レポート: 自動車技術会2014年春季大会 ほか

NGIINE
E
REVI
E IEW
W
OF AUTOMOTIVE ENGINEERRS OF JAPAN
A
ンレビュー
ト特集: 技術会 20
014 年春季
季大会 of JSAE Annual Conggress ‐Spriing‐ Vol. 4 NNo. 4 2014
CONTENTS
ENGINE REVIEW
SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGINEERS OF JAPAN
Vol. 4 No. 4 2014
コラム:●変わるもの変わらないもの:鈴木 央一/編集委員 1 Changed things and un‐changed things Report : 自動車技術会 2014 年春季大会 Report of JSAE Annual Congress ‐Spring‐ 小池 誠,小酒 英範,佐藤 唯史,清水 健一, 下田 正敏,野口 勝三,藤井 厚雄(編集委員), 紙屋 雄史(早稲田大学) ■ JSAE エンジンレビュー編集委員会
委員長: 飯田 訓正 (慶応大学)
副委員長: 村中 重夫 (元日産自動車)
幹事:
飯島 晃良 (日本大学)
委員:
井上 香 (堀場製作所)
遠藤 浩之 (三菱重工業)
金子 タカシ(JX 日鉱日石エネルギー)
菊池 勉 (日産自動車)
小池 誠 (豊田中央研究所)
小酒 英範 (東京工業大学)
佐藤 唯史 (ケーヒン)
清水 健一 (元産業技術総合研究所)
下田 正敏 (日野自動車)
鈴木 央一 (交通安全環境研究所)
野口 勝三 (本田技術研究所)
平井 洋 (日本自動車研究所)
山崎 敏司 (編集)
発行所:
発行日:
発行人:
公益社団法人 自動車技術会
2014 年 9 年 30 日
竹村 純 (三菱自動車工業)
〒102-0076 東京都千代田区五番町 10-2
電話:03-3262-8211
2 1
ENGINE REVIEW
W
SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGGINEERS OF JAPAN
Vol. 4 No. 4 20014
●コラ
ラム
変わるもの
変
の変わら
らないもの
の
Changed thinngs and un-ch
hanged thingss
鈴木 央一
Hisakazu
H
SUZU
UKI
(独)交通安全環境研究所
所
National
N
Traffic Safety and
Environment
E
La
aboratory
漢詩
詩の有名な一節で「年々歳々花
花相似たり,歳々
々年々人同じからず」というのが
がある。自動車技
技術会の春季大
大会は,
毎年 5 月にパシフィコ横浜で実施する
ることは広く定着
着している。私は
は今年を含めて 22
2 年連続で参加
加している。ただ
だ,20 年
余りの
の期間を俯瞰して
て思うことは,大
大会を取り巻く環
環境などは年とと
ともに大きく変化している一方で
で,不謹慎な見方
方かもし
れない
いが,それに比較
較すると講演は「
「相似たり」という
う感想である。
会場
場周辺の状況でいうなら,当然 20 年前には,み
駅はなかったし,桜
桜木町駅から歩
歩くにしても,クイ
イーンズ
みなとみらい駅
スクエアがなかったの
ので陽か雨を浴び
びて歩いた。そし
してパシフィコ横
横浜周辺は更地
地と工事現場ばか
かりで,昼食をと
とるのも
苦労し
した。また,今年 87523 人もの人
人が来場し,一大
大イベントと化した
た感のある「人と
とくるまのテクノロ
ロジー展」も,定
定着前で
まだブ
ブースも来場者も
も少なく,春季大
大会の「おまけ」的
的なイメージだっ
った。ということで
で,少なくとも会
会場周辺のレスト
トランの
数と人
人とくるまのテクノ
ノロジー展の来場
場者数に関して は 20 年間で「桁
桁違い」に増えた
た。
それ
れに対して・・・,私
私が 20 年前の 1994 年春季大会
会で初めて発表
表した時のタイトルは
「過給ディーゼ
ゼル機関の EGR
R 時の燃焼および
び排出ガス挙動
動の解析」
で,その
の 2 年後の 19996 年春季大会で
での講演タイトル
ルは,
「均一予混合圧
圧縮着火ディー
ーゼル機関に関す
する研究(第1報
報) -実験用デ
ディーゼル機関に
による予混合燃
燃料併用
時の燃焼およ
よび排出ガス挙動
動について-」
である
る。中身はともか
かく,タイトルだけ
けなら今あっても
もさほど違和感は
はないように思う
う。もちろん同じな
なわけではない
いけれど
も,「桁
桁違い」であるよりは「相似たり」に近いのではな
ないだろうか。
その
の差を生む理由は
は何だろうか。そ
その最大のもの
のは,みなとみら
らい地区ができた
たばかりでいわば
ば「成長期」であ
あったの
に対し
して,自動車技術
術は一世紀以上
上を経てすでに「壮
壮年期」であった
たことが挙げられ
れよう。20 年以
以上が経ち,みな
なとみら
い地区
区の店の数が今
今から倍々ゲーム
ムで増えることも
もないだろう。ともに壮年期に入
入った,ということ
とになるかもしれ
れない。
ただ,自動車技術のす
すごいところは,100 年以上にわ
わたって多くの世
世界トップレベル
ルの頭脳を集積し
して競争しつつ,今でも
を続けていること
とだ。例えば携帯
帯電話などは,本
本格的な普及は
はここ十数年のこ
ことだが,機能的
的にはすでに飽
飽和状態
進化を
に近づ
づきつつある。そ
それを対象に技術
術開発を生涯の
の仕事にしようと
としても,ソフトは
はともかくハード面
面についてそれ
れで飯の
食える
る人はほんの一握
握りだろう。それ
れに対して,自動
動車技術はすでに
に壮年と書いたが,老境に入る
るのは何十年も先
先だろう。
前述の
の筆者の講演についても,タイト
トルこそ今でも・ ・・と思うが,試験
験装置の技術水
水準や解析レベル
ルは,今時の水
水準から
は見劣
劣りするといわざ
ざるを得ない。一
一見大差なくても 中身の技術は着
着実に進化している。まさに「壮
壮年期」といえよう。これ
からも多くの人が車に
に関する技術開発
発を生涯の仕事
事にしていくことは
は当面変わらな
ない。技術者の端
端くれとして,そう
ういう業
いることは幸せと
というのだろう。
界にい
2
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SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGGINEERS OF JAPAN
Vol. 4 No. 4 20014
自動車
車技術会
会 2014 年春季大
年
大会
Report of JSSAE Annual Congress
C
-Sprring日時:2014 年 5 月 21 日(
(水)~5 月 23
3 日(金)
会場:パシフ
フィコ横浜・会
会議センター
主催:公益社
社団法人自動車
車技術会
小池 誠,小酒
酒 英範,佐藤
藤 唯史,清水 健一,下田 正
正敏,野口 勝三,藤井
勝
厚雄(編集委員 )
紙屋 雄史(早
早稲田大学)
Makoto KOIK
KE, Hidenori KO
OSAKA ,Tadafu
umi SATO, Ken--ichi SHIMIZU,
U, Masatoshi SH
HIMODA, Katsuumi NOGUCHII,
Atsuo FUJII (J
(JSAE ER Editorial Committee)
e)
Yushi KAMIYA
A(WASEDA University
U
)
1 フォー
ーラム
日本の乗用車用エン
ンジン技術の優位
位性は維持でき
きるか?
