国際貿易に関わる食品安全認証規格体系 International Scheme for Food Safety 鹿児島 TLO アドバイザー 岡本嘉六 国際食品安全イニシアチブ(GFSI)による認証機関の整理が行われたが、その意義が 余り理解されていない。国際取引の科学に基づく公平性、透明性、客観性が担保されない と、貿易摩擦が嵩じて二度の世界大戦を引起した経験を踏まえて、自由貿易を原則とする ことが第二次世界大戦後の世界的枠組みとして維持されてきた(ガット、WTO)。その中 で、ヒト、動物、植物等の重大疾病が物資の移動によって国際流行することを防ぐ必要が あり、ガット、WTO の例外規定として SPS 協定が維持されている。例外規定が独り歩き をしないように、SPS 協定では食品については Codex 委員会、家畜疾病については OIE、 国際植物防疫条約によって国による検疫基準が設けられ、それに抵触するものは輸入禁止 措置が講じられている。 その基盤の上に、民間の自由貿易が行われており、それは各国の法令の許す範囲で衛 生・安全・品質の取引規格を自由に定めることができる。しかしながら、それを放置した のでは取引の際に衛生・安全・品質の規格を交渉する必要があり、それを合理的に処理す るために電気・工業分野が第二次世界大戦前から民間の国際規格(ISO/IEC)を設け、第 三者認証を行うことで個別交渉の手間を省いてきた。ところが、様々な問題を克服してガ ット・ウルグアイラウンドで農産物貿易の自由化が達成されたものの、衛生・安全・品質 の規格についての共通の国際規格(ISO/IEC)の設定が遅れてしまった。その間隙を突い て、無数の認証システムが誕生し、流通業界が採用する際の妨げとなってしまった。 国際食品安全イニシアチブ(GFSI)はこれを改善すべく、国際取引に利用できる第三 者認証の規格体系を吟味し、10 社までに絞り込んだ。これでも電気・工業分野の単一シス テムと比べると相当煩雑であり、徐々に絞り込んで単一の枠組みに再編整備しなければな らない状況が続いている。 「農業は工業と違って、ゴタゴタするのが大好きだから、単一化よりももっと増やして 世界を混乱させよう」という見解もあるかも知れないが、私はそうは思わない。 ―――――――――――――――――――――― 安全性・品質と商取引に伴う問題の整理 自給自足生活においては全てが自己責任であるが、集団生活と分業の発達に伴って他者 が生産・製造した物資を購入することが普通のこととなり、その中で発生した事故を提供者 と購入者がどのように処理するのかを社会で取り決めしておく必要がある。この処理を間違 うと、個人レベルでは怨恨殺人、国レベルでは戦争へと発展してきたことから、国内および 国際的な法制度が整備されてきた。 国際取引の軋轢に端を発して二度の世界大戦を経験し、貿易紛争を未然に防ぐ方法とし て自由貿易を原則とするガット・WTO 体制が第二次大戦後構築・維持されてきた。この中 で、人間および動植物の生命や健康に悪影響する物資の輸出入は自由貿易の例外とすること -1- が規定され、SPS 協定も締結された。この問題を科学的専門に扱う WHO、FAO、Codex、 OIE などによる安全性基準が設けられ、各国政府はそれに基づく輸出入環境の法的整備を 行ってきており、これが安全性の最小基準である。 品質については同種の製品に数十倍の価格差があるのは当然とされており、それを裏付 ける品質を前提としている。他方、安全性については「安全か危険か」という二者択一だと 信じる者が多く、安全性に基づく価格差を日本社会では容認していない。米国では卵に衛生 規格が表示されており、健康弱者は衛生ランクが高い高額商品を買うよう勧められている。 日本でも、「発展途上国では安く食べられるが食中毒に要注意だ」という意識はあり、安全 性と価格が連動していることの自覚がない訳ではない。 高度の安全性を確保する HACCP システムは、食品業界に課せられた法的義務はなく任 意規定であり、その経費を捻出できる業者が採用すれば良い。その捻出方法は一般的に価格 転嫁であり、それを可能とする社会システムが必要とされている。それが第三者認証であり、 その原理は係争が起きた時に当事者とは無関係の第三者が仲裁に入る仕組みであり、個人レ ベルでも裁判所に持込む例が多い。この仲裁システムを国際貿易に導入したものが、安全性 と品質のための第三者認証であり、生産・製造の現場を確認できない輸入国業者に代って認 証機関が契約事項の確認作業を行うものである。それらの経費を含めて価格転嫁が可能なの は流通業であり、第三者認証機関として国際的流通業者が登場するのは当然の流れである。 そこに、行政が顔を出して「農家が負担しなくても良い認証」を主張するから「タダででき る安全対策」という解決不能状態に陥る。行政は安全性の最小基準を巡る TPP 等の貿易問 題の対策に専念していれば良い。 HACCP システムは Codex などの国際機関が開発した方法論であり、誰がそれに取組も うと課金されることはないし、採用していることを自己宣言しても良い。ただし、そのよう な自己宣言を海外の業者が信じる訳はなく、せいぜいご当地ソングに留まる。それでも、国 内販路を主体とする小規模生産者にとっては大きなことであり、ご当地ソングを作ることに 意味がない訳ではない。そのことと、海外市場を目指す生産業者に対して競争力を付ける国 際的な第三者認証取得を推奨することは全く別問題である。 1.21 世紀初頭の状況 20 世紀後半に、サルモネラ SE(1989~) 、大腸菌 O157(1982~)、BSE(1985~) など食品の安全性に関わる様々な問題や生産に伴う環境問題が国際的に大きく取り上げら れ、生産者および流通業者は対応を迫られた。