いろいろな波長で観測した銀河系

いろいろな波長で観測した銀河系
UIR 毛利
目次
・銀河系の構成成分
・異なる波長で見た銀河系
・まとめ
銀河系
・銀河・・・多くの恒星や星間物質などの集まり
→特に太陽系のある銀河を銀河系と呼ぶ
・棒渦巻き銀河と呼ばれる形をしている
・太陽系の位置
→中心部から約8kpc
銀河面からは40pc離れている
30kpc
銀河系の構成成分
・バルジ
→種族Ⅱの古い星が多い
星間塵による影響が強く、可視光では約30等減光する
・銀河円盤
→薄い円盤、厚い円盤と2成分ある
円盤部分に存在する星の大部分は
薄い円盤内に存在し、若い星が多い
・ハロー
→星やガスが少なく、球状星団が分布している
ダークマターで満たされてると考えられている
銀河系の模式図
銀河系の構成成分
・星間物質
円盤部分に多く存在しており、ガスと星間微粒子から成る
・星間ガスの主成分は水素
温度・密度の違いによって、水素の状態を分類できる
→ ・中性水素原子(HⅠ)ガス
・中性水素分子(H2)ガス
・電離水素(HⅡ)ガス
・星間微粒子は炭素・ケイ素・酸素・鉄などの重元素から成る
銀河系の観測
【可視光】
・主に星からの放射
・可視光だと暗黒星雲によって吸収されてしまう
→電波・赤外線・X線など、観測に適した波長で観測する
電波で観測した銀河系
【電波】
・電波の放射・・・・連続スペクトルと線スペクトル
ー 連続スペクトル ー
シンクロトロン放射・・・光速に近い速度をもった荷電粒子が、磁場との
相互作用によって加速され、磁場に巻きつくようにらせん
運動する際に放射する
→磁力線の強さや構造が分かる
超新星残骸などで観測される
地上観測による408MHz連続波の全天観測
天の川の強度が強い
→高エネルギー電子や磁場強度が銀河面
に集中している
電波で観測した銀河系
ー 連続スペクトル ー
熱的放射・・・高温のプラズマ雲中の電子が、陽子のクーロン力によって
加速され、軌道を曲げられるときに放射する
→電離ガスの分布が分かる
HⅡ領域などで観測される
【電離水素(HⅡ)領域】
・大質量星(O~B型星)からの強い紫外線によってガスが電離された領域
連続スペクトルではないが、再結合線も観測できる
このガス雲の内部で生まれた若い高温の星による紫外線によって
周囲のガスを電離させている
→星形成領域の指標になる
電波で観測した銀河系
ー 線スペクトル ー
中性ガスの出す分子の回転輝線
→輝線の強度や比から分子ガスの密度、温度を推定
【分子雲】
・10Kほどの低温で、主成分は水素分子(H2)
ただし、H2は永久電気双極子モーメントをもたないため、低温で電波放射しない
→CO分子の回転遷移による分子輝線を主に観測する
回転遷移 J=1→0 振動数 115 GHz
CO輝線の積分強度分布
電波で観測した銀河系
ー 線スペクトル ー
陽子・電子のスピン相互作用による超微細構造線
【中性水素原子ガス(HⅠ)】
周波数 1420MHz 、 波長 21cm
・特徴
星間物質に対して透過率が高い
観測値から存在量を推定しやすい
電離ガスの再結合線
→熱的放射の観測と合わせることで
温度を推定
赤外線で観測した銀河系
【赤外線】
・波長ごとに大きく分けることができる
遠赤外線(25~1000μm)
中間赤外線(5~25μm)
近赤外線(1~5μm)
中間・遠赤外線 ・・・ 紫外線などによって温められたダストからの放射を観測
HⅡ領域の周囲にある光解離領域における
[CⅡ]・・・158μmなどが観測できる
PAH(多環式芳香族炭化水素)のような微粒子の
放射ピークも6~14μm帯で見られる
赤外線で観測した銀河系
【近赤外線】
近赤外線 → 星間塵による吸収の影響が少なく円盤やバルジにある
恒星(主に赤色巨星)の光を観測
COBE衛星搭載のDIRBE観測装置による全天画像
X線で観測した銀河系
【X線】
・高エネルギー現象
ブラックホールの周りにある降着円盤からの放射など
軟X線、硬X線
エネルギーが低く物質に吸収されやすい
エネルギーが高く物質に吸収されにくい
0.25 , 0.75 , 1.5 keVを中心とする
三つの軟X線波長域を
赤、緑、青に対応
γ線で観測した銀河系
【γ線】
銀河面拡散放射
高エネルギー宇宙線と星間ガス中の陽子との相互作用によって発生する
•拡散ガンマ線放射の放射機構:
•宇宙電子線と物質(制動放射)、逆コンプトン散乱
•宇宙陽子線と物質との相互作用
まとめ
・他の波長の画像と比べるために、どんな波長で何が観測されるかを
知っていないといけない
・放射の原理までは完全に理解できなかったので
その辺りを勉強しないといけない
宇宙電波の種類
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連続波
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熱放射
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太陽の光球、惑星、星間ダス
ト、宇宙背景放射など
銀河電波、超新星残骸、活動
銀河核、マイクロクエーサーな
ど
自由・自由放射
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スペクトル線
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シンクロトロン放射
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中性水素HI:1.42GHz
一酸化炭素CO:115GHz
H2Oメーザ:22GHz
SiOメーザ:43GHz
線スペクトルの重要性
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HII領域、太陽コロナなど
様々な原子・分子・イオン
様々な励起状態
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回転・振動・電子励起
組成・存在量・温度・速度など様々
な物理量を知る手がかりとなる
天体W49の構造とスペクトル
折れ曲がりと平坦なスペクトル
=典型的な熱的プラズマ
⇒HII領域と考えられる
100MHz
1GHz
10GHz
空間構造
(電波強度分布)
折れ曲がりの先で減少するスペクトル
=シンクロトロン放射
⇒超新星残骸と考えられる
Goudis (1977)
ラインの幅
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自然広がり
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遷移を起こすためには有限の時間(A-1 )がかかる。その時間の逆数だけ周波数には幅が生じる。
電波領域では自然幅はきわめて狭く、他の効果によって幅が広がる。実際には自然幅は観測さ
れない。自然広がりが重要になるのは速い遷移、一般にエネルギーが高い遷移である。
計算例:HI 21cm線の遷移に要する時間~3x1014 s → ライン幅 ~3x10-15 Hz
衝突広がり(圧力広がり)
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圧力が高い=粒子の衝突が頻繁に起きると、あるエネルギー準位にとどまっている時間が短くな
る→エネルギーの不確定性が大きくなる
宇宙は低密度・低圧力なので圧力幅はほとんど観測されない。地球の大気中の輝線(たとえば水
蒸気の22GHz線)の幅が広いのは圧力広がりである。
計算例:大気中の分子は1秒間に 109 回程度衝突する → ~109 Hz
–
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このような高密度ガスは電波天文観測ではほとんど観測されない
ドップラー広がり
遷移を起こすガス雲が全体的な運動や熱的な運動をしていることにより、本来の周波数0以外
でも遷移が起きる
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宇宙で観測される線幅のほとんどがドップラー広がりである。
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計算例:T=100 Kの水素原子の熱運動の典型的な速度 v~1300 ms-1=4x10-6 c
=1420MHz → ∆ν~6x103 Hz
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