ナイジェリア:原油価格の下落下における石油・天然ガス開発事情

作成日: 2016/2/18
調査部: 伊原 賢
公開可
ナイジェリア:原油価格の下落下における石油・天然ガス開発事情
(JOGMEC 調査部、国際エネルギー機関IEA、米国エネルギー情報局EIA、ナイジェリア国営石油公社NNPC ほか)
サマリー
① 特記事項
・ ナイジェリア政府の基本方針は、増産、石油製品・天然ガスの国内供給強化、石油収入増加。
・ 課題は、オイル・メジャーによる資産売却、石油産業法(Petroleum Industry Bill:PIB)の改正遅
延、天然ガス開発・供給の多様化、2014 年半ばからの原油価格低迷。
・ ナイジェリアはアフリカで最大の石油生産国であり、液化天然ガス(LNG)では世界のトップ 5 に
入る輸出国。
・ 1958 年に石油の埋蔵が豊富な Bayelsa 州で石油生産は始まる。その 13 年後の 1971 年に石油
輸出国機構(OPEC)に加盟。地上の不安定性と供給の混乱によって、しばしば石油生産は妨げ
られてきた。最大で 1 日当たり 40 万バレル程度の無計画停止に至ることもあった。
・ 2015 年 3 月末の大統領選挙で、元最高軍事評議会議長のブハリ氏が当選。同年 5 月に大統領
に就任。石油市場への影響は限定的であり、ブハリ大統領の勝利は、ブハリ氏への圧倒的な支
持というよりは、前ジョナサン政権のイスラム過激派ボコ・ハラム対策への不能や汚職・非効率性
の認知に対する国民の評決であるようだ。同国北部はボコ・ハラムにより不安定化している。ブハ
リ大統領は、ボコ・ハラム打倒、産油地帯の治安維持、電力確保、失業対策を重要な政策課題と
した。
・ 2014 年半ばからの原油価格下落により、ナイジェリアは自国通貨を 10%近く切り下げ、金利を記
録的な水準に引き上げた。政府は 2016 年の予算基準油価を 38 ドル/バレルに引き下げ、ガソリ
ン補助金の 50%カットを発表。財政赤字対策として、国債発行を検討。
・ 天然ガスの商業化は処理輸送インフラの不足により、15%程度が燃焼(フレア)ないし大気放散
されている。
・ 2016 年 1 月、ナイジェリアは原油安で財政赤字が膨らんだため、世界銀行とアフリカ開発銀行に
対し、35 億ドルの緊急融資を要請した。ナイジェリアの歳入は原油収入が約 7 割(輸出収入では
95%)を占めていたが、2016 年は 20%台に落ち込む見込み。年明け以降の原油価格の一段安
に伴い、2016 年の財政赤字は国内総生産(GDP)の 3%に当たる 150 億ドルに達する見通しで
ある。
② 生産量
・ コンデンセートを含む原油の確認可採埋蔵量は 371 億バレル(2014 年末 BP 統計)、2015 年平
均の原油生産量は 215 万バレル/日。2015 年 8 月の原油生産量は 213 万バレル/日、原油輸出
量は 183 万バレル/日。2010 年以降、米国のシェールオイル増産に伴いナイジェリアの米国向
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれ
るデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資
等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
け輸出は減少、新たな市場創出に取り組む。
・ ナイジェリアの経済は原油収入に依存するため、原油価格の下落に弱い。原油収益が国家予算
で想定された収益を超えた分が、ナイジェリアの財政バッファとなる。しかし、それは 2012 末の
110 億ドルから 2013 年末には 30 億ドルまで目減りした。
・ 天然ガスの確認可採埋蔵量は 180 兆立方フィート(2014 年末 BP 統計)、2015 年平均の天然ガ
ス生産量は日量 80 億立方フィート。2014 年に LNG1,875 万トンを輸出(2014 年末 BP 統計)。
・ 主な石油・天然ガスの生産地域は、南東部陸上~浅海ニジェールデルタ。深海油田は生産能力
の約 3 割。
・ 主要事業者は Shell, ExxonMobil, Total, Eni などと国営石油会社 NNPC(Nigerian National
Petroleum Corporation)。
・ 契約形態は利権契約と PS 契約(生産物分与契約、主に深海)。
③ 企業の進出状況
・ 現在日本企業の進出はなし。新規 LNG 液化事業の Brass LNG に複数社が出資を検討してい
たが進展なし。
・ 新規 LNG 液化の事業計画は PIB 改正の遅延などにより進みが遅く、国際石油会社(IOC)の撤
退が相次ぐ。
1. 概況
1.1 生産推移、情勢
【原油】
