1 <「校長室便り」52> LINE 大分寒くなった。柿の実が色づいたと思っ

<「校長室便り」52>
LINE
大分寒くなった。柿の実が色づいたと思ったら、今は葉が
少なくなってしまった。落ちた柿の実は少し甘い香りを漂わ
せている。創立記念日の7日は強く冷たい風が吹いていたが、
その風にコスモスが大きく揺れていた。あの細い茎がよく折
れないものだ。草むらでは赤く小さな花をつけた水引草が咲
いている。水引草かどうかわからぬが、秋になるといつも思
い出す短歌がある。
秋づけば水際の草に丹の花のこもらふほどの
恋に遇ふかも
中村憲吉
前半の序詞的表現がとてもいい。
ところで、これはまだ夏のことだ。あるメーカーの携帯を10年以上使っている方に
ということでダイレクトメールが送られてきて、スマホに買い換えないかという勧めだ
った。いつもならその種のものは見もしないで捨ててしまうのだが、ふと買い換えても
いいかなと思った。
私が携帯を買ったのはもう20年近くも前だ。公立高校に勤めていて教頭になった時、
急な連絡もあるだろうからと買ったものだ。言わば必要に迫られてのことで、積極的に
関心を持ったわけではない。
スマホに対してもそうだったが、急に買ってもいいかなと
思ったのは、もうこの辺で買わないと現代の社会についてい
けなくなってしまうかなとの気持ちと、それはいいとしても
学校で生徒達が多く持っていて、それに伴う問題もいろいろ
あるのに、実際自分で使ってみないことにはわからないだろ
うとの気持ちの故だった。
フェイスブック、ツイッターもよくわからない。実を言う
とフェイスブックについては、4,5年前だったか大学の部
の後輩に言われてその仲間に入ったことがあった。ところが
メールが来ても返信する気になれない。まったく知らない人
に自分の気持ちや考えを述べてどうなるのだろうと思ってし
まうのである。それで自然に終わってしまった。
1学期のことだが、また一念発起してフェイスブックを始めようと思った。それでホ
ームページ委員会の委員長を煩わせ、自分のパソコンにその設定をしてもらった。する
と早速メールが来る。ところが、申し訳ないことにやはり返信する気が起こらないので
ある。時間がないこともある。それで現在に至るまで放置状態である。
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ところが、なぜかラインを始めてみようと思ったので
ある。しかし、多くの人と話す気にはなれないので、結
婚して外に出ている娘2人と3人で始めることにした。
やり方は娘に聞いてそのとおりにやったつもりだった
が、電話帳の一部の友人知人達にも連絡が行ってしまい
(ただし、どのような形で行ったかは不明)、わずか15
分くらいの内に3人から返信があった。これには驚いた。
すぐ、娘に聞きながら訂正の操作をし、その後この3人に事情を話した。これは家族
内でやるつもりだったのだが、間違って送信してしまったと正直に言った。
LINEはやってみると確かに便利だし、楽しい。おしゃべり感覚でやりとりができ
る。娘の子供の、つまり私にとっては孫なのだが、その写真などもすぐ送ってくれる。
ほんのわずかな期間の成長も感じ取れる気がする。あるグループ、集団での連絡、急な
日程変更などには便利に違いない。
が、後で聞いたのだが、こちらから送信したメッセー
ジや写真はこちら側では削除できても、相手側のは削除
できないのだという。(このあたり少し怪しい。もちろん
スマホを使っている方は十分ご存じのことだろう。)
これにも驚いた。変更不可能だと言うことは、一旦書
いたこと、送った写真は永久に残ると言うことだ。会合
等の日時がそのまま残っていることは、確かに便利であ
る。が、意図的にでないにしろ、そのLINE内の誰かを不快にさせるようなメッセー
ジ、写真を載せてしまったら取り返しがつかない。
また、これはやってみてわかったが、ラインでおしゃべりをしているとなかなか切り
がたいこともある。それに自分が送信したメッセージに早く返信がほしいとも思う。す
るとどうしてもスマホを扱っている時間が長くなるし、常に相手からの送信を気にして
いないといけない。また、送信があればすぐ返信しようともする。
中学生、高校生が1日5~6時間も携帯やスマホをいじっているという話も聞くが、
なるほどと納得がいった。私の場合、娘達ということもあって、
「じゃー、今日はこれで」
などと切ってしまうが、生徒達だとそうもいかないこともあろう。
だが、ラインやフェイスブック、ツイッター等々、これをすべて禁止と言うわけには
いかないだろう。私は時代の流れを逆にすることは不可能だと考えている。ストップさ
せることも無理だろう。時代の流れに積極的に棹させと言うつもりもないが、このよう
な情報手段をどう活用していくか、これは私たちに課せられた問題である。
こんなことを考えさせられているLINE体験である。
(2015.10.9)
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