角運動量の合成 1 基本的な公式 角運動量 L に対して L2 と Lz の同時固有状態 |L M ⟩ を定義できる: L2 |L M ⟩ = L(L + 1)h̄2 |L M ⟩ (1) Lz |L M ⟩ = M h̄|L M ⟩ (2) この状態に昇降演算子 L± = Lx ± iLy を作用させると √ L± |L M ⟩ = h̄ L(L + 1) − M (M ± 1) |L M ± 1⟩ (3) となる。 2 種類の角運動量 J 1 と J 2 がある時、それぞれの角運動量演算子の固有状態の直積として |J1 M1 ⟩|J1 M2 ⟩ を定義できる。この状態は次の性質を持つ。 ( J 21 |J1 M1 ⟩|J2 M2 ⟩ = ) J 21 |J1 M1 ⟩ |J2 M2 ⟩ = J1 (J1 + 1)h̄2 |J1 M1 ⟩|J2 M2 ⟩ (4) J1z |J1 M1 ⟩|J2 M2 ⟩ = (J1z |J1 M1 ⟩) |J2 M2 ⟩ = M1 h̄|J1 M1 ⟩|J2 M2 ⟩ (5) J 22 |J1 (6) M1 ⟩|J2 M2 ⟩ = |J1 M1 ⟩ ( J 22 |J2 ) M2 ⟩ = J2 (J2 + 1)h̄ |J1 M1 ⟩|J2 M2 ⟩ 2 J2z |J1 M1 ⟩|J2 M2 ⟩ = = |J1 M1 ⟩ (J2z |J2 M2 ⟩) = M2 h̄|J1 M1 ⟩|J1 M2 ⟩ (J1z + J2z )|J1 M1 ⟩|J2 M2 ⟩ = (M1 + M2 )h̄|J1 M1 ⟩|J2 M2 ⟩ (7) (8) ただし、状態 |J1 M1 ⟩|J1 M2 ⟩ は合成角運動量の 2 乗 J 2 = (J 1 + J 2 )2 の固有状態にはなってい ないことに注意。 今、J 2 = (J 1 + J 2 )2 と Jz = J1z + J2z の同時固有状態 |J M ⟩ が複数の |J1 M1 ⟩|J1 M2 ⟩ の線 形結合で与えられているとする: |J M ⟩ = ∑ (JM ) CM1 M2 |J1 M1 ⟩|J2 M2 ⟩ (9) M1 ,M2 (JM ) (ここで、展開係数 CM1 M2 ≡ ⟨J1 M1 J2 M2 |JM ⟩ はクレブシュ・ゴルダン係数とよばれる。)この とき、昇降演算子 J± = J1± + J2± を左辺、右辺のそれぞれに作用させると、左辺より √ J± |J M ⟩ = h̄ J(J + 1) − M (M ± 1) |J M ± 1⟩ ∝ |J M ± 1⟩ (10) 右辺より J± |J M ⟩ = ∑ (JM ) CM1 M2 [(J1± |J1 M1 ⟩) |J2 M2 ⟩ + |J1 M1 ⟩ (J2± |J2 M2 ⟩)] M1 ,M2 = ∑ (JM ) (11) [ √ CM1 M2 h̄ J1 (J1 + 1) − M1 (M1 ± 1) |J1 M1 ± 1⟩|J2 M2 ⟩ M1 ,M2 ] √ +h̄ J2 (J2 + 1) − M2 (M2 ± 1) |J1 M1 ⟩|J2 M2 ± 1⟩ 1 (12) を得る。これより、 |J M ± 1⟩ ∝ ∑ (JM ) [ √ CM1 M2 h̄ J1 (J1 + 1) − M1 (M1 ± 1) |J1 M1 ± 1⟩|J2 M2 ⟩ M1 ,M2 ] √ +h̄ J2 (J2 + 1) − M2 (M2 ± 1) |J1 M1 ⟩|J2 M2 ± 1⟩ (13) となる。 2 具体的な例1:l=1 と s = 1/2 の合成 軌道角運動量 l とスピン角運動量 s の合成 j = l + s を考える(h̄ はすでに考慮されているも のとし、以下、h̄ を陽に書かない)。特に、l の大きさが 1、s の大きさが 1/2 の場合を考える (ここで、一般に角運動量 L の大きさとは (1) 式で定義される L のこと)。 1. まず、状態 |11⟩| 12 12 ⟩ = |Y11 ⟩| ↑⟩ を考える。この状態に j 2 及び jz を作用すると j 2 |Y11 ⟩| ↑⟩ = (l2 + s2 + 2lz sz + l+ s− + l− s+ )|Y11 ⟩| ↑⟩ ( ( ) ) 1 1 1 = 1 · (1 + 1) + +1 +2·1· |Y11 ⟩| ↑⟩ 2 2 2 ) ( 15 3 3 = |Y11 ⟩| ↑⟩ = + 1 |Y11 ⟩| ↑⟩ 4 2 2 ( ) 1 3 jz |Y11 ⟩| ↑⟩ = 1+ |Y11 ⟩| ↑⟩ = |Y11 ⟩| ↑⟩ 2 2 (14) (15) (16) (17) となる。ここで、l+ |Y11 ⟩ = s+ | ↑⟩ = 0 を用いた。これより、 ⟩ 3 3 |Y11 ⟩| ↑⟩ = 2 2 (18) であることがわかる。 2. 次に、jz が 1 だけ小さい状態 32 1 2 ⟩ ⟩ は、今作った 32 32 に j− を作用させることで作る √ ことができる(式 (13) を見よ)。