そうした中で、Codex 委員会は 1997 年に「国 際的業務規格として推奨されている食品衛生の一般的原則」を刊行し、第一次生産から最終 消費に至る食品流通網の全行程にわたり適用できる食品衛生の基本的原則を明確化した。そ の附属文書として、1969 年に刊行された「危害解析必須管理点方式(HACCP)とその適 用に対する指針」を改定して、食品衛生基本的原則の実用化を奨励した。 これによって各国は HACCP を推進したが、その現実的展開には費用負担方法を解決す る必要があり、第三者認証による商品価格への転化が図られた。これによって、俄かに第三 -2- 者認証システムの立上げが世界的に広がった。その状況は、FAO が 2007 年に刊行した「ア ジアからの生産物と輸出のための実用的手引き」を参照してください。乱立する大小の認証 機関によって認証された製品を流通業界が選択する際に、その認証の有効性を決めかねる状 況が出現した。 X 国 GAP 取得生産者:GAP 認証を取得した当農場の穀物を買ってください。 A 貿易業仕入担当:品質のもっとしっかりした穀物を買い付ける予定だから、断る。 X 国 GAP 取得生産者:当農場は国の GAP 認証ですよ。しっかりした認証ですよ。 A 流通業仕入担当:GLOBALGAP 以外の認証は受け付けません。 X 国 GAP 取得生産者:GLOBALGAP は民間でしょう。国の認証の方が優れてますよ。 A 貿易業仕入担当:いいえ。国が特定の一業者を優遇する措置はできないでしょう。 X 国 GAP 取得生産者:もちろん国が直接でなく、別組織が認証していますよ。 A 貿易業仕入担当:その組織は第三者認証機関として登録されていますか? X 国 GAP 取得生産者:そんな難しいことは分らん。 A 貿易業仕入担当:認証を担当している方は、どういう方ですか? X 国 GAP 取得生産者:農業省に長年勤務された方です。 A 貿易業仕入担当:第三者認証監査員の資格を持っていますか? X 国 GAP 取得生産者:そんな難しいことは分らん。そしたら、GAP 認証の話は置いとい て、一般商品として買ってもらえないだろうか? A 貿易業仕入担当:そういうことなら、検討してみましょう。 このような問答が各地で交わされ、取引の支障となったことは想像に難くはない。可愛 そうなのは、宣伝文句に載せられて国の GAP 認証を取得した農家である。国際取引におけ る第三者認証の仕組みをしっかりと理解しておかねばならない。 国際取引において認証が効力を発 揮するためには、取引相手国におい ても有効となるシステムが必要であ る。そのため、ISO は各国に一つの 適合性認定機関を設け、それが国内 の認証機関を認定し、世界共通の規 格で生産組織の認証に当る仕組みを 構築している。さらに、国際相互承 認協定を締結して、同等性を確保し ている。WTO 貿易の技術的障害に関 する協定もこの相互承認の推進を奨 励し、認定機関の重みがある。 FAO の 2007 年文書において、各国の GAP が認定機関なのか認証機関か不明であり、 認証システムの全体像が見えてこない。GLOBALGAP とのベンチマークが繰り返し出て来 るが、認証機関として傘下に入れてもらうためなのか、対等な認定機関として認めてもらお うとするため(余りにも傲慢不遜)なのか理解できない。いずれにしても、最初から国内向 -3- け組織であって海外取引を意図していないと判断される。 ISO システムについて説明を加えると、認証機関は ISO/IEC 17065:2012(旧 Guide 65) によって認定される必要がある。ISO/IEC は第二次大戦以前からあり、工業および電気分 野の規格を作成し、その認証に当ってきたが、それらの様々な認証行為を包括的に規定する 条項である。原文は有料で入手していないが、ほぼ同じ内容と思われる日本工業規格(JIS) 「適合性評価−製品、プロセス及びサービスの認証を行う機関に対する要求事項」の一部を 引用する。 適合性評価−製品、プロセス及びサービスの認証を行う機関に対する要求事項 http://kikakurui.com/q/Q17065-2012-01.html JIS Q 17065:2012 (ISO/IEC 17065:2012) 7.6. 7.7. 7.8. 7.9. 序文 1. 適用範囲 2. 引用規格 3. 用語及び定義 4. 一般要求事項 4.1. 法的及び契約上の事項 4.2. 公平性のマネジメント 4.3. 債務及び財務 7.10. 認証に影響を与える変更 7.11. 認証の終了,範囲の縮小,一時停止又は 取消し 7.12. 記録 4.4. 非差別的条件 4.5 機密保持 4.6. 情報の公開 5. 組織運営機構に関する要求事項 5.1. 組織構造及びトップマネジメント 5.2. 公平性確保のメカニズム 6. 資源に関する要求事項 6.1. 認証機関の要員 6.2. 評価のための資源 7. プロセス要求事項 7.1. 一般 7.2. 申請 7.3. 申請のレビュー 7.4. 評価 7.5. 評価結果のレビュー 認証の決定 認証文書 認証された製品の登録簿 サーベイランス 7.13. 苦情及び異議申立て 8. マネジメントシステム要求事項 8.1. マネジメントシステムに関する選択肢 8.2. マネジメントシステム文書(選択肢 A) 8.3. 文書管理(選択肢 A) 8.4. 記録の管理(選択肢 A) 8.5. マネジメントレビュー(選択肢 A) 8.6. 内部監査(選択肢 A) 8.7. 是正処置(選択肢 A) 8.8. 予防処置(選択肢 A) 附属書 A(参考)製品認証機関及び認証活動に関 する原則 附属書 B(参考)プロセス及びサービスへの適用 参考文献 6. 