公開特許公報 特開2015

(19)日本国特許庁(JP)
〔実 7 頁〕
公開特許公報(A)
(12)
(11)特許出願公開番号
特開2015-174829
(P2015−174829A)
(43)公開日 平成27年10月5日(2015.10.5)
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A61K 36/18
(2006.01)
A61K
35/78
C
4B017
A61P
3/10
(2006.01)
A61P
3/10
4B018
A61P 43/00
(2006.01)
A61P
43/00
121 4C086
A61K 36/00
(2006.01)
A61K
35/78
X
4C088
A61K 31/353
(2006.01)
A61K
35/78
審査請求 未請求
(21)出願番号
特願2014-50207(P2014-50207)
(22)出願日
平成26年3月13日(2014.3.13)
W
4C206
請求項の数4
OL (全10頁) 最終頁に続く
(71)出願人 395007440
石井物産株式会社
奈良県五條市西吉野町八ツ川458番地
(72)発明者 石井
和弘
奈良県五條市西吉野町八ツ川458
石井
物産株式会社内
(72)発明者 石井
光洋
奈良県五條市西吉野町八ツ川458
石井
物産株式会社内
Fターム(参考) 4B017 LC03
LG20
LK06
LP01
4B018 MD08
MD48
ME03
MF01
4C086 AA01
AA02
BA08
MA02
MA04
MA17
MA52
NA05
NA14
ZC35
ZC75
最終頁に続く
(54)【発明の名称】血糖値低下効果を有する柿由来飲料組成物
(57)【 要 約 】
【課題】
予防的に食前に手軽に飲用することで速効性と遅効性とのバランス良く機能し、血中へ
の単糖類の移行を押さえかつインスリンの分泌を促進し血糖値を低下させる機能を併せて
備えた柿由来飲料組成物を提供すること。
【解決手段】
柿葉の熱水抽出物及び柿果実より採取して成る高分子量柿タンニンを含む飲料組成物で
柿 葉 由 来 の 熱 水 抽 出 物 に 含 ま れ る 分 子 量 10,000以 下 よ り 成 る ポ リ フ ェ ノ ー ル 抽 出 物 と 柿 果
実 よ り 採 取 し て 成 る 分 子 量 10,000以 上 よ り 成 る 柿 タ ン ニ ン を 含 有 さ せ た 組 成 物 を 食 前 に 飲
用することで食後の血糖値上昇が抑制される効果と共に血糖値が上昇してピークに達した
後も速やかな血糖値低下を遅効的にもたらす働きをもつことを見出して本発明を完成した
。
【選択図】
なし
( 2 )
JP
1
2015-174829
A
2015.10.5
2
【特許請求の範囲】
一般に糖尿病の発症メカニズムは、ランゲルハンス島の
【請求項1】
β細胞(膵β細胞膜)が何らかの要因(一説には、本来
柿葉の熱水抽出物及び柿果実より採取して成る高分子量
自分の体を外敵から守る免疫系が、膵β細胞膜を異物と
柿タンニンを含むことを特徴とする血糖値低下効果を有
みなし攻撃)で破壊され、インスリンを正常に分泌出来
する飲料組成物。
なくなった状態に始まるとされています。
【請求項2】
日本人の糖尿病の95%を占める2型糖尿病では、膵β細
柿葉の熱水抽出物は、分子量10,000以下より成るポリフ
胞膜の状態は、1型糖尿病ほど破壊されてはいないと見
ェノールを含有していることを特徴とする請求項1記載
られています。ただ2型糖尿病のうち6割は、非肥満とさ
の血糖値低下効果を有する飲料組成物。
【請求項3】
れ何らかのインスリン分泌障害をおこしているためと考
10
えられています。
高分子量柿タンニンは、分子量10,000以上であることを
【0005】
特徴とする請求項1記載の血糖値低下効果を有する飲料
一方、2型糖尿病のうち4割を占める肥満を伴うものの原
