光学フイルム成形用フレキシブルロール

製品・技術紹介
光学フイルム成形用フレキシブルロール
1. はじめに
最近話題のテレビは4K高微細型、薄型である。これら
LCDテレビ、ITフォン、などには種々の位相差フイルム、
拡散フイルムなど光学フイルムが使われ、軽量、薄型化に
重要な機能を発揮している。これらの光学、機能フイルム
は溶液流延法、溶融樹脂押出しベルトニップ法、押出しロ
ールニップ法などで造られる。今回開発したロールはロール
図 1 ロール配置例
ニップ法のロールで比較的薄肉で低押圧のフレキシブルロ
ールである。
薄型のテレビや太陽光発電パネル、建築窓用シートなど
は大型化が時代と共に進むと予想している。
弊社のフレキシブルロール「JFロール」
(J
SW Flexible
Ro
l
l)はこの大型化に対応できるのが大きな特徴であり、
強みである。また、高線圧ロールにフレキシブル性を付与
でき、高生産性を要求される食品パックシート、汎用機能
シートの薄肉化、高速化にも適用できるのでその製品・技
図 2 JF ロール構造図
術を紹介する。
一 般にフレキシブルロールは薄肉の 外 筒で構成され
弾性があるので広いタッチ面が 得られ 、低 線 圧でシー
トをニップしても押し不足になりにくい。とくに薄いシー
トは 溶 融 樹脂 が 早く冷却・固 化し、 また 厚みムラも生
じ易いのでこのロールが使われる。
従来のフレキシブルロールは薄肉円筒イタ構造であり
2 次元方向で均等な柔軟 性があり、ニップ 部の 接触幅
拡 大とロール幅 方向 柔 軟 性は 基 本 的に等しく、 平 面 2
次元方向で均等な弾性を得ている。
写真 面長約3mの大型JFロール
2. 特 徴
弊社のJFロールは中肉厚の外筒内面に円周方向にネ
ジミゾがあり、シート流れ方向のニップ接触幅拡大効果
は従来の薄肉フラットロールより少ないがロール幅方向
のロール柔軟性が通常のフラットロールより1桁以上(断
面二次モーメント比較)大きいことが 特 徴である。図 3
1. 薄シート成形性
樹脂シートは T ダイから溶融状態のシートで押出され、
数本の成形ロールで押圧・冷却されて造られる。
「JFロー
にミゾ 方 向と曲げ 方 向でその 柔 軟 性の 差を比 較 する。
(図3(a)が(b)より曲げ易い)
シート成 形 ニップ 部で の 外 筒 柔 軟 性を図 4 に 示 す。
ル」は冷却・成形ロールとしての機能をもち、主にタッチロ
同図はロール軸芯に沿った断面を見た図で、JFロール
ールとして使われる。
(図 1、図 2 )シート両面をほどよい力
は図 4(a)に示すようにシート厚さ変化(縦 縞)に追従
と温度でニップすることで両面がクリアな高精度シートが得
して変 形し 易い。 薄シート成 形 性はシート流 れ方 向の
られる。図 2 のロール内部は温調液が高速で循環してシー
厚さムラ・縦 縞への追従性、 柔軟 性が 重 要であり、 こ
トを冷却・固化させる。他の成形ロールも外筒厚さは異な
の構造を採用している。
るが同様な構造である。
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日本製鋼所技報 No.65(2014.10)
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図 6 はJFロールにsin曲線荷重をかけたニップ部外筒
応力分布図を示す。これはシート厚さムラを想定した図 5
の凸凹タワミに相当した応力図であり、変形量も同様の分
布を示す。またJFロールの特徴である幅方向の柔軟性は、
図 5 に示すように絶対的なタワミ量及び応力値は幅方向で
差があるが均等タワミと凸凹タワミのタワミ差分、すなわち
幅方向の外筒シェル柔軟性は幅方向のどこでも均等な柔軟
図3 外筒の内面ミゾ(凹部)方向と剛性比較
性があり、シート幅のどこであっても縦縞成形性は変わら
ない均等な成形性能が得られる。
図 4(b)の内面ミゾ(凹部)が無い従来の成形ロールでは
ミゾが無いので幅方向の柔軟性が少なく、縦縞の未圧搾
部が生じて薄いシート成形が困難である。
図 6 ロール外筒応力分布図
シート厚さムラを想定したsin曲線荷重時応力
図 4 外筒ニップ部のシート縦縞追従性
2. ロール大型化
もう一つの大きな特徴として外筒厚さが一般的なフレキシ