-乗用車用エンジン
ン研究会の活動と産学官の連携
携-
本フ ォーラムでは, 2014 年からに
に開始される自 動車用内燃機
機関技術研究組
組合(AICE:
Researc
ch Association of Automobile Internal Combu
ustion Engines) の活動をベース
スにエンジン
技術の優位性維持につ
ついての報告とパネルディスカッションが行われ
れた。同時に,内
内閣府が主
ノベーション創造
造プログラム)の
の一つに設定され
れている革新的燃
燃焼技術に
導する SIP(戦略的イノ
ついても
も説明された。直
直前の 19 日に AICE
A
設立発表会
会があり,SIP の
の公募開始も 6 月に控えて
いたこと
とを考えると,フォーラムのタイミ
ミングとしては絶
絶妙であったと言
言えるのではない
いだろうか。
AICE については,OE
に
M8社が複数年
年に亘り共同研究
究体制を議論し,
,研究組合設立
立に至ったこ
とに対し
して関係者の努
努力に敬意を表し
したい。また,エン
ンジンを対象とし
した燃焼研究が
が SIP のよう
Fiigure 1‐1 協調テーマ群
な国主導の大きなプロ
ログラムとなることは,筆者の知
知る限り過去に例
例がない。日本の
の自動車技
業は世界の中で
でも大きな影響力
力を持っており,この強みを維持
持していくためにも国のサポ
術・産業
ートがあ
あって然るべきと
とも言える。欧州
州では自動車分
分野に投資する ことは産業・経済
済基盤を維
持・発展
展させるだけでな
なく,諸外国から
らの委託研究,留学などを誘起
起する効果もある
ることから,
成功例として積極的に
に継続的投資が行
行われている。日本の自動車関
関係各社からも欧
欧州への研
究開発費が増加してい
いることは既に報
報告されている通
通りである。産学
学官一体となった
た技術開発
が一過性で終わらない
いことを期待する
るものである。
プログ
グラムは,はじめ
めに産学連携活
活動の母体となっ
った内燃機関共
共同研究推進委員
員会の活動
の中から,ガソリンエン
ンジンについての
の取り組みをトヨ
ヨタ自動車の中 田 浩一氏が説
説明した。熱
効率 50
0%へのアプロー
ーチと産学連携トライアルとして
て実施した PM 生
生成メカニズム解
解明の成果
が報告された。続いて,ディーゼルエンジンの後処理
理について同じく
くトヨタ自動車の
の福間 隆雄
Figure 11‐2 クリーンディー
ーゼル研究課題
氏から,
,共有課題として
て選定した DP
PF のスート堆積
積モデル,冷間時
時の白煙生成メ
メカニズム,
EGR デポジット生成要
デ
要因解明について
て説明があった
た。経済産業省の
の石井 孝裕氏の
の活動報告
の後,S
SIP について内
内閣府政策参与(トヨタ自動車)の
の杉山 雅則氏 が,AICE につい
いて理事長
(本田技
技術研究所)の大
大津 啓司氏が
が,その趣旨を説
説明された。最後
後に早稲田大学
学の草鹿 仁
先生より大学の役割と
と将来の役割につ
ついての報告が
があった。
AICE と SIP の二
二つがあるが,共
共に燃焼技術の
の高度化による熱
熱効率向上
産学連携体制には A
(目標最
最大熱効率;500%),温暖化ガ
ガスの二酸化炭素排出削減を大
大きな目標に挙
挙げており,
AICE と SIP の区別がや
やや分かり難かった感がある。パ
パネルディスカッ
ッションの中ので
でもどちらに
向けての
のコメントである
るか分からない場
場合があった。マ
マスコミを介して
てある程度の情報
報が出てい
るだけに
に,フォーラムの
の前半で両者の違いや運営につ
ついて明確に説
説明しておいた方
方が聞く側に
とっては
は有難かったので
ではないだろうか
か。また,AICE が主導する研究
究が具体的には
はどのような
経路を通
通って行われて
ていくか,大学の
の研究・教育は今
今とどう変わるの
のか,研究成果
果はどのよう
に使われていくかの説
説明がもう少しあ
あってもよかった
たと思う。特に研
研究成果を製品開
開発に繋げ
Figure 2‐ 1 可視化エンジ
ジンシステム
3
ENGINE
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SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGGINEERS OF JAPAN
Vol. 4 No. 4 20014
るプロセ
セスは重要で,欧
欧州では AVL や FEV などエンジニアリング会社
社が大きな役割
割を果たして
いるし,開発した計測法
法を計測装置に
にまとめ上げるメ
メーカーや数式モ
モデルをシミュレ
レーションプ
ログラム
ムとして提供する
るメーカー,部品
品やサブシステム
ムに反映するサ
サプライヤーの発
発展を促して
いる。産
産学連携はキャッチアップから始
始まるようである
るが,日本に適し
した独自の方式
式を探し出す
必要が
がある。そのため
めにも大津理事長
長のまとめにもあるとおり,更な
なる輪の広がり
りを期待した
い。(小
小池)
文献】
【参考文
1-1)日本の乗用車用エ
エンジン技術の優
優位性は維持で
できるか?,自動
動車技術会 2014 春季大会
ラムテキスト(2014)
フォーラ
Figure 2‐2 浮遊
遊物からの LSP
PI サイクル観察結
結果
進ガソリン機関技
技術
2 先進
今回の大会では先進
進ガソリン機関技
技術Ⅰ~Ⅴの 5 セッションが開
開かれ,グローバ
バル環境の
改善に寄与できる基礎
礎的研究および技
技術開発に関す
する 28 件の講演
演が行われた。こ
これらのセッ
ションは
は関心度が高く,
,多くの講演にて
て 300 席近い座席が満席,立
立ち見の状態も見受けられ
た。その
の中から 5 件の講演を紹介する
る。
「過給
給 SI エンジンにおける LSPI の可視化解析」2-1)と題し,泉(日本
本自動車部品総
総合研究所)
らにより
り,エンジン筒内
内の可視化技術を
を用いた LSPI 発生のメカニズム
発
ム解析が報告さ
された。着火
のプロセ
セスを解明し,筒
筒内の壁面から
ら剥離したデポジ
ジットのかけらが
が着火源となるメ
メカニズムを
新 LSPI メカニ
ニズムの概要
Figure 2‐33
明らかに
にしたと述べてい
いる。図 2-1 に示す可視化エン
に
ンジンシステムを
を新規開発し,鮮
鮮明な画像
で LSPII 前後の一連のサイクルを捉え
えている。LSPI 前サイクルからの
前
の代表的な筒内圧力波形と
画像を図
図 2-2 に示す。
。LSPI サイクルでは吸気行程か
から浮遊物がみ
みられ(図 2-2(b))),上死点付
近におい
いて浮遊物周囲
囲の混合気が着
着火する様子を確
確認している(図 2-2(c))。LSPI の着火源と
して,燃
燃料に希釈された
たオイル滴説が
があるが,今回観
観察した LSPI サ
サイクルにおいて
て,圧縮行程
中のクレ
レビス周辺から液滴が飛散した
たと明らかに識別
別できる結果は得
得られなかった
た。実験結果
と考察か
から図 2-3 に示
示すような LSPI 発生メカニズム
発
を推察している 。ライナウエット
トで生成され
たデポジ
ジットが剥離して
て空間中を漂う。燃焼にさらされ
れてデポジットの
のかけらが燃えて
て高温化す
るが,そ
その表面の炎は
は排気行程で消炎する。ただし反
反応が緩やかに
に継続し,圧縮行
行程中に酸
Figure 22‐4
Table 2‐1
EGR システムの概念図
シ
クールド EGR システムの比較
化反応速度が増し,周
周囲の混合気へ着
着火に必要なエ
エネルギーが放 出されると,混合
合気の燃焼
が開始すると述べてい
いる。会場からは
は,油滴が直接原
原因で LSPI が発
発生するのでは
はないのか,
といった
た質問があったが
が,LSPI はオイ
イルや燃料がデポ
ポジット化したも
ものによる,複数
数サイクルに
またがる
る着火プロセスで
であるという新た
たなメカニズムを
を提案した。
「ダウ
ウンサイジング過
過給ガソリンエン
ンジンへの Low Pressure
P
Cooledd EGR システム
ムの適用」2‐2)
Ta ble 2‐2
エンジン
ン主要諸元
Taable 2‐3
主要新
新要素技術
と題し吉
吉田(日産自動車
車)らによる発表
表があった。過給
給域の燃費改善
善のポイントとして
て①ノック抑
制,②排
排気ガス温度低
低減,③比熱比
比の向上の三つ
つを挙げ,今回
回 LP-EGR(Low
w Pressure
Cooled EGR)を新開発
発エンジンへ適用
用したと報告している。適用可能
能な EGR システム
ムを図 2-4
て検討し,表 2-
-1 に示す得失
失比較結果から, LP-EGR を選定
定している。
