―――――――――――――――――――――― 世界食品安全イニシアチブ(GFSI)とは何か What is GFSI (仮訳)鹿児島大学名誉教授 岡本嘉六 世界食品安全イニシアチブ(GFSI)は、食料供給網の安全性を確保するために必要な 制御を、食品安全管理システムに関するリーダーシップと助言を通して提供する業界主導の 活動である。この活動は、国際機関、政府、学界および世界の食料業界に対するサービス提 供者とともに、小売業、製造業および食品サービス業からの世界の指導的食品安全専門家の 間における協力を通して進められている。彼らは、業界全体の食品の安全性を管理するため 知識を共有し、調和のとれた取組み方を推進する技術的作業グループ、利害関係者会議およ び地域のイベントで一緒に会議を持っている。GFSI は、加盟員によって運営されている一 致を原則とする(parity-based)世界的な業界連携網 消費財フォーラム(CGF)によって 管理されている。 GFSI の展望 消費者にとってどこにおいても安全な食品 GFSI の使命 世界中の消費者へ安全な食品を届ける際の信頼性を確保するため食品安全管理システ ムの継続的な改善を図る。 GFSI の目標 1. 効果的な食品安全管理システムの間の同等性と集中性を普及することによって食品 安全上のリスクを減らす 2. 冗長性を排除し、業務効率を改善することによって世界的な食料システムにおける 食品安全上のリスクを減らす 3. 一貫性のある、効果的な世界的な食料システムを創造するため、食品安全における 資格を作り、能力を構築する 4. 協力、知識の交換および連携網構築のための国際的利害関係者の特別な窓口を提供 する。 GFSI の為すべきこと ● 食品安全管理計画の認識を指導文書で定義されている要件に合わせる ● 世界的連携網内で食品安全専門家と一緒に活動する ● 戦略的な問題に関する複数の利害関係者のプロジェクトを通して世界的な変化を推 進する(たとえば、監査能力、規制問題、小規模供給者にとっての食品安全) -1- ● ● ● ● ● GFSI がしてはならないこと 小売業者、製造業者あるいは食品安全計画の所有者のための方針を作る 認定または認証の活動を行う 食品安全のシステムや規格を保持する 訓練を行う 動物福祉、環境、倫理などの食品安全の範囲外のあらゆる内容に関与すること。 背景 1990 年代に、BSE、ダイオキシン、リステリア菌を含め、知名度の高い国際的な食品 安全上の一連の危機があった。食品業界内において、それぞれが独自に、集中性について考 慮することなく策定した無数の社内基準に対して、小売業および製造業が工場を監査した ので、監査疲れが大きくなっていった。その結果は一貫性を示さなかった。消費者および 食品業界の信頼性は低かった。 世界の食品小売業の最高経営責任者は、現在の消費財フォーラム(CGF)の前身である 国際食品小売業委員会(CIES)の独自の連携網を通して活動し、共同行動を取ることで合意 した。2000 年 5 月に、非営利財団 世界食品安全イニシアチブ(GFSI)が設立された。 提案 主な目標は、ごく初期に設定され、説得力のあるメッセージとして残っている;一度認 定されたら、どこでも受け入れられる。GFSI は、既存の基盤があったので、ベンチマーク の取組み方を選んだ。英国小売り業組合は、既に 1998 年に最初の BRC 食料安全規格を刊 行した。ドイツとフランスの小売業者は、国際食品規格(IFS)において一緒に仕事を始め ており、北米の小売業者の貿易協会は Food Marketing Institute(FMI)が Safe Quality Food(SQF)規格を開発していた。 ベンチマークモデルは、市場における柔軟性と選択肢を残しながら、それぞれの食品安 全計画の間の同等性を確実に判定する。 GFSI の現在 GFSI は、ベンチマークを行う組織以上に大きくなるために設置された。その協調的な 取組み方は、技術的作業グループと利害関係者の会議、協議会および地域のイベントにおい て供給網全体から国際的な食品安全性の専門家を一堂に集める。彼らは知識を共有し、「消 費者にとってどこにおいても安全な食品」の展望を共有した調和された取組み方を推進する。 GFSI の戦略的方向性は、小売業者、製造業者および食品サービス事業者からの代表者 による業界主導の GFSI 理事会によって定められる。それは、Royal Ahold 社の Dick Boer 最高経営責任者と Nestlé 社の Paul Bulcke 最高経営責任者が共同議長を務める消費財フォ ーラム理事会によって支えられている。 GFSI の日常的な管理は、GFSI は、加盟員によって運営されている一致を原則とする -2- (parity-based)世界的な業界連携網 消費財フォーラム(CGF)によって管理されている。 GFSI に関与する方法 GFSI についてさらに詳細を調べ、我々の世界的な利害関係者のための連携網構築、知 識の交換ならびに最善の食品安全慣行と情報の窓口に加わるためには、いくつかの方法があ る。 ● 世界食品安全会議(email [email protected])の前に開催さ れる GFSI 利害関係者年次総会に参加する。 ● 世界食品安全会議に出席する。そこで、並行開催される分科会で GFSI についての 詳細を見つけられる。 ● GFSI 技術的作業グループ: 全ての技術的作業グループは現在完了しているが、 GFSI から定期的な更新情報([email protected])を受信する ため申し込めば、新たなグループができる時全ての GFSI 利害関係者に知らせる。 作業グループ当り 1 名の加盟会員とするが、1 社が複数の作業グループに代表を送 ることができる。 ● GFSI の更新情報、ニュースレター、LinkedIn & Twitter:ホームページに登録す ることによって年 3 回発行される GFSI ニュースレターを受信することができる。 定期的更新(ニュースリリース、利害関係者協議など)のため、あなたの詳細な連 絡先を [email protected] に送ってください。LinkedIn 上およ び GFSI on Twitter @myGFSI で「世界食品安全イニシアチブ」GFSI グループを 見つけることができる。 GFSI は以下の通り「会員システム」を採用していないことに注意してください: 我々 は食料供給網に関連する様々な利害関係者から構成される開かれた協力フォーラムである。 ただし、GFSI は、消費財フォーラム(CGF)と呼ばれる国際貿易協会によって管理されて おり、あなたの会社は会員になることができる。CGF website は会員に関するより詳細な 情報を提供しており、貴社が興味を持つかも知れない世界食品安全会議やその他のイベント の割引がある。 訳注: 「背景」に GFSI 設立に至る動機が語られており、1990 年代の HACCP 認証シス テム乱立のなかで、どのシステムの認証を取得しても消費者はおろか流通業界でも信頼して もらえない状況が深刻だったことが判る。A 認証より B 認証が、それより C 認証がと際限 なく認証の差別化を図れば、認証の意味がなくなる。 「GFSI の展望」で「消費者にとってどこにおいても安全な食品」を掲げ、「一度認定 されたら、どこでも受け入れられる」を基本理念として設立された GFSI は、新たな認証 システムを創設するのではないことを「GFSI がしてはならないこと」に明記し、乱立した 認証システムを「ベンチマークによる同等性確認」で整理することを目指した。消費者や流 通業が必要としている安全性認証は、認証システムを運営する企業利益のためのものであっ てはならない。 -3- ―――――――――――――――――――――― 世界食品安全イニシアチブ(GFSI)の歴史 History 年 主な出来事 2000 5 月に GFSI を設立 2001 8 月に指針書第 1 回草案を刊行 9 月に第 1 回「国際食品安全会議」をスイス、ジュネーブで開催 2003 1 月に第 1 回ベンチマークの結果を公表(EFSIS、BRC、IFS、Dutch HACCP) 4 つの認知したいずれの規格も受け入れることを Albert Heijn 氏が発表 GFSI 財団がベルギーの法律の下で設立され、諮問委員会が理事会となる 2005 (Tesco、Wal-Mart、Metro、Carrefour、Migros、Royal Ahold、Loblaw および Delhaize で構成) 2006 9 月に特別委員会が解散し、第 1 回技術委員会が立上げられた 「GFSI の飛躍的前進」:7 つの主要小売(Tesco、Wal-Mart、Metro、 2007 Carrefour、Migros、Royal Ahold および Delhaize)が GFSI によるベン チマークされた食品安全システムの受入れを発表 2008 4 月に東京と中国で第 1 回ロードショー 小規模供給者のための要件に関して作業開始:GFSI 国際市場計画 2009 2 月に技術委員会を技術作業グループに再構成 2010 国際食品安全会議を世界食品安全会議(Global Food Safety Conference) に改称し、第 1 回を米国ワシントンの North America で開催 2011 GFSI 指針文書第 6 版を刊行:供給網全体を明確に含められる新たなモジ ュール様式 製造業者のための GFSI 世界市場計画に着手 2012 1 月に第 1 回 GFSI 地方グループを日本で着手 第 1 次生産者のための GFSI 世界市場計画に着手 2014 「GFSI 有効性研究」の第 1 回調査が食品事業者への GFSI の影響を評価 するために実施された ―――――――――――――――――――――― 組織と統治 Structure and Governance 世界食品安全イニシアチブ(GFSI)は、消費財フォーラムの柱であり、非営利を基礎 -4- として活動している。GFSI は、プログラムとそれを実現するための知識の戦略的方向を提 供する 4 つの主要なグループで構成されている;GFSI 理事会、GFSI 技術作業グループ、 GFSI 地方グループおよび GFSI 利害関係者グループ。 GFSI 理事会(GFSI Board) GFSI 理事会は、主要な小売業者、製造業者および食品サービス事業者から選出された 委員で構成されている。