新型射出成形機「J-ADS」シリーズの紹介

製品・技術紹介
新型射出成形機「J-ADS」シリーズの紹介
1. はじめに
(2)高精度可動盤ガイド
中型 J-ADS シリーズでは可動盤のガイド機構に直動ガイ
近年、射出成形機市場のニーズは変化してきており、性
ドを採用している。直動ガイドを採用することで、可動盤
能が高いことを前提として、使いやすさやメンテナンス性、
の直進性の向上と長期間に渡る直進性の維持が可能とな
成形安定性、ランニングコストなどスペック表には現れにく
る。またタイバーブッシュから漏れたグリスが型盤の盤面
い性能が重視されるようになってきている。
や成形品に付着する問題を完全に撲滅できる。さらに直動
これらのニーズに応えるため、
「全てのお客様に最大限の
ガイド化により、成形機全体のグリス使用量を従来機比で
安心を」をコンセプトに掲げ、中型 J-ADS シリーズ(型締力
10% 削減し、クリーン化だけではなくランニングコスト削減
220tf ~ 450tf)を開発したので、その特長を紹介する。
にも貢献している。
(3)ワイド型盤・デーライト延長
樹脂成形品への要求の多様化、複雑化により、それを
成形するための金型も複雑化し、大型化する傾向にある。
このような金型に対応するため、J-ADS シリーズでは従来
はオプション対応していたタイバー間隔のワイド化とデーラ
イト 100mm 延長を標準仕様とした。これにより、設備ダウ
ンサイジングとイニシャルコスト低減を可能にしている。
2. 特 長
(1)第二世代フラットプレスプラテン
(4)新開発の省エネシリンダ
射出成形機のシリンダ内圧は一般的な機種でも 200MPa
以上になる場合があり、この高い圧力に耐えられるよう、
中型 J-ADS シリーズにおいても継続採用しているダブル
シリンダには高い強度が求められる。J-ADS シリーズは
トグル式型締装置には、直圧式型締装置と比べて金型パー
日本製鋼所で開発した、従来比 1.5 倍の強度を持つ鋼材
ティング面の面圧分布が外周部に偏りやすいという欠点が
を母材に使用することで、シリンダを小径化することに成功
ある。この問題を解決するために、J-ADS シリーズでは徹
した。社内テストの結果では、連続成形時の消費電力を
底して FEM 解析を行い、盤面全体の変形量を均一にする
約 10% 〜 20% 削減することができた。また昇温時の消費
ことで面圧のばらつきを最小化する設計を行った。面圧分
電力は約 30%、昇温時間は 10 〜 30% 程度削減すること
布の解析結果を下図に示す。これにより従来シリーズと比
が可能であり、段取り時間の短縮に貢献できる。
べて金型パーティング面の面圧のばらつきを約 55% 改善し、
型締力の低減、成形品品質の向上や金型メンテナンスコス
トの削減などに貢献している。
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製品・技術紹介
3. おわりに
ここでは割愛したが、J-ADS シリーズには新開発した
SYSCOM5000i コントローラを搭載しており、使いやすさの
向上とお客様の生産性の向上に大きく貢献できると考えて
いる。今後はシリーズ化を進めると共に、市場のニーズを
捉えたよりよい製品を提供できるよう、研究開発に邁進す
る所存である。
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日本製鋼所技報 No.66(2015.10)