皮膚疾患に於けるフオスフオリラーゼの組織化学的研究 I.健常皮膚

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皮膚疾患に於けるフオスフオリラーゼの組織化学的研究
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I.健常皮膚並びに反応性皮膚疾患
y。&gf:
Histochemical
study
of Phosphorylase
in Skin
Diseases. (I)
笹 井 陽 一 郎゛
グリこ=z−ゲンは組織化学的に証明出来る多糖類として
Claude
Bernard
健常皮膚に就てはBollinger
Montagna
によりグリこ=Z−ゲンとなる.私はこのフオスフオリラー
以来数多くの研究がなされて来た.即
et al"., Stoughton
et al".. Warren"',
Dupr6",
ゼの表皮に於ける活性を組織化学的に健常皮膚並びに反
et aP).,
Braun-Falco"
応性皮膚疾患につき追究した.
染色方法
等の検索かあり,汗腺の分泌機能との関連に於ては
1)フォスフIオリラーゼ
Montagna
武内19)によるヨード法を使用した.即ち新鮮組織の凍
mia
et aP'., Shelley
et al"., Rothman"'。Cor-
et aP)・,小堀他1o)等の報告をみる.更に病変部所見
としてBraun-Fa】CO",
結切片を作成し,直ちにあらかじめ37°Cに保温した次の
基質液に投入.
Steigleder"'等はアカントーゼ
を呈する疾患に於て.表皮突起中央部に高度のグリコー
葡萄糖−1−燐酸 50ing
ゲン蓄積あるを指摘してアカントーゼとの関係につき論
筋肉アデュール酸 10司
じSteiner'"は萎縮性病変部よりも増殖性の過程にあ
蒸溜水 7.5ml
るものに屡々より多量のグリコーゲンが蓄積するのを観
酷酸,酷酸ソーダ緩衝液(pH
察している.しかしかゝるグリコーゲン蓄積の意義に関
アルコール 5m1
しては各種の病理学的及び実験的観察に基く臆測がな
グリコーゲン 2ii]g
されているに過ぎない.即ちBunting"'
創傷),
Bradfield"'
Lobitz
et aly)(スコッチテー−プ剥離兆験),
5.7) 10ml
イッシュリッ 1滴
(動物表皮の
以上を順次混和す.
(雪状炭酸),Washburn15)(大傷),
基質液投人時間は30分∼1時間.その後瞬時蒸溜水に
Argyris"'
(Methylcholanthrene塗付実験)等は細胞増殖とグリ
て水洗し,稀釈ヨード液(Gram ヨード,ヨードカ’リ
コーゲン蓄積との間に関連あることを指摘している.し
液を蒸溜水にておよそ3倍に稀釈せるもの)に3分間投
かしながら組敗こ於けるグリコーゲン蓄積の証明け唯単
入.次でスライドにすくいあげ,ヨードグリセリン(局
に検索を行った期相に於けるグリコーゲン蓄積の状態を
方グリセリン10にヨード液1の割合に混じたもの)で封
示すものであって,いわば動的な過程を静的な面で捕え
入.活性を示す部位は青∼赤紫∼赤褐色を呈する.尚対
ているに過ぎず,表皮に於けるグリコーゲンの蓄積を論
照として葡萄糖−1−燐酸を基質液より除いたものに30
ずるにあたっては,その動的の過程に対する観察が必要
分∼1時間投入による標本及び基質液に全く投入せざる
とたって来る.
もの,更にGoldberg
動物の組織細胞内でグリコーゲンの合成されることは
スフォリラーゼ証明法(武内変法1勺を使用せる標本を
既に早くから知られているところであり,
Cori
et aP°'の燐酸捕捉によるフォ
参考とした.尚活性程度の基準は基質液投入時間によ
et a1叫
等の研究によりその生化学的機転も或穏度解明せられて
った.