組成物。
因として高脂肪食による肥満などの環境因子によって脂
【請求項4】
肪組織の肥大化に伴い遊離脂肪酸、TNFα、レジスチン
柿葉の熱水抽出物に対する高分子カキタンニンの比が乾
などが分泌されることとアディポネクチンの分泌が低下
燥重量比で1/20∼2/1の範囲にあることを特徴とする請
することによってインスリンが分泌されていてもインス
求項1記載の血糖値低下効果を有する飲料組成物。
リン受容体以降のシグナル伝達が阻害される等のメカニ
【発明の詳細な説明】
ズムが提唱されております。いずれにしてもインスリン
【技術分野】
の分泌力、またはその血糖値の抑制効果が低下している
【0001】
20
点では、1型糖尿病と同じ状況にあります。
本発明は、血糖値低下効果を有する柿由来飲料組成物に
【0006】
関するものである。詳細には、柿葉の熱水抽出物及び柿
食物から摂取した炭水化物は、食後、消化管でアミラー
果実より採取して成る高分子量柿タンニンを含む飲料組
ゼにより分解されて二糖類あるいは三糖類となり、さら
成物で柿葉由来の分子量10,000以下より成るポリフェノ
に二糖類等は、最終的に小腸上皮にある分解酵素のスク
ール抽出物と柿果実より採取して成る分子量10,000以上
ラーゼ、ガラクターゼ、マルターゼによりグルコースな
より成るポリフェノールの重合体である柿タンニンを含
どの単糖類に分解されます。その後吸収され血中に移行
有することを特徴とする飲料組成物に関する。
するため食後は、血糖値が上昇することになります。
【背景技術】
【0007】
【0002】
高血糖の状態で血糖コントロールをしないで放置した場
厚生労働省により平成24年11月に実施された「国民健康 30
合には、糖尿病発症時から10∼15年で糖尿病神経障害、
・栄養調査」の結果では、糖尿病が強く疑われる者(糖
糖尿病網膜症、糖尿病腎症の3大合併症をはじめとした
尿病有病者)は約950万人、糖尿病の可能性を否定でき
種々の慢性合併症が発症する恐れがあります。
ない者(糖尿病予備群)は約1,100万人と推計されてい
【0008】
ます。糖尿病が強く疑われる者と糖尿病の可能性を否定
血糖値が高いことが判明したら先ずは、医師に相談し、
できない者を合わせると約2,050万人と推計され、平成9
定期的に血糖値の検査を受ける
年以降の5年ごとの調査でずっと増加していたが、前回
と共に食事や運動など、日常生活習慣の改善していくこ
の平成19年の約2,210万人から初めて減少に転じたと報
とが大切になります。
告されています。糖尿病の可能性を否定できない者(糖
【0009】
尿病予備群)が最近の調査ではじめて減少に転じたとさ
しかしながら食事、運動に関わる生活習慣はなかなか改
れています。しかしながら糖尿病が強く疑われる者は、 40
善しにくいことから、食事の前に手軽に飲用できてかつ
増え続けています。
副作用が少なく血糖値の低下に予防的に用いることので
【0003】
きる有効な健康食品が求められています。
また減少に転じたとはいえ、糖尿病予備群の人が約2,00
観点から副作用の少ない天然物の中から血糖値低下効果
0万人強であることは、非常に大きな数字で、更なる重
をもたらす副作用の少ない物質が探索されています。
大な問題は、糖尿病が疑われる人の約4割は、ほとんど
【0010】
治療を受けたことがないとされている点にあります。
柿葉、柿枝から抽出される成分のケンフェロールまたは
糖尿病は、初期の段階では痛みなどの自覚症状がなく、
その配糖体が膵β細胞膜を活性化するインスリン分泌促
血液検査で血糖値が高いため治療が必要と言われても放
進剤として提案されています。(特開2009-215253号公
置している人が多いためと推測されます。
報)
【0004】
50
【0011】
このような
( 3 )
JP
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A
