通訳者が実践している リスニング・トレーニング法

通訳者が実践している
リスニング・トレーニング法
渡邉英喜・著
ロフティ出版
ここでは特集記事として英会話における「リスニング」について深
く掘り下げた話をしたいと思います。かなり濃い内容となりますの
で、よく読んで下さいね^^
まずはリスニングのトレーニングについてですが、英語勉強法に関
する質問メールで一番多いのが、やはりこの「リスニング」に関す
るものです。リスニングというのは、やはり英語のスキルの中でも
一番難しいし、上達にも時間がかかります。
これは、リスニングというものが「自分主体」ではなく「相手主体」
であることに原因があるわけですが。つまり、自分が好き勝手にア
ウトプットできる「スピーキング」や「ライティング」と違って、
「リスニング」や「リーディング」といったインプット系のスキル
は「相手」に合わせなければならないわけで、その分大変なんです
ね。
話し方、発音、アクセント、ボキャブラリー、スピード…等々とい
うものは、実際「相手」によって随分変わるわけです。
その分「広い」守備範囲が必要となります。それをしっかりと受け
取れる器(耳と脳)を作らなければならないわけです。では、どう
すればそのような耳と脳を作ることが出来るのでしょうか?
それの方法を詳しく説明していきたいと思いますが、まずリスニン
グ力を強化するには何をどのように訓練していけばよいのか、トレ
ーニングの順番を追いながら具体的に説明したいと思います^^
リスニング・トレーニングを独学で行うには、大まかに分けて以下
の順番があります:
1.現在の自分のリスニング能力を客観的に知る
2.英語の「音声」を聴き取るトレーニング
3.音声の「内容(意味)」を理解するトレーニング
4.より細部の情報を聴き取り、理解するトレーニング
5.トレーニングの継続(重要)
ザッとこんな感じになりますが、順番に説明しますね^^
1.自分のリスニング能力を客観的に知る
リスニングのトレーニングを効果的に開始するためには、現在のあ
なたのリスニング力を客観的に知っておく必要があります。そのた
めには、まず適当な英語の音声とスクリプト(台本)を用意し、と
りあえず一回聴いてみます。あまりに聴き取りが出来なかった場合
は何度か聴き直しても構いません。
次にスクリプトを見て、自分が聴き取れたところと聴き取れなかっ
たところをマークしてみます。こうすることで、自分のリスニング
力の弱点とその原因を探ることが出来るようになります。
例えば、どのような単語やフレーズが聴き取れなかったのか、聴き
取れなかったのはボキャブラリー不足によるものか、それとも文法
が理解できていなかったからなのか等々、さまざまな原因を特定す
ることが出来るわけです。
これを元に、その後のリスニング・トレーニングや英語の勉強その
ものの方向性を戦略的に決めます。よく、聴き流すだけでリスニン
グ力アップ!みたいな教材がありますが、私としてはマユツバとい
うか、「ありえない~」と思ってしまいます(っていうか、実際「あ
りえません」から^^;)
まず、初めに自分のリスニング能力でどこが弱いのか、そこをきち
んと把握しておかなければ、長い回り道をすることになりますし、
ただ単に「ながら聴き」をしていれば自然に英語が理解出来るよう
になるほど英語は単純ではありません。
2.英語の「音声」を聴き取るトレーニング
おそらく、あなたがリスニングのトレーニングを始めるとき、いき
なり英語の音声を聴いてその英語音声の意味を直接探ろうとします
よね。
別に、それが間違っているわけではありません。それでもリスニン
グ力がつくのであれば、問題ないわけです。しかし、そのようなリ
スニング・トレーニングをいくら続けていても、なかなか効果が上
がらないという場合があります。
英語の音声を一生懸命聴き続けても、なかなか内容を聞き取り、理
解することが出来ないと訴える人は非常に多いんです。そんな場合
は、まず「英語の音声」だけを聴き取るトレーニングと、「英語の
意味」を理解するトレーニングの二段階に分けると良いです(ここ
が重要)。
「英語の音声」だけを聴き取るトレーニングでは、意味については
後回しで構いません。ただひらすら、英語の「音」を拾い、耳から
