準決勝・決勝用 参考書 (この参考書の使い方例) 【参考書の

準決勝・決勝用 参考書
(この参考書の使い方例)
【参考書の内容】すまエコプロジェクトには、実証事業のモニターとして、たく
さんの家庭が参加して、電気の見える化の効果などを体験しています。
→【問題】すまエコプロジェクトに参加している世帯は、何世帯でしょう。
※この参考書に書かれている内容は、直接的に問題にはなるとは限りません。ただし、
書かれていることに関連した問題が出されるので、予想しながら勉強して下さい。
日本は島国で、エネルギー資源が乏しい国と言われています。特に多くのエネルギー
源として使われている石油は、そのほとんど全てを外国からの輸入に頼っています。
それらの国で紛争や為替の変動(円高や円安)などがあると、価格が影響を受けてし
まうという問題があります。
そして、輸入に頼っているということは、お金を外国に支払っているということでも
あり、現在の日本は、石油を買うために、とてもたくさんのお金を外国に支払ってい
て、そのお金は、最終的には国民が生活する中で負担することになります。
宮古島は、日本の縮図と言われ、同じようにエネルギーのほとんどを島外に頼ってい
て、私たちのお金も島の外に流れていってしまっています。
特に沖縄本島とは主なエネルギー源(燃料)が違うため、同じ電気を生み出すのに必
要となるコストが沖縄本島よりも宮古島は高くなっています。
また、経済的な問題以外にも石油に頼ることには、様々な問題があります。
1992 年のブラジルのリオで開催された地球サミットで、気候変動の問題に対処するた
めの条約が採択されました。この条約に基づいて、地球温暖化対策に向けた国際会議
(条約の締約国会議)が行われており、それを COP と言います。
1997 年には京都で COP3 が開かれ、日本を含む各国の温室効果ガスの排出削減目標を
定めました。これを京都議定書と言い、これに基づいて、各国は定められた目標に向
けて対策を実施しています。
今年は COP21 がヨーロッパで開催されます。
温室効果ガスとは、太陽の熱を吸収し、地球を暖めて、温暖化に影響を及ぼすガスの
ことですが、このうち、特に人類の活動による排出が大きいのが二酸化炭素(CO2)
であり、石油や石炭などの化石資源を燃やすことにより排出されています。
現在、国内の発電の多くをこうした石油や石炭による火力発電に頼っており、CO2 の
排出量が増えていることが問題になっています。
宮古島においても、発電や自動車の燃料として石油を使用しており、そこから CO2 を
排出していますが、2003 年時点で、約 32 万トンになります。
32 万トンの CO2 の体積を計算してみると、その大きさは、25m プールを宮古島に並
べていったときに、宮古島市全体の面積の約半分ほどを占める計算になります。
宮古島市では、この 32 万トンの CO2 排出を 2030 年までに約 44%、2050 年までに約
69%削減する目標を掲げていて、これは全国でも相当高い目標であり、環境モデル都
市の認定を受けています。
さて、こうした地球環境への配慮の意識が高まってきたことから、エコを進めるため
の様々な仕組みが全国的にも作られています。
その 1 つであるエコマークは、様々な商品(製品およびサービス)の中で、「生産」か
ら「廃棄」にわたる全体(この全体の流れをライフサイクルと言います)を通して環
境への負荷(負担)が少なく、環境保全に役立つと認められた商品につけられる環境
ラベルです。
エコマークには「環境(Environment)」と「地球(Earth)」の頭文字「e」を表す人
間の手が地球を包み込む姿がデザインされています。
宮古島で、CO2 を排出している原因の多くは、自動車の燃料を燃やしていることと家
庭やお店などにおける電気の使用による部分が大きくなっています。その影響もあり、
島全体の電気の使用が一番大きくなるのは、帰宅時間以降になります。
電気の使用量は、その瞬間の電力の大きさを表す W(ワット)、kW(キロワット)、
MW(メガワット)に、その電力を使用した時間をかけて算出します。
その時、使用量の単位としては、時間の意味の「h」を後につけて、Wh(ワットアワ
ーまたはワット時)
、kWh(キロワットアワーまたはキロワット時)、MWh(メガワッ
トアワーまたはメガワット時)と表します。
【参考】電気の単位はこれら W や Wh が主ですが、この他にも食品などは、同じエネ
ルギーでも別の単位を使います。
例えば、100W 消費する電球を 10 時間つけっぱなしにすると「100W×10 時間」で
「1000Wh(=1kWh)」の電力量を消費したことになり、これに電力会社が設定して
いる kWh あたりの電気料金単価をかけて、電気代として支払うことになります。
一度に大きな電力を消費する電子レンジやドライヤーなどの節電も大事ですが、実は
長時間使用している冷蔵庫(24 時間動いていますよね)やクーラーなどを少しずつ節
電するように使うと、使っている時間が長い分、とても大きな省エネに繋げることが
できるのです。
例えば、エアコンを省エネに使う方法として、風を送る力よりも温度を下げるのに必
要なエネルギーの方が大きいことが分かっているので、温度を高めに設定して、風量
を強くする、または扇風機と一緒に使うなどの方法が有効です。
その他、冷たい空気は下に下がり、暖かい空気は上に上がるという特性から、エアコ
ンの風向きを冷房・暖房の用途に合わせて変えることも省エネに有効です。
様々な研究によってこのようなことが分かってきていますが、人が生活するときの快
適さは、温度だけでなく、湿度にも大きく影響を受けることが分かっていることから、
アメリカでは、1950 年代に温度と湿度から、その快適さ(不快適さ)を計算する方法
を考案しています。
このように電気を使うことによって排出してしまう CO2 の量を皆で省エネをしながら
減らそうと頑張っている訳ですが、省エネの他に CO2 を排出しない電気を作るという
方法があります。それが太陽光発電や風力発電など自然のエネルギーの活用です。
宮古島には、たくさんの太陽の光が降り注ぎ、風が吹いています。これをエネルギー
源として活用するのが自然エネルギー(再生可能エネルギー)です。
太陽光発電は、夜や暗い雨の日には発電しないため、年間トータルの発電(「設備利用
率」といいます)は、12%程度と言われています。これに対し、風力発電は、夜も発
電できるため、設備利用率が 25%程度と一般的に言われています。宮古島には 4.8MW
の風力発電設備があり、この発電設備でかなり多くの世帯の年間電力量(MWh)を賄
うことができます。
さて、一見、CO2 を出さない自然エネルギーがあるのであれば、火力発電はもうやめ
てしまって、全て自然エネルギーで賄えばいいように思いませんか。
しかし、環境には優しい自然エネルギーですが、これはこれで問題があります。
それは、電気の性質に関わる問題です。電気は、
「発電」と「消費」を常に一致させる
必要があります。分かりますか?
