さあ!水生生物を見つけに出かけよう!!(No.2) 岡崎市立六ツ美中部小学校 1 教諭 渡辺修一郎 水生生物の調査の場所選び① 実際に水生生物調査を行うにあたり、一番苦労 することが場所選びだと思います。前回も少し書 きましたが、調査が可能か、むいているのか、ま ずは子供たちが安全に川に入ることができるのか 確認してみてください。私は、水生生物調査をし ようと決めたら、まずその川岸を歩くようにして います。そして、川の中、岸のようすを見ます。 危険物の有無、川底の状態(大きな石、こぶし大 の石があるか)、川の深さ(子供たちの膝くらい) などを見ながら、できるだけ理想的な場所を探し ます。そして、その場所に入っていくことができ るかを確認します。できれば、右上の写真のよう に川に入っていけるところがあればよいのですが、 どこにでもあるわけではありません。また、入る ことができても、その場所が調査にふさわしい場 所とはかぎりません。特に、川の下流では難しい 場所も多いです。ですので、右下の写真の矢印の ところのような比較的安全に川に入ることができ る場所を探してください。 2 水生生物の調査の場所選び② 今回は、青木川の下流から上流までのようすを少し紹介します。 (1)下流 上の写真はともに青木川の下流のものです。左の写真の方は川底のほとんどが砂であり、流れも緩や かです。右の写真の方は、水面が白くなるような瀬があり、こぶし大の石も多くあります。できれば、 右の写真のような場所が探せるとよいです。 (2)中流 大きな石、こぶし大の石などいろいろな大きさの石 が川底にあります。また、川岸に植物がはえています。 このようなところには、ヤゴやカゲロウの幼虫が見つ かることもあります。多くの水生生物が採集できる環 境です。しかし、川が深くなっていたり、流れが急に なっていたりするところもあります。藻で川底がすべ りやすくもなっていますので、注意して調査させた方 がよいです。 (3)上流 上流では、かなり川幅がせま くなります(左写真)。子供た ちの活動範囲もかなり制限さ れます。また、植物が繁茂して、 川に入ることが困難な場所も 多くあります(右写真)。安全 に子供たちが活動できる場所 を探してください。 2 水生生物の採集方法について 水生生物の採集方法にはいくつかあります。目的に応じていろいろと試してみるとよいと思います。 例えば、「コドラート法(25cm×25cm枠を川底におき、その中の生物を採集する)」では、採集 する範囲がかなり限られてきます。ですので、学校の授業では、「ベック-津田法(人数と時間を決め、 川の瀬の部分で広範囲に採集する方法)」がおすすめです。私は、子供たちに、「さぐり取り法」と言い ます。例えば、ある程度の広い川であれば、5~6人で1つのグループを組み、一斉に10分間それぞ れさぐり取りを行います。採集した生物は、一度バケツに入れておきます。川底だけでなく、川岸も探 させてもよいです。そして、10分後、一斉に川から上がり、採集した生物の同定(生物の種類を調べ ること)を行います。この「さぐり取り法」では、川の上流と下流など場所を変えても、採集方法につ いて条件は変わらないので、生物の比較もできます。 ①グループの人数、採集時間を決める。 (例:5人グループで10分間) ②時間いっぱいさぐり取り法で、生物採集をする。 (あみを使って、川底や川岸も調査する) ③採集した生物は、バケツに入れる。 ④採集時間が経過したら、一斉に川から上がる。 ⑤バケツの中の生物を、白いバットに移しながら、同定する。 また、川での採集は下流側から上流側に向かって行います。上流側から行うと、水が濁ってしまうこ とがあるからです。写真の赤枠のように水が白く見えるようになっている瀬のところや植物がはえてい るところなどに生物は多くいます。石の大きさも大きなものからこぶし大のものまであります。このよ うな場所は、たいへん調査しやすいです。 下流側 調査は下流側から上流側へ 上流側 3 網を使った調査の仕方 多くの水生生物は、石のすきまや石の裏にはりついて生活しています。水生生物を採集するときには、 こぶし大の石を目安に探すとよいです。採集するときには、その石の下流側に網を置きます。石を持ち 上げたときに流れてくる水生生物を受けるためです。次に石を静かに持ち上げます。そして、石の裏に いる生物をバケツの中に移します。網の中にも生物が流れ込んでくることがあるので、網の中も注意深 く観察してください。 トビケラのなかまは、大きな石の表面に小さな砂粒や葉など使って巣 を作ります。その中で過ごすので、ある程度の水の流れに耐えること ができます。石を持ち上げたとき、糸状のもので作られた石の巣があ れば、その中を探してみてください。 (→右の写真) 網の中には、ヨシノボリのなかま やサワガニなどが流れてくること もあります。(←左の写真) 水生生物の同定は、採集した生物を白いバットに移して行います。その中で、名前が特定できないも の、どうしてもサンプルとして持ち帰りたいものがあれば、70%エタノール消毒液を入れたビンの中 に入れます。学校に戻り、双眼実体顕微鏡などを使って、詳しく観察してください。持ち帰る必要のな い生物については、川に返します。水生生物調査は、生き物のすみかを大きく変化させています。本来 のすみかを破壊してしまうこともあります。さぐり取り法は、その地点にどのような生物がいるかを知 るための調査ですので、動かした石は元通りにするよう、採集した生物はできるだけ元の自然に返すよ うにしたいです。
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