入った「音」のまま、紙に書き出してみるんです。
具体的には、何でもいいので英語の音声を用意します。これは今お
使いの英会話教材でも構いませんし、テレビやラジオの二ヶ国語放
送でも構いません。YouTube の英語音声などもお勧めです。長さ
は、初めのうちは数十秒~数分程度、慣れてきたらもう少し長めで
も良いでしょう。
英語であれば何でも良いのです。ただし、スクリプト(台本)があ
る方がベターですね。何を話しているのか、内容を答え合わせでき
る音声が良いわけです。初心者でお勧めはやはりVOA Learning
Englishでしょうか。スクリプトも手に入りますし、何と言っても発
音がゆっくりで明瞭ですから聴き取りやすく、自信にもつながりま
す。
VOA Learning English:
http://learningenglish.voanews.com/
中・上級者なら TED がお勧めです。これは世界中の著名人、識者
或いは話題の人などがそれぞれの分野におけるテーマごとに英語で
プレゼンテーションを行うというもので、とても内容の濃い英語音
声をスクリプトと訳つきで無料で視聴することが出来るものです。
TED
https://www.ted.com/
【方法】
まず、英語の音声を聴いてみます。そして、聴き取れた英語の音声
をそのまま紙に書き出してみます。これはディクテーションという
作業と似ていますが、あくまでもここでは「音声」だけを聴き取る
ことに集中しますので、英単語で書き出す必要はありません。
英単語で書き出せるというのであれば、それでも構いませんが、英
語で書き出せないのであれば、音声をそのまま聞こえたままカタカ
ナで構いませんので、紙に書き出します。「聴き取れたまま」表現
して下さい(例:take it easy であれば「テイク・イット・イージ
ー」のように日本語化せず、「テイキリィーズィー」のようにその
ままの音で表現します)。
おそらく英語音声の方が速いと思いますので、一時停止を繰り返し
ながら作業をすすめてみましょう。この時重要なのは、一つ一つの
単語で区切らず、必ず「まとめて」聴こえる「音単位」の区切りで
書き出すようにして下さい。
このあたりの説明は長くなりますので、もし詳しく知りたい方は私
の英語英会話マニュアル教本の第②巻「リスニング編」を読んでみ
て下さい。
こうして「音」だけを紙に書き出す作業を繰り返し、まずは「英語
の音」を聴き取り(インプット)、書き出す(アウトプット)回路
を作り出します。
書き出したカタカナは、スクリプトの英文と比較し、一体どのよう
な英語の塊が、先ほどの「音単位」の区切りになっていたのか確認
します。この作業によって、英語独特の区切りの仕方や、リズム感
というのがわかるようになります。
何度も言いますが、この2.の段階では「音声」だけを聴き取れれ
ば良いので、意味まで捉える必要はありません。知らない単語でも、
何でも構わないのです。単に「歌詞のない音楽」のように、純粋に
英語の「音」だけを楽しむように聴きとってみましょう。
とりあえず「音声」だけをまるで歌詞のない「音楽」のように、
「音」
としてのみ聴き取るわけです。(もちろん、意味が把握出来た!と
いうのであれば、それはそれで素晴らしいことです^^)
例えば、次のような一文の音声があったとします。
So, you're talking about the Japanese economy.
これを音だけに集中して、自分だけがわかるカタカナで表してみる
と…
ソゥ/
ュァトーキンバウデ/
ジェペニーゼカナミー
という「音」のかたまり(単位)に分けられることがわかります。
実は、英会話においては特にこの「音単位のかたまり」というもの
が非常に重要なんですね。
一つ一つの単語ではなく音単位で区切る力をつけることが、リスニ
ング上達の最初のステップといえます。当然ですが、ここでは意味
がわからなくても良いのです。「音」だけを純粋に聴き取れるよう
になれば、それだけで十分です。
こうして、まず英語独特の「音単位のかたまり」と、それぞれのか
たまりがどのようなリズム感、抑揚、アクセントでつながっている
のかを体得します。簡単に言えば、「英語」という「音楽」を聴く
感じです。
