異なる配筋詳細を有する RC 造柱のせん断破壊後 の

異なる配筋詳細を有する RC 造柱のせん断破壊後
の軸力負担能力の評価実験
正会員
正会員
鉄筋コンクリート
一定変位下
軸力負担能力
配筋詳細
○李 柱振*
加藤大介**
せん断破壊
1.はじめに
本研究では文献 1)に引き続き,異なる配筋詳細を持つ RC
のときは、水平方向変位はそれまでの最大水平変位で拘
柱の軸力負担性能を検討するため,曲げせん断加力実験,
中心軸圧縮実験および一定変位下での軸圧縮実験を行っ
3.実験結果
図−2(a)(b)に全試験体の軸方向―軸変形関係を示す。
た。せん断破壊する部材を対象とし、実験パラメータは
試験体 S-0,W-0、1 は単純軸方向加力実験であるが,これ
束しておく。
載荷履歴(中心軸圧縮加力、一定変位下での軸圧縮加力、 に対して,一定変位下軸圧縮実験を行った結果は軸加力実
曲げせん断加力)、一定変位下での軸圧縮実験で与える一
験で与える一定変位が0か0でないによって挙動が大き
定変位量、横補強筋詳細(90°、溶接フック)とした。
く異なった。まず、一定変位を0とした試験体 S-2 である
2.試験体と載荷履歴
試験体の諸元と材料の強度を表−1,2に、試験体の形
が、その軸力−軸方向変形関係は中心軸圧縮試験体 S-0 の
状及び配筋を図−1 に示す。試験体は S シリーズ 4 体と
力加力によりせん断ひび割れが入り、その損傷により最
W シリーズ5体の2シリーズ計 9 体からなる。このシリ
大軸耐力が低下したと解釈できる。
ピーク部分を削った形となった。すなわち、事前の水平
ーズの違いは配筋詳細であり、S シリーズは悪い配筋例と
一方、一定変位を与えた試験体であるが、例えば、試
して 90 度フック付(余長 4d)とし、W シリーズは良い配
験体 S-1 を例にとって示すと、その軸力−軸方向変形関係
筋例として溶接フック付(配筋指針に従った)とした。
D6@70
試験体は 180×180×1200mm の長方形であるが、基礎
(a) 溶接フック
4D10
(Welded)
冶具で挟み込まれている端部を基礎部分と考えるため、
(b) 90 度フック
D6@70
実際の試験範囲は 360mm である。測定方法と加力方法は
4D10
表−3に載荷履歴を示す。載荷は事前載荷と事後載荷
(Shortage)
420
文献 1)と同じである。
160
180
の2通りからなる、表には主要な方の載荷を主載荷とし
D10
310
360
軸圧縮とした。試験体 S-1、2 及び W-2 は、一定変位下で
D6@70
420
の軸圧縮加力試験体であり、事前に横力を載荷し、せん
360
て*印を付けてある。試験体 S-0、W-0、W-1 は単調中心
断ひび割れを両方向に入れた上で、主載荷としてある一
定変位を保ったまま圧縮力を載荷した。具体的には,試
図−1
験体 S-1 は水平変位を 7.2mm(部材角を 1/50rad)、試験体
S-2 と W-2 は水平変位を 0 に戻して軸力を漸増載荷した。
試験体形状及び配筋図
表−2
ただし、試験体 W-2 は水平変位を 0 にした後、そのまま
鉄筋種類
拘束せず、フリーにして軸加力を行った。
D10
D6
D6(溶接)
試験体 S-3 及び W-3、W-4 は表−3(b)に示した一定軸力
の下で曲げせん断加力を行った。所定の軸力を負担でき
なくなったら、その後軸方向加力を行った。ただし、こ
表−1
試験体
引張主
柱
主筋
断面
高さ
2
(mm ) (mm) (SD345) 筋比
Sシリーズ
180×180
Wシリーズ
360
4−D10
0.0044
降伏強度
2
(N/mm )
377
296
343
最大強度
2
(N/mm )
533
465
478
試験体諸元
帯 筋(SD295)
間隔
鉄筋
フック
余長
(mm)
90度フック 4d
2−D6
70
溶接
−
Axial Load Capacity of R/C Columns With Different Reinforcing
Defails After Shear Failure
配筋装置
コンクリート
帯筋比 強度(N/mm2)
0.0051
23.4
LI Zhuzhen, KATO Daisuke
は事前の水平力加力で生じたせん断ひび割れが閉じるま
1000
とがわかる。
