低・中拘束圧で繰返し載荷を受ける豊浦砂の力学特性に関する実験的

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D - 07
第 50 回地盤工学研究発表会
(札幌) 2015 年 9 月
低・中拘束圧で繰返し載荷を受ける豊浦砂の力学特性に関する実験的研究
砂質土
1.
繰返し三軸試験
液状化
名古屋工業大学
学生会員
名古屋工業大学
国際会員
○細谷 旭弘
顧 琳琳
張 鋒
積ひずみ εv の値に着目すると,緩詰めの状態では,初期
はじめに
地震発生に伴う地盤の挙動や液状化を精度よく評価す
拘束圧が小さくなるほど,早く膨張しているのに対し,
るために,要素試験や数値解析を用いることが多い.地
中密な状態では,どの拘束圧でもほとんど変わりがない
盤の変形特性を表現するためには,要素試験によって
結果となった.Fig.2 に示すように,初期拘束圧が大きい
種々の拘束圧における砂の力学挙動を把握する必要があ
ほど平均有効応力の減少が小さくなっていく.有効応力
る.中・高拘束圧(σ’m0≧98kPa)での要素試験は多く実
経路は一旦減少するが,後ほど上昇に転じ,拘束圧によ
施されているが,低拘束圧(σ’m0≦49kPa)の要素試験は
らず,限界状態におけるせん断応力比の線(略称:限界
まだ十分とは言えない.本稿では,低・中拘束圧条件下
線)に沿っていく.この限界線は勾配が一定であるが,
での非排水繰返し三軸試験,排水・非排水単調載荷三軸
少しずれている結果となった.以上より,間隙比がほぼ
試験を実施し,異なる間隙比の砂の力学挙動を検証した.
同じであっても,拘束圧の違いにより力学挙動が変わる
2.
ため,拘束圧も砂の粗密状態を判断する要因になると考
試験概要
えることができる.
本研究では,単調・繰返し載荷可能な三軸試験機を用
いて先に述べた 2 つの試験を実施した.試験には Table.1
Table.2 排水条件における状態変数
に示す豊浦砂を用いた直径 5cm,高さ 10cm の円柱供試
体を用いた.供試体作製方法は水中落下法で,緩詰めの
(1)
(2)
(3)
5
10
20
(4)
状態(e=0.77~0.90 程度)と,3 層に分けて 15 回突き固め
σ’m0 (kPa)
た中密な状態(e=0.70~0.76 程度)とした.また,ラテッ
Sample
loose
dense
loose
dense
loose
dense
loose
dense
e
0.85
0.72
0.84
0.73
0.91
0.77
0.88
0.74
クス製のメンブレンで,従来の厚さ 0.20mm のものと,
2.5
-8
2.0
1.5
-6
1.5
-6
1.0
-4
1.0
-4
0.425
0.5
-2
0.5
-2
0.102
0.0
0
3
Gs(g/cm )
2.65
均等係数
最大粒径(mm)
1.37
最大密度 ρmax(mm)
1.647
最小粒径(mm)
最小密度 ρmin(mm)
1.347
60%粒径(mm)
0.281
最大間隙比 emax
0.975
30%粒径(mm)
0.241
最小間隙比 emin
0.613
10%粒径(mm)
0.206
3.
q/p'
Table.1 豊浦砂の物理特性
-0.5
20kPa
98kPa
q/p'
q/p'
q/p'
q/p'
loose
0
2
4
6
8
2
12
10
q/p'
-10
5kPa
10kPa
2.0
土粒子の比重
Volumetric strain εv(%)
2.5
Volumetric strain εv(%)
新たに従来よりも薄い厚さ 0.15mm のものを使用した.