 コンデンセートを含む原油の確認可採埋蔵量は 371 億バレル(2014 年末 BP 統計)、2015 年平均の
原油生産量は 215 万バレル/日。2015 年 8 月の原油生産量は 213 万バレル/日、原油輸出量は 183
万バレル/日(図 1、表 1)。2015 年は 4 割を欧州、2 割をアジア・極東に輸出。主な輸出相手国はイン
ド、オランダ、米国、ブラジル、イタリア、スペイン、フランス、英国。日本は 2014 年に原油 4,000 バレ
ル/日を輸入。
出所: EIA 2015 年 2 月
図 1 ナイジェリアの石油生産、消費推移
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等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
表 1 ナイジェリアの石油(原油+コンデンセート)生産推移
出所: 各種資料
年月
2011 年
2012 年
2013 年
2014 年
2015 年
同年 1 月
同年 2 月
同年 3 月
同年 4 月
同年 5 月
同年 6 月
同年 7 月
同年 8 月
同年 9 月
同年 10 月
同年 11 月
同年 12 月
原油
万バレル/日
210.9
205.8
192.0
190.9
186.2
195.6
189.0
183.7
184.8
181.6
183.6
179.7
185.9
192.3
192.8
186.6
178.9
原油+コンデンセート
万バレル/日
238.2
235.2
222.5
220.8
214.6
224.5
226.1
221.6
202.5
209.2
200.2
219.8
212.8
n.a
n.a
n.a
n.a
n.a = not available
生産能力 280 万バレル/日を下回る生産推移
 石油と天然ガスはナイジェリアの政府収入の 75%、輸出収入の 95%を占める。
 主に南部のニジェールデルタ域から産出。そこでは、地元グループが石油のもたらす富の分配を求
めて、しばしば Trans Niger パイプライン、Nembe Creek トランクラインなどのインフラ攻撃があり、石油
会社は、石油供給について不可抗力条項を発動する。油窃盗はしばしばパイプラインの破損につな
がり、生産減や油汚染となり、最悪のケースでは、油田のシャットダウンにつながる。米国エネルギー
情報局(EIA)によれば、その量は 40 万バレル/日に達することもあるという。
 老朽化したインフラと不十分なメンテナンスは、油流出にもつながる。天然ガスのフレア(随伴ガスの
燃焼)は、環境汚染につながる。油流出がもたらす環境破壊やフレアされる天然ガスに対する地元グ
ループからの抗議は、地元コミュニティと IOC の間で緊張感を悪化させる。大気、土と水を汚染し、そ
れが耕地面積と漁獲量の減少につながったとして、石油産業は非難されている。
 ナイジェリア政府は 2012 年に、石油の埋蔵量を 2020 年までに 400 億バレルとし、生産量を 400 万バ
レル/日とする目標を設定した。2010 年に同様の目標を設定したが未達であった。深海油田の開発
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による目標達成を目指すが、同国の深海開発は、PIB 改正の遅延や米シェールオイル増産による米
国への輸出量減少というリスクを抱える。
 石油消費量(2015 年 EIA 推計)は 30.5 万バレル/日。国内には国営 4 製油所として、Warri(12.5 万
バレル/日)、Kaduna(16.5 万バレル/日)、Port HarcourtⅠ、Ⅱ(Ⅰ・Ⅱ計 15.5 万バレル/日)がある。
処理能力 44.5 万バレル/日の国営製油所は老朽化により稼働率が 2 割程度と低く、周辺国への精製
委託や原油の売却により、ガソリン・軽油を輸入している(国内需要の 7 割)。ナイジェリアの有力企業
家 Aliko Dangote(Dangote グループ)に 50 万バレル/日規模の製油所建設構想がある。
 主要産油地帯のニジェールデルタでは、石油盗掘や石油窃盗団の Bonny 油パイプラインや
Forcados 油パイプラインほかの破壊に起因する出荷障害が起きている。2010 年以降、Shell、Total、
Eni 等のメジャーはニジェールデルタ(陸域、浅海)における生産資産の売却を相次いで行った。ナ
イジェリア企業や中小独立系がこれらの資産を購入した。中期的にはナイジェリア石油・天然ガス生
産の 4 分の 1 程度を、ナイジェリア企業や中小独立系が担う予定である。
 2008 年から審議中の PIB が成立せず、IOC は財務条件が確定しないため新規投資を延期しており、
