない
9、弦切れ防止のために中仕かけをおこたらない
10.巻き藁との距離が近すぎたり遠すぎたりしないように弓を使って常に一定の距離を立つ
ようにする
11、巻き藁の後方に畳などを置いて事故の可能性を防ぐ
12、矢取りに入るときは射手との意思疎通ができていること
13、矢取り終わった後、誰も安土の前等にいないことを確認する
14、矢取りに入っている間は赤旗等を使って合図を送る
15、懸けが弦に引っかかっていない状態で引き分けていたら、離さずに戻す
16、自分の力量とつりあわない強さの弓は引かない
17、初心者はいきなり弓を持ったりせず、順を追って指導者の言うとおりに練習する
18、射法八節を無視して不適切な引き方をしない。
19.巻き藁や矢箱を管理するとき、積み上げたり高い所に置いたりしない。
20、握り革がはがれかけていたり、自分の手に合わなかったりしたら無理せず替え直す
・執り弓の姿勢について述べなさい
<解答例>
両足は平行に開き、男子は約 3cm 開き、女子は両足をつけて、足裏から項(うなじ)まで、体
を真っ直ぐに伸ばす。両拳は腰骨の辺り、腸骨上端を親指で押さえた位置で、両肘を張り合
わせ、目づかいは鼻頭を通して約 4 cm 先に落とす。弓を持つ左手は会の弓手の手の内、矢
の持つ右手は同じく会の妻手の「手の内」と同じ気持ちで持つ。弓の先(末弭=うらはず)は、
体の中央にあって、床上約 10 cm ぐらいに保持し、矢先は弓の先に向かい、延長して弓の末
弭と交わること。弓と矢は水平面に対して同じ角度にする。
歩行中も末弭は、床下約 10 cm ぐらい保持し正坐又は跪坐の場合、末弭は床につく。心気を
整え、伏さず、反らさず、堅からず、緩からず。自然体で体と弓が一体となること。矢の持ち方
には、射付節を持つ場合と板付をかくして持つ場合がある。「弓構え」「取り懸け」「手の内」
「物見」の三動作を含む。「取り懸け」はゆがけの拇指を押さえて人差し指を添え、ともに拇指
球ははねるようにしてやわらかく整える。(懸口十文字)「手の内」は、左手で弓の握り革のと
ころを握ることである。それから、視線を矢通りに、首を正しく、的を注視する。これが「物見」
である。この場合、手首や肘はやわらかく物を抱くようにする
・射を行う心構えや態度について述べなさい
射の眼目は自然の理を動作の上に表現することであります。ゆえに自然を無視して射は成り立ち
ません。したがって体の構えも、動作も合理的な運びでなくてはいけません。
射を行うにあたっては
1、 起居進退は規矩に従い、教敬敬愛の容儀をそなえ、祖卒倨傲の態度があってはいけません。
2、 男子は威儀正しく、質実剛健、従容典雅であること
3、 女子は優雅のうちに、容姿凛然たること
を心がけることが肝要です。そのために基本的動作、その中に含まれる基本姿勢、基本動作を勉
強し、射を行う必要があります。基本姿勢および動作の内容をさらに深く、研究を掘り下げるため
にはしかるべき指導者の教えを受けることが望ましい。
・礼記・射義について要点を述べなさい
射は進退周遷(しんたいしゅうせん)必ず礼に中り(あたり)、内志正しく、外体直く(な
おく)して、然る(しかる)後に弓矢を持(と)ること審固なり。弓矢をとること審固にし
て、然る(しかる)後に以て中(あたる)るというべし。これ以て徳行を観る(みる)べし。
射は仁の道なり。射は正しきを己に求む。己正しくをして而して後発す。発して中らざると
きは、則ち己に勝つものを怨みず。反(かえ)ってこれを己に求むるのみ。
「射は進退周遷~徳行を見るべし」より
射行には三つの眼目があります。
1、 心志の安定
2、 身体の安定
3、 弓技の審個
これらを習得することで、仁義礼智信の徳業が体得されます。
「射は仁の道なり~これを己に求むるのみ」より
矢を発して中らなければ、他を怨むようなことはなく、反ってこれを己に求めてよく反省せ
よ、と教示されています。弓道は儒教を基礎とした道徳の修養道として見做すことができま
