2 ページ「香西(こうさい)洋樹(ひろき)の「方位と方角」

香西台長の星四方山(よもやま)話 ~方位と方角~
2.方位はどうやって決めるか
皆さんは、太陽は東から昇る、と学校で教わりますね。ところでこの言葉は正確なのでしょうか。誰
も不審には感じてはいないようです。私には、このことが不思議でなりません。実際に、太陽は東から
昇りますからね。
ところが、東と言う方角を表す言葉と太陽が昇ると言う事実
はどちらが主役なのでしょう。よく考えると、太陽が昇る方角
が東なのですね。したがって、東から太陽が昇るのではなく、
太陽が昇る方角を東、と決めた訳です。ところが、太陽が昇る
方角は1年を周期にして北から南へ、また南から北へと移動し
ます。学校などでは、春の春分の日と秋の秋分の日に太陽は真
東から昇り真西に沈むと教えられます。その通りです。
ところで、真東や真西はどうやって決めるのでしょう。多く
の人は、北から東に測って90度の方向が東で、西に90度の
夏至の頃の日の出
方向が西だと答えます。その通りですが、北はどうやって決め
ますか。難しい事ですね。現在は北極星が天の北極付近にある
ので晴れた夜には星のことをよく知っている人には容易に判
るでしょう。また、方位磁石を使って北を知ることも出来ます。
が、しかし北極星にしても方位磁石にしても精確に北極の方向
を指す訳ではありません。また、学校では春分や秋分の日の日
の出の方向が真東ですと教わりますが、例え地平線まで見渡せ
る平野でも気象状況に依っては日の出の瞬間を見ることは不
冬至の頃の日の出
可能でしょう。方位の基準は北だと言うことは世間の約束事な
のです。では、昔の人はどうやって東西南北を決めたのでしょうか。
先ず、真っ直ぐな棒を用意しましょう。次に、直径が棒の長さくらいの円を地上に描きます。真っ直
ぐな棒を、描いた円の中央に真っ直ぐに立てます。太陽が出ていれば棒の影は地上に映るはずですね。
先ずは午前中に、棒の影の先端が、先ほど描いた円に接した時に円周上に印を付けます、次に午後にな
って太陽が南から西へと廻ったときに同じように棒の影が円に接した時、円周上に同じように印を付け
ます。これで観測は終わります。続いて、円周上に付けた2箇所の印を直線で結びます。これが正確に
東西線、東西の方向を示してくれます。次いでその東西線の2分の1のところを求めて円の中心を結び
ます。これが正確な南北線、詰まり子午線となります。後は、この東西線と子午線を延長すれば立派な
方位線となるのです。
星の観測から方位を決める、または太陽の出入りから方位を求める事は誰でもが考えることでしょう
が。北極星も、その他の星も地球の首振り運動、つまり歳差現象によって絶えず僅かながら移動してい
るのです。
シェイクスピアの戯曲「シーザー」の台詞。「俺は、天にあって不動の北極星の様に・・・云々」は、
間違いなのです。
現在でも、正確に方位を決めることはとても難しく、ある地点(基準点)から見たある目標の北極か
ら東回りに測った方位角を基準として、測量が続けられているのです。日本では、東京都港区の旧・東
京天文台の大子午儀の中心点と、千葉県の鹿野山の北極からの方位角がそれぞれ基準として決められて
いて、測地原点として大切に管理されています。
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