資源に関する要求事項 6.1. 認証機関の要員 6.1.1 一般 6.1.1.1 認証機関は,認証スキーム並びに該当する規格及びその他の規準文書に関連する運用を 行うために,十分な数の要員を雇用するか又は利用できなければならない。 -4- 注記 要員には,認証機関に常勤する者に加え,認証機関のマネジメント管理下及びシステム /手順の枠内に置く,個々の契約又は正式な合意に基づいて作業する者(6.1.3 参照)を含む。 6.1.1.2 要員は,必要な専門的判断を行い,方針を定め,これを実行することを含め,自身が遂 行する機能に関して力量をもたなければならない。 6.1.1.3 委員会メンバー,外部機関の人又は認証機関を代行して活動する人は,法律又は認証ス キームで要求される場合を除き,認証活動を実施する過程で得られた又は生じた全ての情報につ いて機密を守らなければならない。 6.1.2 認証プロセスに関与する要員の力量のマネジメント 6.1.2.1 認証機関は,認証プロセス(箇条 7 参照)に関与する要員の力量のマネジメントにつ いての手順を確立し,実施し,維持しなければならない。この手順は,認証機関が次の事項を行 うよう規定しなければならない。 a) スキーム要求事項を考慮して,認証プロセスの各機能についての,要員の力量の基準を定め る。 b) 教育・訓練の必要性を特定し,必要に応じて,認証のプロセス,要求事項,方法,活動及び その他の関連する認証スキーム要求事項についての教育・訓練プログラムを提供する。 c) 自身が果たす責務及び責任に必要な力量を要員がもつことを実証する。 d) 認証プロセスの機能に対して,要員を正式に承認する。 e) 要員のパフォーマンスを監視する。 6.1.2.2 認証機関は,認証プロセス(箇条 7 参照)に関与する要員について,次の記録を維持 しなければならない。 a) 氏名及び住所 b) 雇用主及び役職 c) 学歴及び専門的地位 d) 経験及び教育・訓練 e) 力量の評価 f) パフォーマンスの監視 g) 認証機関内における権限 h) 各記録を更新した直近の日付 6.1.3 要員との契約 認証機関は,認証プロセスに関与する要員に対して,次の事項を誓約する契約書又はその他の 文書に署名することを要求しなければならない。 a) 認証機関が定める規則に従う。これには,機密保持に関すること(4.5 参照),並びに商業的 及びその他の利害関係に影響されないことを含む。 b) 割り当てられる評価又は認証案件に関する,要員自身又は要員の雇用主と,次のいずれかと の間の,以前及び/又は現在の関係を表明する。 1) 製品の供給者又は設計者 2) サービスの提供者又は開発者 3) プロセスの運用者又は開発者 -5- c) 要員自身又は認証機関にとって,利害抵触となるかもしれない状況について,知り得た全て の状況を明らかにする(4.2 参照)。 認証機関は,当該要員の活動又はこれを雇用する組織によって発生する,公平性に対するリス ク(4.2.3 参照)を特定するためのインプットとして,この情報を用いなければならない。 6.2. 評価のための資源 6.2.1 内部資源 認証機関が,内部資源又は直接の管理下にあるその他の資源を用いて評価活動を実施する場合, 関連する規格及び認証スキームが規定したその他の文書の,該当する要求事項を満たさなければ ならない。試験については JIS Q 17025,検査については JIS Q 17020,及びマネジメントシス テムの審査については JIS Q 17021 の該当する要求事項を満たさなければならない。関連規格に 規定されている評価を行う要員の公平性に関する要求事項は,常に適用しなければならない。 注記 要求事項が適用されない場合の理由の例として,次の事項が挙げられる。 − 評価活動の結果を用いる場合に,認証機関の内部の専門知識を利用できる。 − 認証機関の管理の範囲が,試験(試験への立会いを含む。),検査(例えば,検査の方法又は パラメータを規定する。),又はマネジメントシステムの評価(例えば,マネジメントシステムの 具体的な詳細を要求する。)にわたっている。 − ある特定の要求事項について,この規格に同等の規定があるか,又は認証の決定に信頼性を 与えるということに対して必要でない。 6.2.2 外部資源(外部委託) 6.2.2.1 認証機関は,関連する規格及び認証スキームが規定したその他の文書の,該当する要求 事項を満たす機関だけに,評価活動を外部委託しなければならない。試験については JIS Q 17025,検査については JIS Q 17020,及びマネジメントシステムの審査については JIS Q 17021 の該当する要求事項を満たさなければならない。関連規格に規定されている評価を行う要員の公 平性に関する要求事項は,常に適用しなければならない。 注記 1 要求事項が適用されない場合の理由の例として,次の事項が挙げられる。 − 評価活動の結果を用いる場合に,認証機関の内部の専門知識を利用できる。 − 認証機関の管理の範囲が,試験(試験への立会いを含む。),検査(例えば,検査の方法又は パラメータを規定する。),又はマネジメントシステムの評価(例えば,マネジメントシステムの 具体的な詳細を要求する。)にわたっている。 − ある特定の要求事項について,この規格に同等の規定があるか,又は認証の決定に信頼性を 与えるということに対して必要でない。 注記 2 これには,他の認証機関への外部委託を含む。契約下にある外部要員の起用は,外部 委託ではない。 注記 3 この規格では,“外部委託”と“下請負契約”とは同義語とみなす。 6.2.2.2 評価活動を,独立していない機関(例えば,依頼者の試験所。)