す。
・大三の留意点について述べなさい
打ち起こしから、弓を引き分け動作は三つの様式があります。その中で、正面に打ち起こし、大三
(押大目引三分一)をとる様式があります。
大三の構えでの注意点は両拳に高低なくほぼ水平にすること、矢は体と平行に運ぶこと、矢先が
上がらないよう的に向かって水平を保ちことが挙げられます。
左右均等に引き分けるためには、弦を通る道(弦道)は、額の約一拳ないし二拳以内のところに来
て、左手拳は的の中心に向かって押し進め、右手拳は右肩先まで矢束一杯に引きます。そして、
矢が頬をつくように、口のあたりで引きおさめ、弦は軽く胸部につくようになります。これを頬づけ
胸弦といいます。
これらの注意点が守れていないと後の引き分けの動作で縦横十文字の規矩を守ることができなく
なり、次に来る「離れ」「会」に大きく影響します。
・
・基本の動作について列記し、簡単に説明しなさい
基本の動作8つを以下に記します。
立ち方、すわり方、歩き方、停止体の回り方、歩行中の回り方、座しての回り方(開き足)礼(坐礼、
立礼)、揖
・立ち方
上体を正しく保ち、吸う息にて腰を伸ばしつつ一方の足を爪先を立て、次に他の足も爪立て、息を
吐き、吸う息にて足を踏み出しつま先を軸として胴造りを崩さないように立ちつつ他方の足をそろ
え、(項を伸ばし)息を吐く。
・座り方
すわり方は正座と跪坐に分かれます。
立った姿勢から吸う息にて足を約半足後方に真っ直ぐにひき息を吐きます。胴づくりを保ちつつ吸
う息で腰を沈め、後方に引いた足の膝頭を床につけつつ、他方の足の膝頭をつけ両膝頭をそろえ
(腰で送り込む)腰を決めます。片足ずつ両足のつま先を伏せ、両拇指を重ね、静に尻を両踵の
上におき、息を吐きます。上体はまっすぐにすることを心がけます。
・跪坐
前述のとおり坐って両膝頭をそろえ、踵をつけ爪立った姿勢となり、物をもったときは、主たる物を
もった方の膝を生かします。
・歩き方
立った姿勢で、眼づかいに注意し、「胴づくり」をくずさず、膝を曲げないように、足裏が見えないよ
うにします、腰を軸として腰を送るように体を送るようにし、床を滑るようになめらかに、かつ静か
に呼吸に合わせて上体を運びます。執り弓の姿勢で歩く場合、弓の裏弭を床につかないように床
上10センチ位の高さに保ちます。
・停止体の回り方
立ったまま停止して向きをかえるときは、まず目的の方向に意を注ぎます。次に腰を回しつつ向き
を変えようとする足の爪先に、他方の足を直角に T 字形をかけて、ついで両足をそろえます。
後方に回る場合、一方の足(A)を他方の足(B)の爪先に直角に T 字形をかけて、ついで B の足
を(A)の足のかかとに直角に T 字形をかけ、(A)の足を(B)の足にそろえる。
・歩行中の歩き方
歩行しつつ右に向きを変えるときは、左足を踏みすえ、右足の向きを変える方向に小足に L 字形
に踏み出し、ついで左足を常のごとく踏み出して進む。左に向きを変えるよきはその反対に運ぶ。
・坐しての回り方
跪坐の姿勢から、吸う息で腰をまっすぐ伸ばし息を吐く。ついで回る方向に意を注ぎ、息を吸いつ
つ腰を回しながら左に回る方向に意を注ぎ、息を吸いつつ腰を回ります。例えば、左に回るときは
右ひざを左の膝頭に九十度に運びます。ついで、右踵に尻をつけるように腰を深く回して向きを変
えます。これによって足は自然によりそろいます。
・礼
礼は坐礼、立礼に分かれます。
坐った姿勢のまま背筋を正しく伸ばし、上体を屈しながら両手を下していきます。両手を下す位置
によって礼の様式(指健礼、折手礼、たくしゅ礼、双手礼、合手礼)が変わります。これは身分によ
って使い分けます。
弓矢を持った場合は弓を持った方の手は動かさず、矢を持った手のみ前述のようにおろします。
立礼は深い礼、弓矢を持ったときの立礼があります。
深い礼は背筋を伸ばして、腰を軸として上体を屈するに従い、自然に下がる両手の指先が両膝頭