98
5kPa
10kPa
20kPa -10
98kPa
-8
q/p'
S
S
q/p'
0.0
-0.5
Deviator strain εd(%)
dense
0
2
4
6
8
0
2
10 12
Deviator strain εd(%)
(α)緩い砂
(β)中密な砂
Fig.1 排水条件の応力比~ひずみ関係
試験結果
Table.3 非排水条件における状態変数
本研究では,先に述べた 2 つの試験を実施し,初期拘
束圧,初期間隙比,及びメンブレンの違いによる影響に
σ’m0 (kPa)
ついて調べた.排水・非排水変位制御三軸試の状態変数
を Table.2,Table.3,試験結果を Fig.1,Fig.2,非排水繰
(1)
(2)
(3)
5
10
20
(4)
98
Sample
loose
dense
loose
dense
loose
dense
loose
dense
e
0.83
0.71
0.89
0.73
0.89
0.76
0.88
0.77
まず,変位制御三軸試験の考察をする.この試験での
載 荷 変 位 速 度 は 0.04mm/min で あ り , メ ン ブ レ ン は
0.20mm のものを使用した.Fig.1 は応力~ひずみ関係,
Fig.2 は p’,q を σ’m0 で除した有効応力経路である.Fig.1
を見てみると,低拘束圧条件下でもダイレイタンシーが
発生していることがわかる.q/p’の値に着目してみると,
緩詰めの状態では,拘束圧 98kPa における q/p’の値が 5,
2.5
2
1.5
5kPa
10kPa
20kPa
98kPa
1
0.5
0
loose
0
0.5
1
1.5
(α)緩い砂
10kPa と 20kPa の間にあることに対し,中密な状態では
2
2.5
Mean effective stress p'/'m0
Stress difference q/'m0
Fig.3 に示す.
Stress difference q/'m0
返し三軸試験の状態変数を Table.4,Table.5,試験結果を
2.5
2
1.5
5kPa
10kPa
20kPa
98kPa
1
0.5
0
dense
0
0.5
1
1.5
2
2.5
Mean effective stress p'/'m0
(β)中密な砂
Fig.2 非排水条件の有効応力経路(無次元)
低拘束圧よりも大きな値をとっていることがわかる.体
Experimental research on the mechanical behavior of Toyoura sand under low and
normal confining pressure with monotonic and cyclic triaxial loading tests
Hosoya, A., Gu L. L, Cho, H. (Nagoya Institute of Technology)
455
10
有効応力経路と応力~ひずみ関係を示し,Fig.3 はメンブ
レンの違いを表した図で,Fig.4 は p’と q をそれぞれ σ’m0
で除した図である.Table.3,4 の DA=5%,10%は両振幅
ひずみ幅が 5%,10%に達するまでの繰返し載荷回数を示
す.本稿では,せん断応力比 q/2σ’m0 = 0.20 の試験結果に
ついて述べる.
10
q/2'm0= 0.20
Deviator stress q(kPa)
Deviator stress q(kPa)
次に,繰返し三軸試験の考察をする.Fig.3 と Fig.4 は
5
0
-5
membrane
0.20 mm
membrane
0.15 mm
-10
-10
0
10
20
q/2'm0= 0.20
5
0
membrane
0.20 mm
membrane
0.15 mm
-5
-10
-10
30
-5
Mean effective stress p'(kPa)
Fig.3 を見てみると,従来のメンブレン(0.20mm)で
0
5
10
Axial strain(%)
Fig.3 σ’m0=20kPa,中密な状態でのメンブレンの違い
は有効応力が負になってしまうのに対し,新しいメンブ
レンではその影響が小さくなっていることがわかる.軸
Table.4 非排水繰返し三軸試験による液状化の振動変数
ひずみに着目してみると,従来のメンブレンでは圧縮側
に偏っていたのに対し,新しいメンブレンでは引張側に
(1)
(2)
5
10
σ’m0 (kPa)
偏っていることがわかる.これより,メンブレンがより
(3)
20
Sample
loose
dense
loose
dense
loose
dense
e
0.91
0.76
0.90
0.78
0.89
0.74
ではないかと考えられる.これを踏まえ,繰返し試験で
DA=5%
1.61
10.58
0.60
7.98
0.62
4.63
は厚さ 0.15mm のメンブレンを使用した.
