雪道での自動車運転におけるヒヤリハット防止のためのデータ収集 Data

雪道での自動車運転におけるヒヤリハット防止のためのデータ収集
Data collection for preventing a near-miss in driving automobile on snow road
知識情報学講座 0312009063
指導教員:
1.
はじめに
現在,自動車技術やタイヤの技術が進歩して
佐々木龍二
馬淵 浩司 Goutam Chakraborty
Carsim は,乗用車や小型商用車のさまざま
な運転条件(アクセル,ブレーキ,ハンドル,
おり、より安全な自動車やタイヤが生産されて
シフト操作)と環境条件(摩擦係数や高さ変化
いる.また,自動運転車に関する研究開発も盛
のある道路コース,横風等)での動的な挙動を,
んに行われており,近い将来より安全な自動車
パソコン上の操作でシミュレーション解析・評
が開発されると言われている 1).
価するシステムである.
(株式会社バーチャル
しかし、自動車を運転しているときに予測不
メカニクス)2)
可能な危険な状況に陥る場合がある.特に雪道
では多くのヒヤリハットが潜んでいる可能性
がある.
本研究では,ヒヤリハットに遭遇する要素で
ある路面状況(路面の摩擦係数)
、運転速度、
ハンドル、ブレーキとアクセルのうち、路面状
況、運転速度に着目し、雪道での自動車運転に
おけるヒヤリハット防止のためのデータを収
図 3.1 Carsim の画面の例(バーチャルメカニクス)
集する.具体的には,路面の摩擦係数,運転速
3.2 車両モデル
度,路面のカーブ角を変化させ,自動車がどの
ように走行するかをシミュレーションする.
2.
関連研究
雪道での路面状況は自動車運転における
ヒヤリハットと密接に関連している.たとえ
車両モデルについては,Carsim 内部に存在
する下記のデフォルトの車両データ,普通乗用
車(セダンタイプ)FR 車を利用する
3.3 路面モデル
路面モデルは下記の 3 点に基づいて構築す
ば,路面雪氷状態と路面すべり摩擦係数の関
る.
係に関する研究が行われている.また,路面
1) カーブ前区間,カーブ区間,カーブ後区間
のすべり摩擦係数センサーを搭載した高精
の 3 種類に分類する.
度動的試験者によるすべり摩擦と道路雪氷
2) カーブ区間のカーブ角を変更する.
との関係に関する研究が行われている 1).
3) 全ての区間で同じ路面摩擦係数を用いる.
3.
評価実験
本研究では車両運動シミュレーションソフ
ト(以下 Carsim)を利用し,路面の摩擦係数,
カーブの角度,車体速度のパラメータを変更し,
走行中の自動車がどのような制動をするかシ
ミュレーションする.
3.1 Carsim
図 3.2 カーブのイメージ
カーブ角については,30 度と 90 度の 2 種類
で実験を行う.なお,本要旨ではカーブ角 30
度の結果のみ掲載する.
3.4 摩擦係数
シミュレーションで用いる摩擦係数は,以下
の摩擦係数の例を参考に,凍結路 0.15 ,圧雪
路面 0.3, シャーベット状路面 0.5,乾燥およ
び湿潤路面 0.9 とする.
図 4.2 30km/h 摩擦係数 0.15 の時の走行結果
・凍結路
0.1~0.2
・圧雪路面
0.2~0.4
・シャーベット状路面
0.2~0.7
凍結路では,速度が 40km/h 以上になると車
・乾燥および湿潤路面
0.8~1.0
体がスピンして重大な事故に繋がる可能性を
評価実験
4.
4.1
実験
(株式会社バーチャルメカニクス)
実験の考察
4.2
示唆している.圧雪路面では,速度が 50km/h
の場合横滑りを起こしており,対向車線に車体
カーブ角 30 度,カーブ前区間 100m,カーブ
がはみ出してしまう.そのため,凍結路では速
区間 50m,カーブ後区間 100m とする.また,
度を 30km/h 未満に減速してから,カーブに突
車体速度を 30km/h,40km/h,50km/h の 3 種類,
入することが望まれる.
摩擦係数を 0.15,0.3,0.5,0.9 の 4 種類用いる.
5.
ブレーキ位置をカーブ前区間 90m としシミュ
おわりに
本研究では,ヒヤリハットに遭遇する要素で
レーションを行う.
ある路面状況(路面の摩擦係数)、運転速度、
4.2 実験の結果
路面のカーブ角に着目し、雪道での自動車運転
有用なシミュレーション結果を示す.縦軸が
におけるヒヤリハット防止のためのデータ収
自車線の中央から車体の中央の距離,横軸が走
集を行った.具体的には,路面の摩擦係数,運
行距離である.すなわち,縦軸の値の絶対値が
転速度,路面のカーブ角を変化させ,自動車が
大きいということは,本来の自車線の中央から
どのように走行するかをシミュレーションし
車体が大きく離れていることを意味する.
た.
実験結果から,路面のカーブ角および摩擦係
数に応じた運転速度およびブレーキをかける
位置が明らかになった.
本研究ではデータ収集量が足りないので,今
後さらなるデータ収集を行い,さまざまな状況
に対応できるようにする.またそれに伴って,
データの信頼性を向上する予定である.
図 4.1 50km/h,摩擦係数 0.15 の時の走行結果
(株式会社バーチャルメカニクス)
参考文献
1) 自動車技術ハンドブック
(車両)編 公益社団法人
7 試験・評価
自動車技術会
2) 藤本明宏, 渡邊洋, 他,MASS 車によるす
べり摩擦と道路雪氷との関係,日本雪工学
会誌,Vol.21,No.5,pp.26--35 (2005)
3) Carsim 株式会社バーチャルメカニクス