いる,即ち血行により組織に運ばれて来た葡萄糖はへキ
2)グリコーゲン
ソキナーゼのはたらきで葡萄糖−6−燐酸となり,更に葡
Lillie法21)に準拠してPAS染色を行った.即ち切除
萄糖−1−燐酸を経,組織に存するフオスフオリラーぞ
皮膚を直ちに純アルごj−ルに投入.24∼36時間固定(3
うや東北大学医学部皮膚科教室(主任 高橋吉定教授)
―
632 −
昭和34年6月20日
633
回交換)後 型の如くパラフイソ切片作製.脱パラフイ
ソ,セロイジソ被覆,次いでHotchkiss
液にて酸化後,
Fig. 2. High
magnification of Fig. 1
'Mヨード酸B
Lillie処方によるSchiff試薬に投入.
M/20異性重亜硫酸水液にて洗ト,水洗,以後常法の如
くに封入.尚グリコーゲン砿認のため対照として予め征
液消化,β-ア1ラーゼ消化(共に37゜C,1時間)を行っ
た後,上の如くPAS染色を施した.
3)夏に常法に従って作製し犬へ了トキシリソ・エオ
ジソ染色標本を併せ観察に併した.
検索結果
I) 健常皮膚
打料:
成入健康者の恍詞(7例),上腿仰側(1例)及び円
形脱毛症患考つ上腿伸側(12例)の健常皮町より切片を
採取レ万こ.
染色所見:
角質胆にはフオスフ才フラー七の活性にし認めら肘庖
レここの反心は細胞質内にみられ,核は反応しない.毛
い.翔粒層でけ概して軽度たいし中等度の活性を示す.
孔円囲ノ)鉄細胞言強レヽ汗性仁行し,外毛根鞘にも活性を
封状屑全細胞す]と中等度の活性を示す拡基底りに近
みるが内毛根棚には活性茫認め得なかつた.佐竹」泉で次
づくにつ且次第に活性が増強し,基底旧並びに七仁に接
する1∼2川の親細胞は岨七強い活性を示してい乙.而
七の基底細胞に洽池をみこのみで乙乙.立毛筋右亦活性
分有する.エックリン腺,アポクリン腺に於て片辺の腺
細心,導管共に強い活性牡有する.甘心に於て血管壁筋
Fig. 1∼7 show the staining with Takeuchi's
method (incubationstime 30 min.)
iodine
肘に一致して鰯支の活性を証叫し得こが,頁皮結介織に
に全く活性毎認めこことが肝米痙うつノこ.
Fig. 1. Normal human
skin. The newly formed
polysaccharide by phosphorylase activityin epi-
同時回行つたグリコーゲンの検索では,毛孔丿子孔附
dermis exclusive of horny layer is stained.
近の較細咆細咆質内及ブ一部細咆の細心壁にグリコーゲ
Especiallyin deeper prick!e-and basal cell 1a,
yerstrong positive reaction is demonstrated.
ンの存在在認愉僣るに過渥なうつ/::.
(Fig.
1,
II) 反応性皮膚疾患
材料:
検索に供レ七万よ忽性湿疹1!例,慢性副座3例,局面
性湿疹2例,貨弊状湿吟5例,神経か皿炎14例,ベニェ
半疹4例,結節性平疹3例,慢性円板状エリテマトーデ
ス3例,多形惨出性紅斑5例結節性紅斑3例,計53例
である.
(a)急性湿疹
切片採取回礼とっこに,側紅,粟粒大の漿波性丘疹よ
りなる比較的新鮮と思オ且しこ病変部をえらんだ.
