セファロスポ リン剤に よる直接 クームス試験陽性

VOL.
18
NO.
CHEMOTHERAPY
5
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セ フ ァ ロス ポ リ ン剤 に よ る直 接 クー ム ス 試 験 陽 性 に 関 す る基 礎 的 研 究
宮 川 千 恵 子 ・田沢 房 子 ・峯 島 博 子
順天堂大学中検
小酒井
望"
順天堂大学臨床 病理学教室
セ フ ァ ロ ス ポ リ ン 剤 投 与 に よ り直 接 ク ー ム ス 試 験 が
陽 性 に な る とMoLTHANら1)は
(CET)に
報 告 し,特 にCephalothin
つ い て試 験 管 内 に お け る クー ムス試 験 を陽 性
に す る 薬 剤 濃 度,そ
うに度 解 度 の低 い もの につ い ては,イ),ロ)の
な い,CET,CER,CEZの
の 他 の基 礎 的 実験 を報 告 して い る。
方法で行
よ うに度 解度(の高 い もの に
つ い て は 鐸)の方 法 の み を用 い た。 感 作 血 球(II)を
用い
て,型 通 りの クー ムス 試験 を行 なつ た 。
わが 国 にお い て も数種 類 の セ フ ァ ロス ポ リソ剤 が 使用 さ
A〕Alsever血 液(I)の 作成
れ て い る の で,Cephalexin(CEX),Cefazolim(CEZ)
を 中 心 と して 数 種 の 薬 剤 に つ い て,試
験 管 内 での クー ム
ス 試 験 が 陽 性 に な る薬 剤 濃 度 に つ い て 基 礎 的 実 験 を 行 な
う と と も に,用
い る抗 ヒ トグ ロ ブ リ ン血 清 に よ り異 な る
か ど う か も 検 討 し た 。 実 験 の 結 果,ク
B〕CEX感
ー ムス 試験 が陽 性
作血 球(II)の作成
イ)高濃度CEXの 感作方法
と で た こ と に 関 して 私 ど も は セ フ ァ ロ ス ポ リ ン 剤 を 媒 介
と し て,赤
血 球 に 血 漿 蛋 白 が 結 合 し,こ
ブ リ ン血 清 を 加 え る と凝 集 し,ク
れ に抗 ヒ トグ ロ
ー ム ス試 験が 陽 性 化 し
た も の と考 え て い る。
1 実
(1)
験 材
料
抗生物質
CEX,CET,Cephaloridime(CER)
,
Cephaloglycim(CEG),CEZお
よ びPC-G,
KM,Nafcilli獄
(2)
抗 ヒ トグロ ブ リ ン 血 清
Ortho,Pfizer,東
京 標 準 血 清,ミ
ド リ十 字 の 各
図1 正 常 人 血 球 にCEXを
製品
(3)
Alsever溶
III 実
成 書2)に 従 つ て 作 成 し た 。
(4)生
理 食 塩液
0.85%を
(5)被
感 作 す る方 法
液
1.
