家電リサイクル法制定の背景と目的<26年度版

1.
家電リサイクル法の概要
1.1
家電リサイクル法制定の背景と目的
(1)
循環型社会を目指す法体系の整備
大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済活動を続けてきたわが国では、廃棄物最終
処分場の逼迫や有害物質の環境への影響等が問題となっている。また、地球温暖化や
鉱物資源の枯渇など地球規模の問題も懸念されている。こうした環境制約や資源制約
への対応を新たな発展の要因として前向きに捉え、環境と経済が両立した新しい循環
型社会システムの構築を目指すことが急務となっている。
循環型社会システムを構築するためには、従来のリサイクル(1R)政策から、いわ
ゆる3R(リデュース:廃棄物の発生抑制、リユース:再使用、リサイクル:再生利用)
の取組みを進めていく必要があるとの背景から、廃棄物減量、リサイクル推進に係る
施策が総括され、平成 13 年1月に「循環型社会形成推進基本法」が本格施行された。
図表Ⅰ-1
循環型社会形成推進のための法体系
環境基本法
H6.8
本格施行
環境基本計画
H24.4
改正公表
環境
自然循環
社会の物質循環
H13.1 本格施行
循環型社会形成推進基本法(基本的枠組み法)
○基本原則 ○国、地方公共団体、事業者、国民の責務
循環型社会形成推進基本計画
社会の物質循環の確保
天然資源の消費の抑制
環境負荷の低減
○国の施策
H15.3 公表
公表
H15.3
H25.3
H25.5 改定
改定
:国の他の計画の基本
資源有効
利用
促進法
廃 棄 物 処 理 法
H13.4 改正施行
H22.5 一部改正
・廃棄物の排出抑制
・廃棄物の適正処理(リサイクルを含む)
・廃棄物処理施設の設置規制
・廃棄物処理業者に対する規制
・廃棄物処理基準の設定 等
H13.4 本格施行
・再生資源のリサ
イクル
・リサイクル容易
個別物品の特性に応じた規制
指定再資
源化製品
な構造
・材質等の工夫
容
器
包
装
リ
サ
イ
ク
ル
法
H12.4
本格施行
H18.6
一部改正
家
電
リ
サ
イ
ク
ル
法
食
品
リ
サ
イ
ク
ル
法
建
設
リ
サ
イ
ク
ル
法
自
動
車
リ
サ
イ
ク
ル
法
小
型
家
電
リ
サ
イ
ク
ル
法
H13.4
本格施行
H13.5
本格施行
H19.6
一部改正
H14.5
本格施行
H17.1
本格施行
H25.4
施行
グリーン購入法
・分別回収のため
の表示
・副産物の有効
利用の促進
リデュース
リサイクル → リユース
リサイクル
(1R)
(3R)
小
形
二
次
電
池
H13.4
開始
パ
ソ
コ
ン
事業系
H13.4開始
家庭系
H15.10 開始
[国等が率先して再生品などの調達を推進]
H13.4 本格施行
[出典]経済産業省資料を基に一部加筆
1
この基本的枠組の下、3Rの促進を目的とする「資源の有効な利用の促進に関する
法律」が最初に制定され、その後廃棄物発生量に占める割合が高い製品を対象とした
個別リサイクル法が、順次制定・施行されている。個別リサイクル法は対象製品の特
性やライフサイクル等に合わせた法規定を有しており、「特定家庭用機器再商品化法
(以下「家電リサイクル法」という。)」もその一つに位置づけられる。
図表Ⅰ-2
各廃棄物等への法・ガイドラインの対応状況
産業廃棄物
一般廃棄物
その他
(パソコン、ガス機器など)
家 具
衣料品
家電製品
紙
容器包装
資源有効利用促進法
(指定再資源化製品)
・パソコン ・二次電池
家電リサイクル法
・エアコン、テレビ、 冷蔵庫、洗濯機
・消費者がリサイクル費用を負担
・廃家電を小売店から引取り、
製造業者が再商品化
小型家電リサイクル法
・家電リサイクル法対象製品を除く家
電製品(※)
・市町村等が回収した使用済小型家
電等を認定事業者が再資源化
容器包装リサイクル法
・缶、びん、ペットボトル、紙・プラスチック
製容器包装
・容器包装の市町村による分別収集、製
造・利用事業者による再資源化
(事業系のみ)
生ごみ
建設リサイクル法
・コンクリート、アスファルト、木材
・工事の受注者が建築物を分別解体、
建設廃材等を再資源化
家畜排せつ物法
・処理・保管施設の管理基準の遵守、
施設の整備
食品リサイクル法
・食品の製造・加工・販売業者が食品
廃棄 物を再資源化
資源有効利用促進法
3R配慮設計・分別回収表示
・指定省資源化製品
・指定再利用促進製品
・指定表示製品
副産物の3R促進・リサイクル材等使用
・指定副産物
・特定省資源業種
・特定再利用業種
産業構造審議会ガイドライン
・品目ガイドライン(35品目)
建設業
農 業
食料品製造業
電気・ガス・熱供給
・上下水道業
パルプ・紙
鉄鋼業
化 学
鉱 業
(事業系、家庭系)
その他
※一般消費者が通常生活の用に供する電子機器その他の電気機械器具のうち、
効率的な収集運搬が可能であって、再資源化が特に必要なものを政令指定
自動車リサイクル法
・使用済みの自動車
・購入者(所有者)がリサイクル費用を負
担、製造事業者等がフロン・エアバッグ・
シュレッダーダストの引取り、リサイクル
自動車製造業
[出典] 「資源循環ハンドブック 2014 法制度と3Rの動向」(経済産業省、p.14)を参考にして作成
(2)
家電リサイクル法の目的
家電リサイクル法は、家庭や事業所から排出される特定家庭用機器のリサイクルシ
ステムを確立し、効率的なリサイクルと廃棄物の減量を図ることを目的としている。
特定家庭用機器廃棄物について、排出者は収集・運搬及び再商品化等の料金を負担
し、小売業者は排出者からの引取義務と製造業者等への引渡義務を負い、製造業者等
は小売業者からの引取義務と再商品化等実施義務を負うことが定められている。
(3)
家電リサイクル法の制定に向けて
家電リサイクル法の本格施行以前、一般家庭から排出される特定家庭用機器の約8
割は小売業者によって、また約2割は市町村によって回収されていた。回収された特
定家庭用機器の約半分は直接埋立され、また残りについても破砕処理を経て、一部金
属分の回収が行われる場合があったが、ほとんどは最終的に埋立に回っていた。とり
わけ埋立処分場の逼迫は、当時、何らかの対策を講ずるべき喫緊の課題とされていた。
2
こうして、廃棄物の減量と有用な部品・素材のリサイクルを図り、循環型社会の実
現を目指すため、特定家庭用機器のリサイクルを促進する新たな仕組みである家電リ
サイクル法が、平成 10 年5月に国会にて成立し、同年6月に公布、平成 13 年4月よ
り本格施行された。
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