組織学的に角輿りにこ軽度の角往茫厚及ブパラケラ1ヽ
一七丿循り,順粒冊に1∼2川之してヶラトヒアリン噸
粒心明瞭.悦状気に二於てト特友……1こ一万しで)中洲により細月な細
胞内及び細咆問浮唖づか肌 一部に於てよ水庖形成をみ
ろ.水庖の舅冗句かす悦状回にミ他に比し幾こ丿ヽ細胞問浮
腫刀強いずノ)=九.ユ1,0.ヽ・Tこ・.-・1,`1,レジ①ざる所兄矢呈するものも
2)
634
日本皮膚科学会雑誌 第69巻 第6号
ある.切片によっては基底層へのか円形細胞浸潤を思わ
ラケラトーゼが比較的著明でかつて穎粒層は数層を示
せる所見に接する.乳頭層の浮腫は著明である試乳頭
し,ケラトヒアリン頴粒比較的明瞭.性状層土層及び中
下層では軽変.叉乳頭層及び乳頭下層の血管は拡張し,
層に軽度の胞細間浮腫をみる試 水庖形或は認められな
血管周囲には小円形細咆を主とし,それに組織球,多核
い.性細胞は梢々増殖して軽度のアカントー七を示して
球,好酸球を混ずる細胞浸潤かおる.グリコーゲンは基
いる.乳頭層には軽度の浮腫をみるが血管の拡張は著明
底層を除いた中,下粒状層及びスポンギオーゼの部の周
で力く,血管周囲の細胞浸潤は粗であつて主に小円形細
辺に証明される.叉バラケラトー七の部分では順粒層に
胞よりなり,中に少数の線維芽球を混じている.グリコ
接する1,2の粒細咆に屯グリコーゲンがみられる.フ
ーゲンは封状層中層細胞の細胞膜附近に少量みら礼るの
オスフオリラー七の活性は穎粒層に接する1∼2層を除
みである.フオスフオリラー七の活性に性状層に於て.
く粒細胞及び基底層に強く認められ,特に基底居に近づ
一一般に健康皮宵組織より梢々増強して居り,更に基底層
くにっれ粒細胞の有する活性は増強する.しかるに水庖
及びそれに接する数居の性細胞では可成り強く,特にそ
縁をなす粒細胞には活性を全く認め得ず,更にその周囲
れに表皮突起部に於て顕替である.
に位置する細胞には逆に活性増強をペ スポンギオー七
(b)慢性湿疹
の部で令他より強し活性の存するところかおる(Fig.
組織学的には表皮に可成り強いアカント一七がみられ
る.角質層は肥厚してパラケラトー七も認められ,穎粒
3). ………
Fig. 3. Eczema
whole
acutum. Strong positive reaction in
epidermis
Fig.
4. Eczema
chronicum.
exclusive of horny layer.
得
た.即ち初診時臨味的には圀漫性に存在する粟粒大たい
し半米粒大の紅色丘疹及び漿液性丘疹で支],黄褐色の
拍支,枇糖状鱗屑を有し,浸潤は殆んど触知し得ない.
組織学的には表皮は軽度のアカントー七を示し,角質層
では角質肥厚よ=好明でなく,パラケラトー七をみる.穎
れ層は2∼3層にしてケラトヒアリン親粒よ不│明瞭であ
る.輯状層には細胞内及び細胞問浮腫が存≒殊に中∼
下層に於て苫明である.表皮内水庖宅亦認められ,る.乳
頭層,乳頭下層共に著明なる浮腫を示し,血管の拡張,
血管周囲の主に組織球,小円形細咆よりなる細胞浸潤宅
顕著である.グリコーゲンはm札層に接する数層の対細
胞を除いて殆どすべての輯細胞に認められる.フオスフ
層は数層,ケラトヒアリン穎粒は利々不明瞭.封状層には
軽微な細胞聞浮腫がみられる他,ズボン平才一七,水庖
形成は認やられない.乳頭層には軽い浮腫があり,血管
奄梢々拡張.血管周囲には小円形細胞,組織球を主とすろ
密な細胞浸潤が限局性に存在し,中に少量ノ)線維芽球を
みる.グリコーゲンは頴粒層に接する封細胞を底辺とし
た逆三角形の分布状態をなレこ煉状層に存往し,その頂
オリラーゼの活性は穎粒層に接する工,2の細胞を除く
点は表皮突起内部に及んでいる.ソオスフオリテーゼの
殆どの較細胞及び基底細胞に強度に認められる.か卜,る
洽比は基底層及びそれに接する散居の封細胞に於て甚だ
例か治療により癈諦概ね去り,臨床的に僅少の枇糖様落
強く,表皮突起ではその先端に殆ど限局性に強い活性が
屑を認めるのみ⑤時期に採取した切片では,組織像ビパ
みられる(Fig.
4).