図 5 にJFロールのロール幅方向のニップ部タワミ曲線を
ブルロールより厚いことからフレキシブル性能を確保しつつ
示す。滑らかなタワミは通常の均等荷重タワミを示し、凸凹
大径、長尺のロールが製作可能で最大ロール面長3.5mま
タワミはシート厚さムラを想定したsin曲線荷重のタワミを
で製作可能である。またこの上限は現状での工作都合であ
示す(平均荷重は均等荷重と同じsin荷重)。
り将来の大きさの限界はない。またロール直径に関してはと
前記した図 4(b)の従来構造ではこのような幅方向の柔
くに制限は無い。
軟な凸凹タワミは得られない。
3. 高線圧「中厚JFロール」
弊社フレキシブルロールは線圧100N/cm までのロー
ル柔軟性と薄シート成形性、シート低応力低歪に対応した
「標準JFロール」が標準であるが、高線圧ロールの市場ニ
ーズも多い。
JFロールは外筒厚さが通常弾性ロールより厚いことか
ら、フレキシブルな性能を確保しつつ高線圧ニップのロール
が製作可能である。
この100N/cmを超えるニーズに対応するフレキシブルロ
ールは「中厚JFロール」と称し、剛体ロールに近い丈夫さ
とフレキシブル性を兼ね備えて、既設、新設の油圧加圧シ
ステムが適用でき、高線圧のポリプロピレン樹脂(PP)、P
ET樹脂に適用できる。
またこの「中厚JFロール」は従来の剛体ロールに比べ
て、薄肉・内面ミゾ付きで剛体ロールに比較して、冷却性
図 5 ロール外筒タワミ曲線
能がよいことからライン高速化にも役立つと期待している。
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4. シート適用範囲
剛体ロールではPP樹脂で0.
4mm 厚さ以下のシートの
5. 特徴のまとめ
JFロールには他にも多くの特徴があるので以下まとめる。
成形は難しくなり、このシート厚さ以下ではフレキシブルロ
ールが使われる。JFロールは線圧100N/cm を境に「標
準JFロール」と「中厚JFロール」の2つのシリーズがあ
り、シートの厚さ、幅で、適用範囲を分類しており、その
概略を図 7 に示す。大型の長尺ロールは必要線圧が低くて
も「中厚JFロール」にすることがある。
またJFロールのシート厚さの成形範囲は広く、
「標準JF
ロール」でもテスト成形ではあるがPET樹脂0.
06mm厚
1 両面タッチ薄膜シート成形に最適でシート両面を鏡面に
転写可能。梨地、彫刻ロールに適用可能
2 ロール面はHCr メッキ鏡面、クラウン付き。梨地、溶射、
各種皮膜にも対応できる
3 二重管構造の冷却ロール。外筒は特殊薄肉弾性金属製
シートへ平面でタッチでき、柔軟性がある。特に薄シー
ト縦縞への対応性が良い
さからPP樹脂:数mm厚さまで成形可能である。
「中厚J
4 ロール形状は小型から大型まで製作可能
Fロール」ではほぼ剛体ロールと同様なシート厚さ迄、使
特に大型ロール面長3.
5mまで製作可能
用することが出来る。
JFロール導入時のロール選定ではユーザーの要求によ
って、弊社テスト機による成形テストで確認している。
5 外筒内面にミゾがあるので冷却能力が高い
6 線圧の適用範囲は広い。一般的には20~400N/cm。
他は個別に対応可能
・
「標準JFロール」:線圧100N/cm 以下
・
「中厚JFロール」:線圧100N/cm を超えるロール
7 薄シート成形時の低線圧化、シート低ひずみ応力化
8 温調液はオイルまたは水
9 流路はスパイラル構造が標準
10 温調配管はロータリージョイント使用可能
11 タッチロール以外の成形ロール、加熱・冷却ロールにも
適用可能
3. おわりに
弊社フレキシブルロール「JFロール」は幅方向の柔軟
性を選択的に高めたことで今までにない大型長尺化、高
線圧化、高冷却性能をフレキシブルロールに与えることが
できた。
図 7 シート適用範囲イメージ図
またこの多くの特徴の一つ例えば高冷却性能を生かす単
純な加熱・冷却ロールに適用して高性能な伝熱ロールが製
作可能であり、また他の産業機械、例えば印刷機械、製
紙機械、のニップロールへの適用と、各種加熱・冷却ロー
ルへの適用など応用分野は広い。本ロール技術が広く産業
界で使用されるよう努力して行きたい。
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日本製鋼所技報 No.65(2014.10)