知識の適応能力獲得のための知的学習環境の構成とバネ学習への応用

知識の適応能力獲得のための知的学
習環境の構成とバネ学習への応用
竹内章・吉田裕之・藤田智之・石橋和子
講読者:
社会情報システム学講座 4年
浦山裕美
理科の学習において
基本的な概念の学習や、形式的な知識と実
際の経験とを結びつけるためなどを目的とし
て、実験による学習が行われる。
限られた教師の手だけでは、十分に対応しき
れない。
学習状況に応じて助言を与えることのできる
知的学習環境であれば!!
本論文で述べていること
学習者の状態に応じて助言を与える知的学
習環境
学習者が物理法則を複雑な系に適用するこ
とができるようになることを学習目的とした実
験演習を支援
知的学習環境の利用形態
ILE
ITS
第1段階
個別事例の操作による帰納的な知的獲得
過程
第2段階
複数の事例に基づく知識の一般化・定式化
過程
第3段階
問題解決を通して、新しく獲得した知識を演
繹的に適用することによって、知識を定着さ
せる過程
本論文の知的学習環境
ILEで第2・3段階の学習を支援
段階的学習モード
訓練学習モード
ユーザインタフェース
実験系の組み立てに使用する部品
測定装置の入った部品箱
系を組み立て実験を行う作業スペース
実験結果を記録するノート
段階的学習モード
 系統的に順序づけられた学習を行うことで、部品が
組み合わさった場合の系の性質を学習
(0)学習目標が与えられる
(1)学習目標に応じた実験系を構築
(2)実験で観察する物理量の決定、表に記入
(3)構築した実験系の独立変数の値を変化させ、実験
(4)観察するべき物理量の値を測定、ノートに記入
(5)上記(3)(4)を繰り返した後に仮説を立て、予想
(6)実験を行い、仮説を検証
(7)予想が外れていたら(3)に戻る。一致すれば終了
訓練学習モード
任意の複雑さの系の学習が許されており、段
階的学習モードの応用段階。
学習者が任意に組み立てた系、あるいは知
的学習環境が提示した系に関する問題が学
習者に与えられる。
この学習モードで学習者は基本的な物理法
則を複雑な系に適用する訓練を行う。
支援環境
 学習者が試行錯誤を繰り返しながら実験、予想、検
証のサイクルを回り、学習目標を達成する。
 学習目標を達成できない場合の支援。
(1)実験系指示
(2)観測量提案
(3)記録誤り指摘
(4)問題提示
(5)実験系提示
知的学習環境のアーキテクチャ
 支援機能を実現する知的学習環境の構成要素の
機能
(1)部品ライブラリー
(2)実験系モデル生成モジュール
(3)ノート管理モジュール
(4)誤り診断モジュール
(5)問題生成モジュール
(6)学習者モデル
(7)実験系生成モジュール
一般化空間学習者モデル
学習者が基本的な知識を用いて複雑な系を
理解できるようになる。
学習対象系の一般性を表す尺度を軸とする
多次元空間(一般化空間)を用いて学習者モ
デルを表現
一般化空間による学習者モデル表現の例
C
間にはさんだ
重りの数
B
並列につないだ
バネの数
A
直列につないだ
バネの数
見方
System (A,B,C)
SpringMaster
前記のアーキテクチャに基づいて、鉛直につる
したバネ系の知的学習環境を構築
学習目標・・・バネ一本の系から始めて、順番
に接続するバネの数を増やしながら、複数の
バネが接続されたときの性質を学ぶ
実験系構築用部品・・・バネ、並列接続用家
具、重り、部品箱(物差し、力の測定装置)、
ノート
評価実験
対象:中学校1年生3クラス
評価実験:45分の授業時間を3回
実験群:SpringMaster(2クラス53名)
統制群:実物の実験器具(1クラス29名)
テスト:プリテスト、ポストテスト(同一)
実験結果と考察
問題2~4について、実験群における
「×→○」に分類される学生の割合が統計群
より高い。
プレテストで問題2~4を正しく答えられな
かった生徒の分類毎の結果から、学習方法
によって、ポストテストの結果が異なったと考
えられる。
おわりに
多次元空間を用いた学習者モデルを用いる
ことで、系の難しさに依存した個別学習環境
が実現できた。
学習者の理解状態に適合した学習対象実験
系を提案することが可能となった。
基本は理解しているが、組み合わせ系を理
解していない生徒の学習環境に有効
勉強になったコト
学習者がいつまで経っても学習目標を達成
できない場合の支援の仕方にはいくつかある
ので、学習者がなぜつまづいているか知り、
それにあった支援をする必要がある。
学習者がどの程度の複雑さを理解できるか
を判断し、適切なアドバイスを送ることが大切。