10 山形県医師会会報 平成27年11月 第771号 高齢化社会における天童の取り組み ~天童方式の地域包括ケアシステムの構築~ 一般社団法人天童市東村山郡医師会 会 長 神 村 匡 91歳になる前橋の実家に住む母親が、毎年2~ 介護予防と認知症予防 3回、1人で新幹線に乗って天童まで来ます。い 介護保険制度が始まって早いもので15年が経ち つも大量のお土産を、かわいい?息子のために持 ます。この制度以前は在宅での老々介護など大き 参し、1ヶ月ほど滞在します。今回も誘ったとこ な負担を家族に強いる形でありました。介護保険 ろ、いつものグランドゴルフ仲間に挨拶してから 制度以来、この負担は軽減されましたが介護保険 来るとのこと。いつまでも達者でありがたいです。 に関わる費用が毎年上昇しています。更に、それ 2025年問題、少子高齢化、社会保障費の上昇、 まで自分や家族の努力で対応していた介護のあり 今までに類を見ない超高齢化社会が待ち受けてお かたが、公的補助を利用することによりわずかな ります。 我々の医師会としては地域住民の健康 料金で専門職にお願いできる形態に変わってきま 寿命延伸、介護予防、認知症予防を重点項目とし したが、ややもすれば依存心が膨らんできている ております。 ようにも思われます。ここで今一度原点に戻り、自 主的に介護予防を努力するとか、いずれ介護を受 健康寿命延伸 ける立場になることを考慮して、現役引退後はボ 「寿」には、老いるまで生命がつらなるという意 ランティア的に介護に参加する取り組みも必要と 味があります。そのためには、医師による日々の 考えます。最近の共助公助主体の在り方から自助 診療行為が大切であるのは言うまでもありません。 互助へ考え方を戻すべき時代ではないでしょうか。 昔は病気の治療が主体。その後は病気の早期発見。 今では更に病気の予防と医療レベルが向上してき NPO法人『ふれあい天童』 ました。一方健康寿命延伸に欠かせないのが健康 地域包括ケアシステムの構築推進のために我々 診断です。特にがん検診においては、その受診率 の医師会は天童市より委託を受けています。地域 の低さが目立ち、これを改善することにより健康 での施設や人材を生かした取り組みが望まれるわ 寿命の延伸に大きく寄与できるものと思われます。 けです。しかしながら介護保険を利用した範囲内 今年、天童市民病院の木村院長を中心に、天童地 では要支援の方や介護予防目的の方々はこの恩恵 区でピンクリボンのプレフェスタが開催されまし を受けることが難しくなっています。デイサービ た。乳がん検診受診率低下の原因として、認識不 ス利用もせいぜい週に1~2回程度です。高齢者 足、多忙、検査の痛み、男性技師などが挙げられ 世帯、高齢独居世帯が増加している時代、認知症 ます。これに対し啓蒙活動、夕方や週末の検査対 予防には日々大勢の中での社会的交流が必要です。 応、女性スタッフによる対応、検査の無料化など、 天童にはNPO法人『ふれあい天童』があり活動を ただちに出来る対策もあります。しかしながら先 続けています。行政の補助を受けずに、 「のんびり 進諸国90%以上の受診率に対し、35%程度の受診 茶の間」と言う形で、時間に縛られず自由に集ま 率に対する顕著な改善効果は期待できません。 り、いろいろな趣味を企画し実践しています。昼 食を摂りながらの歓談、昼寝もできるのんびりと した時間、帰宅するまでの我が家的居場所です。 山形県医師会会報 平成27年11月 第771号 11 送迎はまだまだ元気な退職者の方々(将来の介護 キな景品を準備しています。今後は、検診受診者 予備群)が担当しています。まさに自助互助の世 に対するポイントや積極的に努力を継続している 界です。直接的な医師会活動との結びつきはあり 方へのポイントなども構築し、検診受診率の飛躍 ませんが、地域包括ケアシステムの構築を推進す 的な向上を目指していきたい。健康寿命の延伸を る医師会としては大いに応援したいところです。 実現することや、 『ふれあい天童』のサテライト構 築のサポートなど、実効ある介護予防計画を医師 天童市との懇談会 会と行政とで天童方式として形作る提案をさせて 先日、医師会と天童市との懇談会が開催され、 もらいました。 たくさんの話し合いがなされました。天童市では さてさてどのような結果になるものやら。ふる 健康マイレージ事業のポイント制度を構築し、介 さと納税日本一の企画力ある天童市のお手並み拝 護予防、認知症予防の運動を中心とした健康づく 見、楽しみです。 りの取り組みをポイント化し、達成した方へステ
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