2015.10.5
3
4
また柿タンニンから得られたエピガロカテキン、エピガ
観点から日常生活に取り込んで手軽に飲用することで速
ロカテキンガレート、エピカテキン、エピカテキンガレ
効性と遅効性とのバランス良く機能し、血中へのブドウ
ートのカテキン類を主要構成成分として2∼数個重合し
糖などの移行を押さえかつインスリンの分泌を促進し血
た低分子化柿ポリフェノールが抗酸化活性、転写因子NF
糖値を低下させる機能を併せて備えた柿由来飲料組成物
-κBの活性化阻害などの薬理活性を備える(特開2007-1
を提供することを目的としています。
76845号公報)として提案されています。
【課題を解決するための手段】
【0012】
【0019】
さらに柿果実を乾燥し、一部又は全部の水可溶性成分を
上記の目的から本発明では、柿葉の熱水抽出物及び柿果
除去し、さらに粉末化する工程から得られた水不溶性縮
実より採取して成る高分子量柿タンニンを含む飲料組成
合型タンニンを有効成分とする柿果実粉末組成物が血糖 10
物で柿葉由来の熱水抽出物に含まれる分子量10,000以下
値低下効果を有する(特開2013-35803号公報)として提
より成るポリフェノール抽出物と柿果実より採取して成
案されています。
る分子量10,000以上より成る柿タンニンを含有させた組
【0013】
成物を用いる。
これらの従来技術は、インスリンの分泌を促進し血糖値
【発明の効果】
を低下させる、高血糖状態でのダメージを軽減するなど
【0020】
生理的な機能をブタ腎上皮細胞組織、ラット膵臓ベータ
本発明の柿葉の熱水抽出物及び柿果実より採取して成る
細胞由来のRIN-5Fを用いての研究で確認したりしている
高分子量柿タンニンを含む飲料組成物で柿葉由来の熱水
ものになります。
抽出物に含まれる分子量10,000以下より成るポリフェノ
【0014】
ール抽出物と柿果実より採取して成る分子量10,000以上
そのため副作用の検証や人への継続的な摂取量の安全性 20
より成る柿タンニンを含有させた組成物を食前に飲用す
が明確でなかったり、また腸管で糖質の吸収を阻害する
ることで食後の血糖値上昇は抑制されるとの効果と共に
ため低血糖に陥ったり、未消化のまま大腸まで達する糖
血糖値が上昇してピークに達した後も速やかな血糖値低
質の量が増えるため糖質が大腸に達すると腸内細菌によ
下を遅効的にもたらす働きをもつことを確認した。
って分解されて、酢酸、酪酸、乳酸などの有機酸が生成
【図面の簡単な説明】
し、また、水素ガスやメタンガスなどが発生するため、
【0021】
お腹が張ったり、おならが多くなったり、下痢、便秘、
【図1】健常者についての麦芽糖飲用後の血糖値測定結
腹痛が増えるなどの副作用が現れるとの課題があります
果(N=6の平均値)を示す図である。
。従来の技術は、上記の課題に加えて、医薬品としての
【図2】糖尿病予備群の被験者についての麦芽糖飲用後
適用が意図されており予防的というよりは治療に用いら
の血糖値測定結果(N=4の平均値)を示す図である。
れる適用となっております。
30
【図3】腸管での糖分の吸収に関する概念図である。
【0015】
【発明を実施するための形態】
特に食事、運動に関わる生活習慣の改善を補助する観点
【0022】
から日常生活に取り込んで手軽に飲用でき、速効性と遅
次に本発明を実施するための形態について以下にして説
効性とのバランス良く機能し、血中へのブドウ糖の移行
明する。
を押さえかつインスリンの分泌を促進し血糖値を低下さ
柿は、東アジア原産で我が国でも先史時代から存在した
せる機能を併せて備えたものでない。
と見られています。野生種の山ガキと栽培ガキとに分け
【先行技術文献】
られ雌雄同株になります。現存する品種は、1,000種以
【特許文献】
上にも及ぶが大きく渋ガキと甘ガキに分けられる。
【0016】
【特許文献1】特開2007-176845号公報
