選挙が終わって 何が残った?

機 関 紙 『 東 京 Y W C A 』 NO.705
( 2015 年 6 月 号 )
選挙が終わって
何が残った?
川戸れい子(新聞委員)
統一地方選挙が終わった。止まるところを知らぬ投票率の低下ばかり
が印象に残る。
昨 年 の 衆 議 院 議 員 選 挙 で 、約 5 2 % と い う 記 録 的 な 低 率 と な っ て 後 の 選
挙 。 ま ず 前 半 戦 だ が 、 4 月 1 3 日 の 朝 日 新 聞 に よ れ ば 、「 自 民 、 民 主 な ど
が相乗りした神奈川、福井、鳥取、福岡の各県知事選では戦後最低の投
票 率 と な っ た 。ま た 道 府 県 議 選 で は 、少 な く と も 3 7 府 県 で 戦 後 最 低 を 記
録。全選挙区の約3割で無投票になるなど、選挙の形骸化も顕著になっ
た 」。無 投 票 と は 民 主 主 義 以 前 で あ る 。さ ら に 無 投 票 と な っ た こ と を 知 ら
ずに投票所に足を運んだ人が何人もいたという。
そして後半戦、142市区町村長選と586市区村議選が行われたの
だが、投票率は「いずれも過去最低。議員選では無投票で当選した人の
割 合 も 高 く 、 地 方 選 の 空 洞 化 を 示 す 記 録 ず く め の 統 一 選 だ っ た 。」( 朝 日
新 聞 4 月 27 日 )
低投票率の原因はまず、幾度も言われているように「相乗り」候補で
ある。国政と地方政治は違うと言うが、本来対立関係にあるはずの政党
が 相 乗 り し て い る 。政 党 と は 一 体 何 な の か 、と 首 を ひ ね ら ざ る を 得 な い 。
相 乗 り 政 党 に は ま っ と う な 思 想・信 念 が 無 い 、と 言 わ れ て も 仕 方 が な い 。
次 に 若 年 層 の 政 治 に 対 す る 無 関 心 、「 投 票 に 行 っ て も 何 も 変 わ ら な い 」
という無力感が挙げられよう。
国 政 レ ベ ル と は 異 な る 事 情 が 地 方 選 挙 に は あ る と い う 。「 無 投 票 ど こ
ろか候補者が定数に足りず、
( 中 略 )再 選 挙 を 避 け る の に 四 苦 八 苦 の 自 治
体 も あ る と い う 。こ う し た な り 手 不 足 の 背 景 の ひ と つ に 、議 員 の 職 に「 や
り が い 」 を 見 い だ せ な く な っ た と の 指 摘 が あ る 。」( 朝 日 新 聞 4 月 1 3 日 )
しかしその「やりがい」が問題だったのではないか。いかに地元に利
益を誘導できるか、それが従来の地方政治、否、国政においてさえ「や
りがい」であった。選挙区の支持を得るには、新幹線を引っ張って来る
ようなことが必要であった。
このような従来型ではない、本当の地域づくりをする議員、首長を目
指 そ う と し て も 、そ こ に は 高 い ハ ー ド ル が あ る 。
「サラリーマンであれば
職を捨てる覚悟」と朝日新聞は書いているが、それよりも、組織選挙と
供託金がネックとなっているのではあるまいか。いい加減な立候補を避
けるために設けられた供託金制度は、その役目を終えているように思え
る。そして組織選挙。投票率が低ければ組織を持っている者が勝つ。そ
れによってさらに投票率が下がるという悪循環。しかしこれを好循環と
思っている人々がいる。今回の選挙で堅調さを見せつけた自民党。安倍
政権はこの結果を受け、後半国会で安全保障関連法案の成立に全力を挙
げ る 姿 勢 だ ( ア メ リ カ 議 会 演 説 の フ ラ イ ン グ ! )。
唯 々 諾 々 と 無 投 票 当 選 の 為 政 者 に 従 う 人 々 ( そ し て 死 地 に さ え 赴 く )、
これが現政権の「地方創生」らしい。
昨 年 の 本 紙 で も 引 用 し た 高 橋 源 一 郎 氏 の 言 葉 を 思 い 出 そ う 。「 投 票 先
は民主主義だ!」独裁国家になってしまう前に。