面の構成について

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福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 3巻 第 1号
面の構成について
五十嵐直雄・岡田賢治
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1. 緒
官
建築物には色々の面の要素がある白面はそれぞれ材質がととなり,
国有の色彩,光沢,性格を
有し,かつある機舘を充足しなければなら註い。外界を区切る外壁と屋根面白構成,
又はいくつか
り面で区切られた空間は一つの統一を持ち,何らかのも D を見る人の感性にうったへる。今,面白
持つ機能,
色彩等は一応問題から除外して,
各々白面がある統一をうる為に必要な面白構成につい
て研究してみたい。
2. 立 方 体 の 分 棉
建築空間を計画する場合,
各々の面はある統一を持たねばならない。
そD為には各々 D商に対
して設計者の意志が働かねばたらない由意匠的に云えば建築0 各面には設計者の秩序ある解釈がな
面 の 構 成 に つ い て
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されねばならない。今と〉に面白統一と明確なる解釈の為に空間構成。基本形態として一つり中空
紅る立方体をとりあげて分析して見る。
中空なる立方体は六面体であるから六個の面ょ p構成されている o それは四個の壁画と一個 D
床面及一個。天井面とも考えられる。
面とも考え得る。
しかしそれ等が同じ仕上げ D面である場合は連続した一個白
コンクリートの塊に穴を明けて,
そD開口部に一枚のガラスを蹴込んだとき,そ
れは折れ曲った一つのコング Hート面と一枚のガラスの二面により構成された立方体とも考えられ
るのである o とりように面にある角度を許容した場合,
中空立方体は六面体ではなく,六面以下白
面の構成となる。又材質のととなる色々た商の非連続を考慮すれば,
それは無数の面白組合せとえE
る。かく考へるとき,立方体には一個D 構成より無数の面白構成まで θ 聞 に 無 限 D 変化が生れてく
る
。
立方体のー断面を考へる場合 F
I
G
.[は一面白構成であり. FIG.Iは無数 D面の構成である白
F
I
G
.Iはこ面白構成による変化であり, FIG.IVは三面白構成による変化である。とれはー断面の
変化であり,
立体的に考えればさらに複雑なる変化と組合せが生れる。建築的には比較的少数 D面
D構成に整理された場合が通常であるが,
如何たる組合せにするかは意匠の問題として重要なこと
である。
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3. 面
の 意
識
以上の立方体の分析で明らか怠るように,
無限 D 変化を有する空間の構成に統ーを与へる為に
は,ま守、その空間は何個の面で構成されているかを明確に意識するととが必要である。
とまでが連続した面であるか,
即同じ性格 D面はど乙まで続いているかと云う事,
合されているかと云う事, つまり面の連続と非連続を計画的に処理するとと,
と面の連続性及非連続性を意識するととを
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面白意識J
.
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即面はどとで組
そのように構成面数
と呼んで見たい,意識すると云うとと
はデザインをすると云うととである。か h る面白意識は面と面の取合ひ D 所に特に端的に表現され
I
G
.Vについて説明して見る。
る。乙れを F
A
.
天井面を一個の連続した面として取扱ひ,それによって広々とした空間の構成を得るため,天
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福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 3巻 第 1号
井面に透明なる面を切付けて処理したも D である D 庭に延びたポーチや土縁D 庇にとり手法の見
られる θ は,それによって庭を建築空間に取入れる巧みなる手法である。
B. 天井面の連続をより強調する為に壁面白上部を完全にすけた場合である o 和風の欄間や小空間
の処理にとり手法が見られる。
C. 壁面が連続して外部まで延長しているととを強調する為透明なガラス面を切付けてある。暖壇
りある石張りの壁面がポーチにのびているような手法はノイトラり作品にしばしば見られる手法
である。
D. C
.
と閉じ例であるが,ガラス商が切付けてなくかなり部厚な枠が媒介されている例である。
乙の場合には
C
.([)如き鮮やかな表現は望まれ主主い口ガラス面が不透明な場合は壁面白連続を意
識して否定したか,さもなくぽ,告びたピしい混乱があるだけである。
E. F
.
G
.それぞれ折れ曲った国である。曲率及角度がある θは連続の意識の強調と解釈される。
H.
I.同じ性格の面であるが二商 D構成を意識した例である。
H,は区切りに異質のもりを取付け
たも θ であり, 1
,は二面の聞に凹んだ白地をとったもりである o
J
.
