悲しい事件の防止のために 小清水中学校長 長野藤夫 また、悲しい事件が発生してしまいました。岩手県矢巾町。絶対にあってはならないことが、 繰り返されてしまいました。子供に人の道を語るべき教師として、忸怩たる思いです。溜息しか 出ません。泣き喚きたい気持ちでいっぱいです。なぜ。どうして.... 何度問うても、空しさが残ります。SOS は、そこかしこにあったのです。今回は、直接的にも 発信されていたのです。 なのに、なぜ。 私たち教師は、重大な責任を背負っています。ですから、小清水町では、小中ともに毎月アン ケート調査を実施しています。たとえ行事で忙しくとも、延期しません。集計せずに放って置く ということもしません。回答に応じて、必ず担任が生徒と個別面談を行い、話を聞きます。必要 であれば、きっちりと指導を入れます。 そして、小中合同でいじめ防止対策委員会を設置し、関係各機関にも出席していただき、2か 月ごとに会議を開いて情報交換を行っています。校内会議では、毎月かなりの時間を使って全職 員で情報交換を実施しています。 すべては、「小清水の子供の命を守るため」です。 もちろん、道徳の授業でいじめ予防のための授業を全学級で実施しています。なおかつ、いじ め発見チェックリストを用意し、早期発見に努めています。保護者の皆様にも、チェックリスト を配付してあります。そのチェックリストで、ぜひともお子さんを観察してください。それも早 期発見につながります。 それにしても、大津の事件もそうでしたが、矢巾町の事件でも「そんなことやめようよ」と言 った生徒が一人もいないのです。後になってから「知っていた」と言うのです。 「知っていたのなら、どうして訴えてくれないんだ!」これは、由々しきことです。そのよう な教育が欠けているということに他なりません。 「命を大切にする教育」というのは、「命を大切にしよう」ということだけではありません。 「やめろよ」と言える正義漢を育てることも、「命を大切にする教育」なのだと考えています。 自分で言えなくても、先生に訴えてくれればいいのです。「先生、A君を助けてください!」と。 それは、「やめろよ」と全く同等の価値があるのです。 学級担任時代、私は常に生徒にそう教えてきました。「先生にも、見えないいじめがある。そ のときは、必ず教えて欲しい。それは、人の命を救う尊い行為なのだ」と。それが正義漢なのだ と。 全員を正義漢にしたいのです。「正義感」は、全員が持っていると思っています。しかし、持 っているだけでは正義漢ではないのです。 そのような子供たちを育てるために、保護者の皆様、地域の皆様にもお力添えいただきたく存 じます。絶対にあってはならない悲しい事件は、何としてでも防がなければなりません。 教師の重大な責任は当然ですが、町ぐるみ、地域ぐるみの取り組みをお願いいたします。
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