Vol.121掲載 〈第47回〉 民間企業への派遣を経験して志治大輔

きっかけ
ンクである三 菱UFJリサーチ&コンサル
一 企 業 側としての立 場で初めて仕 事をし
体 等が発 注する調 査やコンサルティング業
てみて、 これまで県 職 員として意 識せずに
それまでは教育や福祉分野を主に担当し
務を多く手 掛けています。 また親 会 社であ
民 間 企 業の中に入 って仕 事をする中で、
ティング株式会社名古屋本部です。所属し
てきましたが、 県 職 員としてキャリアを重
る三菱東京UFJ銀行をはじめ系列のグル
非 常に多くの刺 激を受けました。 この会 社
済んでいたことが多くあることに気 付かさ
ねる中で「役所の常識は社会の非常識」な
ープ企 業と連 携して、 同エリアにおける民
会社では研究員の肩書をもらい、出向し
と感じました。
仕 事に対するモチベーションが非 常に高い
てくるスタイルであるため、 一 人ひとりの
多くの刺激を受けた
んて言われることもあり、 一 人の社 会 人と
年目程度
では成果主義が徹底されており、各研究員
〜
間 主 導の大 規 模プロジェクトなどにも取り
ありました。
そんな中、県庁には採用
の職員を民間企業に派遣する人事制度があ
ることを知りました。 それまで仕 事 上であ
ろやヒアリング調査先などに出張する機会が
職 務 環 境についても、日 中は顧 客のとこ
への参加などの業務を行いました。その際、
多いため、 持ち出し用パソコンや携 帯 電 話
月頃は営業や企画競争入札
とで、 役 所では経 験できない民 間の感 覚や
役所や民間企業の担当者とのやり取りが多
が全員に支給され、顧客や会社との連 絡調
た当初の 〜
センスを学べるチャ ンスだと思 っ たため、
かったのですが、 こちらの話を最 後まで聞
庁内公募に手を挙げました。
整に円滑に取り組める環境となっています。
状 況に応じて自 宅での業 務も可 能なため、
いてもらえなかったり、 ヒアリングの依 頼
会社の概要
私が出 向させていただいたのはシンクタ
とがありました。
また裁 量 労 働 制がとられており、 仕 事の
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や面 会のアポイントを取るにも苦 労するこ
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まり接 点のなかった民 間 企 業に籍を置くこ
民間企業の立場になって気付いたこと
して自 分を見つめた際に漠 然とした不 安が
ていた政策研究事業本部は、主な顧客が東
【しじ だいすけ】
1979年愛知県一宮市生まれ。
2002年愛知県庁入 庁。総 務部、健 康 福 祉
部、教育委員会の後、民間企業派遣を経て
現職。
れました。
※2015年4月より振興部に観光局が新設
海北陸エリアの行政機関であり、国や自治
志治 大輔
は自ら営業し、企画書を書いて仕事を取っ
間企業に 年間出向しました。
愛知県産業労働部観光コンベンション課
組んでいます。
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私は愛知県庁に入って 年目の時に、民
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民間企業への派遣を
経験して
<シリーズ連載:今求められるキャリア開発 第 47 回>
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可能です。
育 児の両 立に向けて柔 軟に取り組むことも
として自宅で業務を行うなど、仕事と家事・
時 期によっては早めに帰 宅し、 テレワーク
いう意 識が社 員 全 体に共 有されていると感
人にとどまらず、 会 社の存 廃に直 結すると
ながりかねないため、 一つのトラブルが個
会社の信頼低下や入札参加資格の停止につ
組み込まれています。 そうしたトラブルは
語とは無 縁でしたが、 こうした状 況に直 面
私 自 身、 それまでの県 庁での所 属では英
いることに衝撃を受けました。
を対 象とした主 要プロジェクトが始まって
また、多くの自治体で海外市場や国際機関
他にも、会社の拠点は名古屋だけでなく、
し、英語の文献や海外HP、国際電話の対
応などをもがき苦しみながら経 験する機 会
じました。
東 京と大 阪にもオフィスがありますが、 い
ずれもテレビ会 議 設 備が完 備された会 議 室
感じる 」 ことができました。 会 社では仕 事
民間企業に身を置くことで「経済を肌で
続き英 語 力 向 上に対するモチベーションを
業 務で英 語に触れる機 会があるため、 引き
この点、 県 庁に戻 った現 在の所 属でも、
となりました。
一 方で、 コンプライアンスは徹 底されて
の受 注 具 合や発 注 元の発 注 単 価などから、
保つことができています。 人 間、 必 要に迫
民間企業での経験で学んだこと
います。 例えばパソコンの情 報セキュリテ
その時々の経済・景気の動向を肌感覚とし
られると嫌でも勉 強するものだし、 それな
が多数あり、各拠点間の情報共有や連携を
ィや著作権侵害を未然に防ぐため、日常業
て実感しました。自治体側でも産業振興部
促す環境が用意されています。