に外部委託する場合, 認証機関は,結果に信頼性を与える方法で評価活動が管理されること,及びこの信頼性の根拠と して記録を利用できることを確実にしなければならない。 6.2.2.3 認証機関は,外部委託業務を提供する機関との間に,6.1.3 c)に規定する機密保持及び利 -6- 害抵触に関する事項を含む,法的に拘束力のある契約を結ばなければならない。 6.2.2.4 認証機関は,次の事項を行わなければならない。 a) 他の機関に外部委託した全ての活動に対する責任を負う。 b) 外部委託業務を提供する機関及びその機関が用いる要員が,直接的であれ他の雇用主を介し てであれ,結果の信頼性が損なわれるようないかなる関与もしていないことを確実にする。 c) 認証活動に関して外部委託業務を提供する全ての機関について,適格と判断し,評価し,監 視するための文書化された方針,手順及び記録をもつ。 d) 承認された外部委託業務提供者の一覧を維持する。 e) 6.2.2.3 に規定する契約又は 6.2.2 に規定するその他の要求事項に違反する何らかの事項を 認めた場合は,是正処置を実施する。 f) 依頼者に異議を唱える機会を提供するために,活動を外部委託する前に依頼者に通知する。 注記 外部委託業務を提供する機関の資格付与,評価及び監視が,別の機関(例えば,認定機 関,同等性評価機関又は政府機関)によって実施される場合で,次の場合,認証機関は,この資 格付与及び監視を考慮に入れることができる。 − − − スキーム要求事項の中で規定されている。 実施する業務が適用範囲に該当している。 資格付与,評価及び監視の取決めの妥当性が,認証機関の定める周期で検証される。 アジア各国の GAP だけでなく、日本の GAP もこのような認証システムを構築している とは思われないし、ISO の認可を受けていることはないだろう。すなわち、国際商取引に関 与する認証機関の要件を満たしていない。 2.国際食品安全イニシアチブ(GFSI)による認証機関の整理 国際取引に関係しない、専ら国内向けの第三者認証が何をしようと、第三者認証組織が どのようなものであれ、国際的には全く影響しないのは当然である。しかし、国際取引に関 わるとなれば、第三者認証組織およびその活動について厳格な取り決めがないと、市場に悪 影響が現れる。前項で指摘したこれらの点を、GFSI の体験と指摘から裏付けよう。 世界食品安全イニシアチブ(GFSI)は2000年4月に発足したが、その推進役となったの は食料提供網国際委員会(CIES: International Committee of Food Chains)であった。 CIESは1931年でフランス食料供給網協会(French Food Chain Association)総会で設置が決 められ、1953年に正式に発足した。欧州統合運動の背景の中で若手経営幹部の連携が次第に強 まり、2009年には別の2つの協会と合併して消費財フォーラム(CGF)となり、GFSIを支えて いる。 -7- 消費財フォーラム(CGF)の活動は GFSI を中心とする食品安全と品質の事業だけでな く、以下の事業を使命に掲げている。地球温暖化など大衆の生活活動が不可分に関与してい る地球規模の問題について、様々な消費財の流通に携わっている立場から国際機関への政策提 言を続けている。このような流通業大手の組織が、何故 GFSI 設置に至ったのか? ● 緑化を進め、より持続性のある明日を築く我々の活動 ● 全世界の消費者に安全な生産物を届ける ● 消費者の生活と健康な生き方を手伝う ● 価値網(Value Chain)全体の役に立つ ● 強固な基盤で我々の活動を支える 知名度の高い国際的な食品安全上の一連の危機の中で、食品業界のそれぞれが独自に策 定した無数の社内基準に対して、小売業および製造業が工場を監査したので監査疲れが大き くなる一方、その結果は一貫性を示さず、消費者および食品業界の信頼性は低かった。GFSI が発足した 2000 年には、Codex 委員会が「国際的業務規格として推奨されている食品衛生 の一般的原則(CAC/RCP 1-1969)」に HACCP システムを推奨してから 30 年経っている にもかかわらず、世界的に認定された既存の認証規格体系(scheme)は存在しなかった。 そこで、GFSI は次の 2 つを目標とした。 ● より安全な食料供給網を通して消費者の信頼を強化・維持する ● 食料供給網を通して監査の重複削減を図る食品安全規格の調和によってそれを達 -8- 成する 様々な第三者認証機関が活動している中で、GFSI がもう一つ別の第三者認証機関とな ったところで問題は解決しないことから、それらの第三者認証機関の中で国際取引に使用で きるものを選び出すことに決め、自らは認証・認定に直接関与しないこととした。 「GFSI ガイダンス文書概要」には次のように記載されている。 GFSI の構想は、 「世界的な消費者の信頼を強化するため食品安全の継続的改善の推進」 である。 GFSI の使命は、全世界の消費者へ安全な食品を届ける上での信頼性を確保するため食 品安全管理システムの継続的改善を牽引する。 GFSI の目的は、以下のことである。 ► このガイダンス文書に記載されているように、効果的な食品安全管理システムの間 の同等性と収束性を推進することによって、食品安全リスクを低減する。 ► 冗長性を排除し、運用効率を改善することにより世界の食料システムにおける費用 を管理する。 ► 一貫性のある効果的な世界の食料システムを作るため、食品の安全性における資格 を開発し、能力を構築する。 ► 協力、知識の交換および連携網構築のため、国際的利害関係者の固有の交流の場 (platform)を提供する。 