2008 年以降入札も行われていない。石油産業の停滞は 2015 年 3 月の大統領選挙後も継続した。
 原油価格の低迷に際し、石油資源省の Emmanuel Kachikwu 大臣は、減産協議のための OPEC 臨時
会合を提案するも実現せず。財政赤字対策として、再び国債発行を検討している。
 原油価格の下落により政府は 2015 年の予算基準油価を 65 ドル/バレルに引き下げ、ガソリンの補助
金 50%カットを発表した。2016 年の予算基準油価は 38 ドル/バレルに更に引き下げた。予算基準油
価の参考となるナイジェリアのボニーライト(Bonny Light)原油価格は、2013 年平均 110.97 ドル/バレ
ル、2014 年平均 100.35 ドル/バレルであり、2014 年は第 1 四半期の 109.95 ドル/バレルから第 4 四
半期には 75.73 ドル/バレルと下げに転じた。
【天然ガス】
 天然ガスの確認可採埋蔵量は 180 兆立方フィート(2014 年末 BP 統計)、2015 年平均の天然ガス生
産量は日量 80 億立方フィート(表 2)。2014 年に LNG1,875 万トンを輸出(2014 年末 BP 統計)。米国
エネルギー情報局 EIA によると国内消費は日量 49 億立方フィートで主に発電向け。現在稼働中の
液化プラントは Nigeria LNG(NLNG)で 6 トレイン計 2,200 万トン/年の液化能力を持つ。生産した天
然ガスの輸送インフラの不足により、約 15%は生産現場でフレア(燃焼)されている。
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表 2 ナイジェリアの天然ガス生産推移
出所: 各種資料
年月
2011 年
2012 年
2013 年
2014 年
2015 年
同年 1 月
同年 2 月
同年 3 月
同年 4 月
同年 5 月
同年 6 月
同年 7 月
同年 8 月
億立方フィート/日
79.9
79.4
76.5
80.5
80.4
84.1
80.8
76.1
79.8
80.7
79.2
83.7
79.0
 日本は 2014 年にナイジェリアから LNG480 万トン(輸入量 8,920 万トンの 5.4%)を輸入。2011 年 3.11
の震災後、輸出余力や使いやすさにより原発の代替需要として同国からの輸入が増加。ナイジェリア
LNG の発熱量は 43.41MJ/m3 で首都圏の都市ガスの標準発熱量である 45MJ/m3(10,750kcal/m3)に
近い。マレーシアなど主に輸入している LNG の発熱量にも近い。
 NLNG 拡張や Brass、Olokola(OK)などの新規 LNG 液化事業計画は PIB 改正の遅延などにより進ん
でおらず、IOC の撤退が相次いだ。2015 年 8 月に Shell は NLNG へのガス供給を再開。NLNG の稼
働率は 90%である。
 Chevron が進める Escravos GTL プラント(能力 33,000 バレル/日、3 億 2,500 万立方フィート/日の
天然ガスを用い軽油、ナフサ、LPG を製造)は 2010 年稼働予定であったが、2014 年 8 月に試運転
を開始した。事業費は当初想定の 5 倍の 100 億ドルに達した模様。
1.2 主管省庁
 石油産業は石油資源省が所管。2010 年 4 月、ジョナサン前内閣の下、石油資源省大臣に前鉱物鉄
鋼開発大臣の Deziani Allison-Madueke(アリソンマジュエケ)氏が就任。2015 年 1 月にブハリ大統領
は石油資源省大臣を兼務。2015 年 11 月に NNPC の Emmanuel Ibe Kachikwu 総裁が石油資源省大
臣を兼務。
 石油資源局 DPR:石油資源省内の一部署である Department of Petroleum Resources (DPR)は、国営
石油会社NNPCおよびその操業子会社を含む国内石油・ガス産業を監督。事業者に産業関連法規、
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ライセンス・許認可等の申請手続遵守とともに、環境規制関連法規の制定が主業務。
 1971 年、国営石油会社 NNOC が設立。1977 年に NNPC に名称変更。2014 年 8 月、NNPC 総裁
(Group Managing Director)に Emmanuel Ibe Kachikwu 氏が就任。
 2015 年 4 月、監査法人 PricewaterhouseCoopers は NNPC の改革が必要と発言。同年 6 月にブハリ
大統領は NNPC の役員会を解散。解散の理由は NNPC の 2012 年から 2015 年 5 月までの政府に