に示す三つを候補として
EGR 率コントロールにつ
率
ついて,定常時 EGR バルブ開度
度が同じならば 吸入空気量によ
よらず,EGR
率が一定であることを示
示している。また
た過渡時の応答
答遅れ問題を解決
決するため,EGR バルブ開
正する制御を開
開発したと述べて
ている。会場から
らトルク 0 N・m ま
までの急減速時の
の失火対応
度を補正
は,どの
のように行ってい
いるのか,と質問
問があり,それを
を考慮した EGR マップを作成し,スロットル
制御も行
行っているとの回
回答があった。
また上
上記 LP-EGR シ
システムをガソリ
リンターボエンジ
ジンとして世界初 採用したエンジ
ジンの開発
「新型
型高効率 4 気筒
筒 1.6L 直噴ガソリンターボエンジ
ジンの開発」2‐3)と
と題し松井(日産
産自動車)ら
による講
講演があった。表
表 2-2 に新旧エ
エンジンの主要諸元を示す。新
新型エンジンには
は,表 2‐3 に
示すよう
うな技術を新たに
に採用している。鏡面ボア溶射
射シリンダブロック
クは,鋳鉄ライナ
ナがなくなる
ことによ
よる軽量化だけで
でなく,熱伝導率
率向上によりノッ
ッキング抑制にも
も効果がある。可
可変容量オ
イルポン
ンプは,電制油
油圧制御により低
低負荷領域の吐
吐出圧を下げるこ
ことで,流体仕事
事の低減を
図ってい
いる。今回の要素
素技術採用によ
より,先代に対し
し 12%のフリクシ
ション低減を実現
現し,新型エ
ンジンの
の燃費性能は,先代に対し 10%
%以上向上したと報告があった
た。
「小型
型車用 新 L4 ガ
ガソリンエンジン
ンの開発」2‐4)と題
題し鈴木(本田技
技術研究所)らに
による発表が
あった。
。今回新たに環境
境性能向上を狙
狙った,最大熱効
効率 39%のハイ
イブリット車用 1.5
5L PFI エン
4
ENGINE
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SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGGINEERS OF JAPAN
Vol. 4 No. 4 20014
ジン(LE
EB)と,走りの楽しさ実現を狙った
た,最高出力 97
7kW の DI エンジ
ジン(L15B)を同一
一骨格で開
Table 2‐4
ハイブリッド車用エンジン主要諸
諸元
発したと
と述べている。表
表 2-4 に新型エ
エンジン LEB と従来型エンジン
ン LDA の主要諸
諸元を示す。
燃費向上技術としてアトキンソンサイク
クル,クールド EGR,吸気 1 バル
ルブ休止 VTEC,
,ピストン頭
している。さらに図
図 2-5 に示す低
低フリクション技
技術を採用するこ
ことで,従来
部形状最適化を採用し
型 1.3L
L エンジン以下の
のフリクションを達
達成し,2000rpm
m エンジン軸ト
トルク 89Nm の運
運転ポイント
で,BSF
FC 214g/kWh を
を達成したとして
ている。
「EST
TEC 1 NR-FKE
E エンジン開発」」2‐5)と題し倉内(
(トヨタ自動車)ら
らにより,ハイブリ
リッド用エン
ジンに用
用いられている 低燃費技術を転
転用した,従来車
車用エンジン熱
熱効率向上の技
技術アプロー
チと,新
新開発 1 NR-FK
KE について講演
演があった。高圧
圧縮比化とアトキ
キンソンサイクル
ルによる熱効
率向上は,背反としてトルク低下を招く。従来車用エン
ンジンで,これら
らの技術を採用するために
は,エン
ンジン性能低下
下の克服が必須
須であると説明
明している。表 2-5 に新開
開発 ESTEC
1NR-FE
EK エンジンと現
現行 1NR-FE エン
ンジンの諸元を示
示す。エンジント
トルク低下対策と
としてエキゾ
ーストマ
マニホールド形状
状最適化,発砲
砲ゴム付ウォータ
タジャケットスペ
ペーサ,燃料噴射
射タイミング
最適化により図 2-6 に
に示すように従来
来比+1Nm のト
トルク向上を果た
たした。また熱効
効率は,ハイ
ブリッド
ド用エンジン同等
等の 38%を達成
成したと報告があ
あった。(野口)
【参考文
文献】
2-1) 泉 桂広,青木 文
文明,飯塚 基正
正,岡田 吉弘:過
過給 SI エンジン
ンにおける LSPI の可視化解
の
析,自動
動車技術会 2014 年春季大会学
学術講演会前刷
刷集,No.54-14, (2014)
2-2) 吉田
吉
慎一郎,小
小林 眞里,中原
原 洋一郎,平井
井 直樹,土田 博
博文,高木 大介
介:ダウンサ
イジング
グ過給ガソリンエ
エンジンへの Lo
ow Pressure Coo
oled EGR システ
テムの適用,自動
動車技術会
Figuree 2‐5
フリクション低減技術の効
効果
2014 年春季大会学術講
年
講演会前刷集,No.54-14,(201
14)
2-3) 松井
松 義典,相吉
吉澤 英二,堀 健一,仲津
健
周一
一,伊東 輝之:新
新型高効率 4 気筒
気 1.6L 直
Tablee 2‐5
1NR‐FKE エンジン諸元
エ
噴ガソ リンターボエン
ンジンの開発,自
自動車技術会 2014 年春季大
大会学術講演会
会前刷集,
14,(2014)
No.91-1
2-4) 鈴木
鈴
雅樹,早川
川 修一,石原 祥道,進藤
祥
俊洋
洋:小型車用 新 L4 ガソリンエ
エンジンの開
発,自動
動車技術会 2014 年春季大会学
学術講演会前刷
刷集,No.91-14, (2014)
2-5) 倉内
倉 孝,山田 哲
哲,高木 功:ES
STEC 1 NR-FKE エンジン開発
発,自動車技術
術会 2014 年
春季大会学術講演会前
前刷集,No.91-114,(2014)
3 先進
進ディーゼルエン
ンジン
3.1 先進
進ディーゼルエンジン制御技術
術
田中ら
3‐1)
は筒内圧力センサ付グロ
ロープラグを用い
いた,拡散燃焼・ 予混合圧縮着火
火燃焼の切
した。センサの詳
詳細構造については,抜き刷り に掲載されてい
いないが,グ
替制御について発表し
ロープラ
ラグの発熱体に
に働く力を計測す
するもので,グロ
ロープラグとして
てのヒータ機能を
を有しながら
筒内圧力計測を可能と
としている。図 3-1
3 は,基準セン
ンサとしてピエゾ
ゾ型圧力センサとの同時計
い,dP/dについ
いて両センサによる計測値の相
相関を示した図で
である。これより開発センサ
測を行い
(GIPS と称する)は基準
準センサに対しほ
ほぼ同じ結果が
が得られることが
が分かる。このセ
センサを用い
て,拡散
散燃焼から予混
混合圧縮着火燃焼
焼への切替制御
御を実施し,その
の効果を実証して
ている。この
切替制御では,第 1 段
段階では dP/d
を一定値以下に
に保つように燃料
料噴射時期を制
制御し,その
後の第 2 段階において
ては燃焼位相を一定に保つよう
うに燃料噴射時期
期を制御する。こ
これにより,
切替直後の燃焼騒音の
のスパイク的な上昇を抑え,さらに定常状態に
における燃焼位相
相制御で熱
効率向上を狙う。図 3--2 には GIPS センサを用いた切
セ
切替制御の有無
無が燃焼と排気の
の時間変化
Figure 2‐66
エンジントルクリカバーの取組
組
に与える
る影響を示す。切替制御を行う
うことで,予混合
合圧縮着火燃焼 への移行直後の
の燃焼騒音
(dP/d
)の増加と NOxx の増加を大幅に
に低減できること
とが分かる。一方
方,未燃炭化水
水素(THC)と
CO は増
増加している。こ
これらの排出抑
抑制のため,グロ
ロー加熱による燃
燃焼改善を行っ
っている。図
3-3 には
は筒内圧計測に
によるフィードバック制御とグロー
ー加熱を同時に
に行った場合と,グロー加熱
しない場
場合との比較を
を示す。この図か
から筒内圧力セン
ンシングによる燃
燃料噴射時期の
のフィードバ
ック制御
御とグロー加熱に
による燃焼促進
進により,THC と CO の増加を抑
抑えつつ,NOx と燃焼騒音を
低減することが可能であることが分かる。以上により GIPS センサを
を用いた燃料噴射
射制御の有
効性が示された。(小酒
酒)
Figure 3‐1
GGIPS と基準センサ
サによる圧力上昇
昇率の
測定値の比
比較
5
ENGINE
N
REVIEW
W
SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGGINEERS OF JAPAN
Vol. 4 No. 4 20014
3.2 先進
進ディーゼル燃
燃焼・後処理技術
術 Ⅰ
三菱自
自動車・北田らは
は「ディーゼル燃
燃焼計算の実用化研究」3‐2)と題 して講演を行った。
筆者らは
は,早稲田大学
学で改良された KIVA
K
コードをベ
ベースに短時間で
で熱発生率を求
求められるよ
うに簡素
素化した燃焼モ