昭和34年6月20日
635
主として小円形細胞よりなる比較的禰漫性の細胞浸潤を
みる.グリコーゲンは穎粒層直’ドより延長廿る表皮突起
の先端まで殆どすべての棟細胞に認められる.ソオスフ
オリラー七の活性は煉状旧全細胞に強く証明さ仏殊に
角質層,頻粒層の剥離せるところではその基底をなす煉
細胞により強く,更に辣状層中層及び上別に心点状に活
性の欠損する部分がある(Fig.
5).
(e)神経皮膚炎
組織学的に角質居梢々肥厚し,パラケラトー七小観察
され,m粒層は数層六いしはそれ以上なるもケラトヒア
リン穎粒まモれ程明瞭ではない.蝕細胞の増殖は著しい
が,浮腫は殆ど認められたいか,或いは極めて軽度に存
する程度.乳頭居にも浮腫は殆,ど認められない.真皮血
管は拡張し,その周囲に小円形細咆,組織球からなる限
局性の細咆浸潤が認められる.グリコーゲンの穎粒げ嫁
状膜ト層乃至中刷に於て輯細胞の細胞質内頴粒として認
Fig. 6. Neurodermatitis. Strong activity of phosph orylase is found in extended
rete ridges.
めら且るが,その対細拡よ概ねm柳球二底辺勺句け,そ逆
三角形の々(け配列をとる.ン才スフ才リラー七こ)活性は
基底旧及び・ゲLに接する1∼2川に増強レていろが,特
に表皮突起こあっては突起内棟征咆の殆三すべてに健常
よドヱかに強い活性をみる(Fig.
6)
(f)ベニエ摩疹
組織学的に衷心の浮腫及び桂皮の細咆浸潤か梢々強い
の削除けば,神経皮町炎のそ且と細箭芋的及び組織化学
的に略々同様である.
(g)結節性摩疹
組織学的には角質層の肥Fヲ,アカントー七力頌明ビあ
る.順粒作女4∼5層であるがヶラドこアリン順粒はそ
れほど明瞭己よない.軟状旧に於ては何度の細胞問及び
却圀内浮腫がみられる.真皮で心乳頭旧の浮腫及び血管
万匠度拡張が観察さ几 血管周囲に首小円形細咆,組織
球,線維芽球からなる細胞浸潤がちり,場所によっては
636
Fig. 7. Prurigo
日本皮膚科学会雑誌 第69巷 第6号
nodularis. Stronger activity in ext-
endedrete ridges (incubationstime
20mm.)
つてば僅かにアカントーゼを示すのみである.グリコー
ゲンの検索でエリテマトーデスにあっては表皮特に萎縮
著明ならざる表皮に於て穎粒回に接する数回の性細胞に
細胞質内新粒として認めら几特に毛麦角栓の周囲に於
て著明であり,多形惨出性紅斑,結節性紅斑では煉状層
上層より中層に及ぶグリコーゲン蓄積をみる.一方フオ
スフオリラーゼの活性に関しては,エリテマトーデスに
於て性状回申・深砿基底層の活性が梢々増強するの
を除けば健常良行のそれとの間に浙川な差を見出し難
い(Fig.
8).
総括並びに考按
浸潤細胞は比較的圈蔓性に存在する.グリコーゲンに基
健常⑤回及ブ反応性皮噌疾患に於ける表心フオスフオ
底層に接する2∼3層を除いて殆どすべての萩細胞に細
リラーぜの活性は必ずしもグリコーゲンの蓄粒状態と相
胞質内瓢粒としてみられ,それは噸粒層に接する層を底
応せず,グリコーゲンの全く検出し得たい部位(例えば
辺として延長せる表皮突起内に頂点を有する逆三角形の
基底層)に亦フオスフオリテーゼの活性を証明し得た.
如くである.フオスフオリラー七の活性頌基底回及びそ
このことに既に武即",
れに接する2,
り,組織化学的にグリコーゲンを検出し得ない部位は
3/§の較細胞に於て著しく増強し,殊に
結節の中心近く著明に延長廿る表皮突起にあっては全層
に活性増強をみる(Fig.
Braun-Falcc戸奇指摘して居
(勿論組織化学的に証明し得ない程度のグリコーゲンO
存在を否定し得ないが)グリコーゲンの関ケする炭水化
7).