務の中にそれらをチェ ックするシステムが
りに慣れていくものですね(笑)。
また、会社の他の研究員との普段の会話
受ける一 方で、 公 務 員として痛 感したこと
会 社での業 務を通じてたくさんの刺 激を
行政が見習うべきと思ったこと
局を中心に、地域経済の動向をウォッチし
ていますが、当事者の立場で感じる貴重な
の中でも、売上や決算に関する言葉に接す
もありました。
機会でした。
る機会があり、社会人として最低限の会計
際交流など一部の部署に限った話だと思っ
それまでは、 県 庁における海 外の事 柄は国
「 海 外への意 識 」 も大きく変わりました。
面する機会となりました。
が始まっており、 その必 要 性にいち早く直
式会計の概念を導入した新しい公会計制度
行 政においても、 いくつかの自 治 体では複
る接し方も、民間企業の方は顧客に対する
ろがありました。 また職 員の来 訪 者に対す
室の一 角のオープンスペースしかないとこ
ることが多い一方で、一部の役所では執務
民 間 企 業では応 接スペースが完 備されてい
する対 応に差があることに気 付きました。
と多くの民間企業を比べると、来訪者に対
ず民間企業を訪問しましたが、一部の役所
会社の出張で、役所だけでなく大小問わ
ていました。それが、会社での業務を通じて、
丁 寧な対 応・ 振る舞いを心がけていると感
の知 識は必 要だと痛 感しました。 この点、
産業振興や環境エネルギー、観光・コンベ
じることがありました。
許認可などの業務を有する役所と民間企
ンションなど多くの仕 事で海 外の動 向を注
視しなければならないことを認 識しました。
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業とでは仕 事 内 容が異なるため、 一 概には
比 較できないと思います。 ただ、 行 政は権
限を有するなど社会的に影響力があるため、
来 庁 者は対 応する職 員のしぐさや振る舞い
をよく見ているし、印象に残ります。
役 所は「 サービス業 」 と言われたりしま
すが、 こうした点は自 分 自 身これまであま
務めるクラスの方 々など、 県 庁での自 分の
方々や、国や自治体の有識者会議で座長を
テレビへ 頻 繁 に 出 演 するエコノミストの
トワークを築くことができました。 新 聞や
ープ企 業や様 々な顧 客など多くの人 的ネッ
が、 その間に研 究 員の方 々をはじめ、 グル
事 交 流 」 が始まっていることを身 近で感じ
世話になっています)。いわゆる「官民の人
私が県 庁に戻 ってからも公 私にわたってお
またま私の派遣先の企業出身であったため、
間企業出身の方がおります(この方は、た
調 整を担う部 署にも公 募により選ばれた民
業 出 身の方がおりますし、 また政 策の総 合
今後、行政の課題が複雑化・多様化する
立 場では話すらできないような人たちと一
また、 一 緒に仕 事をする中で、「 この人
中、 こうしたケースは増えていくものと思
ています。
はすごい」「こういう人になりたい」と思え
われ、官民の人事交流を通じて、組織が活
緒に仕事をさせていただきました。
る人に出 会うこともありました。 行 政・ 民
性化していけばいいと思います。
今後のキャリア形成に向けて
間の立場に関係なく一人の社会人としてす
ごいと感じましたし、 そういう人は顧 客で
ある役所をはじめ、他の様々な業界関係者
業をはじめ、 この地 域の様 々な立 場の方か
自分自身も役所の中だけでなく、民間企
でなく、 官 民が一 体となって課 題に取り組
目白押しです。そのため、今後は行政だけ
リニア開 業に向けて大きなプロジェクトが
愛 知 県・ 名 古 屋 市では、2027年の
ら信 頼される職 員になっていきたいと思い
んでいく必要があると感じています。
からも一目置かれている存在でした。
ます。
そうした中、 この地 域 全 体が一つにまと
に派遣された形ですが、最近では民間企業
今回の私のケースは、役所から民間企業
クホルダーを総 合 調 整していける役 割を担
した経 験や人 脈を活かして、 多くのステー
アビジョンとして、 今 回の民 間 企 業に出 向
まって進んでいくために、 私 自 身のキャリ
出 身 者が行 政の主 要なポストにつくケース
っていきたいと思っています。
民間企業から役所に入るケースも
も増えてきています。
自分自身、 年後に振り返った時に、
「民
間企業に出向した
私の派遣先でも、前述のように公共政策
を扱う業種であるため、既に中央官庁に出
グポイントになった 」 と思えるよう、 今 回
り意 識してこなかった点であり、 一 人の社
会 人として普 段から心がけていかなければ
向している事 例があり、 また自 治 体に対し
の貴 重な経 験を活かして、 今 後のキャリア
年間が自分のターニン
と改めて感じました。
ても部 分 的に同 様のことが行われつつあり
愛知県庁でも、現在の副知事には民間企
を積み重ねていきたいと思います。
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ます。
年間でした
民間人で尊敬できる人に出会う
会社に出向していた期間は
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