モデルを加えて実
実用的な時間で計算できるソフ トウエアを作成し開発に利
用してい
いる。しかしパイ
イロットや少量の
のプレを含めた噴
噴射パターンでは
は,着火遅れの予
予測制度が
十分でないた め,上 死点付 近の筒内圧を再現できていなかっ た。これ は着火遅れを
Livengo
ood-Wu 積分法
法によるモデル計
計算(以下,簡易
易計算と記載)で
で簡便に予測して
ていることに
起因して
ている。そこで表
表 3-1に示すよ
ような,化学反応
応計算による計算
算負荷を極力抑
抑え,着火遅
れ時間と着火から化学
学平衡に至る簡略
略化素反応モデ
デル(以下,化学
学反応計算と記載
載)を作成し
た。
この両
両者のメイン1段
段噴射における計
計算結果と実測との対比を図 3 -4 に示す。条件
件は 3.2L, 4
Figure 3‐2
F
燃焼切替
替における GIPS センサによる筒内圧力
力計測値
を用いた燃料噴射時
を
時期制御の燃焼特
特性と排気特性に与
与える効果 気筒エン
ンジン,3800rpm 全負荷運転での
の噴射速度,筒
筒内圧,熱発生率
率,主要化学種の
のモル分率
と NOxx 濃度を実測と重
重ねて示してい
いる。それぞれの
の項目において両
両計算法ともに実
実測にほぼ
合ってい
いる。
次に,2.2L, 4 気筒デ
ディーゼルエンジ
ジンのパイロット,
,プレ,メインとア
アフターからなる
る 4 段噴射
運転点での両計算
算結果を図 3-55 に示す。簡易計算のパイ
で,EGR を 23%加えた 1500rpm での運
ロット噴
噴射の燃料は,実
実測のタイミング
グで発熱せず,次のプレ噴射の
の燃料と一緒に燃焼するた
め,プレ
レ噴射後の熱発
発生が急激になり
り上死点付近の筒内圧が実測を
を上回ってしまう
う。一方,化
学反応計算では,パイ
イロット噴射の燃
燃料から低温酸化
化反応による発 熱が生じ,この影響を受け
てプレ噴
噴射の燃焼が穏
穏やかになり,上
上死点付近の筒
筒内圧が実測値と
とほぼ一致し,化
化学反応計
算の優位性を確認でき
きた。
ン1段噴射の場合
合の計算時間は
は,2.5GHz パソコ
コンで,簡易計算
算7分に対して化
化学反応計
メイン
Figure 3‐3
F
筒内圧
圧力センシングによる燃料噴射時期制
制御とグロ
ー加熱の組み合わ
わせが燃焼切替時の
の燃焼と排気に与え
える効果 Table 3‐11 簡略化した素反応モデル
算では6時間以上かか
かるため,用途に
に応じた使い分け
ける運用が適切
切と判断している。
京都
都大学・堀部らは
は「アフター噴射を
を用いたディーゼ
ゼル機関におけ
ける混合気形成過
過程の数値
解析」 3--3)と題して講演 を実施した。デ
ディーゼル機関に
にはコモンレール
ル式燃料噴射装
装置が普及
し,排ガ
ガス低減や騒音
音低減のために多
多段噴射が活用
用されている。メ
メイン噴射の直後
後に少量の
燃料を噴
噴射するアフター
ー噴射 (post innjection) は黒煙
煙の排出低減に
に有効とされてい
いる。筆者ら
も単気筒
筒機関において
て総噴射量を一定
定にしてパイロッ
ット/メイン/ア
アフターの3段噴
噴射を用い,
アフター
ー噴射の黒煙低
低減効果について
て実験を行ってお
おり図 3-6 に
に示すように,噴
噴孔数7の噴
射ノズル
ルとくぼみ口径の
の小さいリエント
トラント燃焼室 (Re 55) の組み
み合わせではア
アフター噴射
時期θpost を早くする
るほど,吸気酸素
素濃度 γO2 が低
低下するにもか
かかわらず黒煙濃
濃度 Smoke
が低下すること(7 horles nozzle),噴射
射ノズル流量一定の下で噴孔数
数 10 に増やすと
と早いアフタ
ー噴射では黒煙濃度が
が増加すること((10 holes nozzle
e),くぼみ口径の
の大きいリエント
トラント燃焼
室(Re 60)ではアフタ ー噴射時期を遅
遅らせた方が黒
黒煙濃度が低下
下することなどを
を明らかにし
た。
そこで
で,本研究ではこ
これらの実験結果
果を対象として 3D-CFD を用い
いて燃焼過程の数値計算を
行い,す
すすの生成に関
関連の深い燃料濃
濃度分布を解析
析し,機関諸元や
や運転条件の違
違いによって
アフター
ー噴射に黒煙低
低減効果の傾向が
が異なる理由に
について説明を試
試みている。
はじめ
め噴孔数7におい
いてアフター噴射
射時期を早める
ると黒煙が低下す
する原因について考察する
ためアフ
フター噴射時期 θpost = 11°ATDC と 21°A
ATDC について計
計算を行った。燃
燃焼室は標
準の Re
e 55 である。この
のθpost=11°A
ATDC とθpost=
=21°ATDC にお
おける混合分率 fu および温
ure 3‐5 4 段噴射で
での化学反
Figure 3‐4 メイン1段
段噴射での化 Figu
応計算と簡略計算の比較
学反応計算と簡略計
学
計算の比較
2L,4 気筒,1500rpm
m, EGR23%) (3
3.2L,4 気筒,3800rrpm,EGR 0%) (2.2
度Tの筒
筒内分布のクラン
ンク角経過を図
図 3-7,図 3-8 にそれぞれ示す
す。図 3-7 にお
おいてメイン
噴射はパイロット噴射の
の燃焼による高
高温領域に噴射さ
され 6°CA には
はくぼみ側壁付近
近で fu が 0.1
~0.2 の辺りで温度が
の
2000K 近くに上
上昇することが確
確認できる。メイン
ン噴射終了後,テ
テール部の
混合分
分率は 10°CA から 14°CA にかけて急速
速に低くなる。ア
アフター噴射時期
期が早いθ
post=11
1°CA ではそ
その領域にア フター噴霧が噴
フ
フター噴射時期
期の遅いθ
射 さ れ る 。ア フ
post=21
1°CA ではアフ
フター噴射時期に
にメイン噴霧が巻
巻き上がっており
り,混合分率の高
高い領域に
アフター
ー噴霧が噴射され
れる。これらのこ
ことから早いアフ
フター噴射時期を
を用いるとメイン
ン噴霧とアフ
ター噴霧
霧の干渉が小さ
さくなるのでメイン噴霧に取り込
込まれなかった酸
酸素をアフター噴
噴霧の燃焼
に利用でき,アフター噴
噴霧から生成す
するすすが少なく
くなり,黒煙濃度
度が低下したと考
考えられる。
一方,ア
アフター噴射時期
期が遅いとメイン噴霧の燃焼に
によって酸素濃度
度が低下した領
領域にアフタ
ー噴霧が噴射される事
事になり,アフター
ー噴霧由来のす
すすが多くなるた
ために,黒煙濃度が増加し
Figure 3‐66 アフター噴射の
の黒煙低減効果
果
6
ENGINE
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SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGGINEERS OF JAPAN
Vol. 4 No. 4 20014
たと考え
えられる。
つぎに
に,噴射ノズル仕
仕様(噴孔径,噴
噴孔数〉を変更し
した際に,アフタ
ター噴射時期に対する黒煙
濃度の傾向が変化する
る原因について考
考察するため,噴孔径,噴孔数
数を 0.105 mm および
お
10 と
フター噴射時期θpost =11°AT
TDC と 21°AT
TDC の条件で計
計算を行った。両
両アフター噴
してアフ
射時期における混合分
分率 fu および温
温度Tの筒内分布
布を図 3-9 およ
よび図 3-10 に示す。両者
に
において
て,メイン噴霧の
の分布に注目す
すると,噴孔数 7 の場合に比較
較して,スキッシュ
ュエリアおよ
びくぼみ
み底面に沿った混
混合分率の高い
い領域の流動が
が遅く,希薄化が
が遅い。図 3-9 の早いアフ
Figure 3‐7 混合分
分率 fu と温度 T の筒
筒内分布のクランク角経過
(Re55, 0.1255mm×7 ノズル噴孔
孔,θpost = 11°ATDC)) ター噴射
射の場合にリップ
プ付近に存在す
する混合分率の高
高い領域にアフ
フター噴霧が噴き
き込まれる。
また,く
くぼみ底面からの
のメイン噴霧の巻
巻き上がりが小さ
さいので,アフタ
ター噴射時期が遅い図 3-
10 の場
場合にはアフター
ー噴霧は fu および
びTが低い領域に噴射される。こ
これらから実験結
結果を考察
すると,噴孔数 10 では
は早いアフター噴
噴射を用いるとく
くぼみ側壁付近 に存在するメイン
ン噴霧火炎
Figure 3‐8 混合分
分率 fu と温度 T の筒
筒内分布のクランク
ク角経過
(Re55, 00.125mm×7 ノズル
ル噴孔,θpost = 21°AT
ATDC)
に向かってアフター噴霧
霧が噴射され,アフター噴霧は
は高温で酸素濃度
度の低い燃焼ガ
ガスをエント
レインす
すると考えられる
る。そのため,ア
アフター噴霧から
ら生成するすすが
が増加し,黒煙