納められるはずの 410 億ドルの内、220 億ドルしか政府に歳入されなかったことによるもの。2015 年
8 月、ブハリ大統領は NNPC の役員を新たに任命し、全ての PS 契約や JV 協定を見直す方針。しか
し、石油企業は契約条件の変更に懸念を示す。
1.3 法制度
 石油関連法
・ Petroleum Profits Tax Act (PPTA)2004
・ The 1969 Petroleum Act
・ Petroleum (Drilling and Production) Regulations 1969 (1973 年修正)
・ The Oil Pipelines Act 1965 (1985 年修正)
・ The Associated Gas Re-injection Act 1979
・ The Deep Offshore and Inland Basin Production Sharing Contracts Decree 1999
・ The 2010 Nigerian Oil & Gas Industry Content Development Act
・ 契約方式:利権契約+PS 契約(主に深海)
 石油産業法案(Petroleum Industry Bill:PIB)は審議中。
・ PIB の審議事項:税・ロイヤリティの変更、インセンティブの軽減、コミュニティ開発賦課金の増加。
・ 提案中の法案は売り上げに占める政府取り分を 61%から 73%に引き上げるもの。これが実現すると
2022 年までの深海開発投資は棚上げとなり同国の生産が低下するリスクがあると業界幹部は指摘。
・ NNPC の Emmanuel Ibe Kachikwu 総裁は、2015 年 10 月上院にて PIB の分割(税・ロイヤリティの変
更を除く)審議を提案。同年 11 月 Kachikwu 総裁は、修正 PIB は 2016 年第 1 四半期に上院へ提
出と発言。
・ 2008 年から審議が行われているが成立せず、IOC は財務条件が確定しないため LNG 拡張・新規
を含む年 150 億ドル程度の新規投資を延期。石油産業は低迷し、2008 年以降入札も行われず。石
油産業、上下院、ナイジェリア政府間での PIB の合意が得られていないことの現れ。
・ PIB が議会で可決されないことが、ナイジェリア石油産業の不透明感につながっている。
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2. 日本企業の進出状況
現在日本企業の進出はなし。新規 LNG 液化事業 Brass LNG に、複数社が戦略投資家として出資を検
討していたが進展はない。
3. 外国企業の進出状況
3.1 石油
ナイジェリアの主な生産地域は、南東部陸上~浅海ニジェールデルタである(図 2)。
出所: 各種資料
図 2 ナイジェリアにおける主な石油・天然ガス田と出荷ターミナル
NNPC が Shell、ExxonMobil、Chevron、Eni、Total 等のスーパーメジャーと共同事業協定(ジョイント・ベ
ンチャー:JV)にもとづき、1950 年代から生産を行なう。同国における生産の 5 割がこのスーパーメジャー
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と NNPC の JV によるもの。ほか PS 契約(主に深海)によるものが 4 割、独立系が 1 割である。
ニジェールデルタの成熟化、武装勢力や盗掘団による油ガス田施設破壊を含む治安や操業環境の悪
化、油田の流出・汚染を巡る訴訟による環境問題、現地化政策など複数の要因を受け、スーパーメジャー
の投資は、ニジェールデルタから深海に移っている。一方、南東部陸上~浅海ニジェールデルタの開発
は、ナイジェリア企業や中小独立系が担っている(表 3、表 4)。
表 3 2014 年生産開始プロジェクト
出所: 各種資料
プロジェクト(鉱区)
Uquo (OML 13)
オペレーター
Frontier Oil
Bonga North West
(OML 118)
Shell
Tuomo
タイプ
陸上ガス
(Niger Delta 南
東)
深海油
ENI
日産レート
40,000 バレル
6,000 万立方フィート
3,500 万立方フィート
生産開始
備考
2014 年 1 月 Akwa Ibom 及び
Calabar 火力発電所
向け
2014 年 7 月 海底仕上げ井、Bonga
FPSO 設備に繋ぎこ
み
2014 年 9 月 Bonny NLNG トレイン
6 向け
表 4 2014 年からのハイライトプロジェクト
出所: 各種資料
プロジェクト(鉱区)
Bonga Main フェーズ 3
オペレーター