に接する位置で屈体をとどめ、静かに体を起こします。両手は元の位置に戻ります。これも身分に
よって屈する角度を変えます。
弓矢を持った場合は取り弓の姿勢で、上体のみを受礼者の身分に応じて規矩に従って屈します。
両手は下げないようにします。深い礼以外はふつう屈する角度は45度以上を基準とします。礼の
動作は相手に共敬、親愛の心を形に表すことであり、形だけの礼になってはいけません。
・揖(ゆう)
揖の動作は立った姿勢、または座った姿勢から礼のときと同じく呼吸に合わせて上体を10センチ
屈し、揖を終えたのち、上体を上に伸ばすようにして起こします。揖においても、礼節、感謝の念を
表すものでなければいけません。
・射法訓の要点について解説しなさい
射法は弓を射ずして、骨を射ることもっとも肝要なり。心を総体の中央に置き、而して弓手三分の
二弦を押し、妻手三分の一弓を引き、而して心を納む是れ和合なり。然る後、胸の中筋に従い、よ
ろしく左右にわかるる如くこれを放つべし。書に曰く、鉄石相剋(てっせき)火の出ずること急なり。
すなわち金体白色西半月の位なり。
「射法は弓を射ずして骨を射ることもっとも肝要なり」より
射を行う場合、弓矢の操作にとらわれて、自己を失ってはいけません。射は自己の筋骨をもって
力行しなければいけないということです。
「心を総体の中央におき」より
心気の安定を図れということです。総体の中央とは身体の中央に位置する「丹田」のことです。
「弓手三分の二弦を押し、妻手三分の一弓を引き」より
押し引き対応して均等に行わなければならぬことを暗示しています。
「而して心を納むこれ和合なり」より
押し引ききわまったならば、体の中央に置いてある心を丹田に納め、身・心・弓の和合を計れとい
うことです。三位一体の「会」を示したものです。
「然る後、胸の中筋に従い、よろしく左右にわかるる如くこれを放つべし」より
基本体型の中央に位する胸の中筋より左右均等に分離せよとのことで、縦横十文字の離れを示
したものです。
「書に曰く、鉄石相剋して、火のいずること急なり」より
射における気力を表したものです。的に対する中り、はずれを言外におき、離れた矢先の鋭さは、
あたかも鉄と意思とが相剋して火の出るような、その鋭さを形容しています。
「即ち金体白色、西半月の位なり」より
離れた後の残身(残心)の射の位(射格)を示したものです。暁天における金体が白色を帯びて東
に輝き、西に位する半月がこれを相対照している黎明位であるということです。
・大三が射に与える影響について述べなさい
打ち起こしから、弓を引き分け動作は三つの様式があります。その中で、正面に打ち起こし、大三
(押大目引三分一)をとる様式があります。
大三の構えでの注意点は両拳に高低なくほぼ水平にすること、矢は体と平行に運ぶこと、矢先が
上がらないよう的に向かって水平を保ちことが挙げられます。
これらの注意点が守れていないと後の引き分けの動作で縦横十文字の規矩を守ることができなく
なり、次に来る「離れ」「会」に大きく影響します。
左右均等に引き分けるためには、弦を通る道(弦道)は、額の約一拳ないし二拳以内のところに来
て、左手拳は的の中心に向かって押し進め、右手拳は右肩先まで矢束一杯に引きます。そして、
矢が頬をつくように、口のあたりで引きおさめ、弦は軽く胸部につくようになります。これを頬づけ
胸弦といいます。
もし、両こぶしの高さが合っていないと、左右の均等に引き収めることができません。その結果、
次の会、離れに影響が出
てしまいます。
具体的には左拳が上に上がっていて、大三で矢先が上がっている構えになっていると、引き分け
で左腕が突っ張った状態になり、左側に力がかかりすぎるため、会において左肩が詰まった射形
になる可能性があります。これにより、会において三十重文字の肩の線が崩れてしまい、離れで
矢筋の方向に離れを出すことができなくなってしまいます。