図−3(a)∼(c)に曲げせん断加力実験の結果を示す。
高い軸力(500kN)を与えた試験体 W-4 は、1/100rad の繰り
軸力 (KN)
では軸力は増えずに、閉じた後に、軸耐力が上昇するこ
S-3
S-1
S-0
S-2
W-3
W-1
W-0
W-2
W-4
500
返しを終了し、−1.5/100rad の変形に向かう途中で軸力を
0
保持できなくなった。そのときの軸変形はわずかであっ
0
た。同じ軸力 300kN を与えた試験体は、試験体 S-3 が−
20
40
軸方向変形 (mm)
2.5/100rad の変形に向かう途中ピーク近くて、軸力を保持
できなくなった。この2体の軸力負担能力喪失点はほぼ
軸力負担能力喪失部材角(rad)
0.03
同じだった。
表−3
試験体
S-0
S-1
S-2
S-3
W-0
W-1
W-2
W-3
W-4
載荷履歴
事前載荷
事後載荷
(繰返水平載荷) (単調軸載荷)
載荷時部材角
軸力(kN)
(rad)
―
0 *
150
1/50
*
150
0
*
300
*
-0.025
―
0
*
―
0
*
150
0(フリー) *
300
*
-0.025
500
*
1.5/100
P-4
0.01
H-3
H-4
0.00
図−4
0.20
0
-75
-5.4
0
5.4
水平変形 (mm)
0.40
0.60
0.80
コア軸力比
10.8
リーズは、帯筋に通常の 135 度フックを用いた H シリー
ズと 90 度フックを用いた P シリーズより上にきたが、今
回行った 90 帯筋フックの S−3 は W シリーズとほぼ同じ
位置であった。すなわち、コア軸力比だけでは軸力伝達
能力喪失点を評価することは難しいといえる。今後の課
題である。
4.まとめ
柱の軸力負担能力に対する,帯筋フックの加工の差を、
コア軸力比だけから評価するのは困難であった。
参考文献
せん断破壊する RC 造柱の軸力負担能力の評価実験
1)
高田雅之、李柱振、菅勝博、加藤大介、中村友紀
子
日 本 建築 学会 大 会 学 術講 演 梗 概 集、 構 造 Ⅳ
pp.223∼pp.228、2003 年 9 月
平成 4 年度 New RC 研究開発概要報告書:C-7)コン
2)
ファインドコンクリートの力学特性に関する資料
のとりまとめ、国土開発技術センター、1992 年
150
軸加力実験開始
0
-75
-150
-10.8
図−3
新潟大学大学院 大学院生・修(工)
新潟大学工学部建設学科 教授 工博
1.00
軸力伝達能力喪失部材角とコア軸力比の関係
水平力(KN)
水平力(KN)
水平力(KN)
P-3
75
(a)試験体 S-3
*
**
W-4
軸加力実験開始
75
-150
-10.8
W-3
0.02
150
軸加力実験開始
60
S-3
0.00
*記号が付いているところが主載荷である。
150
20
40
軸方向変形 (mm)
(a) S シリーズ
(b) W シリーズ
図−2 軸力−軸方向変形関係図
2.5/100rad の 変 形 に 向 か う 途 中 に 、 試 験 体 W-3 が −
図−4には曲げせん断試験体のコア軸力比と軸力伝達
能力喪失部材角の関係を示す。コア軸力比は文献 2)によ
る拘束コンクリートのモデルを用いて計算した。また、
軸力伝達能力喪失部材角は所定の軸力を負担できなくな
った加力ステップにおいて、それまでに経験した最大水
平部材角とした。同図には、文献 1)の試験体のデータも
含めてある。図をみると帯筋間隔と帯筋の詳細が同じ試
験体でコア軸力比のみが異なる試験体を比較すると(図中
同じ記号で塗りつぶしありなしで破線で結んだ点),全て
のケースで右下がり,すなわち,軸力比が高くなると軸
力伝達能力喪失点の水平部材角が小さくなる傾向にある
ことがわかる。しかしながら,全試験体を総括的に見る
と,その傾向は薄れる。帯筋フックに溶接を用いた W シ
60 0
-5.4
0
5.4
水平変形(mm)
10.8
(b)試験体 W-3
水平力−水平変位関係
*
**
75
0
-75
-150
-10.8
-5.4
0
5.4
水平変形(mm)
(c)試験体 W-4
Graduated student , Niigata Univ., M. Eng.
Professor , Dept. of Archi., Niigata Univ.
10.8