や さ し い デ ザ イ ン の 理 論 52 デザインのためのスケッチ思考法 第4回 画面構成と効果的な表現 福田哲夫 産業技術大学院大学 創造技術専攻 特任教授 1 形態の理解を促す画面構成 を促し、炙り出すためにも効果的な方法である。 これまで 3 回の内容は、観察の大切さと、発想か 2)動きのある魅力的な画面構成 ら透視図まで立体化を中心に解説してきた。 魅力的なスケッチとするには、“動き”のある画 第 4 回では、モノの機能やカタチが第三者に伝わ 面となるような構図とすることが重要だ。江戸期に るよう、画面構成について解説をする。 西洋流の遠近画法が取り入れられた頃、透視図は平 ここでは、描画要素を三つに絞り、それぞれの相 面ながら、浮き絵やくぼみ絵と言われていた(参考 対的な関係の中で解説をする。描画対象のモノ、背 文献 5)。透視線を用いて立体感を演出させている 景としての空と地、そして添景の三つである。 [図 2]。 この目の動きを錯視効果により視覚の中心へと誘 1)画面の基本 発する構図としては、第 3 回にある「透視図」の項 背景や添景は、その画面の主体である描画対象の を参照にしていただきたい。 モノの概念をよりよく説明し、理解させるためのも のであり、あくまで補助的な役割を担っている。 [図 1]は、一般的な文章のようにアンダーライ ンで強調したり(a、b) 、枠で囲みモノを際立たせ て描く(c、d) 。特に e はモノを描かず背景を描き モノを浮かび上がらせる、主観的錯覚を用いている。 図2 「北斎漫画」三ツ割の構図指南に加筆 この[図 1]e は、モノの持つ周辺情報として想 定される人物像や風景などを、イラストや写真など 3)構成と美の造形秩序 を組み合わせ、新しいモノの世界を暗示させる。 四角い画面の中に納められるスケッチの構成秩序 また実際の素材を張り込んだイメージボードとす とは、絵画の額縁のように一定に区切られた領域の るなど提案用としても便利である。 中の「空と地」を分けることから始まる。 まだ形態のイメージが明確に描けない分、逆に周 また、画面に方向性を持った動きをつくることは、 辺の画像情報の合成から、場面を特定しモノの発想 位置・方向・感覚など、時間的、空間的な意味を持 たせ、魅力をつけることにつながる。 美を作り出しているシンメトリーや黄金分割のよ うな数理的秩序は、自然界から導き出しているもの が多い。しかし、それ以外にも画面をより解りやす く効果的にするための構成方法は、偶発的な紋様ま 図1 モノの世界を暗示させる背景の描き方 で多様であり修練により身につけたい。 DESIGNPROTECT 2015 No.106 Vol.28-2 47
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