ですから、わからない単語が出てきても構わないのです。ただ、ひ
たすら「音」だけに集中して聴き取りを行ってみて下さい。
なお、トレーニングに使う英語の音声について少し説明しますと…。
色々な教材や英語の音声をとっかえひっかえトレーニングに使う人
がいますが、特にリスニングに関しては、同じ教材(音声)を繰り
返し使った方が良いです。
洋画や海外ドラマの音声を利用している人もいるかと思いますが、
一つの洋画やドラマの一回分などを「集中的に」「繰り返し」リス
ニング・トレーニングに使った方が高い効果が出ます。ちょっとカ
ジってはすぐ次、という感じでやっていても、実はあまり効果は出
ないのです。
それよりは、一つの音声(教材)を集中的に、言ってしまえば丸ご
と暗記してしまう勢いで繰り返し繰り返しリスニングしてみること
をお勧めします。そして、もう本当に内容すべて身につけてしまっ
たというくらい使い込んだら、次の音声(教材)に進むと良いでし
ょう。
3.音声の「内容(意味)」を理解するトレーニング
さて、いよいよ「英語の内容(意味)」を理解するトレーニングで
す。詳しい説明に入る前に、リスニングにおいて「英語の意味」を
理解することについて少しお話しますね。
英語の音声を聴いて、その意味を聴き取ろうとするのですが、これ
にもやはり「段階」というものがあります:
① いくつかの知っている単語を聴き取れる(意味がわかる)段階
この段階は、いわゆる初心者の段階です。多分、ほとんどの日本人
が最初に英語を「聴こう」と意識してリスニング・トレーニングに
臨んだときの段階ですね。長い音声の中で、いくつかの単語が頭の
中に残ります。少し上達している人だといくつかの文の意味が理解
できるようになります。ただし、断片的な理解(というより推測)
でしかないため、少し複雑な英語になるともうサッパリわかりませ
ん。
② 聴き取れる単語の数が多くなり、英語の大意がつかめる段階
この段階は初級に相当します。1.の段階に毛が生えた程度のレベ
ルですが、聴き取れる単語や熟語の数が増えるうちに、「何となく」
であれば英語の大意が理解できます。よくジグソーパズルなんかに
例えられるのですが、一つ一つの「わかっている」単語(パーツ)
を増やすことで、全体像を形作る「足場」を組み立てることが出来
ます。しかし、ここが重要な点なのですが、これには限界があり、
いくら個々の単語や熟語の意味だけを理解しても中級~上級へレベ
ルアップすることは出来ないのです。それはなぜか?
③個々の単語・熟語ではなく【意味のまとまり】で聴き取れる段階
さぁ、ここからが正念場(^^;です。いくらボキャブラリーを増やして
も英語を聴き取ることが出来ない!という人は実はこの段階に入っ
ていないのです。
実は、この段階に入るというのは、一つの「気付き」が必要なんで
すね。例えば、多くの日本人が英語の音声を聴くとき、頭の中で「文
章化」して、それをまるでReading(読み)のように理解しようと
するのです。それが、実は根本的な間違い。
よく考えてみて下さい。あなたが日本語を聴き取っているとき、頭
の中で文章化して理解していますか?…していませんよね^^私も、
していません。
大切なのは、個々の単語や熟語を組み合わせて「文章化」すること
ではなく、個々の単語や熟語が合わさって出来た【意味のまとまり】
を「文章でなく」頭の中の「イメージ」で理解することです。
*通訳者の場合は、理解したことを更に日本語という言語に変換す
る能力が必要ですが、一般の英語学習者であれば、その能力は必要
ありません。早い話、自分だけがわかっていれば良いわけです。
話を元に戻しますと…英語音声の「意味」を聴き取るトレーニング
において、いくつかの段階があることをお伝えしてきました。
特に、推測や当てずっぽうでなく「正確」に意味を取るには、個々
の単語や熟語といった「小さい単位」ではなく、より大きな「意味
のまとまり」を捉えるトレーニングが不可欠です。
個々の単語や熟語の意味だけを知っていて、それらを組み合わせて
頭の中で「英文」として再構築し、まるで英文を「読む」ように理
解しようとしても、いつまでたっても本当のリスニング力を鍛える
ことは出来ないのです。では、どうすれば良いのか?
