① ~決定の三つのタイプと多数決の矛盾~(中学公民)

Vol.48
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学びに〝プラス 1 〟「物事の決定の仕方」①
~決定の三つのタイプと多数決の矛盾~
《中学公民「わたしたちと現代社会」》
社会は、様々な「決定」によって成り立っています。
『中学校学習指導要領解説
社会編』
では、内容(1)イ「現代社会をとらえる見方や考え方」の中で、社会生活における物事の決
定の仕方について、次のように解説しています。
ここでは「物事の決定の仕方」や「きまり」などの社会生活に見られる事例を示し,
その意義などを考えさせることを通して見方や考え方の基礎を身に付けさせることを
求めているのである。その意味では,
「よりよい決定の仕方とはどのようなものなのか」
「なぜきまりが作られるのか」「私たちにとってきまりとは何だろうか」などといった
問いを追究し考察して見方や考え方の基礎を身に付ける中項目であるといえる。
ここで述べている「見方や考え方の基礎」を身に付けさせることは、生徒が将来、社会
の形成者として、
「よき決定者」になることにつながります。したがって、社会科の授業に
おいて、社会における様々な決定が、どのような方法や理論に基づき行われているかにつ
いて指導することは、大切であると考えます。
そこで、授業グレードアップでは、決定の仕方の違いや矛盾等について、今回を含め、
2回にわたり紹介していきたいと思います。
今回は、「決定のタイプ」及び「多数決の矛盾」について紹介します。
決定の三つのタイプ
一つ目のタイプは、運や偶然性に委ね、その決定に従うタイプです。
「ジャンケン」や「くじ」などによる決定がこれに当たります。
生徒も席替えや係決め等の際によく行っていると思います。
二つ目のタイプは、入試やオークションなどの一次元的な尺度に基づいて参加者の
競争による決定です。これは需要と供給に基づく市場決定ともいえます。
三つ目のタイプは、一人一人に多様な選好や利害があることを前提とし、その情報
を集約し、社会的合意を得るタイプの決定です。このタイプは、集団内における
多数の意思を全体の意思として適用するものです。選挙などの投票による決定も
これに当たります。
多数決における一つの矛盾
〈例〉福島県のどの地方に旅行に行きたいか?
A君
会津>中通り>浜通り
B君
中通り>浜通り>会津
C君
浜通り>会津>中通り
(注)中通り地方よりも会津地方がいいと考えることを記号で「会津>中通り」と表記
上の選好順序を見ると、A君、B君、C君それぞれの最も行きたい旅行先が異なる
ため、「会津か中通り」、「中通りか浜通り」、「浜通りか会津」でそれぞれ多数決を行
うことにします。
すると、次の結果となります。
○「会津か中通り」で多数決を行うと・・・・2対1で「会津が望ましい」
○「中通りか浜通り」で多数決を行うと・・・2対1で「中通りが望ましい」
○「会津か浜通り」で多数決を行うと・・・・2対1で「浜通りが望ましい」
このように、循環が生じ、行き先が決まらなくなってしまいます。
多数決で生じるこのような矛盾は、18世紀の社会学者コンドルセが発見した
「コンドルセのパラドックス」といわれています。
決定の仕方の違いや矛盾等について知ることは、生徒が、
「よりよい決定の仕方とはどのようなものなのか」といった
問いを追究し、考察する上で大切であると考えます。
次回は、「単記投票」の矛盾等について紹介します。