下水処理水による稲作の実証試験 === 下水道資源の有効利用 === 大村市上下水道局下水道施設課 先頃、西日本新聞(右紙面)と長崎新聞 に掲載されました、 「下水処理水による稲作 の実証試験」を行い、稲の生育状況を調査 していきます。 7 月上旬、大村浄水管理センター内にお いて、小さな試験圃場を作り、下水処理水 を利用した栽培を始めました。大村市では、 平成 6 年の少雨による水不足が生じ、ミカ ン畑を中心に処理水のかんがい利用を行い ました。平成 25 年にも渇水となり、新たな 給水装置を準備しましたが、利用寸前で雨 が降りました。こうした渇水事態において、 農業用水としての処理水の有効利用が図れ ないかという検討の 1 つとして、今回、稲 作の実証試験を行います。 今回の試験内容は、10m×10mの圃場を整備後 3 分割して、井戸水 100%(左写真上段) 、井戸 水 75%+処理水 25%(左写真中段) 、処理水 100%(左写真下段)の 3 条件で比較試験を行います。 昨年は、 水槽 2 つで井戸水 100%と井戸水 50%+処理水 50%の 2 条件で比較試験を行いました。 今回の試験の条件比較では、供用水に COD、窒素 S46.10.4 農林水産技術会議 などの水質に違いがあり、生育や収量にどの程度差が 生じるか調査します。右に、農業用水(水稲)基準を 示します。この数値に法的効力はありませんが、水稲 項目 pH の生育に望ましいかんがい用水の指標とされていま COD す。大村浄水管理センターの処理水質は、まだ窒素濃 SS 度などが高く、稲作に最適とは言えませんが、処理水 農業用水(水稲)基準 6.0~7.5 6mg/L 以下 100mg/L 以下 溶存酸素 5mg/L 以上 全窒素 1mg/L 以下 がありますが、大村湾の流総計画による「下水処理場 導電率 0.3mS/cm 以下 の高度処理化」が進めば、窒素などの濃度を下げるこ ヒ素 0.05mg/L 以下 ととなり、農業用水として水質的により適した水を活 亜鉛 0.5mg/L 以下 銅 0.02mg/L 以下 の混合希釈によっては、十分生育可能ではないかと考 えています。これから数年は試験を継続していく必要 用できることになります。 大村市の場合、大村浄水管理センターから水田地 帯である郡川流域までの送水を想定した場合、相当の距離がありますので、検討する場合の課題が 多数あります。しかし、処理水の供給が可能になれば、安定した水量による農業利用、さらには、 地下水保全などにも繋がり水資源の安定化が図れます。また、処理水の有効利用方法として、農業 用水だけではなく、新幹線新大村駅地区の雑用水や新幹線車両基地の車両洗浄設備といった利用方 法が検討できれば、幅広い処理水の再利用ができるものと考えられます。 今回の試験に際しては、田植えに保育所児童を招いて、処理水の説明などした後に、農業水産課 の職員の指導のもとで田植えをしてもらいました。児童たちは、手や足で田んぼの中の珍しい感触 を味わいながら、楽しく元気に苗を植えていきました。 下水道は資源の宝庫であると言われます。様々な活用をしていくことによって、下水道普及や下 水道に対する理解を広く深めることにつながっていくものと考えられます。 大村市においても、昨年から「消化ガス発電」を実施し、下水道資源の再利用を図っていますが、 さらに資源の有効活用ができるように研究していきます。
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