【0023】
40
本発明に用いる柿葉、柿果実の品種としては、富有、平
【特許文献2】特開2013-35803号公報
核無、刀根早生、甲州百目(蜂屋・富士)、松本早生富
【特許文献3】特開2013-35803号公報
有、早生系次郎、市田柿、次郎、堂上蜂屋(蜂屋)、西
【発明の概要】
条、西村早生、愛宕、太秋、会津身不知、葉隠、中谷早
【発明が解決しようとする課題】
生、三社、大和百目、早生西条、筆柿、伊豆、最勝、上
【0017】
西早生、四ツ溝(溝柿)、早秋、祇園坊、小枝柿、勝平
本発明はこのような問題を解決するためになされたもの
、横野、紋平、大和、石橋早生、やおき、蓮台寺、妙丹
で、その目的は、健常者から糖尿病の可能性を否定でき
、南飛騨富士柿、川底、甘百目、紅柿、花御所、長良、
ない人々(糖尿病予備群)までを主対象としています。
陽豊、水島、大核無、禅寺丸、立石、武田、高瀬、鶴の
【0018】
子、阪口早生、稲佐、大養、碁盤、愛秋豊、伊自良大実
予防的に食事、運動に関わる生活習慣の改善を補助する 50
、おべん、美濃、すなみ、サエフジ、エボー、稲山、い
( 4 )
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さはや、つる、西浦、川登早生、紅稲佐、貴秋、川端、
一般には、限外濾過法で用いられる膜には分画分子量が
東京紅、太天、甲州丸、投烏帽子、こざこ、紅、法蓮坊
5,000から50,000までの膜が有用であるが、好ましくは
、天王、南部、仙台、最勝、川底、伊自良大実の群から
、分画分子量が10,000から100,000までの膜が良好な結
選定したいずれの品種を用いても良い。
果が得られる。また膜の材質としては、ポリエーテルス
ただし柿葉については、無農薬栽培のものに限る。
ルフォンや再生セルロースが挙げられるが、ポリエーテ
【0024】
ルスルフォンが好ましい。また濾過方法としてはポンプ
柿果実より採取する柿タンニンの成分は、プロアントシ
や遠心機を用いた加圧式、吸引式濾過方法等があるがい
アニジン(より正確には、プロデルフィニジン)のポリ
かなる方法を用いても良い。
マーで、エピカテキン、カテキン-3-ガレート、エピガ
ロカテキン、ガロカテキン-3-ガレートが1:1:2:
【0032】
10
これらの方法から得られる柿タンニンは、通常、分子量
2の割合で結合した高分子化合物である。
が2,000から1,000,000程度になるが、本発明に用いる柿
【0025】
タンニンとして分子量が10,000以上のものが望ましい。
柿タンニンは、成熟した渋柿には、1∼2%含まれる。
【0033】
甘柿でも不溶化した状態で1%程度含有している。柿果
本発明では、市販品、柿タンニンの純度を上げるため前
肉中にはタンニン細胞が特徴的に含まれており、渋みは
記の2種類のいずれの製法のものでも純度を柿タンニン
タンニン細胞中に含まれている可溶性タンニンに起因す
含量で50重量%としたものを用いるのが望ましい。
る。
純度の残部は、水和水、ペクチン、細胞断片繊維などで
【0026】
一部は柿タンニンに吸着、反応している場合も考えられ
タンニン細胞の大小、形状、密度は、品種によって著し
るが本発明に用いることができる。
く異なる。柿タンニンの特性を品質的に安定させる観点 20
【0034】
からは、柿の品種、採取時期、製造工程を一定に管理す
本発明では、柿タンニンの純度を上げるため10,000分画
ることが必要である。
の限外濾過により低分子分を除いたものであり、分子量
【0027】
は、大部分が30,000を超える高分子となるがほとんどが
従来製法による柿渋は、果実採取、果実粉砕、発酵、搾
水に溶解する。高分子であるにも関わらず水に溶解する
液、熟成といった工程で3年以上の時間をかけて製造さ
のは、柿タンニンのフェノール性水酸基が水と水素結合
れる。この方法に使用できる果実は、天王柿、法蓮坊柿
