腰痛対策 最前線 一生のうちに腰痛を 経験する人の割合 % 「 腰 痛 」 は、 私 た ち が 生 き る こ の ではないでしょうか。 ここで、腰痛がいかに身近な社会 問題とも言える症状であるかを裏付 (世界保健機関)を含む けるデータをいくつか紹介しましょ う。 学雑誌に掲載されました。厚生労働 生のうちに経験する人の割合は % でした。注目すべきは腰痛で社会活 日以上連 人もいらしたことです。 人いらっ )。私たちが行っ 万人を対象)で慢性の痛 みで最も困っている部位を調べた結 (全国約 た別のインターネット大規模調査 しゃいました(図 続して休んだ方は 人に 人に 省が公表する「業務上疾病発生状況 位でもあり、その件数 日以上の休業を要し 動を休んだことのある方が 83 等調査」によると、腰痛は仕事(作 業)が原因で た疾患の第 割を占めてい は職業性疾病のうち 千人を対象とした大規模 月に行った全 年 万 ます。私たちが 国約 1 10 1 の方が一人や二人はいらっしゃるの う。同僚や家族の中にも 「腰痛持ち」 方が少なからずいらっしゃるでしょ は現在も慢性的な腰痛で悩んでいる 腰痛を患ったことがある方、あるい 症状の代表格です。 皆さんの中にも、 疾患が特定できる「特異的腰痛」に 医師の診察や画像診断により原因 年 末 に「 Lancet 」という 世界で最も権威のあるイギリスの医 の第 ) Global Burden of Disease Study によると、生活に支障を与える疾患 査 報 告( 世 界 の 疾 病 負 担 研 究 : が非特異的腰痛に対しては有意義で の拠り所としていたレントゲン検査 という意味です。実は、医師が診断 すので、ご期待ください。 てもデータを踏まえ解説する予定で 静治療は勧められないこと」につい た「ストレスと腰痛の関係」や「安 (図 ) 。腰痛が、我が国においても 位 は 腰 痛 で あ る こ と が、 位はやはり腰痛でした 対 し、 非 特 異 的 腰 痛 の〝 非 特 異 的 〟 はなく、原因や予後を理路整然と説 果では、第 世界的にみても最もポピュラーな訴 とは、わかりやすく言えば〝よくわ か。 よくわかっていない 「非特異的腰痛」 ところが、腰痛に対する現状の対 策はうまくいっているとはいえませ ん。その一番の理由は、多くの腰痛 の正体がいまだ明らかにされていな いことにあります。 多くの人が経験しうる、いわゆる 「 腰 痛 症 」 は、 現 在 の 世 界 標 準 の 分 ) 。 従 来、 医 療 機 関 で 類では「非特異的腰痛」と呼ばれて い ま す( 図 示されてきた診断名としては、持ち なっています。くり返しになります 異的〟な腰痛について解説します。 といった原因がはっきりわかる〝特 年東京大学医学部附属 レ ク タ ー 兼 務。 年 か ら 現 職。 年 度「 運 動 器 の 労働者健康福祉機構本部研究ディ ン タ ー に 留 学 後、 ウサンプトン大学疫学リサーチセ 博 士 号 を 取 得。 2 0 0 8 年 英 国 サ チ ー フ 就 任。 そ の 後、 同 大 学 に て 病 院 整 形 外 科 腰 椎・ 腰 痛 グ ル ー プ に 入 局。 後、 東 京 大 学 医 学 部 整 形 外 科 教 室 松平 浩(まつだいら こう) 1992年順天堂大学医学部卒業 関東労災病院 勤 労 者 筋・ 骨 格 系 疾 患 研 究 セ ン ター センター長 ** * * * が、いわゆる「腰痛症」は、病因を 的確に突き詰めることが難しいた め、治療や予防対策が確立しきれな い現状が続いています。 腰痛に対するイメージを 「リセット」しよう 今、皆さんが頭に思い浮かぶ腰痛 の治療法や予防法は何でしょう か? もし、その方法が意義のある 優れたものであったら、きっと職場 を含む世の中の腰痛は、確実に減っ てきているはずです。しかし、前述 したとおり現実のデータはそうでは 年 」 世 界 運 動・ 普 及 啓 発 推 進 事 る「今までのあなたの常識やイメー 業奨励賞受賞。 & 』( 公 益 財 団 法 人 産 業 医 学 振 団法人労災保険情報センター)。 策 を 知 っ て み ま せ ん か 』( 公 益 財 ( マ キ ノ 出 版 )、『 ホ ン ト の 腰 痛 対 興財団)、『「腰痛持ち」をやめる本』 A 近 著 に『 新 し い 腰 痛 対 策 ありません。ですので、腰痛に対す 09 12 上げ動作や急な捻りなどの外傷機 転、レントゲン検査による単なる画 像所見、個々の医師の印象、保険請 98 ジ」をリセットしてみることをお勧 めします。 本連載では、相手(腰痛)の見極 め方と、見極めに応じた対策を紹介 していきます。最近、マスメディア でも取り上げられることが多くなっ Q 10 21 求するためにおさまりがよい病名と いったことから、腰椎捻挫、変形性 腰椎症、腰椎すべり症、腰椎椎間板 症、筋筋膜性腰痛などと呼ばれてい るものが、ほぼ「非特異的腰痛」に 該当します。 次 回、 ま ず は「 椎 間 板 ヘ ル ニ ア 」 えで、社会的損失も大きい問題であ 出典:『新しい腰痛対策 Q & A21』公益財団法人産業医学振興財団 インターネット調査では、腰痛を一 4 4 PACE survey 2009, JP(松平浩ほか . ペインクリニック 32, 2011) 6 5 明してはくれないことが明らかに 出典: 『新しい腰痛対策 Q & A21』公益財団法人産業医学振興財団 からない〟〝本質を見極めきれない〟 (Fujii T, Matsudaira K. Eur Spine J 22, 2013) 2 1 6 1 図 2 慢性の痛みで最も困っている部位:上位 5 部位 4 1 11 図 1 腰痛の生涯有訴率(全国約 6 万 5 千人の調査) 浩 つの世界主要機関による最新の調 W H O るとおわかりいただけたでしょう 7 83 現代社会において、最もありふれた 関東労災病院 勤労者 筋・骨格系疾患研究センター センター長 松平 Deyo RA, et al. JAMA 268, 1992 Deyo RA, Weinstein JN. Engl J Med 344, 2001 1 3 1 2 0 1 2 26 2013.8 フォーラム 地方公務員 安全と健康 2013.8 フォーラム 地方公務員 安全と健康 27 最も身近な症状 第1回 「腰痛」の実態、 ご存じですか? 図 3 腰痛の原因 2
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