第 8 回 POST2015 年開発アジェンダ政府間交渉 最終テキストの第一次評価 S-11 プロジェクトリーダー 蟹江憲史 プロジェクトマネージャー 小坂真理 第 8 回 POST2015 年 開 発 ア ジ ェ ン ダ の 国 家 間 交 渉 に お い て 、 最 終 テ キ ス ト”Transforming our world: The 2030 agenda for sustainable development”がまとめ られた(8 月 1 日) 。当アジェンダが開発(development)を対象としているものではな く、持続可能な開発(sustainable development)と記載されている点は歴史的意味があ る。 最終テキストは以下の項目で構成されている: Preamble; Declaration; Sustainable Development Goals and targets; Means of implementation and the Global Partnership; Follow-up and review。 Declaration 安全な飲み水と人権に関する事項(パラ 7) 、MDG が達成できなった分野や(パラ 16) 、 これまでの POST2015 交渉で先進国と途上国の対立点となってきた「共通だが差異あ る責任」 (パラ 12)について言及している。 宣言では、SDGs の各目標について簡単にふれている。例えば、気候変動問題について は、UNFCCC 締約国による緩和プレッジと産業革命以前と比較して 2℃または 1.5℃ の気温上昇に留めるための排出パスとの間に大きなキャップがあることを懸念すると 言及(パラ 30) 。 第3回開発資金会議で採択されたアディスアベバ行動目標(2015 年 7 月)と(開発) アジェンダとの関係性について、SDGs のターゲットの実現にはアディスアベバ行動目 標の実施が重要であることが明記された(パラ 40)。 SDGs は 2016 年 1 月から実施される(パラ 21) 。 Sustainable Development Goals and targets 最終テキストと OWG の SDGs 案(A/68/970)の相違点:①OWG 案では多くのターゲ ットに” [X] per cent”という表記があったが、最終テキストでは”substantially”という 文言に変更、②ターゲット 14.c の United Nations Convention on the Law of the Sea に関する事項とターゲット 8.7 の強制労働に関する事項が修正された。 OWG 案の冒頭にイントロダクションが追加された(パラ 54-59) 。S-11 で従来から 主張してきたターゲットはグローバルの目標であり、国情を考慮しながら各国のター ゲットを設けることが明記された(パラ 55) 。他方、国別で異なるアプローチがありう る可能性も指摘された(パラ 59) 。 1 Means of implementation and the Global Partnership ターゲット 17.6 に基づいて、technology facilitation mechanism を設立する。以下の 3 つの新規組織やフォーラムにて構成される:①United Nations Interagency Task Team on Science, Technology and Innovation for the SDGs、②Multistakeholder Forum on Science, Technology and Innovation for the SDGs、③オンライン・プラッ トフォーム。①は科学技術イノベーション(STI)事項に関係する国連システムを調整す ること、②はフォーラムを毎年開催し、STI に関するニーズやギャップを検証するため のネットワークを構築すること、③はオンライン上で STI に関する情報を交換し、ま た研究成果物を普及することが目的である(パラ 70) 。 Follow-up and review SDGs の follow-up and review は、国主導で行われ、グローバルの指標(2016 年 3 月 合意予定)を使って行われる。加盟国はそれらを補完するため、地域や国レベルの指標 を設定する(パラ 75) 。 サブ・ナショナル、国、地域、グローバルでの定期的かつ包括的進捗レビューに参加す ることを約束する(パラ 77) 。国別報告書には進捗報告及び地域や国レベルでの課題を 記載(パラ 77) 。 全ての加盟国において、このアジェンダ実施への対応、及び、定期的かつ包括的レビュ ー(国レベル及びサブ・ナショナルレベル)の実施を奨励(パラ 79) 。 地域レベルでの相互学習やベスト・プラクティスの共有が奨励(パラ 80) 。 High Level Political Forum (HLPF)はグローバルレベルの follow-up and review の中 心的な役割を担い、①グローバル、地域、国のインディケータやデータに基づいた事務 総長の annual SDG Progress Report と、②science-policy interface を強化するような Global Sustainable Development Report(GSDR)が、HLPF に情報を提供する。また、 ECOSOC 議長が GSDR のレポート作成の頻度について各国と協議を開始し、来年の HLPF 閣僚宣言にて詳細を決定する予定(パラ 83)。 毎年行われる ECOSOC 開発資金会議の結論は、HLPF のアジェンダの実施状況の follow-up and review に組み込まれる(パラ 86) 。 グローバルレベルでの follow-up and review のマイルストーンや共通の報告ガイドラ インを含む事務総長の報告書を、第 70 回国連総会で考慮できるように作成することを 要請している(パラ 90) 。 HLPF では成功例、課題、教訓などの経験情報を共有し(パラ 82)、HLPF のレビュー にはシビル・ソサエティや私企業のレポートも含まれうる(パラ 84) 。 国連総会の下で開催される HLPF がポリシーガイダンスを与える(4 年に一度、次回 は 2019 年) (パラ 87) 。 S-11 研究成果との関連(特筆すべき事項) Policy Brief 1 で主張した SDGs の構造「マルチ・レイヤー・ターゲット」の考え方が 2 採用された。具体的には、グローバルでのターゲット設定と、それらに関連させる形で ターゲット(目標や指標でなく)を各国で構成すること、それらが国レベルの政策や戦 略の中に位置づけられるべきことが書き込まれた。 (パラ 55) ESG との連携研究の中で主張してきた「a charter moment」が、 この Agenda が”charter for people and planet in the twenty-first century”であるという形で取り入れられた (パラ 52) Technology Facilitation Mechanism のうち(パラ 70)Multistakeholder Forum on Science Technology and Innovation for the SDGs の構成(HLPF に関係する形、ある いは Future Earth などの独自のフォーラムによるもの)は、S-11 が 6 月にニューヨ ークで開催したワークショップでも議論された。 3
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