あるいは右拳が下に下がりすぎて水平になっていない場合、大三での右拳と額との距離が近くな
りすぎてしまいます。右拳は引き分けにおいて右肩先まで引きますが、右拳が額との距離が近す
ぎると、弦道が小さくなってしまい、矢束一杯に引けなくなってしまいます。
その結果、会において各関節を過不足なく活用できなくなってしまうため、十分な伸び合い、気力
の充実である詰め合いが行われなくなってしまいます。これにより、胸の中筋から左右に分かれる
離れが行えず、緩んだ離れになってしまいます。
このように、大三での構えでは両拳が水平であること、矢先が上がらず水平であること、矢は体と
平行に運ぶことといった構えでの注意点があります。その構えに不正が出てしまうと縦横十文字
の規矩が構成されなくなり、左右均等な引き分けが行えなくなります。その結果、会、離れに影響
を与えます。
・審査を受ける心構えについて述べなさい
審査の心構えについて
審査の心構えは、「礼」の心構えを体配で行い、表現することです。礼を無視した体配は
弓道には、しつけ、慎み、和敬、克己、反省などの徳目を体得することが大切です。なぜなら、形
や技だけにとらわれた弓道では、的中至上主義になってしまうため、そこに心は伴ってはいませ
ん。
日本の弓は儒教の影響をうけて「技」から「道」へ進みました。技術に倫理はありませんが、「道」
には倫理が伴います。礼記射義に記された「射は進退周遷必ず礼にあたる」というのは、射法と
礼が一体になったことを表しています。
現代弓道はスポーツの性格が強くなり、大衆的になり、楽しみ愛される弓道になることは当然であ
ります。しかし、弓道の性格には、苦しみ、悩みつつ道を追求しようとする苦行道も存在します。こ
のように、絶えず勉強に励むことは、弓道の道の面を経験し、自己の生活に役立つ心を構築する
ことができます。
これらの正しい信念と勇気を持つためには、「礼」に即した体配を修練する必要があります。
そして、これらを表現した体配に近づけるに、いくつか決まりと方法があります。
体配は基本体とも言い換えられます。基本体には、基本の姿勢、基本の動作があります。立った、
すわった、回った、これらの動作には正しい規矩があります。まず、身形を正しく学び、直になって、
正しく規矩を守って修練を行うことが大切です。
それによって体の構えが崩れなくなり、動作に隙がなくなります。
・五重十文字、三重十文字について述べなさい。
参考ページ
教本第一巻 117 ページ
教本第二巻 26,27 ページ
<解答例>
1、弓道で最も重視されるものは、縦横十文字の規矩を堅持し五重十文字の構成が総合的
に働くことを射の基本としている。五重十文字は次の五箇所である。
○弓と矢 ○弓と押手の手の内 ○ゆがけの拇指と弦 ○胸の中筋と両肩を結ぶ線
○首すじと矢
「三重十文字」とは胴づくりのとき上方から見て両足底―腰―両肩が一枚に重なり首筋を伸
ばし、下半身を安定させるとともに上半身を伸ばす。「三重十文字」は縦線を構成するもので
縦線の構成の「五部の詰」と称するものとの組み合わせ、このしっかりとした十文字がなけれ
ば会での天地左右の「伸び合い」が不完全なものとなり、自然の離れができなくなくなる。三
重十文字は射の終了まで崩してはならない
・呼吸と動作について説明しなさい
参考
教本第一巻 101、102 ページ
<解答例>
ここにいう呼吸とは、生理的な呼吸をさすものではない。意識の発動とともに身体の活動をう
ながすときに生じるもので、気息、息合いという。
動作は息合いと協応して活きてくる。これを生気体(実体)という。
動作と息合いは車の両輪に等しく、息合いが伴わなかったり乱れたりするようでは死気体(虚
体)となる。短い動作ほど息合いを忘れるもので小さな動きほど息合いを注意して動作するほ
うが良い。
静かに長い息合いが続けられるよう日常から意識して修練することにより無意識に自然に呼
吸できるようになることが大切である.