糖尿病百科なぜなに ? 予備群編監修: 河盛隆造先生順天堂大学大学院（文科省事業）スポートロジーセンターセンター長 Q1 糖尿病を発症する危険性が高い人はどのような人？ Q2 A 家族歴や肥満など下記の表に該当す A 糖尿病予備群とは、空腹時や食後の A 食後（糖負荷後）の血糖値は、正常なる方は、将来糖尿病を発症する危険性が血糖値が糖尿病型、正常型のどちらにも場合、80∼140mg/dLの範囲に調節さあります。空腹時や食後の血糖値が正常属さない、いわゆる糖尿病の一歩手前のれています。しかし、インスリン ※ の分泌値より少し高めの境界型（糖尿病予備状態のことをいいます。糖尿病予備群（境が少なくなったり、インスリンの働きが悪群）や、高血圧、脂質の値に異常を有する界型）は、空腹時の血糖値が高めの空腹くなると、食後の血糖値が正常値まです方々が急増しています。このような方々時血糖異常（IFG）、食後の血糖値が高めみやかに低下しなくなります。この状態には糖尿病を発症しないように注意するの耐糖能異常（IGT）、あるいは両者を重を耐糖能異常（IGT）といいます。必要があります。複した3つに区分されています。 ※インスリン：血糖値を調節するホルモン。インスリンの糖尿病予備群の分類は？ Q3 耐糖能異常（IGT）とは、どのような状態？分泌や働きが悪いと血糖値が高くなる。糖尿病を発症する危険性が高い人血糖値の判定区分食後の血糖値の変化糖尿病予備群（境界型）年齢45歳以上肥満者で下記のいずれかをあわせもつ場合日本糖尿病学会編：科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2010 糖尿病型 126 110 100 空腹時血糖異常（IFG）（mg/dL） 200 耐糖能異常（IGT）空腹時血糖異常/ 耐糖能異常血糖値 ※低HDLコレステロール、高中性脂肪血症 ※※卵巣内に卵胞が多数存在し、排卵が起こりづらくなる ※※※皮膚が黒く変色して固くなる空腹時血糖値・運動不足・糖尿病の家族歴・妊娠糖尿病あるいは巨大児出産の経験がある・高血圧・脂質代謝異常 ※ ・多のう胞性卵巣症候群 ※※ ・インスリン抵抗性をきたす病態（高度な肥満、黒色表皮症 ※※※）・心血管疾患や耐糖能異常の既往（mg/dL）耐糖能が正常であれば食後（糖負荷後）の血糖値は正常範囲にまで低下しますが、IGTになると血糖値の上昇が著しく、かつ低下しにくくなります。（正常高値）耐糖能異常（IGT）正常型 140 126 140 200 （mg/dL）食後（糖負荷後）の血糖値正常 110 100 日本糖尿病学会編：糖尿病治療ガイド2010 0 1 食後（糖負荷後）の時間 2（時間）糖尿病百科なぜなに ? 予備群編 Q4 IGTの人は多いの？ Q5 IGTになるとなにが悪いの？ Q6 IGTの診断はどのようにするの？ A 糖尿病予備群のなかで、 IGTを有し A 糖尿病と診断される前のIGTの段階 A I G T は、経口ブドウ糖負荷試験ている人は非常に多く、日本人では約８割でも、すでに動脈硬化の進行が始まって（OGTT）という検査によって調べられまであると報告されています。肥満の人や、います。また、動脈硬化が進むと、糖尿病す。この検査では、ブドウ糖を飲んだ後に糖尿病の家族歴がある人などは、空腹時の合併症である大血管症（心筋梗塞、脳血糖値を測定し、2時間後の血糖値が140 血糖値が正常であっても食後の血糖値が卒中など）が起こりやすくなります。IFG ∼199mg/dL、かつ空腹時が126mg/dL 高い可能性があるので、食後の血糖値をのみと比べると、IGTは、この危険性が高未満の場合にIGTと診断されます。糖尿病調べることをお勧めします。くなります。を発症する危険性が高い人では、定期的に検査を受けましょう。心血管疾患 ※発症の危険度糖尿病の発症リスクが高い人は、経口ブドウ糖負荷試験の検査も受けることが勧められます。 ※ 日本人におけるIGTとIFGの割合 IGTの段階から心血管疾患発症の危険度は高くなります。糖尿病予備群（境界型） 3.0倍 3 糖尿病型正常型 IFG/IGT 16％ IGTのみ 64％相対危険度 IFGのみ 20％ 1.9倍 2 1 1倍 ※日本人：山形県舟形町、福岡県久山町、長崎県小値賀町の住民正常 IGT 糖尿病 ※心血管疾患：脳卒中、心筋梗塞など The DECODA Study Group. : Diabet Med 2002; 19 : 549-557より作図 Fujishima M et al. : Diabetes 1996; 45: S14-16 糖尿病百科なぜなに ? 予備群編糖尿病まめ知識 Q7 IGTのときから生活習慣を見直したほうがいいの？ Q8 A IGTは、食後の血糖値が正常値より A IGTの治療は、糖尿病の治療と同じ糖尿病予備群少し高いものの、自覚症状はありません。ように、基本的には食事・運動療法を行い平成19年の国民健康・栄養調査では、糖尿しかし、この段階から生活習慣を見直すます。また、最近、糖尿病の発症を抑える病予備群と考えられる「糖尿病の可能性ことによって、血糖値を正常に戻すことが薬も発売されています。IGTは、高血圧症が否定できない人」は、2 0 歳以上で約大切です。積極的に食事・運動療法を実施や脂質異常症を合併することも多いの 1,320万人と推計しており、大部分が糖尿し、糖尿病の発症や動脈硬化の進行を抑で、トータルに管理することが重要です。病予備群であると考えられます。特に40歳 IGT治療の基本は？えましょう。 40歳以上の6人に1人が以上では急激に増加するので、積極的に検査を受けて、生活習慣を見直しましょう。糖尿病の累積発症率食事・運動療法に加えて、嗜好品も制限して、糖尿病にならないようにしましょう。食事療法（％） 10 9 累積発症率 8 7 6 普通に実施したグループ 5 4 厳しく実施したグルプグループ 3 2 40歳以上には約6人に1人運動療法糖尿病の可能性が否定できない人の割合普通に食事・運動習慣の改善を実施したグループに対し、厳しく実施したグループは糖尿病の発症が抑えられます。糖尿病の可能性が否定できない人の割合嗜好品の制限 1 0 （％） 25 20 15 10 5 0 歳 1 2 3 29 ∼ 20 4（年）調査した年 Kosaka K et al. : Diabetes Res Clin Pract 2005; 67: 152-162 アルコールは飲み過ぎないようにする歳 39 ∼ 30 歳 49 ∼ 40 歳 59 ∼ 50 歳 69 ∼ 60 上以歳 70 禁煙に努める厚生労働省 : 平成19年国民健康・栄養調査