験
結
果
セ フ ァ ロス ポ リン剤 と赤 血 球,血 漿 蛋 白 の 結 合状
使用
態
検 血液
クー ム ス試 験 が セ フ ァ ロス ポ リン剤 に よ り陽 性 に な る
採 血 直 後 の 正 常 人 全 血 を 用 い た 。 保 存 はMolTHAN
の は,セ フ ァ ロ スポ リン剤 を 介 して赤1血球 に血 漿 蛋 白 が
ら1)に 従 つ た 。
II 実
結 合 す る と考 え られ る の で,ま ず 次 の実 験 を 行 な つ た 。
験
方
(a)は赤 血 球 を 生 理 食塩 液 で よ く洗 浄 した後 セ フ ァロ スポ
法
リ ン剤 を 感 作 した もの,(b)は 洗 浄 した赤 血 球 に セ フ ァ ロ
実 験 方 法 はLEYら3)とMOLTmら1)を
の ご と く行 なつ た 。
す なわ ち まずA〕
参 考 と して 図1
の ご と くAlsever
血 液 を 作成 し,こ れ を 用 い てB〕 の ごと くセ フ ァ 群ス ポ
リン剤 を赤 血 球 に 感 作 した 。 そ の 際CEX,CEGの
よ
ス ポ リン剤 を 感 作後,生 理 食 塩 液 で よ く洗 浄 し,更 に血
漿 蛋 白を 加 え て反 応 別せ た もの,(c)は 図1-B〕
に よる
方 法 で作 つ た 感 作血 球 で あ る。 これ らを用 い て,型 通 り
クー ム ス試 験 を 行 なつ た のが 表1で あ る。 表 か ら明 らか
CHEMOTHERAPY
493
表1
SEPT.1970
抗 生 物 質 の 結 合 状 態
な よ うに,(a)の ご と く血 漿 蛋 白 の 存 在 しない 場 合 は クー
グ ロ ブ リ ン血 清 を 用 い た 場 合,CEX,CET,CER,CEG
ム ス試 験 は 陽 性 に な ら ない が,(b)の ご と く後 に 血 漿 蛋 白
簡
を 作用 別せ る と陽 性 に な る
。 この こ と よ り,血 漿 蛋 白 の
0.666mg/m1と
で はOrtho1.67∼7.5mg/m1,ミ
存在 な しで も,セ フ ァ ロス ポ リン剤 が赤 血 球 に 吸 着 す る
血 清 で はCERで
こ とがわ か る。 また,(b),(C)で は い ずれ も血 漿 蛋 白 が 存
0.333∼6.66mg/ml,0.167∼3.33mg/mlと
在 す る が,感 作 時 に血 漿蛋 白が 存 在 す る 方 が反 応 が 強 か
い る 。CEZの
つ た。
度 が 高 い 。 ま たMOLTHAら1)と
2. 直接 クー ム ス 試 験 を陽 性 に す るセ フ ァ ロスポ リン
多 少 最 低 濃 度 が 低 い が,そ
京標準
れ ぞ れ
近 似 して
み 他 の セ フ ァ ロスポ リン 剤 に 比 べ 最低 濃
の 成 績 の比 較 で は 私 た
ち の方 が 最 低 濃 度 が高 い。
3. 直 接 ク ー ム ス 試 験 を 陽 性 に す る 他 の 抗 生 物 質 の 濃
剤 の最 低 濃 度
私 た ち は まず 直 接 クー ムス 試験 を陽 性 に す るCEXの
度
最 低 濃 度 に つ い て実 験 した。 表2は 多 数 の 正常 人 に つ い
て実 験 した うち の6人 の成 績 を示 した が,CEXに
よ り直
接 クー ムス試 験 が 陽 性 に な る 最低 濃 度 は3.33∼7.5mg/
m1の
ド リ十 字0.167∼
近 似 値 の 範 囲 に あ り,Pfizer,東
範 囲 で多 少 個 人 差 が み られ る。 これ らを表3の
ご
と く市 販 別れ てい る抗 ヒ トグロ ブ リン血 清 の2種 類 を 用
∼ て 比 較 した とこ ろ,抗 ヒ トグロ ブ リン血 清 に よ りか な
セ フ ァ ロス ポ リン剤 に よ る直接 クー ム ス試 験 の対 照 と
し て 同 様 の 実 験 をPC-G,KM,Nafcillinに
あ る 。 こ れ ら の 最 低 濃 度 はMOLTHAN
ら の 成 績 と 同 様,セ
フ ァロ ス ポ リ ン 剤 に 比 し て ず つ と高
い 。 抗 ヒ トグ 癖 ブ リ ン 血 清 に よ る 最 低 濃 度 の 差 は セ フ ァ
ロ ス ポ リ ン剤 の 場 合 と 同 様 で あ る 。
り差 が み られた 。
考
別 らに4種 類 の市 販 抗 ヒ トグ 戸ブ リソ血 清 を 用 い て,
5種 類 の セ フ ァ ロ スポ リン剤 に よ る直接 クー ム ス試 験 を
つ い て行
な つ た 結 果 が 表5で
察
セ フ ァ ロス ポ リン剤 の媒 介 で 赤血 球 と血 漿 蛋 白 が結 合
陽 性 にす る最 低 濃 度 に つ い て繰 返 し実験 した 結 果 が 表4