煙濃度が高く
なったと
と考えられる。ア
アフター噴射時期
期を遅くするとア
アフター噴射はメ
メイン噴霧火炎の
の干渉は小
さくなる
ると考えられ,メイ
イン噴霧の燃焼
焼に使わなかった
た酸素をアフター
ー噴霧で利用で
できるので噴
孔数 7 よりも黒煙濃度
度が低下したと考
考えられる。
最後に,くぼみ口径 を変更した際に
にアフター噴射時
時期に対する黒
黒煙濃度の傾向が
が変化する
るため,燃焼室形
形状を Re60 に変更してアフタ
に
ター噴射時期θ
θpost=11°
原因について考察する
Figure 3‐9 混合分率 fu と温度 T の
筒内分布のクランク
筒
ク角経過
(Re55, 0.105mm×100 ノズル噴孔, θpost =11°ATDC) Figure 3‐11 混合分率 fu と温度 T
筒内分布のクランク
ク角経過
の筒
(Re
e55, 0.105mm×10 ノズル噴
孔,, θpost =21°ATDC)
について計算を行
行った。この場合
合,両者ともメイ
イン噴霧の燃焼ガ
ガスとアフタ
ATDC と 21°ATDC に
ー噴霧の干渉が起こっ
っており明確な現
現象の差は見ら
られなかった。そ
そのため干渉に起因して黒
煙が変化したというより
りも,図 3-6 にお
おいて Re60 の黒
黒煙が変化して
ているのは EGR 率の変化に
率
伴う吸気
気酸素濃度の違
違いに起因するも
ものと推測する。
。
アフタ
ター噴射の黒煙
煙低減効果を総括
括的に整理した大変有意義な研
研究と判断する。
。(下田)
進ディーゼル燃
燃焼・後処理技術
術 Ⅱ
3.3 先進
中村ら
ら 3‐4)が,SiC ナノ
ノ粒子メンブレン
ンフィルタにおけ
けるすす微粒子の
の酸化過程につ
ついて,昇温
試験や環境制御型透過
過型電子顕微鏡
鏡による酸化過
過程の観察などに
により実験的に調査した結
Figure 3‐111 SiC 粒子と CB 粒子の混合比が
が
CB 粒子酸化温
温度に与える影響
響
果について発表した。S
SiC ナノ粒子メン
ンブレンフィルタは通常の DPF 表面に,平均粒
粒径 35nm と
800nm の混合 SiC 粒子
子から構成される
る壁厚 20m の層を焼成したも
の
ものであり,従来
来 DPF よりも
低温で堆
堆積微粒子を酸
酸化させることが
が可能であるが,その酸化過程
程は明らかでない
い。この酸化
機構を解
解明するために
に,まず SiC 粒子
子とディーゼル微
微粒子を模擬した
たカーボンブラッ
ック(CB)粒子
の混合物を作成し,これ
れに高温 O2/Ar ガスを通すこと
とで酸化させ,酸
酸化により発生す
する CO と
CO2 を質
質量分析計で計
計測し酸化速度を求めている。この装置ではガ
ガス温度の時間変化を制御
すること
とが可能である。
。これを用いて,SiC 粒子と CB
B 粒子の混合比
比を変化させるこ
ことで,両粒
Figure 3‐‐12 環境型透過
過型電子顕微鏡に
による
SiC 上
上すす粒子の酸化
化過程の観察画像
像
子の接触状況を変化さ
させ酸化に与える影響を調べて
ている。SiC 粒子
子の割合を増加
加すると,CB
の酸化温度が低温側へ
へ移動すること,SiC 粒子割合が
が高い場合には
は酸化開始温度
度が Pt 担持
の有無に無関係になる
ることが明らかに
にされた(図 3-11)。これより,C
CB の酸化は SiC 粒子との
接触面積に依存し,Ptt が担持されなく
くとも,SiC 粒子と CB 粒子の接
接触面積を十分に確保すれ
ば Pt 担持の場合と同
担
同程度の酸化温度
度を得ることがで
できることを示し
している。また,環
環境制御型
透過型電子顕微鏡を用
用いて SiC メン
ンブレン上のすす
す微粒子の酸化 過程を観察した
た結果,すす
粒子の酸化反応はすす
す粒子と SiC 酸化
化物層の界面近
近傍おいて優先 的に進行するこ
ことが明らか
にされた
た(図 3-12)。さ
さらに,SiC 上へ
へ吸着した酸素の離脱量を計測
測した結果,500
0℃~900℃
Figure 3‐13 SiC メン
ンブレンフィルタ上
上すす粒子の酸化モデル
において
て脱離した酸素
素がすす酸化に寄
寄与していること
とが示された。Ptt 担持により SiC
C 上への酸
素吸着量が増加するた
ため,これにより
り酸化速度が増
増加すると考えら
られる。これらの
の結果から,
図 3-13
3 に示す,メンブレンフィルタにお
おけるすす酸化機
機構の概念モデ
デルを提案してい
いる。このモ
デルでは,メンブレンフ
フィルタ上のすす
す粒子の酸化経
経路として,気相
相中酸素による酸
酸化と,メン
ブレン上
上に吸着された酸
酸素による酸化
化の二つの経路を
を考えている。P
Pt を担持した SiC ナノ粒子
は酸化に寄与する酸素
素をより多く吸着
着するため接触面積が小さい場
場合でも酸化反応が進行し
持していない SiC ナノ粒子は吸
吸着酸素量が少な
ないため,酸化反応を低温
やすい。一方,Pt を担持
で進行さ
させるには接触
触面積を高くする
る必要がある。(小
小酒)
Figure 4‐1
モ
モータ内蔵 DCT による 1 モータ HEV
H
7
ENGINE
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REVIEW
W
SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGGINEERS OF JAPAN
Vol. 4 No. 4 20014
【参考文
文献】
3‐1) 田中貴史,沖中
田
学,中村敏之,本間哲治:筒内
内圧力センサ付グ
グロープラグによる予混合
圧縮着
着火燃焼移行時
時の騒音,NOxx 制御技術開発
発,自動車技術
術会 2014 年春
春季大会,
No.69-1
14(2014)
3‐2) 北田泰造,口田征
北
征人,林伸治,川
川添博光,酒井
井康行,安東弘光
光:ディーゼルエ
エンジン燃焼
計算の実用研究,自動
動車技術会 20144 春季大会,No.88-14(2014)
堀
雄司,川那辺洋,石山拓二:アフ
フター噴射を用い
いたディーゼル機関におけ
3‐3) 堀部直人,狸塚雄
る混合気
気形成過程の数
数値解析,自動車
車技術会 2014 春季大会,No.888-14(2014)
3‐4)中村圭介,大木浩
浩史,讃井涼子,
,日高宣浩,田中正道,松本弘
弘昭,花村克悟:SiC ナノ粒
ブレンフィルター
ーによるすす酸化
化挙動,自動車技
技術会 2014 年春
春季大会,No.89-14(2014)
子メンブ
Figure 4‐2
モータ内蔵ダブ
ブルクラッチ変速機
機
新の EV,HEV 技
技術
4 最新
今大会も,“最新の EV,HEV 技術””を冠した 5 セッ
ッションのほかに
に“EV・HEV の要
要素技術“,
“車載用
用パワーエレクト
トロニクスコンポ
ポーネント新技術
術Ⅰ,Ⅱ”“自動車
車用燃料電池”な
など,計 9 セ
ッション
ンで電動車両に関
関連した幅広い発表が行われた
た。
パワートレインに関し
しては,2013 年秋の大会で高効
年
効率な変則シリー
ーズハイブリッド
ド
4‐1)
を発表
した研究
究所から特徴の
のある 2 形式の HEV
H の発表があ
あった。池上らは
は 1.5L のアトキン
ンソンサイク
ルエンジ
ジンとモータ内蔵
蔵のデュアルクラ
ラッチ変速機(D
Dual Clutch Traansmission, DCT
T)を組み合
わせたコンパクトスポー
ーツ HEV システ
テム 4‐2)(図 4-1)
)を紹介した。前
前述の変則シリー
ーズ HEV が
比較的大型のセダンを
を対象としており
り,その駆動モー
ータが全負荷域を
を変速機なしで
でカバーする
BEV 寄りのものであった
たのに対し,本件
件は変速機と組
組み合わせること
とで小型の M/G
G を採用した
比較的小型の車両を対
対象にしている ICEV
I
寄り(ICEV
V をアシスト)HE
EV である(VW の twin up4‐3)
Figure 4‐3
モ
モータ内蔵 DCT による
に
HEV の動作
作モード
に近い)
)。
DCT は図 4-2 に示
示すとおり 2 本の
の入力軸が出力
力軸を共有した 6 速 DCT の奇数
数段軸の端
ロータ内に設けた
た遊星歯車を介
介してモータを取
取り付けたもので
で,リングギヤの
の固定によっ
部に,ロ
て 3 速ギ
ギヤと遊星歯車
車を組み合わせて
て 1 速のギヤ比
比を実現している
る。動作モードは
は図 4-3 に
示すとお
おりで,EV モード
ド(3 速が中心)で
で発進し,エンジ
ジン始動は EV モ
モードで走行中に
にクラッチを
締結して
て実現する(締結
結期間のモータトルクをエンジン
ン起動分だけ上
上乗せすることで
で,起動時の
ショック
クをなくしている)。従来の気筒休