で高い親和状態になるためと推測される。
、山柿など専用品種の8月中下旬の採取によるなど限定
【0035】
されている。
このような方法で柿果実から採取される柿タンニンは、
これらの従来製法で製造された柿タンニ
ンは、「柿渋」として市販されている。
【0028】
その多数のフェノール性水酸基に由来して抗酸化性、抗
30
変異原性(細胞が突然変異をするのを防ぐ性質)、抗菌
しかし、本発明に用いる柿タンニンは、従来型製法の柿
作用、抗ウイルス作用、抗腫瘍作用、抗アレルギー作用
渋からさらに柿タンニンの純度を上げて精製したものを
、血圧降下作用、消臭作用、香味改良効果、悪酔い防止
用いる。従来型製法による柿渋の臭気のもととなってい
作用など多くの機能性持つことが知られています。
る低分子の有機酸、アミノ酸、エステル系物質等を分離
【0036】
し、除去して精製したものを用いる。
他方、乾燥させた柿の葉をお茶のように煎じて飲む柿の
【0029】
葉茶は、古来よりノンカフェインの健康茶の一種として
また奈良県農業総合センター・果実振興センターから柿
血圧安定、高血圧予防、アルコールの分解などの目的で
タンニンの高速抽出法が提案されている。この方法は、
広く用いられてきました。
果実採取、脱渋、果実粉砕、タンニン細胞分離、熱水抽
【0037】
出といった工程より成るもので果実採取から抽出までが 40
柿の葉茶の成分として、アストラガリン、ウルソール酸
2週間以内と短期間で柿タンニンが得られるとの特徴が
、グルコサイド、ケンフェロール、ケルセチン、ビタミ
ある。この方法から得られる柿タンニンについてもさら
ンC、オレアノール酸、ベツリン酸、ウバオール、ヒド
に可溶性ペクチンなどを分離して精製したものを用いる
ロキシウ
ことが望ましい。
ルソール酸、ルチン、カテキン類、カキタンニンなどを
【0030】
含むことが知られています。
柿タンニンの純度をあげるため低分子の有機酸やペクチ
【0038】
ン等を分離する精製方法としては、遠心分離機や濾過装
本発明では、無農薬栽培の刀根早生の柿の葉を4月から6
置を用いて分離・精製する。本発明においては、柿タン
月に採取し水洗後、直ちに加熱処理することで酸化酵素
ニン水溶液から限外濾過法で精製したものを用いた。
を失活させ、乾燥して、調整したものを用いていること
【0031】
50
によりポリフェノールは、変換されずその組成と含有量
( 5 )
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は、生葉とほぼ同じ組成と見込まれるものを用いて評価
2/1柿葉茶重量部が上限になる。すなわち7グラムを超え
している。
ると渋みが強くなる。配合比は、およそ1/10柿葉茶重量
【0039】
部が望ましい。いずれも乾燥重量比を示す。
酸化酵素のポリフェノールオキシダーゼの失活が有効に
【0046】
出来ているか否かによりポリフェノール類の成分の酸化
以下に実施例に基づいて説明する。なお試験では、被験
の進み方が異なることになる。同じ処理でビタミンCの
者は、20代から60代の健常者6名、また血糖値がやや高
アスコルビン酸に関してもアスコルビン酸オキシターゼ
めの境界域にある一般に予備軍と呼ばれる領域にある人
も失活させ含有率を高く維持することができる。すなわ
4名について試験の目的を説明し事前に同意を得られた
ち製造工程によって柿の葉茶のポリフェノール部分の構
成成分が変化する。
人を被験者とした。被験者には、前日の9時以降は絶食
10
として頂き、試験当日の朝8時30分に血糖値を測定して
【0040】
延べ3日間にわたり、以下の要領で試験を実施した。1
とくに柿の葉の熱水抽出物(以降「柿葉茶」と略記)に
.水350ml、2.柿葉茶350ml、3.0.3グラムの高分子
含まれる柿タンニンは、低分子のポリフェノールでプロ
柿タンニンを溶解させた水350ml、4.柿葉茶350mlに0.