す る こ とに よ り,直 接 クー ム ス試 験 が陽 性 に な るが,試
で あ る。 抗 ヒ トグ β ブ リン血清 の 種 類 に よ り最 低 濃 度 に
験 管 内 で陽 性 に な るセ フ ァ ロス ポ リン剤 の最 低濃 度 は,
差 の み られ る のは 表3と 同様 であ る。しか し,同一 抗 ヒ ト
正 常 人 の血 液 で も多少 個 人 差 が み られ,使 用 す る抗 ヒ ト
表2
直 接 クー ム ス試 験 を 陽性 にす るCEXの
濃度
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表3
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2種 の抗 ヒ トグロ ブ リ ン血 清 に よ る直 接 クー ム ス試 験 を陽 性 に す るCEXの
表4
直 接 クー ム ス試 験 を陽 性 に す るセ フ ァ ロスポ リン剤 の最 低 濃 度
グロ ブ リン血 清 の種 類 に よつ てか な り の 差 が 生 じる。
後 の血 中 濃 度 は21mcg/m1で
しか し,同 一 抗 ヒ トグ ロ ブ リン血 清 で 行 な うと,CEX,
1000mg筋
CET,CER,CEGは
濃 度 の 比較
近 似 した 最 低 濃 度 に な り,CEZ
のみ 高 い 濃 度 で 陽性 で あ る。MOLTmら1)は,CETを
で あ る とのべ,こ の 際6∼12時
投
あ る と し,QuINN6)はCER
注 した 時 の1時 間 値 は23.4∼55.7mcg/ml
度 は1.5∼2倍
間毎 に筋 注 す る と血 中濃
に 上 が る とのべ て い る。5種 類 の セ フ ァ
与 別れ た 多 くは直 接 クー ムス試 験 が 陽 性 とな り(55人 中
ロ スポ リソ 剤 に よ りクー ムス 試 験 が 陽 性 に な る濃 度 は
41人75%),輸
Ortho
血 を 困 難 に した とのべ,ま たCET投
与
1.67∼16.7mg/m1で,Orthoの
抗 ヒ トグロ ブ
後 で は31人 中25人 が直 接 クー ムス試 験 が 強 陽性 に なつ た
リン血 清 を用 い た 場 合 に は クー ム ス試 験 が 陽 性 に で る と
との べ て い る。GRら4)も20人
は 考 え られ ない 。 しか し,東 京 標 準 血 清,ミ
の 患者 にCETを
投与
ド リ十 字 の
した と ころ8人 が 直 接 クー ム ス試 験 が 陽 性 で あつ た が,
製 品 を用 いれ ば,注 射 直 後 や,注 射 部 位 で は 血中濃 度 が
これ ら8人 は全 て窒 素血 症 患 者 で,CETを
高 くな る の で直 接 クー ムス試 験 が 陽 性 に な る こ とが あ ろ
た とのべ てい る。 金 沢 ら5)はCET1000mg静
表5
多量に投与 し
注1時 間
う。 特 に ミ ドリ十 字 の 抗 ヒ トグロ ブ リン血 清 で は0.167
直 接 ク ー ムス試 験 を陽 性 にす る他 の 抗 生 物 質 の濃 度
CHEMOTHERAPY
500
∼0.666mg/m1で
SEPT.1970
あ るか ら陽 性 に で る可 能性 が強 い 。
tests
これ ら抗 ヒ トグロ ブ リン血 清 は製 品 に よ り最低 濃 度 が
異 な るの で,抗
2)
ヒ トグ ロブ リン血 清 の 性 質 や 力価7)につ
鈴木
い て 検討 を行 ない 別 に 報 告8)した 。 なお 本 現 象 の 本態,
3)
セ フ ァ ロス ポ リ ン剤 に よ り直接 クー ム ス試 験 が 陽 性 に
4)
ヒ トグ ロブ リン血 清 の 相違 に よ りか な りの 開
5)
金 沢
か な り大 きな 値 を 示 した 。 以 上 の 成 績 か ら使 用 す る抗 血
濃 度 の高 くな る注 射薬 の場 合),直
6)
7)
献
FUNDAMENTAL
direct
Clinical
observed
by
which
CET
We
has
carried
(CEX),and
物 学 的 薬剤
生 省,1967
販 ク ー ム ス 試 薬 の 検 討,現
THE
TO
CEPHALOSPORINS
Laboratories,
Climica
POSITIVE
Juntendo
在
to
be
caused
COOMBS
Hospital
KOSAKAI
Umiversity
the
considered
DIRECT
HIROKO MINESHIMA
University
lPathology,Jumtemdo
MoLTHAN et al.that
is
ー ム ス 血 清 基 準,生
Agents
宮 川 千 恵 子,他:市
ON
DUE
Nozomu
been
evaluation.