「効果的な食品安全管理システムの間の同等性と収束性を推進」することによって、無 数にある第三者認証システムの中で国際取引に使えるものを GFSI が承認し、それ以外は GFSI 傘下の流通業者は認知しないこととしたのである。これによって「監査疲れ」から脱 却して「運用効率を改善」して費用を別の面で有効利用できるようにした。ところで、第三 者認証システムの篩い分けはどのように行ったのか? 先の図にある「GFSI ベンチマーク 委員会」の設置であり、食品安全に関わる世界的専門家を集め、Codex 委員会の「食品衛生 の一般的原則(CAC/RCP 1-1969) 」や認証機関の要件を定めた ISO/IEC Guide 65:1996 な どの一連の国際機関の原則や指針(規範となる参照文書)に基づいて、「GFSI ガイダンス 文書 パート I:ベンチマークの手順」を作成した。そして、GFSI の承認を求める第三者 認証システムの食品安全規格体系をこの GFSI ガイダンス文書と比較し、同等性が認められ たものを承認する手順を積み重ねたのである。 「GFSI ガイダンス文書」は、 「パート II:規格体系の管理のための要件」でベンチマー クの運用に関する要件、 「パート III:規格体系の範囲と重要な要素」で認証の範囲に関する 要件を定めてある。これだけの膨大な作業を積み上げてできあがってきた GFSI による第三 者認証システムの篩い分けにクレームを付ける者はいない。GFSI は民間の財団法人であり、 それが築いた篩い分けリストに不満ならば、自分達で別のリストを作成すれば良いのであっ て、そもそも民間の競争事業にクレームを付ける筋合いはない。また、世界の流通業大手が 集まった消費財フォーラム(CGF)は、国際機関が主催する食品安全や環境問題の会議に 出席しており、それに支えられた GFSI に Codex 委員会や ISO の専門委員などが関与して いる以上、いる訳だから、CGF 以外の流通大手を組織して別のリストを作成する勢力がい -9- るとは考えられない。 第三者認証システムの要をなすのは監査であり、規格体系がどれだけしっかりしていて も、生産者や加工業者などの監査が杜撰であれば全く意味をなさない。発展途上国で行政か らの天下りが GAP 認証に当っている場合など、長年培った懐手が幅を利かし、規格体系な ど単なる飾りに過ぎなくなる場合も考え得る。日本工業規格(JIS) 「適合性評価−製品、プ ロセス及びサービスの認証を行う機関に対する要求事項」の「6.1. 認証機関の要員」を既 に引用してあるが、行政、大企業、金融機関等に対する公認会計士の監査と同様の厳格性、 公平性、透明性が担保できなければ意味をなさない。 3.GFSI によって残された認証システム(認証規格体系;スキーム) CGF の篩い分けで残った国際流通に使える認証規格は、2016 年 1 月現在次の 10 機関 である。これらの一部について説明を加える。 GFSI が認定した認証規格体系と認証範囲(Recognised Schemes) Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ AⅠ Ⅷ Ⅸ Ⅹ ● AⅡ BⅠ ● BⅡ ● ● ● C D ● ● ● EⅠ ● EⅡ ● EⅢ ● EⅣ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● F ● J ● ● ● ● ● ● ● ● ● L M ● ● Ⅰ: PrimusGFS Standard、Ⅱ: IFS PACsecure、Ⅲ: Global Aquaculture Alliance Seafood、Ⅳ: GLOBALG.A.P.、Ⅴ: Global Red Meat Standard、Ⅵ: FSSC 22000、Ⅶ: CanadaGAP、Ⅷ: SQF CODE、Ⅸ: IFS Food Standard、Ⅹ: BRC GLOBAL STANDARD AⅠ:畜産、AⅡ:養殖、BⅠ:作物生産、BⅡ:穀物と豆類生産、C:動物原料、D:作物 生産の加工前取扱い、EⅠ:腐敗し易い動物製品の加工、EⅡ:腐敗し易い植物製品の加工、 EⅢ:腐敗し易い動植物製品(複合食品)の加工、EⅣ:常温で安定な製品の加工、F:飼 料生産、J:保管と流通業の規定、L:(生物)化学物質の生産、M:食品包装材の生産 - 10 - 国際食品規格(IFS: International Food Standard) ドイツ(HDE)とフランス(FCD)の小売業者組織が「IFS Food」の商標のついた食 料品規格を作成し、2005/2006 年にイタリア、スイス、オーストリアの小売業者、その後 IFS 北米作業グループも加わり、2014 年 4 月に IFS Food 第 6 版が更新された。その小史 に次のように書かれている。 「消費者の増大する要求、小売業者と卸売業者の増加する責任、法的要件の増加ならび に製品供給の国際化は、均一な品質保証と食品安全規格を開発することを不可欠にした。 また、小売業者と供給者の双方にとって、多数の監査に関連する時間を減らすために解決 策を見つけなければならなかった。」 GFSI と同じ経験をしてきたことが理解でき、目的も次のように記載されている。 国際将来規格(International Featured Standard)の基本的な目的は: ● 均一な評価システムを持つ共通の規格を確立する、 ● 認定を受けた認証機関および精選された監査員と一緒に活動する、 ● 供給網全体を通した比較可能性と透明性を確保する、 ● 供給者と小売業者の双方の費用と時間を削減する。 「IFS 認定手順」には、「認証機関は、IFS または EA に認可された認定機関によって ISO/IEC Guide 65(現 ISO/IEC 17065)に従った IFS のための認可を受けなければならな い」とされ、国際規格に準拠していることが前提である。