l− |Yll ⟩ = 2l |Yll−1 ⟩、s− | ↑⟩ = | ↓⟩ に注意すると、 ⟩ √ 3 1 2 2 ∝ 2 |Y10 ⟩| ↑⟩ + |Y11 ⟩| ↓⟩ となる。ここで、⟨ 32 1 3 1 2|2 2⟩ (19) = 1 となるように規格化因子を選ぶと ⟩ √ 3 1 2 1 2 2 = 3 |Y10 ⟩| ↑⟩ + √ |Y11 ⟩| ↓⟩ 3 (20) となる。 ⟩ 3. さらに jz が 1 小さい状態 32 − 21 は同様に 32 √ l− |Y10 ⟩ = 2 |Y1−1 ⟩ を用いると、 1 2 ⟩ に jz を作用させて作ることができる。 √ ⟩ ⟩ 3 − 1 ∝ j− 3 1 = √1 |Y1−1 ⟩| ↑⟩ + 2 |Y10 ⟩| ↓⟩ 2 2 2 2 3 3 となる。 2 (21) ⟩ ⟩ 4. さらに jz が 1 小さい状態 23 − 32 も同様に 32 − 21 に jz を作用させて作ることができ る。結果は、 ⟩ ⟩ 3 − 3 ∝ j− 3 − 1 = |Y1−1 ⟩| ↓⟩ (22) 2 2 2 2 である。 ここまでで、状態 |jjz ⟩ のうち、j = 3/2, jz = −3/2 ∼ +3/2 の 4 つの状態ができたことに なる。 ⟩ 5. 式 (20) で与えられる状態 32 21 は 2 つの項の足し合わせであるので、足し合わせの係数を 変えることによってこの状態に直交する状態をもう 1 つ作ることができる: √ − 1 |Y10 ⟩| ↑⟩ + 3 √ 2 |Y11 ⟩| ↓⟩ 3 (23) この状態は jz の固有状態であり、その固有値は 1/2 である。また、j 2 を作用させると ( √ j 2 − 1 |Y10 ⟩| ↑⟩ + 3 √ √ (( 2 |Y11 ⟩| ↓⟩ 3 ) (24) ) ) √ 1 3 1 = − 1·2+ +2·0· |Y10 ⟩| ↑⟩ + 2 |Y11 ⟩| ↓⟩ 3 4 2 √ (( ) ) √ 2 3 1 + 1·2+ −2·1· |Y11 ⟩| ↓⟩ + 2 |Y10 ⟩| ↑⟩ 3 4 2 ( √ ) √ 3 1 2 = − |Y10 ⟩| ↑⟩ + |Y11 ⟩| ↓⟩ 4 3 3 = 1 2 ( 1 +1 2 )( √ − 1 |Y10 ⟩| ↑⟩ + 3 √ 2 |Y11 ⟩| ↓⟩ 3 (25) (26) ) (27) となるので、この状態は j 2 の固有状態であり、j の大きさは 1/2 である。 すなわち、 √ √ ⟩ 1 1 1 2 2 2 = − 3 |Y10 ⟩| ↑⟩ + 3 |Y11 ⟩| ↓⟩ (28) である。 6. この状態より jz が 1 小さい状態は、これまでと同様に j− を作用させることによって作る ことができる。すなわち、 √ ⟩ ⟩ 1 − 1 ∝ j− 1 1 = − 2 |Y1−1 ⟩| ↑⟩ + √1 |Y10 ⟩| ↓⟩ 2 2 2 2 3 3 (29) となる。 7. 12 1 2 ⟩ に直交する状態はこれ以上もう作れない。この状態は 2 つの状態の線形結合であり、 ( そこから作れる線形独立な状態は 2 つのみ 32 様である。 1 2 ⟩ と 12 従って、ここまでで全ての状態が表わせたことになる。 3 1 2 ⟩) だからである。 12 − 1 2 ⟩ も同 Deprrtment of Physics Tohoku University Sendai. り ま の ヽヽ 3/2 1/⊇ =〇 3/2 dミ 〉 I Y01〉 = 〉 〉 直奏 十Л 争 l〉 ゝ J IL。 │↑ → lγ │↓ ↓〇 し 、 4/9 IT_f〉 治 +暦 -3/2 I Yfο ハー ,〉 IК ↑〉 。〉ノ │い l〉 │↓ ゝ ↓① │↑ 〉 ↓〉 〉ノ ↓○ │〕 一 十 :/2 上F 層 ↓ ∪ Japan. │↓ ) 重 ― f〉 │つ √ Jヽ ヽ 十浩 IYЮ 〉ル〉 Departu.rent of Physics Iohoku Unrversity Sendar. Japan 三 世 Q↓ ヽ へTン一︿・ 卜一 一 ゞ 一︿ ︿ . ハ ゝ・ ゞ一︿丁一 ︿一 ① ↓ 十 ぐ呵 ―― T 0 峙′ 丁 珈 洋一 Λ 飛︶ 生 一 ︿Tメ一︿一 。 ︿ ル 品 メ一 洋 一 ハ. 0 ↓ ︿. ゝ 一︿Tゞ 一 一ハご 叫十 ▼ 二一 ハ。 全 ヌ 翠 に変 . へヽ ソ一︿. ゾ一 べ ″.胃 恥 ︺n¨ ヽ .さ O s ﹁ ^﹁ + や けョ ” . ′ リ ト メ 一全 洋 一 ︿。 判︲ J 刊 ≦賃 金 Λ : 全 ゾ天 。 メ一 + 」吋 ― d S 」り ■じ →り ド一 へ 〒 ゞ ヽ︿ 、 疼翔 ・ 小11 一∪ へ 。メ 一 ︿ 。 ゞ一 ︿、 ゞヽ︿ァメ一 」 り十甘
© Copyright 2025 ExpyDoc