寄稿 - 山形県医師会

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山形県医師会会報 平成27年11月 第771号
ピカドンなしでも核戦争は可能
山形市 武 田 和 夫
国と国との武力を用いた争いは戦争というが、何
とがものをいう。日本もかつてはオホーツク海に漁
のためにするのだろう。昔は一所懸命というように、
民保護の名目で、帝国海軍は海防艦という小さな軍
土地とそこに住む人間を確保すること、農業生産を
艦を派遣して睨みを利かし、タラバガニや鱈を取り
高めることが最大の経済政策だった。農民は支配者
捲った。艦長が戦闘開始を発令できる大佐で大砲を
がどう代ろうとも、土地に縛られ動けなかった。
持つ軍艦に、沿岸国の漁民は不満でも強く抗議は出
天高く秋になり農作物も実れば、農業生産手段を
来なかった。今は資源獲得も漁業から海底地下資源
持たない遊牧民が、騎馬集団で農産物の略奪に押し
に移っている。
寄せた。それで騎馬集団の襲撃に備えて、馬が越えら
戦争も火薬から核兵器の力の誇示という抜けない
れない高さの防壁を築く。地形を見ながら延々と城
刀の見せびらかしになった。100年草木も生えないだ
壁を延ばして、野越え山越えの万里の長城となった。
ろうといわれたヒロシマは、草木も育ち繁栄してい
土地獲得の争いは欧州の平原でも同じである。そ
る。一方チェルノブイリは放射能で人を寄せ付けな
れに宗教が絡むともっと面倒になる。土地獲得争い
い。強い放射能があれば人は住めず、近づくことも
なら勝てば領主は儲かるが、戦場の兵士は得るもの
出来ない。国家の中枢のコンピュータがハッキング
が無い。しかしそこは上手くしたもので、勝った兵
され機能が麻痺すれば国の運営も不可能になる。同
隊は負けた国の財宝を略奪し、乱暴狼藉は当然のご
様に国家の中枢のコンピュータに人が近づけないと
褒美だった。聖地奪還を謳った十字軍は、異教徒を懲
なればやはり運営不可能だろう。もしチェルノブイ
らしめるという名目に、乱暴狼藉でアラビアの財宝
リや福島のメルトダウンした原子炉が中央官庁街の
を略奪して、一財産築いたキリスト教領主もおった。
真ん中に置かれ、強力な放射線を出し続けたらどう
戦争は産業革命以後、土地と人の獲得から石炭、
なるだろう。青森の六ヶ所村に保管されている高濃
鉄、金などの地下資源を確保する植民地獲得戦争に
度の放射性廃棄物が、霞ヶ関に大量に放置されたら、
なった。原住民が知らぬうちに勝手に法律が作られ、
爆風も熱線もなく建物の破壊もないが、官庁街は人
資源のある土地から原住民は追い払われた。アメリ
が居られない死の街となる。高濃度放射性物質を陶
カでも1838年に土地取上げに抵抗したチェロキー
器製の爆弾に入れ、使用するまでの放射線対策に鉛
族は、軍隊に囲まれ遠くはなれたオクラホマに強制
板の小片を表面に隙間なく貼り付ける。投下して逃
移 住 さ せ ら れ、冬 に12,
000人 が 女 子 供 も 徒 歩 で
げる時間稼ぎに小さなパラシュートをつけて落とせ
15,
000キロ以上の過酷な移住を強いられ、途中の死
ばよい。零戦も500キロ爆弾を積み特攻した、9.
者は4,
000とも8,
000人ともいわれる。
11模倣の軽トラ自爆テロもあるかも知れない。核は
陸地では国境に鉄条網など張るが、海では領海の
高度な核融合技術無しでも強力な兵器になる。
概念があっても線があるわけではなく、数と国の力