Shell
タイプ
深海油
日産レート
50,000 バレル
(Bonga Main 全体
200,000 バレル)
Agbami フェーズ 2
(OML 127/128)
Egina (OML 130)
Chevron
深海油
Total
深海油
200,000 バレル
Ofon フェーズ 2
(OML 102)
Total
深海油
Erha North フェーズ 2
(OML 133)
Usan (OML 138)
Abo フェーズ 3
(OML 125)
Oyo (OML 120)
ExxonMobil
深海油
(累計生産量 2.57
億バレル、2015
年 8 月)
65,000 バレル、
2015 年 9 月
ExxonMobil
ENI
深海油
深海油
Erin Energy
深海油
14,000 バレル
年月
ハイライト事項
2015 年 10 月 2014 年 10 月 Final
Investment Decision (FID)
取得
2010 年開始~2 開発井 10 坑掘削(生産
015 年上半期 量維持)
2014 年 12 月~ 掘削キャンペーン(生産
2017 年 井 21 坑、水圧入井 23
坑)
2017 年出油予定
2014 年 12 月 随伴ガスのフレアを中止
し、ガスは NLNG へ移送
2014 年 12 月~
2016 年
2014 年
~2014 年 11 月
開発井 7 坑の掘削開始、
埋蔵量 1.7 億バレル
開発井 5 坑の掘削
生産量維持
2015 年 7 月~
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Aje フェーズ 1
(OML 113)
Yinka Folawiy
o Petroleum
Okwori (OML 126)
Ofrima, Udele (OML 12
6)
Adanga North (OML 12
3)
Ebok フェーズ 3 (OML
67)
Okwok
Ogini (OML 26)
Addax
浅海
Oriental Ener
gy
浅海
First
Hydrocarbon
Nigeria
Shell
陸上
35,000 バレル
陸上
8 億立方フィート
Umusadege
Mart
Resources
陸上
Otakikpo Marginal
(OML 11)
Ogbainbiri (OML 63)
Seplat’s Oben (OML 4)
Ovhor (OML 38)
Okporhuru (OML 38)
Sapele (OML 41)
Lekoil
陸上
ENI
陸上
Gbaran-Ubie (OML 28)
浅海
11,000 バレル
(水深 (フェーズ 2 目標:
300m)
19,000 バレル)
2014 年~ 2014 年 3 月に
Department of Petroleum
Resources (DPR)が開発
計画を承認。2014 年 10
月 FID
2.2 億ドル投資、2016 年 1
月出油
2014 年上半期 掘削キャンペーン
2014 年下半期 開発井の掘削
2014 年 3 月 開発許可
6,000 バレル
2014 年 6 月 開発許可
2016 年 出油予定
2014 年 開発井の掘削
中央処理施設の建設
フェーズ 2 でガスは
NLNG と Gbaran 火力発
電所へ移送
2014 年 開発井の掘削
2014 年 12 月~ 24 枚の砂岩層からの油
は Umugini パイプライン
と TransForcados パイプ
ラインにて Forcados 油輸
出ターミナルへ
2015 年 9 月 出油開始
2014 年 開発井の掘削
Seplat
2005 年に Shell が同国初の深海油田 Bonga 油田の生産を開始した。この他 Abo(Eni 操業)、Erha
(ExxonMobil 操業)、Agbami(Chevron 操業)、Akpo(Total 操業)、Oyo(Eni 操業)油田が生産中。
2010 年以降 Shell 等のスーパーメジャーはニジェールデルタにおける生産中資産の売却を相次いで
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等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
行なった。2014 年 7 月には ConocoPhillips が同国の 16.5 億ドル相当の上流資産を売却し、ナイジェリア
Oando Energy Resources(OER)が取得。2015 年 6 月に Chevron は沖合の浅海 2 鉱区を売却。2015 年 8
月に ExxonMobil は Erha North 油田のフェーズ 2 の生産を開始し日量 9 万バレルになった。2015 年 10