そして、監査員の資格要件ととも に、なれ合いを排除するための「同一会社の IFS 監査を連続して 3 回以上実行してはなら ない」、 「年 1 回 2 日間、IFS 監査員の訓練課程を受ける」などの行動規範が定められている。 この訓練課程を行う訓練者の要件も詳細に規定されており、認証規格体系を保有する機関が どれほどの陣容を必要とするかが推察される。 GFSI に承認された IFS の認証範囲は、第一次生産を終えた加工部門となっている。 SQF(Safe Quality Food:安全品質食品規格) 安全で高品質の食品(SQF)コードは、1996 年に西オーストラリア州農業省によって 確立された。2003 年に、規格の世界的所有者が米国の食品マーケティング研究所(FMI) に譲渡し、現在、SQF コードは FMI の下に設立された SQF 研究所によって管理されてい る。一次生産者を対象とする SQF 1000 と加工・サービス業を対象とする SQF 2000 に分 かれていたが、2012 年に改定された第 7 版で一本化された。第一次生産から食品の製造、 流通、代理業者・卸業者に至るまでの全ての管理に認証を付与する GFSI に認定された最も 広範囲の認証分野をカバーする認証規格体系である。 以下の 3 種類の認証レベルが利用でき、段階を追って進められるので小規模事業体でも 取組み易くなっている、GFSI に認定された認証はレベル 2 から有効であり、レベル 3 を所 得すれば認証取得を商品にも表示できる。 レベル 1: 食品安全基礎 レベル 2: HACCP 食品安全計画認証 レベル 3: 包括的食品安全性及び品質管理システム - 11 - GFSI に承認された SQF の認証範囲は、第一次生産から、加工・流通部門、さらに仮爆 物質や包装容器の生産まで最も広範に及んでいる。FMI に認定された 25 の認証機関が世界 各国で活動しており、日本でも 8 社が認定されているが、本格的に活動しているのは SGS 一社である。日本国内では、第一次生産部門、とくに畜産関係(屠畜場、食肉加工、肉類) および卸流通の認証取得が進んでおり、昨年 9 月末で 253 社だったのが、2015 年 2 月初旬 には 295 社へと増えている。 英国小売協会規格(BRC: British Retail Consortium) BRC 規格は 1998 年に英国小売協会(BRC)によって開発されたが、BRC はあらゆる 小売業者を含む組織で、 「環境に優しい食料プロジェクト(Green Food Project)」など政府 の食料政策を初めとする農業、環境、気候変動、保健政策に積極的に関わっている。それを 背景とした安全規格体系であり、当初から地球規模の問題を根底に置いて世界戦略として展 開している。英国を中心とした欧州、北米、欧米へ輸出を行う世界各国で普及している規格 である。 GFSI に承認された BRC の認証範囲は、畜産関係以外の加工食品である。認証製品は、 BRC ロゴを付けて市場で区別されている。 FSSC 22000(Food Safety System Certification:食品安全性システム認証) 2004 年に設立されたオランダに本拠地を置く食品安全認証法人(FFSC: Foundation for Food Safety Certification)が Dutch HACCP とともに開発した認証規格体系であり、 GFSI による承認を得ていた。しかし、2012 年に公開された第 5 版において、ISO 22000 の全ての要件を満たし、さらに ISO が取り上げていない前提条件プログラム(PRP: Prerequisite Program)を組み込んだことにより、ISO 22000 を凌いだと宣言し、2011 年 に発行された GFSI 第 6 版のベンチマークを申請しないことを決定し、GFSI と袂を分かつ 可能性を示唆している。そもそも、前提条件プログラムは HACCP の前提となる法律で定 められている衛生条件であり、日本では食品衛生法により食品製造施設が認可される段階で 法的審査を受けている。発展途上国など法的整備が遅れている地域では PRP を取上げる意 味があるかも知れないが、先進国では無用の長物である。Dutch HACCP も同様に離脱した。 国際赤身肉規格(GRMS: Global Red Meat Standard) 農業王国と知られるデンマークでは生産される豚肉の 80%が輸出に向けられており、 農業・食品評議会は国際赤身肉規格(GRMS)を 2006 年に初めて公開された。この規格は、 生産網全体を包含しており、輸送、一時収容所、と殺、解体、脱骨、解体および肉と肉製品 の取扱いの全ての側面に適用可能である。GFSI に承認された GRMS の認証範囲は、生産 部門以降の食肉の取扱い加工である。 大半の認証規格体系は流通業界を背景としており広範な食料部門を認証範囲としてい るが、このような特定部門に限定した認証規格体系であっても、監査員の資格、訓練および 経験など国際規格を満たしていれば GFSI に承認されることの好事例である。 - 12 - グローバル GAP(Global GAP) 大手スーパーを中心として欧州農産物小売業組合(EUREP: Euro-Retailer Produce Working Group)が設立され、主な生産者と協力して適正農業慣行(GAP)の枠組みで安 全性と品質の規格を設けるシステム開発が行われ、1998 年の野菜と果樹を手始めに認証し た生産者の生産物のみを流通させる仕組みを作り上げた。