デルフィニジンのポリマーで、エピカテキン、カテキン
3グラムの高分子柿タンニンを溶解させたもの350mlを飲
-3-ガレート、エピガロカテキン、ガロカテキン-3-ガレ
用した後に麦芽糖40グラムを摂取して15分、30分、45分
ートが2分子から10分子程度結合したポリフェノールオ
、60分、90分、120分後の血糖値を「テルモメディセー
リゴマーの状態のものになる。
フミニ血糖値自己測定キット」(商品名
【0041】
)を用いて測定した。
特開2007-176845号公報の方法は、高分子量の柿タンニ
【実施例1】
ンの水溶液を酸性条件下においてカテキンで分解してポ 20
【0047】
リフェノールオリゴマーを製造するものであるが柿葉茶
図1に健常者6名での血糖値の測定結果を示す。
には、もともと同様のポリフェノールオリゴマーが含ま
【0048】
れている。試験に用いた柿の葉茶は、乾燥柿葉2.0グラ
水だけの摂取のブランクの場合、食後30分で空腹時血糖
ムを採取し、350mlの蒸留水を用いて90℃で10分煮出し
値プラス70mg/ml程度まで上昇し、約1時間で空腹時血糖
たものを用いた。
値プラス10mg/mlのレベルに落ち着く。柿葉茶、柿タン
【0042】
ニン、単独でも優れた血糖値上昇抑制が認められるが両
フォーリン・チオカルト法によるカテキン換算のポリフ
者を混合した場合には、とくに1時間経過後でも著しい
ェノール分としては、乾燥柿葉の約1重量%でまた低分
血糖値の低下が認められた。
子のポリフェノールオリゴマーは、約0.3重量%であっ
【実施例2】
た。
30
【0049】
【0043】
図2に空腹時血糖値が境界域にある予備軍の被験者4名
本発明者らは、このような方法で調整した柿葉茶に柿果
での血糖値の測定結果を示す。
実より採取して成る分子量10,000以上より成る柿タンニ
【0050】
ン(以降「高分子柿タンニン」と略記)を共存させた組
水だけの摂取のブランクの場合、食後30分で空腹時血糖
成物を食前摂取することで糖分の食後の血糖値の上昇を
値プラス100mg/ml程度まで上昇する。しかし図1の健常
即効的に抑制すると共に血糖値が上昇してピークに達し
者の場合と異なり2時間経過しても血糖値は、空腹時血
た後も速やかな血糖値低下を遅効的にもたらす働きを示
糖値プラス40mg/mlのレベルにある。柿葉茶、柿タンニ
すことを見出したものである。
ンとも血糖値の上昇を抑制する効果が認められるが特に
【0044】
本発明者は、α-グルコース2分子がα1-4グリコシド結
柿葉茶に柿タンニンを添加した飲料の場合、1時間から2
40
時間にかけての血糖値の降下が顕著に認められた。
合した還元性二糖である麦芽糖(マルトース)を飲用し
この背景について以下のように考えている。図3に腸管
て血糖値上昇の負荷試験を実施した結果、柿葉茶、高分
での糖分(麦芽糖)の消化・吸収についての概念図を示
子柿タンニンをそれぞれ単独で服用した場合にも血糖値
す。
の上昇の抑制効果は認められるが、併用して用いた場合
【0051】
に著しい血糖値の上昇の抑制効果と上昇した血糖値の低
図3において1は、小腸管の管腔で、胃から送り出され
減効果が得られることを見いだした。
た食物が消化酵素や重炭酸イオンを含んだ膵液と胆汁と
【0045】
もに送られ消化・吸収される。2は、腸管の絨毛上皮細
柿葉茶を350ml摂取するとすれば、含まれるポリフェノ
胞で、3が毛細血管になる。
ール分は、約3.5グラム相当になる。これに対する高分
【0052】
子柿タンニンの添加量は、1/20柿葉茶重量部から有効で 50
腸管内で4の二糖類(麦芽糖)は、腸管の絨毛上皮細胞
( 6 )
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9
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2に固定されているマルターゼ6により単糖類(ブドウ
しかしながら腸管では有害な物質を取り込まない生体の
糖)のグルコース5に分解される。小腸管の管腔内1で
防御機構の抱合作用がある。60種類くらいの抱合タンパ
のグルコース5の濃度が高い場合には、グルコース5は
ク質16が生体に必要がない異物と見なした場合、異物
拡散で腸管の絨毛上皮細胞2へと取り込まれる。
を補足して生体内には取り込まれることを妨害し大腸を
【0053】
経て排出しようとする働きである。
グルコースの濃度が低い場合でも7のナトリウム/グル
【0059】
コーストランスポーター(SGLT1)を介して腸管の