月、Shell は Bonga 油田のフェーズ 3 の生産を開始した。同月ロシアのルクオイルは Chevron から
OML128 鉱区の権益45%にファームインした。2015 年11 月、Statoil は Agbami 油田(OML127 と OML128
鉱区)の権益を 20.21%から 15.04%に減じた。2015 年 12 月ルクオイルは Afren 社より OPL310 鉱区の権
益 22.86%を 1300 万ドルで買収した。
2010 年以降米国のシェールオイル生産が伸び、ナイジェリアの米国向け輸出は減少したがリビアの減
産により欧州製油所向けに振り向けた。ナイジェリア政府は、リビアの生産回復や中長期的な欧州での精
製需要減退を踏まえ、国内ならびにインドなど新たな市場創出に取り組んでいる。
ナイジェリアには複数の計画中のプロジェクトがあるが、現在審議中の PIB は深海油田開発の収入に
おける政府取り分を 61%から 73%に引き上げる方向で審議されており、事業者は PIB が確定するまで深海
油田開発の投資決定を見合わせている(表 5)。即ち、ナイジェリアにおける深海開発は、PIB 改正やコス
トオーバーランなどの課題に直面している。
表 5 2014 年から遅延する深海油プロジェクト
出所: 各種資料より作成
プロジェクト(鉱区)
Bonga South West/Aparo
(BSWA)
(OML 118, 132, 140)
オペレーター
Shell
Zabazaba/Etan (OML 245)
ENI
Bosi
Nsiko
ExxonMobil
Chevron
開発方式
FPSO に
海底仕上
げ井の繋
ぎこみ
年月
理由
2014 年 PIB の不透明性と油価低迷
による FID 遅延
(2016 年までの FID に期待)
2014 年開発評価 PIB の不透明性と油価低迷
(埋蔵量 5 億バレル) (2018 年までの出油に期待)
PIB の不透明性と油価低迷
PIB の不透明性と油価低迷
3.2 天然ガス
ナイジェリアはアフリカ最大の LNG 輸出国である。2015 年に日量 80.4 億立方フィートを生産し、内
LNG は年 1,875 万トンを輸出した(2014 年末 BP 統計)。同国で現在稼働中の液化プラントは Nigeria LNG
(NLNG)で 6 トレイン 2,200 万トン/年が稼働中(図 3)。2000 年代には NLNG の拡張計画や Brass LNG、
Olokola (OK) LNG をはじめ複数の LNG 事業計画があった。しかし新規 LNG はコスト上昇、治安、PIB 改
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれ
るデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資
等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
正の遅延、国内企業優先政策などを受け停滞しており、IOC の撤退が相次ぐ。
①
稼働中のプロジェクト:NLNG
NLNG の液化プラントはナイジェリアのリバーズ州ボニー島に位置(敷地面積は約 2.27km2)。出資
企業はナイジェリア国営石油会社 NNPC(49%)の他、グローバルに LNG 事業を展開する Shell
(25.6%)、Total(15%)、Eni(10.4%)などのオイル・メジャー。彼らは 1989 年に Nigeria LNG Ltd.を設立。
1995 年11 月にトレイン 1・2 の投資決定(FID)を行い、翌 12 月に TSKJ 連合(Technip、Snamprogetti
(Eni 子会社)、KBR(Halliburton 社子会社)、日揮(JGC)4 社連合)とプラント建設にかかる EPC 契約を
締結。1996 年 2 月に着工し、3 年半後の 1999 年 10 月に出荷を開始。トレイン 3(320 万トン/年)は
1999 年 2 月に FID、2002 年 12 月に出荷を開始。トレイン 4・5(820 万トン/年)は 2002 年 3 月に FID
を行った。トレイン 4 は 2005 年 11 月、トレイン 5 は 2006 年 2 月に出荷を開始。トレイン 6 は 2004 年 7
月に FID を行い、2007 年に出荷を開始。現在 1~6 トレイン(2,200 万トン/年)が稼働中。NLNG の主
な付帯設備は、LNG 貯蔵タンク(8 万 4,200m3)4 基、LPG 貯蔵タンク計 4 基(プロパン・ブタン 6 万
5,000m3 を各 2 基)、ガスタービン 10 基(計 320MW)、LNG 出荷バース 2 か所(年間 400 隻の払い出