休止機能を付加した CVT 付パラ
ラレル HEV に対
対して,DCT
を採用す
することによって
て EV モードの出
出現頻度を高め
めたこと(エンジン
ン運転時間は 55%減),最
5
Figuure 4‐4 エンジン
ン動作点の差
来の IMA システム
ム,右:新システム
ム)
(左:従来
適なエン
ンジン動作点で
での運転が実現し
している(図 4-4)ことなどから,
,従来比 38%の燃
燃費向上が
図られた
たとしている。
このシ
システムの効率
率と性能を左右す
するモータについ
いて四方らが詳
詳細に発表してい
いる4-4)。偏
平なモー
ータのロータ内に遊星歯車を組
組み込むため,ス
ステータ巻き線を
を直接渡り構造
造(図 4-5)
にするこ
ことで省スペース
ス化を図り,さら
らにスペースの問
問題で困難な磁 石の V 型配置
置(リラクタン
ストルク
クの活用の定石
石)に代わって磁石横に補助突起
起を設け 36%の
のトルク密度向上
上を実現した
Figure 4‐5 ス
ステータ巻き線の
の渡り線の改善(左
左:
従来の
のバスリング,右:直接渡り線)
こと,負
負荷率が高くなっ
ったモータをトランスミッション油
油で直接冷却す ることで連続定
定格を確保し
たこと等
等を紹介している
る。
矢崎ら
らは,3.5L V6 エ
エンジンと 3 機の
のモータを持った
た全輪駆動ハイブ
ブリッドシステム
ムとその基幹
をなす左
左右輪の駆動力
力配分可能な後輪用モータユニ
ニットについて発 表した 4‐5)。車両
両としては図
4-6 に示すように変速
に
速機内にモータを
を持った FF 車が
がベースで,この
の後軸に左右独立
立に駆動可
能なコン
ンパクトなモータ
タユニット(図 4-
-7)を設けたもの
ので,モータの出
出力は後輪が 27kW×2
2
に
対して前
前輪は 35kW と小さい。動作モードは図 4-8 に示すとおりで,
,①発進や低速
速クルージン
Figure 4‐6
全輪
輪駆動スポーツ HEV のパワートレ
レイン
グは後輪による EV 走行,②低エンジン負荷での加速
速はエンジンを高
高効率域で動作させ余剰動
力を前輪
時は全モータで
輪モータで吸収
収,③高負荷域で
ではモータでアシスト,④減速時
で回生,と定
石通りで
であるが,姿勢制
制御が必要な AWD
A
モードでは
は前輪モータで発
発電した電力で
で後輪モータ
ユニット
トを駆動し,電池
池状態の影響を排
排除している。発
発表の主眼は機
機械式 AWD と同
同等なコンパ
クトさを
を実現するために
に集中巻きモータを採用し,ここ
こで問題となる振
振動,騒音を低減
減する手法
を述べているが,ここで
では触れない。このシステムは
は省エネより高性
性能を優先した
たものである
(BMW の i84‐3)に近い)。
また,
,このシステムは
は高級車仕様で
であるにもかかわ
わらず,スペース
スの都合で 3 台のモータ用
台
インバー
ータを車両中央
央に搭載すること
とによる雑音問題
題など,インバー
ータへの要求仕様を如何に
Figure 44‐7
後軸用のツ
ツインモータユニッ
ット
8
ENGINE
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SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGGINEERS OF JAPAN
Vol. 4 No. 4 20014
解決した
たかについても別
別途発表があっ
った 4‐6)。
非接触給電システム
ムに関して,従来
来の改良や実用時の障害を排除
除する研究のほ
ほかに,新た
な方向の提案があった
た。従来は車両と
と充電設備が一対一であること
とを前提にしてい
いたが,保田
らは不特
特定多数の車両
両に対応するた
ために充電用コイ
イルが車両の進
進行方向にずれても効率の
変化が少ないシステム
ムについて発表し
した
4‐7)
。詳細の
の紹介は控えるが
が,図 4-9 に示
示すように,
路面側に複数の一次コ
コイルを設けて車
車両の前後方向
向に長い磁極を
を構成し,これに
に対して車両
ルでカップリング
グするもので,実
実験設備によって
て基本的な特性
性を左右する
側の 1 個の二次コイル
ータについて検討
討した結果を基に実現可能性に
について報告した
た。二次コイルの
の前後方向
パラメー
Figure 4‐8
全
全輪駆動スポーツ
ツ HEV の動作モード
Figure 4‐9
多
多種車両用給電シ
システムのコイル
ル配置
変位に対する総合給電
電効率は図 4-10 に示すように
に,一次コイル数
数とコイル間隔に
によって要求
が可能で,実現可
可能性が高いとし
している。
性能に合わせることが
回生制動は電動車両
両の効率を左右
右する重要な機能であるが,変
変動する回生制動
動能力以上
で補完する協調
調制御が必須機能である。制動
動時に操作者に違
違和感を与
の制動力を油圧制動で
両ブレーキの協
協調制御は一般に
にはブレーキバ
バイワイヤシステ
テムで実現されて
ており,既存
えない両
の ESC
C(Electronic Staability Control,横滑り防止装置
置)を使用するも
ものとブレーキバ
バイワイヤシ
ステムが
が ESC 機能まで
でをカバーするものの 2 タイプ
プがあるが,いず
ずれもブレーキバ
バイワイヤシ
ステム用
用の新規システ
テムが必要でコス
ストが課題となっ
っている。内藤ら
らはブレーキバイ
イワイヤによ
らない,既存 ESC ユニ
ニットの加圧制御
御の機能を活用し
した協調制御シス
ステムを提案した 4‐8)。一般
ーキペダルには
は要求制動力設定
定器が接続され
れるのに対し,一
一般のマスターシ
シリンダに不
にブレー
感帯を設
設けることにより
りこのストローク
ク範囲で回生を優
優先した制御を可
可能としている(
(図 4-11,
4-12)。回生での不足
足分を油圧で補完
完するロジックに
については紹介を
を割愛するが,この補完油
加圧機能を使用している。このた
ため,加圧ポンプ
プをプランジャポ
ポンプから脈
圧の創出を ESC の加
プに変更して違和
和感のないシス
ステムを実現して
ている。結果とし
してブレーキ
動の少ないギヤポンプ
バイワイ
イヤシステムに近いエネルギー
ー回収率を確保できたとしている
る。この提案は,HEV のコ
一般化した際に
ストだけ
けでなく,将来,ア
アイドルストップ
プからマイクロ HE
EV への移行が一
にも重要と考
Figure 4‐10
車両の位置ずれ
れに対する給電特
特性
えられる
る。
そのほか,電欠がな
ないように急速充
充電器を配置す
する指針を,一次
次近似的なシミュ
ュレーション
によって
て求めた「交通シ
シミュレーションに基づく急速充
充電ステーション の適正配置方針
針」4‐9),V2G
のグリッ
ッドへの貢献の形
形態とそれによ
よってユーザが得
得られる利益を精
精査し,ユーザー
ーに受け入
れられる
る可能性につい
いて検討した「V22G の経済性と実
実現のための課
課題」4‐10)は,EV の普及を左
右するイ
インフラの評価に
に関するものとし
して興味深い。(
(清水)
田島らは,本田技術
術研究所が研究開
開発を進めてい
いる EV 用接触式
式大電力走行給
給電システム
にかかわる報告を行っ
った
4‐11)
。近年,E
EV への究極の
の給電方式として
て走行中給電に期
期待が集ま
っている
るが,自動車用と
としては非接触方式を対象とし
したものが主流で
であった。そのよ
ような状況の
もと,本
本報告では①各種走行中給電方
方式の優劣比較
較,②開発した給
給電システムの詳細,③実
車走行テスト結果,の紹
紹介を行い,①については,自動車を対象とし
した場合には,給
給電電力・送
Figure 4‐111
協調制御用マ
マスターシリンダ
ダー
電距離・位置決め性・安
安全性確保の観
観点から「接触式
式」の「横方向」 走行中給電方式
式に優位性
があると
と結論づけた(表
表 4‐1)。②では
は,開発給電シス
ステムの詳細説明
明が行われた(表
表 4‐2)。給
電については,車両が
が給電レーンに進
進入⇒運転手が
がユニット開閉スイ
イッチを ON⇒ユ
ユニットが架
線に接触⇒給電スター
ート,といったプロ
ロセスで進むとのことである。③
③については,会
会場におい
て動画を
を中心に大変興
興味深いプレゼン
ンが行われた(図
図 4‐13)。高速道
道路 50km 毎に約
約 2km の給
電レーン
ンを設置すること
とにより,EV 航続
続距離無限化の
の可能性がある ことをアピールし
していた。さ
らに,提
提案方式はコスト
ト面でも有利であ
あり,非接触方式
式走行中給電の
の約 20 分の 1 程度に抑え
程
られると
とのことである。
東らは
は,日野自動車