EurepGAP の「包括的農業保証」 の総則(2005 年 5 月)には、 「食品の安全性に関する消費者の関心、動物福祉、環境保護な らびに農業者の健康・安全・福祉を確保するために、以下のことを実行する」と「安全な持 続的農業のための地球的規模での提携」を謳っている。農業生産の環境への悪影響を最小限 にし、労働衛生と労働安全の規格、それと同時に、社会的に関連した問題に関する認識と責 任に関する国際水準を確立するものとして、全ての第一次生産に共通する基礎要件を設定し た。それに加えて、植物生産と動物生産にそれぞれ共通する要件、さらに対象とする作物・ 動 物 毎 の 要 件 を 設 け た 。 活 動 範 囲 の 拡 大 を 反 映 し て 2007 年 に EurepGAP か ら GLOBALG.A.P.への名称変更を発表した。 認証の要件は、100%準拠を義務とした必須(Major Must)、90%準拠とした準必須 ( Minor Must ) に 分 か れ 、 そ れ を 満 た せ ば 認 証 が 得 ら れ る 。 認 証 と は 別 に 、 推 奨 (Recommend)の要件もあるが、それは安全性等に関わらない事項(たとえば、無農薬な ど;無農薬であっても大腸菌 O157 汚染はあり得るし、化学肥料を使用しても残留問題を起 さなければ良い)について生産者がとくに認証を求める場合に監査の対象としている。 適正農業慣行(GAP: Good Agricultural Practice) 医 薬 品 等 の 高 度 安 全 性 が 求 め ら れ る 分 野 で は 早 く か ら GLP ( Good Laboratory Practice;優良試験所基準)や GMP(Good Manufacturing Practice;製造品質管理基準) が法規制されてきたが、食品安全を巡る大事故の多発の中で農業・食品分野でも同様の取組 み方が求められるようになってきた。FAO は 2003 年に「適正農業規範のための枠組みの開 発(Development of a Framework for Good Agricultural Practices)」を刊行し、各国に適 用を呼び掛けた。日本でも農水省が「農業生産工程管理(GAP)」を推進してきたので、GAP 導入産地は着実に増加している。実施主体は、都道府県が 28%、JA グループが 23%、民間 団体が 7%、その他となっている。 - 13 - こうした状況はアジア各国でも同様であり(FAO:アジアからの生産物と輸出のための 実用的手引き)、GLOBALG.A.P.のベンチマークを求める動きもあるが、その意図は良く判 らない。一部では対等な認定機関として認めてもらおうとしており、一部では GLOBALG.A.P.傘下の認証機関を目指しているようでもあり、いずれにしても、それは ISO/IEC 17065:2012(旧 Guide 65)を満たすことから始めなければならず、実現可能性は 低い。こうしたアジア各国の GAP の将来像を描く必要がある。 カナダ GAP (CanadaGAP) 果樹と野菜の生産者団体であるカナダ園芸協議会(CHC: Canadian Horticultural Council)は、食品安全への取組みを証明するため 2000 年に「農場における食品安全の手 引き(On-Farm Food Safety (OFFS) Guidelines)」を作成し、第三者認証規格体系の基礎 を作った。CHC は、農産物の生産と流通に関わる主要団体の協力を得て、連邦政府と地方 政府の支援を得ながら CanadaGAP™の設立に漕ぎ着けた。 カナダで育成され取扱われる様々な果物と野菜に対象を限定しているが、全国組織とし て勧められ、監査手順などが国際機関の承認を得ており、GFSI 承認の要件を満たした。日 本 GAP を推進するとすれば、少なくともカナダ同様に全国組織として生産者団体がまとま ることが先決である。 世界水産養殖同盟(Global Aquaculture Alliance(GAA)) 米国の養殖業界を中心として 1997 年に設立された世界養殖連盟(GAA)が、アジアや 南米との企業統合を進め、養殖業と環境保全、食料資源確保、安全性、地域振興などのテー マを推進する中で、養殖業最善慣行(BAP)の認証規格体系を策定した。エビ、サーモン、 ティラピアなど多数の魚介類の養殖事業が認証を受けており、東南アジアのエビ養殖場の多 くも BAP 認証を受けて日本へ輸出していると思われる。ホームページは多数の言語で翻訳 されているが、日本語はなく、日本からの BAP 認証参加もないようである。こうした状況 - 14 - で、日本の水産業界が新たな認証規格体系を設定指定も、既に国際的には BAP 認証が行き 渡っており、拡大できないだろう。 4.認証システムの今後 GFSI の努力によって、第一次産業部門の第三者認証規格体系は現在 10 社まで整理で きた。しかし、これを電気・工業部門のシステムと比べると、依然として煩雑であり、国際 流通の障碍となっていることは明らかである。 電気・工業における認証システム 第一次生産における認証システム 食料、健康と福祉、環境、気候変動など 21 世紀の主要問題と取組んでいかなければな らない第一次生産部門における国際機関としては、国際流通の障碍となっている複雑な認証 システムのさらなる簡便化、省力化、合理化を進めない限り、国際的調和は達成できない。 すなわち、国際取引の枠組みにおける第三者認証システムの一元化に向けて動きが加速され るだろう。 GFSI の承認を受けた認証規格体系保有機関 10 社ならびにそれに基づいて生産者等の 認証を行う認証機関は、全て国際的相互認証協定の枠組みの中にあり、ISO/IEC 17065:2012 (旧 Guide 65)などの規制を受けている。