しが可能)。トレイン 7+(800 万トン/年)の増強計画あり。
出所: 各種資料
図 3 ナイジェリアにおける稼働・計画中 LNG プラント
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②
計画中のプロジェクト(Brass LNG、OK LNG)
Brass LNG はリバーズ州ブラスに建設する計画である。生産能力は 500 万トン/年の 2 トレイン(計
1,000 万トン/年)。2009 年に完成予定で、欧州・北米向けに供給する計画であったが遅延している。初
期の出資企業は NNPC(49%)、Total(17%)、米 ConocoPhillips(17%)、Eni(17%)であったが、2006 年 2
月に Chevron はコスト上昇と従業員の安全確保を理由に同プロジェクトから撤退し Chevron に代わり、
Total が参加した。
2012 年 12 月に ConocoPhillips はナイジェリアビジネス(陸上ニジェールデルタの 4 生産ライセンス
ならびに Brass LNG 権益 17%)をナイジェリアの Oando に売却する計画を表明。2013 年 9 月に買収
契約を修正。買収価格 17 億ドルは据え置かれているが上流権益は Oando 子会社 Oando Energy
Resources (OER)が取得し、Phillips Brass Ltd.が保有する Brass LNG 権益 17%は親会社 Oando に売
却する模様。Phillips Brass Ltd.(1 億 500 万ドル相当)の買収には時間を要す見通しである。
Olokola(OK)LNG は、オグン州とオンド州のオロコラ自由貿易区に建設する計画である。生産能力
は 550 万トン 4 トレイン(2,200 万トン/年)で、2007 年中に FID、2010 年末までに 2 トレイン(1,100 万ト
ン/年)を建設し、その後残りの 2 トレインを建設する計画であったが遅延している。出資企業は NNPC
(44%)、Chevron(18.5%)、Shell(18.5%)、BG(13.5%)、Eni(17%)であったが BG が 2009 年に撤退し、
Chevron が 2013 年に撤退。現在 37.26%について事業者が未定である。
4. 原油価格の下落に対するナイジェリア政府の動き(資源ブームから救済措置へ)
オバサンジョ元大統領(2000 年~2007 年)が 2004 年に導入した”超過原油口座”(Excess Crude
Account:ECA、その年に受領した石油収入のうち基準油価を超えた分を別勘定としておくもの)は次のヤ
ラドゥアやグッドラックジョナサン大統領が地方政府知事の支持を得るために使用し、2013 年初めには
110 億ドルあったが 2014 年 11 月には 41 億ドルまで減じた。
その後も続く原油価格下落がこたえ始め、2016 年 1 月ナイジェリアは世界銀行に 25 億ドルの融資を要
請した。ナイジェリアの要請は、アゼルバイジャンの動きに続くもの。追加の 10 億ドルの融資は、アフリカ
開発銀行に要請した。ナイジェリアは、世界銀行とアフリカ開発銀行に対して、原油価格急落によって膨ら
む産油国の財政赤字を補填する緊急融資として 35 億ドルを要請したことになる。
原油価格の下落により政府は 2015 年の予算基準油価を 65 ドル/バレルに引き下げ、ガソリンの補助金
50%カットを発表した。2016 年の予算基準油価は 38 ドル/バレルに更に引き下げた。予算基準油価の参
考となるナイジェリアのボニーライト(Bonny Light)原油価格は、2013 年平均 110.97 ドル/バレル、2014 年
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平均 100.35 ドル/バレルであり、2014 年は第 1 四半期の 109.95 ドル/バレルから第 4 四半期には 75.73
ドル/バレルと下げに転じた。表 6 は原油価格の下落前の産油国別政府予算均衡点となるブレント原油価
格をまとめた表である(ドイツ銀行調べ、2014 年 10 月)。2014 年半ばより下落した原油価格がナイジェリア
政府の予算均衡点を大幅に下回るようになり、原油輸出歳入に頼るナイジェリアの国家債務が増大したの
である。
表 6 産油国別政府予算均衡点となるブレント原油価格(下落前)
(単位:ドル/バレル)
出所: ドイツ銀行、2014 年10 月
年
2006
ナイジェリア
GCC(湾岸協力会議)
バハレーン
クウェート
オマーン
カタール
サウジアラビア
アラブ首長国連邦
ロシア
ベネズエラ
ブレント原油