車が研究開発を進
進めているコミュ
ュニティーバス用
用途の小型 EV バスにかか
わる報告
告を行った
4‐12)
。近年,バスの電
電動化研究が盛
盛んであるが,ほ
ほとんどが短期間
間の試験走
行で終了となっている 。そのような状況
況の下,本報告
告では①エネルギ
ギーマネジメントシミュレー
ションに
に基づくバスの電
電動化設計の詳
詳細,②製作した
た実車両の詳細
細,③長期間の営
営業運行時
に得られ
れた各種データ
タ,の紹介と分析
析等を行っていた
た。①について は,はじめに車
車両の電気・
機械系のモデリングを
を行い,それに基
基づくシミュレーシ
ションにより導入
入予定ルートに対
対する諸検
討を行っ
った結果を報告
告した。②においては,2012 年に
に東京都羽村市
市と墨田区,そし
して 2013 年
に石川県小松市に導入
入された同社製小型バス「ポンチョ」をベースと
とした EV 車両の
の諸元詳細
いては,実営業運
運行時における
る一年分の電池温
温度(図 4‐
説明が行われた(図 44‐14)。③につい
Figure 4‐12 ブレ
レーキストローク
クと協調動作範囲
囲の関係
Table 4‐11 Comparison o
of Electric Supply Capabbility when a Vehiicle is Running
9
ENGINE
N
REVIEW
W
SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGGINEERS OF JAPAN
Vol. 4 No. 4 20014
15),放
放電深度,電費,ディーゼルバス
スと EV バスのエ
エネルギー費用比
比較値(図 4-16),等の実
Table 4‐2
Sppecification of Dyynamic Charge System
測値が
が紹介され,開発
発車両の環境調和性や運行費用
用面での優位性
性等を定量的に
に評価してい
た。乗用
用車と比較して遅
遅れている商用
用車分野の電動化技術に係る有
有益な情報の発
発信となった
ため,会
会場において聴衆の興味関心を
を集めていた。(
(紙屋)
【参考文
文献】
4‐1) 自動車技術会
自
20013 年秋季大会
会,JSAE エンジン
ンレビュー,Vol . 4,No. 3(2014)p
pp7
4‐2) 池上武史,横尾
池
尾健太郎,斉藤
藤進,四方哲,金
金森伊(本田技
技術研究所):新
新型1モータ
SPORT
T HYBRID システ
テム,自動車技術
術会 2014 年春季学術講演会前
前刷集,No.64-1
14(2014)
4‐3) 第 43 回 東京モ
モーターショー2013,JSAE エンジ
ジンレビュー,Vool. 4, No. 3(2014
4)
4‐4) 四方哲,鎌田剛史
四
史(本田技術研究所):新型 HEV 用モータの開
開発,自動車技術
術会 2014 年
春季学術講演会前刷集
集,No.3-14(20114)
矢
,津吉智明(本田
田技術研究所):SPORT HYBR
RID SH-AWD 用モータ,自
用
4‐5) 矢崎学,中村徹,
動車技術会 2014 年春
春季学術講演会前
前刷集,No.3-14(2014)
鵜
圭輔(本田技術研究所):SPOR
RT HYBRID SH--AWD 用 Inverte
er Unit の開
4‐6) 鵜飼伸周,漆原圭
発,自動
動車技術会 2014 年春季学術講
講演会前刷集,N
No.4-14(2014)
Figure 4‐13 D
Dynamic Charge Ve hicle
Figure 4‐14
Small EV Bus
4‐7) 保田富夫,乗越
保
勇美,藤田幸一
一,砂金富保(テ
テクノバ):新方式
式非接触給電シ
システム,自
動車技術会 2014 年春
春季学術講演会前
前刷集,No.27-14(2014)
内
慎太郎,小池康
康広(アドヴィック
クス),森下慎一朗
朗,全男浩(日産
産自動車):
4‐8) 内藤政行,大崎慎
ESC 回生協調ブレー
回
ーキシステム開 発,自動車技術
術会 2014 年春
春季学術講演会
会前刷集,
No.3-14
4(2014)
4‐9) 日渡良爾,岩坪哲
日
哲四郎,池谷知
知彦(電力中央研
研究所):交通シミ
ミュレーションに
に基づく急速
充 電 ス テ ー シ ョ ン の 適 正 配 置 方 針 , 自 動 車 技 術 会 2014 年 春 季 学 術 講 演 会 前 刷 集 ,
No.27-1
14(2014)
4‐10) 蓮池宏,新谷隆
蓮
隆之(エネルギー
ー総合工学研究所):交通シミュ
ュレーションに基
基づく急速充
電 ス テ ー シ ョ ン の 適 正 配 置 方 針 , 自 動 車 技 術 会 2014 年 春 季 学 術 講 演 会 前 刷 集 ,
Figure 44‐15 Annual cha
ange in the daily
temperature off battery
No.27-1
14(2014)
4‐11)田
田島孝光,芝端康
康二,野口渉,有
有賀友恒(本田技術研究所):E
EV 航続距離延長
長技術に関
する検討
討,自動車技術
術会 2014 年春季
季学術講演会前刷集,No.28-144(2014)
4‐12)東
東壽志,伊藤妥,
,古藤隆志(日野
野自動車):小型
型 EV バス用エネ
ネルギーマネージ
ジメントの開
発,自動
動車技術会 2014 年春季学術講
講演会前刷集,N
No.29-14(2014))
5 ガス燃料エンジン
Figure 4‐116
Comparison of energy cost
「ガス
ス燃料エンジンⅠ・Ⅱ」では,国内外の研究機関
関や企業から,デ
デュアルフューエルに関す
る基礎研
研究やコンセプ
プト,熱効率向上
上を目指した独自
自性の高い研究 テーマが発表さ
された。その
中から 2 件の講演を紹
紹介する。
趙ら
5-1)
は,吸気管供
供給の天然ガス
スを主燃料として
て,筒内噴射の軽
軽油を着火源と
とするデュア
ルフュー
ーエル圧縮着火
火エンジンを対象
象に,低負荷にお
おける未燃損失
失の増加や,高負
負荷におけ
る最大圧力上昇率の増
増大を課題に挙
挙げ,圧縮比・吸
吸気酸素濃度・吸
吸気圧力・天然ガ
ガス当量比
内圧力と熱発生
生率であり,図示
示平均有効圧 0.8
8 MPa・圧縮
の影響を報告している。図 5-1 は筒内
比 16.5・吸気酸素濃度
度 21%の運転条件
件において,異な
なる体積効率ηvv と天然ガス当量
量比φNG の
結果を比
比較している。ど
どの運転条件に
においても,燃焼
焼後半に急峻な熱
熱発生を示し,天然ガスの
Figure 5‐1
異
異なる体積効率の
の筒内圧力と熱発
発生率
未燃混
混合気が予混合圧
圧縮着火的に燃
燃焼すると考察している。このよ
ような熱発生が
が観察されな
い圧縮比 14.5 の性能と
と比較して,同等
等 NOx レベルで
で THC および CO
O の低減と,図示
示熱効率の
向上が
が得られる一因と
としている。但し
し,燃焼後半の急
急峻な熱発生は
は最大圧力上昇
昇率を増大さ
せ,それ
れに伴う NOx の増加を招くため,吸気酸素濃度
度の低減による改
改善を試みてい
いる。図 5-2
は筒内圧力と熱発生率
率であり,図示平
平均有効圧 0.8M
MPa・圧縮比 16 .5・体積効率 1.0
0 の運転条
件におい
いて,異なる吸気
気酸素濃度 O2in の結果を比較している。吸気酸
酸素濃度 16%で
では,燃焼後
半の急峻な熱発生を示
示しながらも,その際の最大圧力
力上昇率と NOxx は同 21%と比較
較して抑制さ
れ,同時
時に THC および
び CO と図示熱効
効率は同等レベルを得ている。今
今後,この特徴的な燃焼を
広範囲な運転条件で実
実現することが期
期待される。
効率向上と有害排
排気低減を目的
的として,Lee ら 55-2)は Dedicated EGR と称す
低温燃焼による熱効
Figure
F
5‐2
異な る吸気酸素濃度
度の筒内圧力と熱
熱発生率
10
ENGINE
N
REVIEW
W
SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGGINEERS OF JAPAN
Vol. 4 No. 4 20014
るコンセ
セプトの実現可能
能性を報告してお
おり,H2 と CO を含む
を
EGR の大
大量導入により
り,燃焼速度
の低下を抑制しつつ,低
低温燃焼を実現
現することを目標
標としている。図 5-3 は, Dediicated EGR
システム
ムで構成される
る火花点火エンジ
ジンのコンセプト
トを示す。全気筒
筒とも吸気絞りや
や過給はな
く,#1 気筒の
気
CH4-Air 当
当量比φ#1 と,##2~#4 気筒の同
同当量比φ#2 は独
独立して制御され,#1 気筒
の排気は全て#2~#4 気筒に供給され