(h)慢性円板状エリテマトーデス,多形溶出性紅斑.
物代謝の場に非ざるを意味するものでないことを考えさ
結節性紅侠E
廿,切片を採取せる時期の静的な断面だけをもってして
組織学的に慢性エリテマトーデスにあってぽ表皮は軽
はグリコーゲンの動態を論じ得ないことを示レている.
度の角質肥厚,パラケラトー七,対状層の萎縮,基底W
健常皮穴に於てフオスフオリラー七の洽池をみるの
の排列不整及び液化変性を示し,多形惨出性紅斑ではそ
に,表心にあっては翰状層仝細胞及び基底層であり,更
の表皮に軽度の細胞間浮腫が認やられ,結節性紅斑にか
に外毛根鞘,皮脂腺基底細胞,エックリン腺,アポクリ
ン腺,立毛前に証明し得たのにBraun-Falco22)の検索
Fig. 8. Erythematodes discoides chronicus
magnification).
(high
と略々一致する.
一方生体に於ける炭水化物代謝は蛋白質代謝,脂肪代
謝と密に関連して生体の各機能に対するエネルギー供給
の機構となっていることは生化学的研究により示されて
いるところである試反応性心㈹疾患に於ける表皮のグ
リコーゲンに関してはSteiner"'',
Montagna
et ar'., Steigleder'",
Stoughton
et aP>.,
Braun-Falco"等の組織
化学的検索がヅ冲,その何れもが各疾患の間に特徴的な
差の存往しないことを記述している.しかるにUnna23)'
は湿疹の組織像に関して,スポンギオー七とパラケラ
Fヽ一ゼとを主変化とした表皮細胞の能動的大卜ごかつて
如何なる期相にあってもアカントー七の傾向の存するこ
とを指摘し,更に伊藤2町士疾患の表現型に広じて組織化
学的所見を異にすることを述べている気佐藤25)は表皮
に蓄積するグリコーゲンの分布は概ね3つの型に大別出
来ることを指摘して伊藤の所謂表皮を主竃とするものう
巾几 湿疹型,苔鮒型及びモの両者の性質を具有するか
昭和34年6月20日
637
の如き貨幣状湿疹を合む型の3つに各.々特徴的な像を見
文 献
出している.而してフオスフオリラー七の活性に関する
1) BoUinger,
検索に於ては,湿潤を主変化とする急性湿疹では概ね粒
(1951).
状層全細胞に活性増強をみ,更にその間により著明に増
McDonald:
2) Stoughton
37
&
Wells: J.
3) Montagna,
る神経皮膚炎では活性の増強は表皮突起に略々限局する
(1951):Montagna,
のが認められた.貨幣状湿疹,局面性湿疹では略々急性湿
Rec・, 114,
疹のそれに類似≒慢性疾患のそれは神経皮膚炎のそれ
20, 415 (1953).
Chase
&
Hamilton:
Chase
Sci., 111,145
80,
Ann.
Dermat・,
6) Braun-Falco: Arch.
(1954).
活性増強には略々2つの型かおる様に考えられる.
7) Shelley,
Mescon: J.
Physiology
Chicago,
びスポンギオー七(Steiner)との関係に於て論じられ
cago
た試表皮内水庖の周囲に於ける組織呼吸の減弱をみた
9) Cormia
Skin,
24,
Press
&
rmat・,
他28)の観察を照合すると乱 フオスフオリラー七活性増
200,
強乃至はグリコーゲン蓄積か表皮に於ける代謝機構の異
12)
の反応態度を論ずることは出来ない.他方多形惨出性紅
斑の浮腫を呈する表皮に健常と大差なき活性をみたこ
と,及び湿疹の経過に応じて検索した例に於て臨床的に
は殆ど軽快し,組織学的にも軽度のアカントーゼをみる
のみであって グリコーゲン屯健常皮膚のそれを思わせ
るのにフオスフオリラーゼの活性が粒状層全層に尚健常
以上の活性か存するのを観察し得たのは甚だ興味深いも
111
18,
Biochemistry
of
of
Chi-
(1954).