彼らは戦略的方向性を提供し、GFSI の日常的管理を監督する。GFSI 利害関係者グループの見解を考慮しながら、彼らは GFSI 技術作業グループおよび GFSI 地方グループに委任事項を提供する。会員は招待のみによる。 GFSI 技術作業グループ GFSI 技術作業グループは、2006 年 9 月にできた元の技術委員会から改組され、小売業 者、製造業者、食品サービス業者、規格保有者、認証機関、認定機関、国際機関およびその 他の技術的専門家で構成される。2009 年 2 月に、GFSI 理事会は技術委員会を、年 3 回会 合を開き、年間を通じて独立して一緒に作業を続ける技術作業グループに再構築することを 決めた。GFSI の作業は、これらの専門家の献身や彼らが在籍する会社の支援なしで、年を 越える方法で繰り上げてはならない。現在開催されている作業グループについてのさらなる 情報を見つけるには、「Technical Working Groups」のページをご覧ください。 -5- GFSI 地方グループ 世界的戦略を地方段階で実行するため、GFSI 理事会は地域連携網、GFSI 地方グルー プを創出することを決定した。世界の様々な地域で GFSI により主導される活動を支援する ため、地域全体の食品の安全性を管理して改善するため知識を共有し、調和された取組み方 を推進する GFSI の目標を地方グループは支える。これまでに確立された地方グループにつ いての詳細を調べるには、「Local Groups」のページをご覧ください。 GFSI 利害関係者グループ GFSI 利害関係者は、このイニシアチブに従事することを望むあらゆる利害関係者であ る。彼らは、戦略的優先事項を討議する世界食品安全会議に先立って毎年行われる会議を通 して、意思決定手順に参加する。彼らの見解は、GFSI 理事会によって検討され、年次作業 計画のための基礎となる。利害関係者とのさらなる協議は一年中続いている。 ―――――――――――――――――――――― 便益 Benefits GFSI の協調的な取組み方は、次の利点を達成するために一緒に活動するように部門に 跨る全ての利害関係者を活用できる。 食料システムに対して ● より安全な政界的供給網 ● 製品の完全性を改善 ● 市場への利用能の改善 ● 繰返しと監査疲れを減らす ● 比較可能な監査の取組み方と結果 ● 認定された食品安全システムの継続的改善 ● 失敗の減少を通した費用対効果の改善 消費者に対して ● 消費者の信頼性を高める ● 食品媒介性疾患の減少 ● 製品の回収の減少 政府に対して ● 公衆衛生の改善 ● 業界が共同で法令遵守を推進 ● 国の評価を高める ● 自己規制によって継続的改善が図られる ● 官民の新たな調整の仕組みの進行 -6- 食品業界関係者は、とくに以下の便益を享受する。 供給者の便益 ● 認証を受けた企業は効率性の便益を受け、市場へのより広範なアクセスを得る ● 認証を受けた企業は、国と大陸を越えた手順の同等性を示し、したがって取引が可 能になる ● 多くの買い付け企業が、実施された食品安全管理システムの認証を受取り、それで 監査が減らせる ● 認証を受けた企業は、法的防御が実施される枠組みに入る ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 国際的に受入れられた規格に対して絶えず改善される構造を持った食品安全管理シ ステムの中で働く 小売業者、有名製造業者および食品サービス事業者の便益 GFSI が認定した規格は、効果的に共有された商標保護のためのリスク管理手法を 提供する 認定された食品安全システムによって求められる先を見越した管理の取組み方は、 製品の完全性を改善する 供給網を跨ぐ食品安全管理の集中制は、資金を節約する 認証は、市場の繋がりを改善し、購入のより簡素化を可能にする 監査における重複が減る 比較可能な監査の取組み方と結果 認証システムの継続的改善 既存の認証システムの間の健全な競争 供給網における費用対効果 消費者の信頼性と食品安全の改善 供給者 業界全体 ● より統制が採れ、効率的かつ有利な事業 ● 国と大陸を越えた手順の同等性を示す ● GFSI が認定した認証システムが多数によって受入れ、共有される ● 認証された企業は、法的防御が実施される 購入企業 政府 ● GFSI が認定した認証システムは、自らの商標保護のため効果的に共 有されたリスク管理手法を提供する ● 製品の完全性を改善する ● 認証は、より簡素化した購入を可能にする ● 事業者が法令遵守を推進する ● 事業者が自己規制し、継続的改善と最善の慣行を図る ● 事業者が規制者から懸念事項の進捗を共有し解決することを求める -7- GFSI の有効性の研究 GFSI との協力で Sealed Air 社の Diversey Consulting は、GFSI が認定した認証シス テム実施の有効性と事業への影響を調査する GFSI 研究を発表した。その研究は、北アメリ カ、メキシコ、西ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドの組織を含め 21 ヶ国の 834 の食品製造業者を対象とした。