論点 ドイツ経済絶好調の秘密

論点
ドイツ経済絶好調の秘密
なぜドイツは他の欧州各国が不調の時に、経済状況が好調だったのか?
ユーロの導入
シュレーダー改革
シュレーダー改革とは 1998 年から 2005 年まで首相を務めたシュレーダー氏の改革のことで、こ
の改革は労働市場・社会保障・税制、企業制度の 3 つを中心に改革を行った。
図表
シュレーダー改革の全体像
図表 単位労働コストの推移
図表
失業率の推移
ユーロの導入、そしてシュレーダー改革によって、ドイツの輸出産業が他国と比べてより強くなり、
リーマンショックや欧州債務危機が起きても輸出産業がドイツ経済を力強く後押しすることとなった。
ドイツ経済が絶好調の理由に、ユーロの導入、シュレーダー改革によって強くなった輸出産業が大きく
寄与していると述べたが、以下ではドイツの輸出産業についてみていく。
ドイツの輸出産業
図表
輸 出 を 地 域 別 で み る と EU 2 7 カ 国 が
ドイツの主要地域・国別輸出
59.2%と過半数を占めているのが現状であ
る。しかし近年、ロシアでは 30.5%増、中
国は 20.4%増、インドは 17.1%増で BRICS
などの新興国のドイツからの輸出が伸びて
きている。
<輸出品目(%)2012 年>
機械類 18.6
自動車・部品 16.6
化学製品 14.4
電子製品 9.0
食料品 4.4
その他 37.0
図表
輸出上位 10%の企業が輸出総額に占める割
合
ドイツの輸出産業を支えているのは、大企
業はもちろんのことだが、中小企業もドイ
ツの輸出産業を支えるのに大きな役割を果
たしている。輸出上位 10%の企業が輸出総
額に占めるシェアを見ると、日本や米国で
は 9 割を超えていて、輸出主体が少数の大
企業に集中しているが、ドイツでは 69%と
抑えられており、輸出主体が中小企業まで
分散していることが分かる。
ドイツの中小企業は輸出産業を支えるうえで大きな役割を果たしているが、その中でも
「隠れたチャンピョン企業」と呼ばれる世界中で活躍している無名の中小企業の存在が大きい。
隠れたチャンピョン企業とは?
隠れたチャンピョン企業の定義
1 世界市場で特定の分野トップ 3 または、その企業が位置している大陸のトップ
2収益は 50 億ドル以下
3一般にはほとんど無名な企業を指す
図表
チャンピョン企業の国別比較
隠れたチ ャンピョン
隠れたチャンピョン企業の特徴として
企業の国 別比較を見
は、特定の製品・技術の特化戦略をとり、
ると、ドイツが 1,307
海外に積極的に事業展開することであ
社とほか の国と比べ
る。こうした企業は仲介業者に海外事業
るととて も多いこと
を委ねず、外国の顧客と直接取引を行っ
がわかる。
ている。直接取引によって外国顧客と親
密な関係を築くことができ、それが他社
にとって参入障壁となり、非価格競争力
を得ることにもつながる。
具体的に見てみると
図表
隠れたチャンピョン企業の具体的な戦略例
図で簡単に示すと
図表
隠れたチャンピョン企業の戦略
総括
ドイツ経済絶好調の秘密はユーロとシュレーダー改革によって強くなった輸出産業が寄与している。また大企
業はもちろんだが、ドイツの中小企業もその輸出産業を力強く支えるうえで大きな役割を果たしている。