れる。従って,均
均一に希釈され る仮定で,#2~
~#4 気筒の
EGR 率は
率 33%としてい
いる。図 5-4 は,気筒全体の熱
熱効率に及ぼす当
当量比φ#2 の影
影響を示して
おり,当
当量比φ#1 が異な
なる場合を比較
較している。当量比
比φ#1 が 1.0 の場
場合,#1 気筒だ
だけは約 35%
Figure 5‐3
Dedicated EGR システムのコンセ
シ
セプト
の熱効率を示すが,そ
その排気を#2~##4 気筒に供給し
しても,気筒全体
体の熱効率は最
最高でも 25%
に満たな
ない。一方,当量
量比φ#1 が 1.8 および 2.2 では,#1 気筒だけの
の熱効率はそれ
れぞれ約 16%
および約
約 10%程度だが
が,気筒全体の熱
熱効率はどちらも
も最高で約 40%を
を示す。過濃燃焼により H2
と CO を含む排気を全
を
量 EGR として供
供給する方が,量
量論燃焼の排気
気を供給するより
りも,気筒全
体の熱効率を大幅に向
向上させる結果は
は興味深い。NO
Ox 生成を含め た更なる検討と
と,実機での
実験結果に期待したい
い。(佐藤)
【参考文
文献】
5‐1) 趙培龍,加藤大樹
趙
樹,小川英之,柴
柴田元:天然ガス
スを主燃料とす
するデュアルフュー
ーエル圧縮
着火エン
ンジンの燃焼お
および排気改善,自動車技術会 2014 年春季大
大会,No.47-14(2
2014)
5‐2) Se
ejun Lee,Kyohhei Ozaki,Takaahiro Sako,Norrimasa Iida:Influuences of H2 and
a CO on
Figure 5‐4
気筒
筒全体の熱効率
率に及ぼす当量比
比の影響
Table 6‐1 テストに用いたオイルリング仕様
様
Combusstion of Premixeed Methane-air and Compariso
on of Lean and S
Stoichiometric Combustion
C
in a SI Engine with Deddicated EGR Syystem,自動車技
技術会 2014 年春
春季大会,No.48
8-14(2014)
6 エンジン部品・トライ
イボロジー
リケン
ンの飯島ら 6‐1)は
は,2 ピースタイプ
プのピストンリン
ングの外周形状違
違いによる外周摩擦力とオ
イル消費
費への影響につ
ついて報告。表 6-1
6
に示す 3 種類の外周形状
種
状違いについて,
,ピストンの
2 次運動
動が発生しない構
構造の浮動ライ
イナ法によりピス
ストンリング外周摩
摩擦力を,1.5L 直列 4 気筒
自然吸気エンジンを用い連続重量法に
によりオイル消費
費を測定した。ま
また,混合潤滑の
の基礎式に
Patir と Cheng の平均レイノルズ方程式を,接触理論
論に Greenwood と Tripp のモデ
デルを使用し
た混合潤滑理論による
るリング外周の油
油膜厚さと摩擦力
力を計算した。結
結果として B タイプのもの
タ
が摩擦力が良好であり
り(図 6-1),オイ
イル消費も低張
張力(10N)にて良
良好であった。これは B タイ
プがリン
ング外周油膜計
計算においての油
油膜が薄いこと(
(図 6-2),流体
体摩擦力計算結
結果において
フリクシ
ションが少ないこ
こと(図 6-3)より,摩擦力に関しては,ランド先
先端がとがったよ
ようなバレル
形状である B タイプでは
は,リングの摺動
動によって発生す
する油膜圧力の
の領域が小さく,オイルのせ
ん断領域が小さい,その結果,粘性摩
摩擦力が低くなっ
った。また,オイル
ル消費に関して
ては,油膜圧
力の発生領域が小さく
く,ランド外周の油
油膜が厚くなり難
難いためと考察 している。
マーレ
レエンジンコンポ
ポーネンツジャパ
パンの大岩ら
6‐2)
は,マイクロピ
ピーニング処理に
によるアルミ
ニウム鋳
鋳物合金製ピス
ストンのピン穴強
強化について報告
告。図 6-4 に示
示すエアー式ブラ
ラスト装置に
Figure 6‐1 オイルリング摩
摩擦力測定結果
より高速
速に加速された硬
硬質ガラス粒子
子(φ0.4)をピン穴
穴内部に衝突さ
させ,表面硬さの
の向上(図 6
-5),表
表面内部残留応
応力の付与(図 6-6),により強
強度アップを図っ
った。また,処理
理表面はマイ
クロディ
ィンプルが形成さ
され,表面近傍の組織は母材の
の結晶粒が砕か
かれた微細処理層が形成さ
れる。ブ
ブラストが強すぎ
ぎると表面粗さが
が悪化するが,弱
弱すぎると表面
面処理効果が十分
分現れない
ため両者
者がバランスす
する処理条件の調
調節が重要との
のこと。ハイドロパ
パルサ試験による疲労試験
ルエンジンによる実機試験
の結果,未処理に対し
して 15%以上の強
強度向上が確認
認され,ディーゼル
性向上が確認さ
された(図 6-7)と
とのこと。また,ピ
ピン穴の応力緩和形状と組
では 2 倍以上の耐久性
合わせることで,ピン穴
穴ブッシュの代替
替になる可能性が
があるとしている
る(藤井)。
Figure 6‐2 オイルリング上側
側ランド外周の最
最小
油膜厚さ計算
算結果
【参考文
文献】
6‐1)飯
飯島 直樹,煤田 学,岩田 康宏
宏,臼井 美幸樹
樹,歌代 健一: ピストンリングの
の外周形状
による外
外周摩擦力とオ
オイル消費への影
影響,自動車技術
術会 2014 年春
春季大会学術講
講演前刷集,
No.67-1
14(2014)
6‐2)大岩 力,大澤 克
克幸,中村 剛,李 新波,石橋 正人:マイクロ ピーニング処理
理によるアル
ミニウム
ム鋳物合金製ピストンのピン穴強
強化に関する技
技術開発,自動車
車技術会 2014 年春季大会
年
学術講演前刷集,No.667-14(2014)
Figure 6‐3 オイルリング流
流体摩擦力計算結
結果
11
ENGINE
N
REVIEW
W
SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGGINEERS OF JAPAN
Vol. 4 No. 4 20014
7 潤滑
滑油および潤滑技
技術
IHI の増田ら
の
7‐1)
は,潤滑油が予混合
合燃焼機関の異
異常燃焼に与え る影響について
て報告。図 7
-1 に示す舶用大型低
低速ガスエンジン
ンを想定した急
急速圧縮膨張装置
置にて,圧縮温
温度,圧縮圧
混合気(CH4+A
Air)の当量比を
を変化させ,潤滑
滑油の自着火に
による予混合気の
の異常燃焼
力,予混
(過早着
着火)(図 7-2))について以下を
を報告している。
。潤滑油(一般的
的な舶用シリンダ
ダ油;LO)の
最低自着火温度は約 695K であり,エ
エンジンの運転雰
雰囲気下で十分
分自着火する。ま
また,潤滑油
ピン穴
微少量でも燃焼室
室内に存在すれ
れば予混合気を着火させる能力
力があり,潤滑油
油供給量低 Figgure 6‐4 ピストンピ
が極微
減による
る過早着火の抑
抑制には限界が
がある。しかしなが
がら,予混合気の
の当量比を低下
下させると潤
のマイクロピーニング
グ処理 Figure 6‐5 マイクロピー
ーニ
ング
グ処理層の硬度向上
上 滑油の自着火に伴う予
予混合気の燃焼
焼割合が低下する
る。また,予混合
合気の当量比を
を低下させる
合気の最低着火
火温度が高くなり
り,潤滑油の自着
着火温度に比べ
べ 35~80K 高く
く,潤滑油が
と予混合
自着火しても予混合気
気が着火しない領
領域がある。圧縮
縮温度と予混合
合気の当量比で
で整理すると
当量比を低下させ
せることで過早着
着火を低減する
ることができ
図 7-3 のようになり ,予混合気の当
ピーニング処
転数が低いほど
ど潤滑油の自着火
火時期は早まる
る(図 7-4)。す
すなわち回転数を
を上げること Figgure 6‐6 マイクロピ
る。回転
理品の深さ方向残留
理
留応力分布 Figure 6‐7 エンジンテ
テスト結果
で過早着火を回避でき
きる可能性がある。潤滑油が非
非摺動面に付着 している場合に
に比べて,ピ
リング摺動部に存
存在する場合は
は,リング挙動に
により液滴が形成
成され,蒸発しや
やすいため
ストンリ
潤滑油の自着火および
びそれに伴う予混
混合気の着火時
時期が早まる(藤
藤井)。
文献】
【参考文
7-1)増田 裕,廣瀬 孝
孝行,古谷 博秀
秀,山田 剛:潤滑
滑油が予混合燃
燃焼機関の異常燃焼に与え
について,自動車技術会 2014 年春季大会学術
術講演前刷集, No.68-14(2014
4)
る影響に
Figure 77‐1 急速圧縮膨張装置(RCEM)
Figure 7‐22 潤滑油(LO)の自着火と予混合
合気着
火の画像と筒内圧
Figure 7‐33 圧縮温度と予混合気当量比の
の
予混合気着火との関係
Figure 7‐4 エン
ンジン回転数と潤滑油(LO)自着火
火の関係