Antimicr.
1966 : 88-95, 1967
基 準:191∼195,厚
CHIEKO MIYAKAWA, FUSAKO TAZAWA and
has
laboratory
Coombs
STUDIES
TEST
It
剤 の 基 礎的 臨
投稿中
MOLTHAN,
L., et al. : Positive
Cephalothim(CET).This
1967
黒 川 正 身,他:ク
8)
of
MCGINNISS,
associatei
J. A. M. A.
裕,他:CephalosporinC製
and clinical
& Chemoth.
した。
Departmemt
reaction
therapy.
E. L. QUINN,et al.: Cephaloridine,
接 クー ム ス 試 験 が 陽
本 研 究 の要 旨 は第18回 日本 化 学 療 法 学 会 総 会 に て発 表
1)
127 : 1118--1119,
床 的 検 討 。Jap.J.Amtibiotics21:1∼9,1967
くに 血 中
性 に な り得 る こ とを 知 つ た。
文
Science
directed
WRIGHT, L. D. &
199 : 725-726,
他 の セ フ ァ ロス ポ リン剤 と比 べ
フ ァ ロス ポ リン剤 使用 中(と
Pe nicillin.
antibody
M. H.: Coombs' positive
with sodium Cephalothin
同一 抗 ヒ トグ ロブ リン血 清 を 用 い る と近 似 値 を
清 に よつ ては,セ
HARRIS, J. P., BRINKLEY,
M. &
GRALNIK,H. R.;
な る最 低 濃 度 を 検 討 した と ころ,CET,CER,CEG,
清 学;
原 出 版,1965
against
1958
論
J. Med.
床 検 査 技 術 講 座(第2集)血
LILES, B. : Circulating
結
きが み られ た 。CEZは
New Engl.
1967
LEY, A. B.;
は 今 後 の 検討 を要 す る。
と るが,抗
鑑3臨
63∼64,金
直 接 クー ムス試 験 を 陽 性 に す る血 漿 蛋 白の 分 画 に つ い て
CEXは
due to Cephalothin.
277 : 123-125,
direct
by
Coombs
School
test
plasma
is
of
Medicine
positive
protein
inpatiemts
binding
to
the
receiving
erythrocyte
to
adhered.
out in
vitro
experimets
Cefazolin(CEZ)to
with
CET,Cephaloridime(CER),Cephaloglycim(CEG),Cephalexin
determine
the
concemtrati
on
of
each
antibiotic
at
which
the
direct
Coombstestwaspositive.
Four
Cephalosporins
according
four
1.67
showed
CEZ
to
the
exceptCEZ
kiad of
Cephalosporims,we
showed
antig1obulin
had
a
to7.5mg/m1.However,when
the
showed
values
a
ramging
ratherhighvalue
similar
serum.When
positive
direct
Green
from
0.167
values,but
these
values
Ortho'samtig1obulin
Coombs
Cross's
test
at
antiglobulin
similar
serum
were
serum
somewhat
was
concentrations
was
different
used
for
ranging
used,four
Cephalosporins
to0.666mg/m1。
than other
Cepha1osporins,ranging
from
0.666
to
16.7mg/m1.
these
from