Invest.
Dermat.,
527 (1955).
Steigleder: Proc.
変化とフオスフオリラーゼ活性との関連を述べた小早川
and
the University
Kuykendall: J.
JO)小堀,鳴海:皮と泌,
常包うかぶわせしめるが,しかしそれのみをもって表皮
198,
Invest. Dermat.,
the
11)
(195!).
(1952).
8) Rothman:
et aP).の実験,更には退行性
Dermat・,
263 (1953).
f. Dermat・,
ーゼ(Steigleder),バクケラトー七(Braun-Falco),及
係を示唆したBuUough
Lobitz: Anat.
5) Dupre:
289
14,
Ibid., 17, 147
&
4)Warren: Am. J. Med.
せるものが多い.即表皮に於けるフオスフオリクーゼの
Szordoray゛)の観察や,細胞活動とグリコーゲンとの関
Dermat.,
231 []'952); J. Invest.
板状エリテマ1ヽ−デスにおっては健常皮膚のそれを思わ
表皮のグリコーゲン蓄積の意義に関しては,アカント
Invest.
102,43
(1950).
強する部分が点在するのに対し,アカントーゼの著明な
に近い.之等に反し多形惨出性紅斑,結節性紅斑,慢性円
Dermatologica,
403
377
London
17,
565,昭30.
X. Internat.
(1952);
Congress
Arch.
De-
f. Dermat・,
(1955).
Steiner: J.
Invest.
Dermat.,
24, 599 (1955).
!3) Bunting
&
White: Arch. Path。49,
(1950).
14) Bradfield: Nature,
167,40 (1951).
15) Washburn,
Jr.: J. Invest.
Dermat。,
590
23,
97
(1954).
16) Lobitx, Jr, & Holyoke:
Ibid。22,
189 (1954).
17) Argyris: J.
Nat.
Cancer Inst・,
12, 1159
(1952).
18) Cori, G.T.
& Cori, C.F.: J.
Biol, Chem.,
135,733
(1940);
Ibid・, 151, 57 (1943).
19)武内,栗秋:東京医新誌,
71, 519,昭29
;
のがある.
武内,東,栗秋ご同誌,72,
139,昭30 ; 武内,東,
木下:熊本医会誌,
29,補4,
1,昭30 ; 武内:
結 語
細胞化学シンポジウム,6,昭32.
20) Goldberg,
Wade,
Jones: J.
1. 私は武内によるヨード法を使用して,健常皮膚
(20例),反応性皮膚疾患(53例)に於ける表皮のフオス
フオリラーゼ活性につき検索を行った.
2.健常皮膚に於て活性を認め得たの凪表皮では穎
粒層,粒状層及び基底層であり,更に外毛根鞘,皮脂腺
基底細胞,アポクリン腺及びエッタリン腺,立毛筋にも
活性を証明し得た.
3.反応性皮膚疾患に於ては急性湿疹,貨幣状湿疹,
局面性湿疹で粒状層全層及び基底層に活性増強を認め,
神経皮膚炎,慢性湿疹では表皮突起に活性増強をみた.
一方慢性円板状エリテマトーデス,多形惨出性紅斑,結節
性紅斑では略々健常皮膚のそれに一致する所見を得た.
Nat.
Cancer
st・, 13,
543 (1952).
21) Lison: 組織化学及び細胞化学(今泉訳)昭29
岡本,上田,前田:顕微鏡的組織化学,昭30
In-
.
22) Braun-Falco: Arch.
f. Dermat・,
202, 163
(1956).
23) Unna:
Die Histopathologie
der Hautkrank helten,
Berlin, Hirschwald
(1894).
24)伊藤,阿部,山辺,佐藤,嶋; 日皮会誌■
66,
n9,昭31.
25)佐藤:同誌,
67, 619,昭32.
26) Szordoray,
Vertes, Race, Horvath: Dermat ologica, 102, 125 (1951).
27) BuUough,
Laurence:
Brit. J. Eχp. Path., 38,
278 (1957).
28)小早川,神原:東京医新誌,
74, 21, 昭32.
(昭和33年10月27日受付)