特に柿葉茶を単独で摂取した場合には、抱合タンパク質
絨毛上皮細胞2へと取り込まれる。小腸管の管腔1のナ
16により低分子ポリフェノールの有効な成分が抱合を
トリウムイオン10濃度が腸管の絨毛上皮細胞2のナト
受け吸収されることなく排出される可能性が高いのに対
リウム10濃度よりも高いのでナトリウムイオン10が 10
して高分子柿タンニン12が抱合タンパク質16を補足
取り込まれるがナトリウムイオン10と一緒にグルコー
し、機能させなくする作用が働き、複数の有効成分が腸
ス5も腸管の絨毛上皮細胞2へと取り込まれる。この際
内吸収され、一定時間血液中に存在してインスリンの分
に腸管の絨毛上皮細胞2の浸透圧が高くなるため水も取
泌やさらに酸化活性、転写因子NF-κBの活性化阻害など
り込まれる。
の機能を発揮することができるようになるため柿葉茶と
【0054】
高分子柿タンニンの同時摂取が顕著な血糖値低下効果を
腸管の絨毛上皮細胞2に取り込まれたグルコース5は、
示したものではないかと判断している。
8のグルコーストランスポーター2(GLUT2)を通
【産業上の利用可能性】
して毛細血管3に取り込まれる。またナトリウムイオン
【0060】
10濃度が腸管の絨毛上皮細胞2で高くならないように
本発明によれば、健常者から糖尿病の可能性を否定でき
ナトリウム・カリウムイオンポンプ(NaK ATPase
20
ない人々(糖尿病予備群)までを主対象として、予防的
)9によりカリウムイオン11が腸管の絨毛上皮細胞2
に食前に手軽に飲用することで速効性と遅効性とのバラ
に毛細血管3より入ってくる代わりにナトリウムイオン
ンス良く機能し、血中への単糖類の移行を押さえかつイ
10は、毛細血管3に排出され、ナトリウムイオン10
ンスリンの分泌を促進し血糖値を低下させる機能を併せ
濃度が腸管の絨毛上皮細胞2内で維持される。
て備えた柿由来飲料組成物を提供することができる。
【0055】
【符号の説明】
低分子ポリフェノールの成分Aの13、低分子ポリフェ
【0061】
ノールの成分Bの14、分子ポリフェノールの成分Cの1
1は、小腸管の管腔
5は、それぞれ柿葉茶に含まれるアストラガリン、ウル
2は、腸管の絨毛上皮細胞
ソール酸、グルコサイド、ケンフェロール、ケルセチン
3は、毛細血管
、ビタミンC、オレアノール酸、ベツリン酸、ウバオー 30
4は、二糖類(麦芽糖)
ル、ヒドロキシウルソール酸、ルチン、カテキン類、カ
5は、単糖類(ブドウ糖:グルコース)
キタンニンなどの代表成分に相当するものとして示した
6は、マルターゼ
。
7は、ナトリウム/グルコーストランスポーター(SG
【0056】
LT1)
図1、図2の結果から検証は、これからになるが高分子
8は、グルコーストランスポーター2(GLUT2)
柿タンニン柿葉茶をそれぞれ単独で摂取した場合に、小
9は、ナトリウム・カリウムイオンポンプ(NaK AT
腸管の管腔内でマルターゼやナトリウム/グルコースト
Pase)
ランスポーターなどの機能を阻害することで血糖値の上
10は、ナトリウムイオン
昇を抑制しているものと考えられる。
【0057】
11は、カリウムイオン
40
12は、高分子柿タンニン
柿葉茶、高分子柿タンニンがインスリンの分泌やさらに
13は、低分子ポリフェノールの成分A
酸化活性、転写因子NF-κBの活性化阻害などの機能を有
14は、低分子ポリフェノールの成分B
効に発揮できるためには、有効成分が血液中に取り込ま
15は、低分子ポリフェノールの成分C
れ一定時間安定に有効濃度で留まることが必要と考えら
16は、抱合タンパク質
れる。
17は、抱合され排出される低分子ポリフェノールの成
【0058】
分A
( 7 )
【図1】
JP
2015-174829
A
2015.10.5
【図3】
【図2】
────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A61K
31/05
(2006.01)
A61K
31/353
A23L
2/52
(2006.01)
A61K
31/05
A23L
2/38
(2006.01)
A23L
2/00
F
A23L
1/30
(2006.01)
A23L
2/38
C
A23L
1/30
B
Fターム(参考) 4C088 AB24
AC04
AC05
BA09
NA05
NA14
ZC35
ZC75
4C206 AA01
AA02
CA16
KA01
ZC35
ZC75
BA19
BA26
CA05
MA02
MA17
MA52
MA02
MA04
MA37
MA72
NA05
NA14