ここ、本当に大切ですのでもう一度言いますね:
「大切なのは、個々の単語や熟語を組み合わせて「文章化」するこ
とではなく個々の単語や熟語が合わさって出来た【意味のまとまり】
を「文章でなく」頭の中の「イメージ」で理解することです」
実は、この「イメージで理解」というのが、よく言われる「英語を
英語のまま理解する」ということです。例えば、あなたが既に知っ
ている英語のフレーズであれば、いちいち頭の中で文章化して理解
しようとしませんよね。
簡単な例を挙げれば、I don't know.とか、How are you?とか、そ
んな簡単なフレーズ。早い話が、それらのフレーズをあなたがいち
いち頭の中で文章化せずにそのまま個々の「意味のまとまり」とし
てイメージ的に頭の中で理解している状態が、「英語を英語のまま
理解している」ということなんです。
そして、初心者や初級の段階に続く、第三の段階…
「個々の単語・熟語ではなく、【意味のまとまり】で聴き取れる」
段階というのが、実はこの段階というわけです。
いちいち、一つ一つの単語や熟語を文章化して理解するのではなく、
それぞれのフレーズやパターンといったより大きい「意味のまとま
り」をイメージ的に理解していく、というのが中級以降のリスニン
グの仕方です。
しかし、こんなことを書くと必ず言われるのが…
「そんなこと言っても、英語のフレーズやパターンは無限にあるじ
ゃないか。それを全部覚えるのは不可能だ!」
はいはい。そこが、実は大きな落とし穴なのです^^ 英語という敵
を相手に四苦八苦している人というのは、たいてい相手(英語・英
会話という敵)の本質を理解していません。
本当は、英語(だけでなく日本語でも、他のどんな言語でも)は、
定番のお決まりパターン・フレーズ(渡邉式ではこれを「ライン(=
セリフ)」と呼んでいます)を押さえるだけで、あとはそれの組み
合わせやバリエーションでほとんど事足りるものなのです。これ、
本当に重要ですよ。
ですから、単語や熟語といった「小さい」単位で英語を理解しよう
としてはいけません。より大きな単位、すなわちパターンやフレー
ズといった「意味のまとまり」で、英語の音声を理解していくよう
にします。
この「個々の単語・熟語ではなく、【意味のまとまり】で聴き取れ
る」段階というのが第3段階で、要するに中級以降のリスニングレ
ベルです。意味のまとまりで、英語の音声を聴き取る癖をつけると、
一つ一つの単語や熟語のことなんかどうでも良くなります。
それよりは、まとまったフレーズやパターンを丸ごと聴き取ること
で、英語を英語のまま、イメージとして理解できるようになるわけ
ですね。ただし、この段階でも実はまだ十分ではないのです。多分、
この段階に達している人であっても、字幕なしで映画を見ても完全
に理解することはなかなか出来ないはずです。
なぜか?
実は、この段階以降になると、リスニングでは英語の「構文」に意
識することが重要になってきます。第1段階~第3段階までは、英
語の音声の中で「聴き取れた」部分だけをまるでジグソーパズルの
ようにつなげて、半ば「当てずっぽう」で内容を「推測」するリス
ニングの仕方なわけです。しかし、より高度な理解力を求められた
場合は、そのような「推測」だけでは歯が立たなくなります。
もちろん、英語を母国語としない私たち日本人が英語の音声を聴き
取ろうとするとき、「推測」する力はとても重要です。常に、推理
をしながら、「ああ、こういうことを言っているんだな」と理解し
ていく姿勢は本当に大切です。ただし、リスニングも上級レベルに
なると、より正確な内容の把握・理解が必須となります。
その時必要となるのが英語の「構文」を理解する力なんですね。
「構文」というのは、簡単に言えば英語の「構造」のことです。例
えば、英語ではとりあえず先に何かを言って、その後にその「何か」
に説明を続けるような構文(構造)がよくあります。
他にも、英語特有の「構造」というのがあるわけですが、このよう
な構文(構造)を常に意識して英語を聴くようにすると、より正確
に内容を把握することが出来るようになります。また、構文(構造)