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
56.3
75.1
79.9
125.3
105.3
128.5
112.3
141.7
2014
(推定)
126.2
57.9
26.4
80.7
43.4
38.7
18.3
21.4
81.7
65.4
66.9 80.0
32.6 42.1
99.3 96.4
41.8 49.1
52.7 47.0
24.5 43.7
28.1 59.7
76.9 134.2
72.7 97.7
82.9
47.0
69.9
27.2
72.6
105.7
109.5
140.7
61.9
103.9
45.7
80.2
61.7
70.6
86.3
116.7
194.4
79.6
118.1
47.4
112.3
80.1
84.5
94.6
102.8
145.7
111.0
127.1
53.6
112.5
65.5
80.9
77.3
112.0
151.5
111.7
134.4
68.3
106.5
60.5
93.1
82.7
113.9
149.9
108.9
136.2
75.5
100.7
71.3
99.2
80.2
100.1
162.0
106.5
2015
(推定)
122.7
138.1
78.4
110.0
76.8
104.4
80.8
105.2
117.5
103.3
2015 年 5 月に就任して 8 ヵ月が過ぎたブハリ大統領が率いるナイジェリア政府からの要請は、150 億ド
ルの国家債務を補填する目的がある。ナイジェリア政府は減速する経済を刺激すべく、公共支出を増加
させたため、国家債務が拡大したのだ。発展途上国の石油輸出経済に低油価が与える影響に関心が高
まっている。アゼルバイジャンはその通貨下落を止めるべく、2015 年 12 月に資本規制を課した。40 億ド
ル相当の緊急融資について世界銀行と国際通貨基金(IMF)とともに交渉中である。
ナイジェリア経済はアフリカ最大だが、原油価格の下落によって、ひどい打撃を受けた。原油による収益
は、ナイジェリア歳入の約 7 割を占めていたが、2016 年は想定油価 38 ドル/バレルで、その三分の一程
度の 20%台に落ち込む見込みである。IMF は、国内総生産 GDP の伸びは 2014 年までの 10 年間の平
均 6.8%から 2016 年には 3.25%に下落すると予測する。Kemi Adeosun 蔵相は、2013 年以来の債券市場
へのナイジェリアの復帰を予定していると、2015 年1 月にフィナンシャルタイムズ(FT)に話した。 しかし、
ナイジェリアの借入コストは、その財政赤字と共に上がった。原油市場の混乱の結果、110 億ドルまたは国
内総生産の 2.2%と予想された財政赤字は、150 億ドルまたは 3%まで膨れ上がったとされる。
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世界銀行からの 25 億ドル融資とアフリカ開発銀行からの 10 億ドルの融資は、両方の委員会の承認を得
なければならない。世界銀行の規則の下では、その融資は、IMF が政府の経済政策を支持することが条
件となる。しかし、世界銀行とアフリカ開発銀行からの融資は IMF からのものよりはるかに緩い条件である。
よって、ナイジェリアはこの点で完全には国際的な緊急援助が必要だとは思っていない。「私は、ナイジェ
リアが原油価格の急激な下落により重大な財政問題に直面したと、皆が同意していると思う」と、ナイジェリ
アの IMF 代表ジーン・レオン氏は FT に話した。しかし、彼は、ナイジェリアは、IMF による救済プログラム
の差し迫った必要にないと付け加えた。
定期的なチェックの一部として 1 月にナイジェリアを訪問した IMF の調査団は、ナイジェリア経済が 2015
年に 2.8-2.9%成長し、今 2016 年は 3.25%の成長と見積もった。しかし、ナイジェリアの財政的バッファは腐
食しており、外貨準備高はほんの数年前の約 500 億ドルのピークから、282 億ドルにほぼ半減したのだ。
いずれにせよ、ブハリ大統領とナイジェリア政府は、IMF の全面的な救済プログラムには抵抗しそうであ
る。1980 年代に政府を導いていた間、前の軍指導者は IMF と正面衝突してきた。よって、多くの関係者は
ブハリ大統領が再び IMF の救済を受けることを嫌うと思っている。原油価格の下落に対するナイジェリア
政府の動きが注目される。
<参考資料>
・ JOGMEC 石油・天然ガス資源情報「西アフリカと大水深石油開発動向」、2015 年 5 月 18 日、伊原賢
以上
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