一様な面に一本のパイプ又は一本 D竹が取りついた場合であるが,とれはこつの面白区切りと
して扱ったか,又は一つの面の上にとりついた単なるアクセサりーであるかはs 設計者。細い意
匠的配慮により決定する所で;bt微妙である。
以上の例はごく一部であるが,
とのように面白結合を如何に処理するか,
叉面の性格を如何に
変化させるかを考へるととが面白意識であろう白空間 D統一ある処理は面の意識から出発すると考
えるりである。
FIG V
4. 面
の
漣 績
面白意識は当然構成面数を問題とする。
そり為には一つの面がどとまで連続しているかと云う
ととを意識する。あるいは反対に面白切れ目とか結合個所を意識する。面の連続について考察して
I
G
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. より
見る o F
A
.
B
.
J
.はそれぞれ連続した面白断面とする。
円,楕円の如くある曲率を持ち閉じたものは明瞭に連続した苗であると同時に,壁画等の場
合白から直立して力学的に安定。可能性のある面である。つまり自分で立つ τいる面である。も
しこれ等([),同や楕同がいくつかの遣った材質D 面D 組合せで構成されているとしたならば,その
有している曲率 D為にかへって連続の否定には特別 D処理が必要になってくる。
C.
直繰的連続であり,片持梁 θ 形式以外,上下,左右りい宇れかで支持されねば立τない力学的
に不安定な面である o 故にい宇れかで他白面と組合う性格むものである白
D. 曲率を持った連続であり,そ D 曲率により自から安定する事が出来る。左右及上部の結合 θ な
面 の 構 成 に つ い て
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3
い簡単なる間仕切にとり形式を採用した場合,それは自分で立っている面の構成を意識している
D である o
E
.
波打って連続した面,又はゆるやかで不規則な曲面。とれはコルぜジエの初期D作品にしばし
ば見られるように,との壁面に沿って行けば自然と動棋が誘導されるという機能の強調の為に面
白ゆるやかな連続を意識的に表現する。
F
. 隅角部に小さい曲率をもたす乙とによってこつの面が連続して折れ曲ったととを明らかに明示
したものである。それは隅角部に明確な影の生宇るのをさけている白である。
G. 代表的危形式は日本古来 D界風である。いくつかに折れて連続した面であり,それは折れてい
るととにより白から安定し,かつ動的である。移動間仕切もとの手法である o とれ等はそ D 性格
よりしてー直棋に展開した場合は特例であり不自然である。いづれにしても折れ曲って白から安
定している所に美しい表現があるもりと解釈したい。
H.I
. 直角に折れ曲った連続である。建築空聞の構成に最も多い例であり,そ θ 連続,非連続を意
識して意匠する事は陰影の効果を考慮するとと〉共に重要な事である。
J. 細い規則正しい連続白竪羽目とかリプ壁はとの例である白
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B
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5. 面
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構 成
空間を構成する色々の面の組合せと云う事は重要な事であるが,
ものに関係するととであるから,
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それはむしろ建築の意匠そり
〉ではふれ t
J
.い口と D場合にはた三一個の面にかぎつての構成を
取扱って,それを分類して見る。 F
IG.V
J
I
.はそれぞれ性格むととなった面白構成である。その構造,
材料,機能により, 各々組合されて一つの空聞が構成される。
そとには何か徹底した解釈が意匠り
統一の為に必要である。
A.
一 様 な 面
大壁式塗壁,塗天井,
リプ壁,等はとの形式であるロとり形式は単純明快な構成としては一つの
面であるととが望ましいから,との場合巾木,腰,廻縁,等を粗雑に処理するとそれらが別の小
'~tr:. 面に見える場合が生宇る。最初からそれ等が構成面数として計画してあるならば別として,
単に面の区切り,つまり線として処理したかどうか
Y問題と紅る。面と面との取合ひに何らかり
凸凹した面が存在する事は明快なる空間構成には邪魔である。壁と天井 θ 切付けや笠木を取去っ
た腰の処理,小さな巾木等の最近の取扱ひはこ D 問。乙とを示して j去り,それ等は一つにか〉っ
て面の意識によらねばならない。又一様たる面白構成 D 場合い宇、とも面の意識なく,塗り廻すと
とは意匠が無いというととであり,前述の如〈面と面の取合ひが問題となるのである。
B
.
