補足 C デタラメさ最大から生まれるフィボナッチ数 堀部(1987)による議論を紹介する。 2 要素からなる対象の内の一つの事象の出現確立が p である場合,n 個の球が壺に入っていて,うち pn 個は赤で,番号 1,2,…,pn がつき,残りの qn 個(q=1—p)は白で,やはり 1,2,…,qn と番号がつ いている。このようなことがわかっているとして,壺から球 1 個を無作為に抽出するき,その球の≪色 と番号の両方」を予測するときの不確かさは log n であるが,≪色を知らされて番号≫を予測するとき の不確かさは平均 p log(pn) + q log(qn)である。だから≪色だけ≫を予測するときの不確かさは, log n—(p log(pn)+q log(qn)) = -plog p - (1- p)log(1- p) となるべきである。こうして,色の分布(p, 1—p)の不確かさ(エントロピー)を H(p, 1—p)で表せば H(p, 1- p) = -plog p -(1- p)log(1- p)で与えられることになる。 二つの要素を「短」と「長」とするとき,次に「短」が出現するか「長」が出現するかの不確かさ, エントロピーH は,H(p, 1—p)である。ここで, 「短」は 1 単位の時間を,「長」は 2 単位の時間を費やし て出現するから,その出現には平均 p・1+(1-p)・2=2-p 時間が費やされる。そこで,単位時間あたりの エントロピーは F(p) = H(p,1- p) 2- p となる。これを最大化する条件は 1 p log - log p 1- p F'( p) = =0 (2 - p)2 となる。これから 1 p = p 1- p が得られる。この p を満足する値こそ黄金数(黄金比)τ,したがってフィボナッチ数を満足すること になる。通常この比τは ( 5 1) 2 と書かれるが,これは 1 と比べた大きい方の値であり,大きい方を 1 とした黄金比は ( 5 1) 2 である。 単位時間のあたりのエントロピーが最大であることは,十分に長い一定時間間隔に出現するパターン が最大になること,デタラメさが最大になること,最大の多様性が現れることを意味する。そのとき, 上に示した樹形の自由度が最大となり,現れる樹形が最も多様なパターンを持つ。 堀部安一(1987) : 「黄金比とエントロピー」 ,数理科学,No.294, pp.62-65. 60
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