例えば、皆さんが夕方、家に帰ってきて、照明やクーラーをつけたり、テレビをつけ
たりします。そうすると電気の「消費」が増えます。逆に夜寝るときには、照明やテ
レビを消しますが、そうすると電気の「消費」が減ります。
実はこのとき、宮古島の火力発電所では、島の皆が電気を使ったり消したりする「消
費」の増減に合わせて、発電機の「発電」を増やしたり減らしたりして、常に一致さ
せているのです。
もし、誤って「消費」と「発電」が一致しない場合、照明が「ちかちか」したり、精
密機械などは壊れてしまう、あるいは、最悪、島が停電してしまう場合もあります。
これは「一致しない」ことが原因ですので、
「消費」より「発電」が足りなくても、
「消
費」より「発電」が上回っていても、問題が起きます。
そこで自然エネルギーの問題です。とても大事な自然エネルギーを最大限使いたいの
は山々ですが、太陽光や風力などの発電は、光や風のエネルギーを利用するため、雲
がかかったり、風が止んでしまうと発電しなくなってしまいます。逆に突然雲がなく
なったり、強風が吹いたりすると、急に発電量が大きくなります。
繰り返しですが、発電所では「消費」と「発電」を常に一致させなければならないの
で、自然エネルギーの「発電」が急に増えれば、火力発電を減らし、自然エネルギー
の発電が急に減れば、その分火力発電を増やすという「調整」をする必要があります。
このように自然エネルギーの発電が増えたり減ったりすることを「変動」と言います。
あまりにもこの変動が大きくなると火力発電の調整が間に合わず、「消費」と「発電」
が「一致しない」ことになり、先ほどの問題が起こります。
自然エネルギーはとても大事なエネルギーですが、使うのはとても難しいのです。
ここで注目されるのが、蓄電池(バッテリー)です。文字通り、蓄電池には電気を貯
めることができます。先ほどのように、自然エネルギーが急に発電したときに電気を
貯めておき、急に発電が減ったときに貯めておいた電気を放出することができれば、
火力発電の調整を助けることができます。
宮古島市の中では、こうした蓄電池を活用して自然エネルギーをうまく使えるかどう
かの技術的な実験をいくつかの場所で行っていて、国内外から注目を集めています。
蓄電池をたくさん導入することで、自然エネルギーをたくさん使うことができます。
ただし、蓄電池にも問題があります。今はまだ、とても高価なのです。
たくさんのお金がかかると、それを暮らしている皆で負担しなければなりません。電
気代が高くなると困りますよね。
そこで、今注目を集めているいくつかの方法があります。
ひとつめは、蓄電池ではない、別のものにエネルギーを貯めるという方法です。
電気を電気のまま貯めようとすると蓄電池が必要になりますが、例えば、お湯を沸か
して熱として貯めておく方法や水をポンプで高いところに揚げて、エネルギーとして
貯めておく方法などがあります。
自然エネルギーがたくさん発電している時に、電気でお湯を沸かしたり(魔法瓶のよ
うなタンクに貯めておく)
、水を高いところに揚げたりしておいて、自然エネルギーの
発電が減ってきたときに、電気を使わない(お湯を作らない)、あるいは、高いところ
に貯めた水を落とす力を利用して水力発電を行うという方法もあります。
また、同じ蓄電池でも電気自動車に貯めるという方法もあります。最近では、電気自
動車に貯めた電気を再び家に戻して使うという技術も開発されてきています。
ふたつめは、地域全体の「消費」と「発電」のバランス(需要と供給のバランスなの
で、
「需給バランス」と言います)の状況に合わせて、私たち電気を使っている住民が、
その「消費」する量を調整するのです。
もちろん、暮らしている私たちは、需給バランスが今どういう状況か分からないので、
いつ節電すればいいか分かりませんよね。そこで需給バランスを見ているオペレータ
ーが島の需要が大きくなる時間帯に住民の皆さんに「節電をお願いする仕組み」があ
り、今、全国様々な地域で実験・研究されています。
ただ、こうした研究の中で、なかなか急に節電をお願いされても対応するのは難しい
ということも分かってきており、これを IT 技術を駆使することで、自動的に「消費」
を調整・制御する仕組みの研究も行われています。
このように、私たちの島にある大切な自然エネルギーを上手に賢く(スマートに)使
うことで、環境にも、経済にも優しい仕組みを作り、子や孫の世代まで、いつまでも
住み続けられる島にしたいというのが、すまエコプロジェクトの願いです。