穴の聞いた面
関口部りある大壁,真壁下地窓,等である。穴0 聞いた面は大壁式。宿命でもあるが, よく云わ
5
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福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 3巻 第 1号
r
豆腐に穴をあけた建物,
れる。
Jは日本在来の真壁にたれた目には異様に映じたであろう o 昭
和初期 D モダ円ン建築θ 表現で、ある。現在との形式 D 否定されているととの根本的説明にはと〉
,に対するレジスタンスと見るととは出来る。真壁の下地窓はか
ではふれ得ないが,「豆腐の穴J
なら宇、しもこの形式に入れるのは当らないロそれは壁 D 一部を透け τその骨を一部見せたと考
へられるからである。下地が関口部にあるととにより穴を明けた面白感じをかろうじて逃げてい
るロそれは徴妙な意匠と考へられる。下地むない丸窓を真壁に明けた場合,それは後に述べる枠
C 中にはめ込む形式の真壁D 中に立ち交っτは全く異質の形式であり,よほどり意匠的胴察θ と
もなはない限り失敗に終るりは当然である。
C.
枠
D
ある面
ラ目メンに取付けた壁,天井の形式である。
こり場合面と面とは枠を介し τの取合ひとなる。枠は構造材そ D ものであるから A. む一様な面
に比して見るとき自由な意匠の範囲は縮少されている。枠を一つの面とするか,額縁とするか,
又は周囲の折れ廻って凸凹りある面とするかわ,面白意識による意匠の問題である。
D. 枠 D 中 に 儲 め た 面
ラーメンと関口部及壁の処理や真壁の形式である o
真壁は構造的に云えば柱の真に壁をつけたと云うととであるが,意匠的には桂,廻様,敷居,鴨
居,長押,等D 中に鼠め込んだ面白構成である。窓出入口の場合でも,それは B
. tD穴を明け花
形式ではなく
τ,区切られた枠θ 一部に障子や雨戸を入れたと云う乙とである。
散した統一ある好もしさが真壁D美となる o 最
枠があってモの中に必要な面をバンと鼠めた形に i
近行われている大壁式和風とでも名付くべき形式は, L
.t
D枠そりものに抵抗し,枠を否定する所
から出発している。云ひかえればそれは枠そのもりに面を感宇ると云う事でもある。端欠なる手
法は桂や鴨居の面白否定である。しかし枠D 否定は必撚的に
B
.形式。穴明けの形式を誘導する
とD 異質なもむと,真壁の持つ好もしさとり調和が今後D 問題であろう白ラーメンむ中に色々。
面を蹴込んで行く手法はベレーむ形式でそれは穴明きり面とは乙となり,鉄筋コンクリート白真
壁式と見られるわけである。
E. 組 合 せ た 面
建築の近代的工業化にともなっτ生れ℃来た形式で,
B
.tD穴明けむ形式に対比されるもりであ
る白壁面や関口部に工場で生産された一定す法のサッシュ,ガラス,金属板を組合せた面白構成
である。
F.
透 け た 面
手すりりあるパ Jレコ品-,ピロテイ, P
"'JJル,オーダ戸のある面,等はそ乙に面がないりではな
く部分的に完全に透けた面があると解するむが面白意識である。それはあくまでも建築的主面と
して考えられるからである白ア Jレコープ D 一部に 1
1
'1
)}レを作った場合そのグリルむ延長繰は自に
見へたい面を設計者は意識して告 t,それによってアルコ戸プは独立した一つり空間にな!J得る
と考へられる。
G
.
完全に透けた商
つまり何もない面であるロ庇D 出たポ
F
チ,完全に明け放された窓等は何物もさえぎるも白、な
い面である。庇の出たポ戸チは建築的空間であり,庇θ端には点棋で示された個所に完全に透け
た面が考へられる。
国 の 構 成 に つ い て
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FIG ¥
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じ
B
6. 結
言
吾
とれは建築的面白研究のほんの一部であるが,
りである白面白意識には,その構成面数,
面白構成形式を分類検討して見た。
一つの空潤を面白意識によって分析して見たも
連続と非連続の観念が必要である ζ とを説明し,
一つ白
とれ等の面白歴史的変化及現代建築白面白構成。必然性建築の
m
a
s
s
.volume D 問題等は今後の課題としたい。
註.
乙の論文は昭和2
9年 5月2
9目建築学会北陸支部研究会で発表したものを更に補筆したも D である。