が分かっていれば、英語の音声を流れるままに理解することが出来
るようになります。
構文(構造)がよく分かっていない人は、どうしても個々の単語や
熟語のみを拾い集め、そこから推測することだけに固執してしまい
ます。聴き取れたいくつかのキーワードだけ、何回も反芻し、時間
だけが過ぎていくのです。
しかし、構文(構造)が分かれば、流れる英語の音声を、途中で戻
って訳すことなく、自然に順番通りに理解することが出来るように
なります。これが、上級のリスニングレベルというわけですね。
4.より細部の情報を聴き取り、理解するトレーニング
というわけで、ここからはより具体的なリスニング・トレーニング
の方法を詳細にお伝えしたいと思います。まず、英語の「音」を把
握する方法からご説明しますね。
既に[1]では簡単に英語の「音」を取るトレーニングの手順をお伝え
しましたが、ここでは「シャドーイング」を使った方法です。シャ
ドーイングというのは、以前は通訳者養成のための特殊なトレーニ
ングと思われがちでしたが、現在は一般的になってきていますので、
実践されている方も多いかと思います。
簡単に言えば、英語の音声を聴きながら、耳に入ってくる音をその
まま口に出すというトレーニングのことです。まぁこうやって書く
と「なーんだ、それだけか」と思いがちなのですが、これが案外難
しいんです^^; やったことがある人はわかると思いますが…
慣れてしまえば楽しんでやれますが、最初のうちはなかなか続かな
い。
しかし、リスニングでもスピーキングでも非常に効果が高いトレー
ニングですので、是非やって頂きたいと思います。
【基本手順】
まずは英語の音声を用意します。これについては、現在お手持ちの
英会話教材を使って頂くだけで十分ですし、これから何か高い教材
を買う必要もありません。
勿論、レンタル店で海外ドラマや洋画のDVDなんかを借りてきて、
その音声を使うのもまったく問題ないですよ。今はHuluとか、Gyao
とか、オンラインでも視聴することが出来ますね。
ただ、初めて実践される方はなるべくゆっくりした英語音声から始
めることをお勧めします。初心者向けのシャドーイング教材なども
ありますので、そのようなものから入ると取っつきやすいかも知れ
ません。
英語音声については必ず一時停止(ポーズ)や巻き戻し再生が出来
る音声を使うようにして下さい。それからトランスクリプト、要す
るにセリフ台本ですね。DVDなら英語字幕があるのでそれを使うの
もOKです(ただし、表示されている字幕とセリフが一致していると
は限りませんので、スクリプトが手に入るならそちらの方が確実で
す)
たいていの英会話教材ならスクリプトはついてますからOKですね。
あと重要なのがヘッドホン。ヘッドホンがなくても出来ないことは
ないですが、やはり英語音声をクリアに聴くためにも、あった方が
いいです。
ヘッドホンについては耳に入れるタイプではなく、出来れば耳にあ
てるタイプで、それを少しずらして外の音(自分の声と発音)が聞
こえるタイプにして下さい。まずは音声を聴き、それに合わせて間
髪入れずに聞こえた英語音声を「そのまま」口に出してずっとつい
て行きます。
この時、一つ一つの単語なんかを意識していては絶対について行け
ないですから、「音」だけを真似して口に出していきます。
多分最初はかなり難しいでしょう^^;あまりに出来なくても落ち込む
必要はないです。まったく出来ないという人は、スクリプトを見な
がらでも構いません。または、日本語の音声を使った「日本語」で
のシャドーイングを先にやって、シャドーイングというものがどん
なものなのかを体験するのも良いですね。
いずれの場合でも重要なのは耳に聞こえる音を「そのまま」口から
出すということです。その間で何かを考えてはいけませんし(まぁ、
多分考える余裕なんかないと思いますが…)、とにかく聞こえる英
語をどんどん、聞こえるままに口に出して行くわけです。
「聞こえるままに口に出す」
これが一体何の効果をもたらすのか?
なぜ「聴こえるままに口に出す」必要があるのか?