認証機関の一つである SGS を例にすると、ISO の電気・工業部門の認証業務も行っており、食料部門の認証業務は一部に過ぎない。すなわ ち、認証業務の専門機関であり、食料部門の認証は ISO や SQF などの特定認定機関の承認 を得た認証規格体系についてのみ業務を行っている。生産者等は、どの認証規格体系を選ぶ か迷い、自国内の認証機関にそれがあるかどうかを調べることから始めなければならない。 こうした状況は、生産者等の認証を取得する側にも不利益となっている。 他方、食料生産・製造・流通・サービスにおける安全性と品質を求める消費者の要望は 強く、その確保に係る HACCP や GAP の推進も各国において重要な課題となっている。国 内流通、としわけ地産地消などの地元流通においては、第三者認証システムを導入する必要 性は全くなく、消費者団体等が生産現場を視察することで HACCP や GAP の実施を確認す れば良いことである。このことから、生産者団体や地方自治体が HACCP や GAP の推進事 業を展開することは良いことであるが、それが「輸出振興」に直接結びつくと宣伝すること - 15 - は詐欺罪に当る。HACCP や GAP を実施することと、輸出入に絡む国際的第三者認証を取 得することは、全く次元の異なる問題である。 参考資料 1. GFSI 1.1 世界食品安全イニシアチブ(GFSI) 1.2 GFSI とは何か:歴史、組織と統治、便益、活動の概要 1.3 消費財フォーラム(CGF)とは 1.4 GFSI ガイダンス文書の概要 2. コーデックス委員会 2.1 国際的業務規格として推奨されている食品衛生の一般的原則 2.2 危害分析必須管理点方式(HACCP)とその適用に対する指針 2.3 岡本嘉六:コーデックス委員会とは 2.4 コーデックス委員会とは(About Codex) 2.5 1945 年から現在までのコーデックス委員会の歩み 3. ISO 3.1 ISO 規格 3.2 ISO と食品 3.3 ISO22000(公開されている緒言のみ) 4. FAO 4.1 FAO:ギャップ(GAP)とは何か? 4.2 FAO 2007「アジアからの生産物と輸出のための実用的手引き」 5. 認定機関(認証規格体系保有機関) 5.1 IFS(International Featured Standard:国際食品基準)の概要 5.2 Global Red Meat Standard(国際赤身肉規格)の概要 5.3 GlobalGAP の概要 以下は EurepGAP(ユーレップギャップ)時代の資料のリンク 5.3.1 総則:安全な持続的農業のための地球的規模での提携 5.3.2 家畜共通の管理点と準拠基準 5.3.3 肉牛と羊の管理点と準拠基準 5.3.4 乳牛の管理点と準拠基準 5.3.5 養豚の管理点と準拠基準 5.3.5 家畜共通のチェックリスト 5.4 CanadaGAP の概要 - 16 - 5.5 Global Aquaculture Alliance(世界水産養殖同盟)の概要 5.6 SQF(Safe Quality Food:安全品質食品)の概要 以下は SQF 2000 時代の資料のリンク 5.6.1 パート 2:生産マニュアル 5.6.2 パート 3:HACCPマニュアル 5.6.3 パート 4:記録マニュアル 5.6.4 安全性向上のための第三者認証システム(説明文、ppt) 5.7 BRC(British Retail Consortium:英国小売協会)の概要 5.8 FSSC 22000(食品安全性システム認証)の概要 6. 認証機関 6.1 認可を受けた認証機関: SGS 7. 講演スライド 7.1 第 1 回 TLO 講習会(2014 年 11 月 1 日、パワーポイント) 7.2 第 2 回 TLO 講習会(2014 年 11 月 15 日、パワーポイント) 7.3 第 4 回 TLO 講習会(2015 年 2 月 14 日、パワーポイント) 7.4 薬剤師会 食品衛生研修会(2015 年 3 月 6 日、パワーポイント) 7.5 食の安心・安全の確保に関する基礎知識(2014 年 11 月 13 日、パワーポイント) 7.6 食を巡る諸問題を子供達にどのように伝えるか(2013 年 8 月 6 日、パワーポイント) 7.7 鹿児島県衛生管理責任者等講習会(2006 年 9 月 25 日) パート 1:食品を取り巻く世界と日本の情勢 7.7.1 国際的食料事情、WTO 体制、Codex 委員会(説明文、ppt) 7.7.2 国際獣疫局(OIE)、米国の政策(説明文、ppt) 7.7.3 日本の動向、「食育基本法」、「食品安全基本法」など(説明文、ppt) パート 2:食品の品質・安全性向上のための社会システム 7.7.4 国際標準化機構(ISO)、SQF(説明文、ppt) 7.7.5 EurepGAP(ユーレップギャップ)(説明文、ppt) 7.7.6 日本における認証(説明文、ppt) パート 3:食肉センターにおける衛生管理の進め方 7.7.7 牛と関係する伝染病(説明文、ppt) 7.7.8 米国の食品安全関連法令など 7.7.9 日本の食肉センターにおける第三者認証取得の動き(ppt) 8. 防犯:テロや犯罪による意図的汚染 8.1 WHO:テロリストの食への脅威:防止と対処のシステムを確立強化するための手引 き(2008 年 5 月改定) 8.2 FDA:食料部門の脆弱性査定のための CARVER+Shock 法の概要(2008 年) - 17 -
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