新人職員への食事介助方法の支援

4-第2-A㉑-5 一般演題
9月4日(金) 13:00∼14:00 第2会場 パシフィコ横浜 会議センター3階 303
全般的なケア㉑ [座長]丹 光明(介護老人保健施設さくら苑)
第1群:101 入所
第2群:202 症例・事例による貴重な意見
第3群:A3304 全般的なケア チームケア
新人職員への食事介助方法の支援
プロセスレコードとロールプレイングを用いて
介護老人保健施設 いなば幸朋苑
川島 由美子、福田 沙織
新人職員の食事介助時に利用者の摂取量が少ない事が分かった。食事介助方法をプロセスレコードとロールプレイン
グを用い客観的に振り返り、新人職員の行動変容が出来た過程を報告する。
はじめに
視覚に障がいのある利用者A氏の食事摂取量の減少が5月頃から始まった。その原因を調べた結果、新人職員Bの介
助時に摂取量が少ない事が分かった。食事介助方法をプロセスレコードとロールプレイングを用い客観的に振り返り、
新人Bの行動変容ができた過程を報告する。
課題
新人職員Bは、食事介助時の進め方、声掛けが不十分である。
目的
自己の言動、行動を認識し、自ら課題に気づき改善する。
事例紹介
A氏 79歳 女性 全盲 要介護5
障害高齢者自立度:B2
認知症高齢者自立度:IV
病名:血管性認知症
HDS-R:0点
MMSE:0点
職員の声掛けに一言、二言返答あり
身長:148cm 体重:38.1kg
BMI:17.4
栄養ケアマネジメントの栄養状態:中リスク
食事形態:粥、きざみ食
両上肢、両手指に拘縮があり食事は全介助
取り組みI
プロセスレコードを用いて実際の食事介助場面でどういう言葉で話しているのか、どういう食事の進め方を行ってい
るのか記録し振り返る。
1、プロセスレコード実施方法
B職員が食事介助する時の(1)利用者の言動、(2)介護士(B職員)が思ったこと(3)介護士(B職員)の言動を順に番号を
振り記録する。
2、プロセスレコード実施
(1)居室を出る時から笑顔あり(2)今日は調子良さそう。食べてくれるかな(3)「Aさんご飯にしましょうか」(4)「はい」
と返事あり(5)・・中略(9)介助する前にメニューを言う。「さつまいもの煮つけです」(10)「・・」無言で食べる(11)無
言はどうしてか。他のおかずをたべてもらおう(12)「これは大根の和え物です」(13)返答なし。無言で食べる
(14)・・中略(17)以前介助した時粥を吐き出していた。おかずを食べてもらおう(18)「これはさつまいもです」
(19)・・中略 (27)「お粥です」 (28)「いらん」と言い粥を吐き出す
(29)・・略 (33)粥5割、副食10割で食事を終了する。
プロセスレコードの結果をカンファレンスで振り返り、食べなくなった原因は言葉不足、本人の気持ちを確認する問
いかけが少ない事、食事途中で副食を全量食べてしまい主食の粥だけ半分残ってしまった介助の仕方のまずさ、工夫
が足らなかった事に気づいた。
3、今後の介助方法
1)食事の献立を説明する。
2)介助をしながら、常に声掛けをする。
3)本人に何が食べたいか聞く。
4)主食、副食のバランスを考え介助する。
5)梅干し、海苔を用意し、粥を美味しく食べる工夫をする。
6)食事は温める。
取り組みII
B職員はA氏の立場になりロールプレイングを行う。
1、ロールプレイング実施方法
A氏を演じたB職員は(アイマスク使用)エルダーからの食事介助を体験する。ロールプレイング終了後にカンファレ
ンスを開催する。
2、ロールプレイング実施
ロールプレイング終了後のB職員の意見
1)目が見えないA氏になった瞬間から職員がどこに居るのか、分からず不安だった。
2)他の人の声が遠くに聞こえた。
3)まだ飲み込んでいないのに確認をせず口に入れられ戸惑った。
4)スプーン一口分が多かった。
5)側にいても職員の言葉をキャッチ出来ないほど孤独であった。
6)声掛けのない介助は何を食べているか分からず不安であった。
3、今後の介助方法
1)隣に座り、絶えず側から声を掛ける。
2)最後まで一人の職員が食事介助を行う
3)声を掛け、飲み込みを確認してから介助する。
4)スプーンは小さいものにする。
結果
1、A氏にB職員が食事介助を行った摂取量は9月が50%であったのに対し10月にプロセスレコードを実施後70%に11月
ローレプレイングを実施後85%、12月は90%に増えた。
2、B職員はプロセスレコードとロールプレイングを用いて食事介助方法を振り返り、食事が進まない原因は何かを自
ら気付き改善する事が出来た。
考察
1、B職員は視覚に障がいのあるA氏の不安感、孤独感を改めて知ることが出来た。隣に座り会話し、自然なタッチン
グを行う等ケアのコツを習得する事ができ、A氏との信頼関係を築くことが出来、食事量増加に繋がったと考える。
2、A氏の食事が進まないのは、職員の全量摂取を目的とするあまりに口に運ぶタイミングが早い、一口分が多い等の
利用者への配慮が不足した行為と考えられた。
3、利用者の身体の健康状態に考慮し、視覚、聴覚障害に対し、どういう支援が適切なのかを考えて実践することが大
切である。
4、新人職員のOJT教育はプロセスレコード、ロールプレイングを用い客観的に自ら気づく事が大切である。
まとめ
新人職員の行動変容ができたのは、本人自らが意欲を高められるようなチームのアドバイスが不可欠であった。今後
も新人職員への教育はチームで支えていきたい。