《 》 アメリカの人々はどこでどんな食べ物を買っているのだろうか? 《 》 現在、先進国に住む人々が日常の食料を購入する先は多様化してい ます。青果店や精肉店などの専門店だけでなく、スーパーマーケット、 コンビニエンスストア、宅 配 など、列 挙していくと膨 大 な 数になりま す。世界一の経済力を有するアメリカ合衆国(アメリカ)も、この点は 例外ではありません。 そのような中で、近年アメリカでもっとも急速に普及した食料購入の場 の一つにファーマーズマーケットがあります。日本で「ファーマーズマーケッ ト」という言葉は農産物直売所と同様の意味で使用されることが多いです が、アメリカ合 衆 国におけるファーマーズマーケットとは、文 字どおり Farmers’Market(農業者たちの市場)です。すなわち、アメリカのそれは農 産物を直接販売するという点で日本の農産物直売所と一致していても、専 属の職員が販売を管理する運営ではなく、農業者自らが中心となって出 店・販売を担う運営であることが特徴的です。 今回の講義では、アメリカにおける食べ物の生産と消費の両方をつ なぐ機能の一つとして、ファーマーズマーケットに着目します。アメリカ のウォルマート( Wal-Mart )というスーパーマーケットは現在世界一の 売上高を誇る小売業として君臨し、そこではもちろん食料品を販売して いますが、近年はアメリカ国内のどの都市を訪れても、「ファーマーズ マーケットが開催されていない都市はない」といっても過言ではありま せん。個々のファーマーズマーケットは地元に密着した存在ですが、そ れぞれの開催場所の立地や出店する農業者の分布および販売品、マー ケットの運営に関わる人々や地域社会の状況などを細かく検討してい くと、そこには現代アメリカ社会の農と食を表す多様な側面が垣間見 えるのです。
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