これは、私が提唱しているリスニング・トレーニングの第一段階と
して、英語の「意味」を取ることよりも「音」を取るスキルを先に
築き上げた方がリスニング力をつけるのに効果的だから、です。
「聴こえるままに口に出す」というのは、すなわち英語の音声その
ものを音楽のように、「音」として耳に入れ、「音」として口から
出すわけです。その間に意味とか、日本語への変換とか、そういう
邪魔な作業は一切入りません。ただ単に、英語の「音」を聞こえる
がままに「口」から出すことの重要性。
リスニング・トレーニングの第一段階では、シャドーイングを通し
て、その「重要性」に気付いて頂きたいのです。さて、話をシャド
ーイングの実践に戻しますが、ここまではシャドーイングの基本的
な手順をお伝えしました。簡単に言えば、英語の音声を聴きながら、
一つ一つの音のカタマリごとに聴こえたままに英語の「音」をその
まま真似て、まるでオウム返しのように音声を繰り返して発音する
わけです。
これをある程度やってみて、少し慣れたら、いよいよ自分の実力を
試してみて下さい。結局、シャドーイングを「ただやるだけ」では、
間違い箇所などに気付かず、それを惰性的に続けていてもあまり意
味がないのです。
従って、シャドーイングを行ってみて、自分が間違えた箇所(聞き
取れない・口に出来ない)で音声を一時停止にし、スクリプトがあ
ればそこに印をつけます。これを繰り返し、自分がどこで何を間違
えたか客観的に調べてみましょう。なお、音声については教材や
DVDなど色々と使えるものがあると思いますが、あまりとっかえひ
っかえ色々なものに手を出し過ぎず、一つのものをじっくりとやる
方が効果的です。
こうして、シャドーイングにおける自分の弱点をまとめると、そこ
に一つの傾向が見えてくるはずです。教材ごとに自分の弱点をまと
め、間違いを必ず復習して次に同じ間違いをおかさないよう注意し
ましょう。この一連のトレーニングが、リスニング・トレーニング
の基本となります。
そして、さらに上級のトレーニングです。シャドーイングなどで、
英語の「音」を捉える訓練を続けていくうちに気付くことがあると
思います。それが、英語独特の「リズム」というもの。
よーく聴いていると、そこに法則があるのがわかってきます。
まぁ、英語のリズムなんて言うとよく市販の英会話本なんかにも書
いてありますが、これを本当に理解、体得している人っているので
しょうか。実は、英語だけでなく、言葉にはそれぞれ特有のリズム
があります。
もちろん、私たちが話している日本語にも、日本語特有のリズムが
あるんですよ。で、このような「リズム」を気にしながら英語の音
声を聴いてみる癖をつけてみて下さい。最初は分かりにくいのです
が、徐々にそこに独特の「リズム」があり、それは法則によって決
まっていることが分かるようになります。
そして、このリズムによって分けられた単位が英語の「音のかたま
り」なんですね。これが、まず重要です。
また、同時に英語独特の「意味の切り方」があることに気付いて下
さい。例えば以下のような英語の音声があります:
I heard that he was busy yesterday but that's ridiculous
'cause I saw him at the theater seeing a movie.
これをネイティブが話している通りに「切る」と、以下のような「か
たまり」に分けることが出来ます:
I heard that / he was busy yesterday/ but that's ridiculous/
'cause I saw him/ at the theater/ seeing a movie.//
これが、英語音声の「意味のかたまり」というものです。上の例で
は、分かりやすいようにかなり短く「切って」いますが、実際はも
っと長い単位で「かたまり」になることが多いです。
このように、英語の音声を聴く際には上記のような「音のかたまり」
と「意味のかたまり」に注意して聴く癖をつけていくと良いです。
実際のトレーニングとしては、シャドーイングをやる際にトランス
クリプトに上記のような(/)スラッシュを書き込んでいくのも良いで
すし、または自分だけが分かるような印をつけていくのも良いです。
要は、英語特有の「かたまり」を見つけて、それがどのような「法
則」で分けられているのかを「体得」出来れば良いわけです。あな
たなりの「かたまり」の見つけ方が体得できればしめたもの。この
ようなトレーニングを続けることで、英語のリスニングがグッと現
実的なものになります。
5.トレーニングの継続(重要)
さて、ここまで色々と詳しく書いてきましたが、ここまで来て実は
「一番重要なこと」があります。それが、「トレーニングの継続」
というもの。
これは、英語の勉強においてはどのスキルであっても言えることで
すが、特にリスニングにおいては「継続すること」がとても重要な
んです。
実は私の周りにもいるんですが、TOEICのテスト前なんかは集中し
てリスニングの練習をするわけですね。それで、数ヶ月でバーっと
リスニング力を伸ばして、割と試験では良いスコアなんかを取るわ
けですが、その後油断して英語を聴いていないと、もうすぐに「元
の耳」に戻ってしまうんです。
一生懸命リスニングの練習を続けてきて、やっと「英語耳」完成だ!
と喜んでも、そのトレーニングを継続させないと恐ろしいスピード
で耳がまた元の「日本語仕様」に戻ってしまうわけです。
これを避けるためにも、ある程度のレベルまでリスニング力を向上
させることが出来たら、一日の練習量を少なくしても構いませんが、
とりあえずトレーニングは「継続」するようにしましょう。
ここが非常に重要な点ですが、以外と忘れられているというか、あ
まり重要に思われていない方が多いので最後に書かせて頂きました。
どうか頑張ってリスニング力をつけて下さいね!
渡邉英喜(医薬通訳者・翻訳者)