DA=10%
2.78
-
1.57
15.51
1.55
10.48
薄いほど,メンブレンの剛性による影響が少なくなるの
続いて種々の拘束圧における試験結果の考察をする.
0.6
態のどちらもサイクリックモビリティ挙動を伴った液状
化が発生していることがわかる.初期拘束圧が大きくな
るほど,軸ひずみの発達が早く,DA=5%,10%に達する
q/2'm0= 0.20
0.4
0.2
0
-0.2
繰り返し載荷回数が少なくなる傾向を示した.初期拘束
-0.6
-0.2
比の違いに着目すると,有効応力経路は中密より緩詰め
loose
dense
0
0.2
0.4
0.6
Deviator stress q/'m0
0.6
応力が原点に近づき,メンブレンの影響が小さくなる.
まとめ
q/2'm0= 0.20
0.4
0.2
0
-0.4
果,ほぼ同じ間隙比において拘束圧により結果が異なる
-0.6
-0.2
ことから,間隙比だけでなく,拘束圧も砂の粗密状態を
判断する要因になるのではないかと考えることができる.
loose
dense
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
Mean effective stress p'/'m0
loose
dense
-5
0
5
10
1.2
0.6
q/2'm0= 0.20
0.3
0
-0.3
-0.6
-10
loose
dense
-5
0
5
10
Axial strain(%)
(2)σ’m0=10kPa
非排水繰返し三軸試験を実施した結果,低拘束圧条件
下では,特に緩詰めの状態において初期拘束圧が大きい
0.6
Deviator stress q/'m0
る.
-0.6
-10
Axial strain(%)
-0.2
排水・非排水変位制御単調載荷三軸試験を実施した結
拘束圧も砂の粗密状態を判断する要因になることがわか
1.2
q/2'm0= 0.20
0.4
0.2
0
-0.2
-0.6
-0.2
で,従来のもの(0.20mm)と違った結果が得られ,軸ひ
0.6
q/2'm0= 0.20
0.3
0
-0.3
-0.4
今回新たに 0.15mm の薄いメンブレンを使用すること
Deviator stress ratio q/m0
な状態に着目すると,初期拘束圧が大きくなるほど有効
依存性は繰返し載荷においても確認できた.すなわち,
1
Deviator stress ratio q/m0
荷回数は緩詰めの方が小さくなる傾向も分かった.中密
返し載荷回数が小さくなる傾向が得られた.初期拘束圧
0
(1)σ’m0=5kPa
ことがわかる.また,DA=5%,10%に達する繰り返し載
ほど軸ひずみの発達が早く,DA=5%,10%に達する繰り
0.8
Mean effective stress p'/'m0
の方が原点をより近く通って,軸ひずみが発達している
4.
q/2'm0= 0.20
0.3
-0.3
-0.4
圧依存性は繰返し載荷においても確認できた.初期間隙
0.6
Deviator stress ratio q/m0
Deviator stress q/'m0
Fig.4 に示すように,低拘束圧条件下の緩詰め,中密な状
loose
dense
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
Mean effective stress p'/'m0
1.2
-0.6
-10
loose
dense
-5
0
5
10
Axial strain(%)
ずみが引張側に発達することから,メンブレンの剛性に
(3)σ’m0=20kPa
よる影響が従来より小さくなったと考えられる.今後は
Fig.4 非排水繰返し三軸結果
0.15mm のメンブレンを用いて試験を実施していきたい.
Table.3 σ’m0=20kPa,中密な状態における状態変数
membrane
0.20 mm
0.15 mm
e
0.73
0.74
DA=5%
34.89
4.63
DA=10%
45.5
10.48
参考文献
1) Ye. B (2007): Experiment and Numerical Simulation of Repeated
Liquefaction – Consolidation of Sand, Doctoral Dissertation, Gifu
University
2) Zhang. F, Ye. B, Noda. T, Nakano. M and Nakai. K(2007):
Explanation of Cyclic Mobility of Soils: Approach by Stress-Induced
Anisotropy, Soils and Foundations, Vol.47, No.4, 635-648
456