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日本クレーン協会規格
JCAS XXXX-2016
平成 28 年 3 月制定
積載形トラッククレーン過負荷制限装置の基準(案)
Criteria for overload limiting device of Loading type truck cranes
1. 序文
この規格は、移動式クレーン構造規格第 27 条で示される過負荷防止装置以外の過負荷を防止するた
めの装置にあって、つり上げ荷重が 3 トン未満の積載形トラッククレーンにおいて具備すべき装置に
ついての要求事項をまとめたものである。
2. 適用範囲
この規格は、JIS B 0146-1:2000「クレーン用語第 1 部」に定義された積載形トラッククレーンで
あって、つり上げ荷重 0.5 トン以上 3 トン未満のものに使用する「過負荷制限装置」について規定す
る。
ただし、荷台に貨物を積載することができる形式のトラッククレーンで、多関節のジブを有す
る屈曲ジブ式積載形トラッククレーンは適用除外とする。
3. 引用規格
JIS B 0146-1:2000 「クレーン用語第 1 部」
ISO 15442:2012「クレーン―ローダクレーンの安全要求事項」
4. 用語及び定義
4.1 積載形トラッククレーン
移動式クレーンのうち、荷台に貨物を積載することができる形式のトラッククレーン。
(JIS B
0146-1:2000「クレーン用語第 1 部」に定義された移動式クレーン)
4.2 つり上げ荷重
移動式クレーンの構造及び材料に応じて負荷させることができる最大の荷重をいう。
「負荷させるこ
とができる」とは、許容応力、安定度等構造規格に定める諸条件の範囲内において負荷させることが
できることをいう。
(「労働安全衛生法施行令」第 10 条第1号)
4.3 定格荷重
移動式クレーンの構造および材料ならびにジブ若しくはブームの傾斜角、長さに応じて負荷させる
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ことができる最大の荷重(定格総荷重)から、フック、グラブバケット等のつり具の重量に相当する
荷重を控除した荷重をいう。(
「クレーン等安全規則」第 1 条第 6 号)
4.4 強度定格荷重
積載形トラッククレーンの構造部分(つり上げ装置)の強度によって規定される定格荷重をいう。
4.5 空車時安定度定格荷重
荷台の積載がない状態で安定最弱方向における安定度および前方安定度によって規定される定格荷
重をいう。
4.6 空車時定格荷重
強度定格荷重および空車時安定度定格荷重のうち、低い方の荷重によって規定される定格荷重をい
う。
4.7 安定度定格荷重
前方安定度とクレーン等安全規則第 55 条(製造検査)の安定度試験に相当する荷重の 1/1.27 に
よって規定される定格荷重をいう。安定度定格荷重は荷台の積載量、アウトリガーの張出し幅・接地
状態、ジブ若しくはブームの旋回方向など状態により変化する。
4.8 過負荷制限装置
過負荷制限装置は、つり上げる荷の荷重がジブ若しくはブームの長さ、作業半径、旋回領域に応じ
た定格荷重を超えた場合に作動を自動的に停止させる機能を有し、つり上げる荷の荷重が定格荷重を
超えるおそれがある場合に当該荷の荷重が定格荷重を超える前に警音を発する機能を有する。
過負荷制限装置は、転倒防止装置を含めるものとする。
上記定格荷重は、転倒防止装置を備える過負荷制限装置においては強度定格荷重および安定度定格
荷重とし、転倒防止装置を備えない過負荷制限装置においては空車時定格荷重とする。
4.9 転倒防止装置
アウトリガー反力などを検出し、つり上げる荷の荷重が安定度定格荷重を超える前に移動式クレー
ンの作動を自動的に停止させる機能を有し、つり上げる荷の荷重が安定度定格荷重を超えるおそれが
ある場合に警告を発する機能を有する。
4.10 安定最弱方向
積載形トラッククレーンの側方安定度がアウトリガーの張出し幅に応じて最も低くなる方向。
5. 要求事項
5.1 機能
5.1.1 定格荷重の表示
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(1) 転倒防止装置を備える過負荷制限装置においては強度定格荷重および空車時定格荷重を表示す
ること。
(2) 転倒防止装置を備えない過負荷制限装置においては空車時定格荷重として表示すること。
いずれにおいても、定格荷重に替えて定格総荷重でもよいものとする。
5.1.2 過負荷の制限
積載形トラッククレーンを使用中に、以下の定格荷重を超える操作を行った場合には自動的に作動
を停止する機能を有すること。
(1) つり荷の質量が定格荷重を超える領域にジブ若しくはブームを旋回させようとする操作
(2) つり荷の質量が定格荷重を超える作業半径にジブ若しくはブームを降下させ、又はジブ若しく
はブームを伸張させようとする操作
(3) 定格荷重を超える質量の荷をつり上げようとする操作
5.1.3 過負荷の警告
積載形トラッククレーンを使用中に、以下の状態になった場合には音あるいは光により警告を発す
る機能を有すること。
(1) 積載形トラッククレーンを使用中に、空車時定格荷重を超えるおそれがある場合に警告を発す
る機能を有すること。
(2) 転倒防止装置を備えるものにあっては、転倒防止装置により、つり荷の荷重が積載時の安定度
定格荷重を超える前に警告を発する機能を有すること。
5.2 性能
本規格による積載形トラッククレーンの過負荷制限装置の作動精度は、過負荷制限装置および転倒
防止装置が実際に作動したときの荷重と当該装置が作動しなければならないときの定格荷重との差の
範囲(許容誤差)を百分率で表したものをいう。
5.2.1 停止の精度
(1) 過負荷制限装置によって停止する作動精度は、定格荷重のプラス 10 パーセント以内でなければ
ならない。
(2) 転倒防止装置によって停止する荷重のばらつきは、安定度定格荷重以内でなければならない。
5.2.2 警告の精度及び大きさ
(1) 過負荷制限装置によって警告する作動精度は、定格荷重 85%~100%とする。ただし、定格荷
重が 500kg 未満の範囲では、最大誤差をマイナス 75kg とする。
(2) 転倒防止装置によって警告する作動精度は、停止する荷重以内とする。
(3) 警告を警音とする場合、音の大きさは、積載形トラッククレーン本体に備えた操作レバーの位
置で 80dB 以上であること。
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5.3 構造
5.3.1 アウトリガーの張出し幅
(1) アウトリガーの張出し幅に応じて異なる定格荷重を設けている場合は、アウトリガーの張出し
幅を手動又は自動的に入力できる構造であること。
(2) アウトリガーの張出し幅を手動で入力する方式の場合
①
最大張出し、最小張出し以外の中間張出し状態の定格荷重を設けている場合は、それぞれ全
ての場合の入力を可能とする方式であること。ただし、アウトリガーの張出し幅が左右とも最大
張出し状態以外の場合は最小張出し状態の定格荷重とすること。
②
定格荷重は、本装置の電源を ON にした場合、必ず最小張出し状態のものとなる構造とする
こと。
5.3.2 過負荷の制限の解除
過負荷制限装置は解除できない構造、回路とすること。
ただし、検査、故障などの場合に用いる非常操作用の解除スイッチはこの限りではない。備える
場合は、容易に解除できない機能を有することとする。
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