その研究は、GFSI が認定した認証システムを実施する 主な推進者は既存または新規の顧客要件を満たしていると結論付けた。 Sealed Air 社による結論、 「GFSI 有効性研究」の暫定的結果は、GFSI が認定したシス テムに対する認証は食品安全管理システムがより効果的であり、消費者に提供される製品の 安全性により大きな信頼性を付与していることを証明しているとした。 注目に値する研究結果には以下が含まれる。 ● 調査回答者の大多数は、GFSI が認定したシステムに対する認証が安全な食品を生産 する能力を強化していると回答した。 ● 調査回答者の大多数は、認証は既存の規則を彼らが遵守するのを助け、将来の規則 変更に対する準備を手助けしていると回答した。 ● 調査回答者の大多数は、認証は訓練の強化、コミュニケーションの増強、より適切 な測定および管理への関与の強化を通して彼らの食品安全文化を強化していると回 答した。 この研究は、GFSI が認定したシステムを実施する短期的費用が存在し、冗長性の排除 を通して期待される効率の一部が実現していないことも示したので、GFSI 理事会はさらに 大きな運用効率の向上を図るためこれらの結果を利用する。 GFSI を支えるのは誰か 2007 年 6 月の上海に戻ると、世界食料事業者年次サミットで 1000 名以上の上級幹部に 対して画期的な発表が行われた。GFSI の傘の下で、7 つの主要な小売業者が GFSI により ベンチマークされた食品安全認証システムの受入れを発表した。Carrefour、Tesco、Metro、 Migros、Ahold、Walmart および Delhaize の全社が、ベンチマークを受けた認証システム から発行された供給者の認証を受入れることで供給網における重複を削減することに合意 した。 この飛躍的前進は GFSI の協力における段階の変化を刻み、発展途上国市場における食 品安全とともに、監査員の適格性の検査、政府と国際機関とのコミュニケーションによって 認証システムの効果的な適用に理事会が集中できるようにした。 それ以来、食品業界の大手企業からの契約率が加速している。 現在、多くの企業が GFSI 認定の認証システムを供給網において受入れており、それら の企業の商標を以下に示す。(省略) ―――――――――――――――――――――― 「世界食品安全会議」の経過 Global Food Safety Conference -8- (仮訳)鹿児島大学名誉教授 岡本嘉六 世界食品安全会議は、50 ヶ国以上から 1000 名を超える食品安全性の専門家が一堂に会 する食品安全の主要な年次行事の一つである。それは、業界の仲間との会議と連携網の特別 な機会を提供し、総会と分科会で知識を共有し、国際的に有名な業界の専門家からの示唆に 富むプレゼンテーションの恩恵を受け、職場で実施する革新的なアイデアを聞くことができ る。 開催日 開催場所 3rd to 5th March 2015 Kuala Lumpur 26 - 28 February 2014 6 - 7 March 2013 15 -17 February 2012 16 -18 February 2011 Anaheim, California, USA Barcelona, Spain Orlando, USA London, UK ―――――――――――――――――――――― GFSI 特別日 GFSI Focus Days GFSI 特別日と地域イベントは、地域市場における GFSI の便宜について注意喚起する ことを目標としている。それらは、食品業界の地域的利害関係者が国際食品安全イニシアチ ブ(GFSI)についてもっと多くのことを見つける機会を提供するだけでなく、連携網と知 識の交換のための特別な機会として役立つ。 GFSI 特別日(Focus Day) 地域イベント(Food Safety Day) May 2015, Toronto, Canada Oct/Nov 2015, Beijing, China 9th September, 2014, Mexico city, Mexico 27th & 28th August, 2014, Beijing, China 30th October, 2014, Tokyo, Japan 3rd June, 2014, New Delhi, India 11 September 2013, Johannesburg, South Africa 26 June 2013, Beijing, China 3 - 4 October 2013, Tokyo, Japan 4 December 2012, New Delhi, India 19 July 2012, Beijing, China 30 October 2012, Tokyo, Japan 9 May 2012, Santiago, Chile 2 September 2011, Sao Paulo, Brazil 11 October 2011, Tokyo, Japan ―――――――――――――――――――――― -9-
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