記者会見要旨 日 時:平成 28 年2月 17 日(水)午後2時 30 分~午後2

記者会見要旨
日
時: 平 成 28 年 2 月 17 日 ( 水 ) 午 後 2 時 30 分 ~ 午 後 2 時 50 分
場
所: 東 京 証 券 会 館 9 階 第 1 ・ 2 会 議 室
出 席 者: 稲 野 会 長 、 森 本 副 会 長 、 岳 野 専 務 理 事
冒 頭 、森 本 副 会 長 か ら 自 主 規 制 会 議 の 審 議 事 項 等 の 概 要 に つ い て 、
岳野専務理事から証券戦略会議の審議事項等の概要について、説明
が行われた後、大要、次のとおり質疑応答が行われた。
(記者)
先月末に日本銀行が決定したマイナス金利の導入を受けて、昨日
実 際 に 政 策 が ス タ ー ト し た が 、マ イ ナ ス 金 利 が マ ー ケ ッ ト 、証 券 界 、
投資家の行動等にどのような影響を与えるか見解をお聞かせいただ
きたい。
(稲野会長)
日 本 銀 行 は 1 月 29 日 に 、マ イ ナ ス 金 利 付 き 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 の
導入について決定したが、これは2%の物価安定の目標に向けたモ
メンタムを維持するための政策であり、日本銀行のデフレ脱却を目
指す強い意志のあらわれであると理解している。
政策の効果としては、当座預金金利がマイナスになると、イール
ドカーブの起点が引き下がり、金利全般に強い下押し圧力が加わる
ことから、銀行の貸出金利や社債の利回りも低下し、それが企業の
設備投資や個人の住宅購入など経済全般を刺激し、それが消費や投
資にプラスに働き、経済の拡大が期待される。
その影響や効果については、現時点で様々な議論があるが、私自
身は中長期的に見守っていく必要があると思料する。一方で、証券
界においても目の前に解決すべき課題がある。
証券界への影響としては、マイナス金利の導入公表後、イールド
カ ー ブ 全 体 が 押 し 下 げ ら れ 、新 発 10 年 国 債 の 利 回 り が 一 時 的 に マ イ
ナスになる等、市場が大きく変動しているのはご承知のとおりであ
1
る。
このような中、MRF、MMF等の短期金融商品を主たる投資対
象とする投資信託は、運用環境が一段と厳しくなっている。特に、
日々決算型公社債投資信託においては、1口1円の基準価額を割り
込むと追加設定が不可能になることから、そのような事態を回避す
べく、MRFを除く、すべての日々決算型公社債投資信託の新規募
集が停止され、これらの中には、繰上償還を発表したものもある。
今後も繰上償還が続くことが想定されるが、これは止むを得ないこ
とであると思っている。
一方、MRFにおいては問題が深刻であり、政策的見地も含めた
対応が必要であると思っている。
MRFは、個人投資家が利用する証券総合口座の中核をなす商品
であり、決済機能を有するという大きな特徴を持っている。因みに
M R F の 残 高 は 1 月 末 で 10 兆 円 を 超 え て い る 。仮 に M R F が 1 口 1
円の基準価額を割り込むことがあれば、証券総合口座での円滑な決
済が困難となり、個人投資家における株式や債券等の売買に甚大な
影響を与えるおそれがある。即ち、MRFについては基準価額を1
口1円以上に維持しながら、証券決済の安定性を確保していく必要
があると考えている。
日証協は、こうした金融環境の激変に対応して、投資信託業界、
信託業界及び大手証券グループと共に、金融庁や日本銀行と密接に
意見交換を行い、MRF、MMF等の運用環境や、とりわけMRF
が有する決済機能の重要性について改めて理解を求めるとともに、
問題意識の共有を図ってきている。
その一環として、日本銀行に対しては、関連団体と共に、日々決
算型公社債投資信託に付随する日本銀行当座預金への預け入れにつ
いては、基礎残高又はマクロ加算残高の扱いとなるような対応等を
求める要望を既に行っている。
証券界としては、日本銀行に対して証券取引の決済機能にも目配
りをした適切な対応を期待している。
いずれにしても、日証協としては、今後とも関連団体と協力し、
証券市場に混乱を招かない観点からマイナス金利下での市場の動向
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を注視しつつ、証券決済機能の維持等について関連当局と緊密に協
議していく所存である。
個人の投資への影響については、マイナス金利の導入により、一
部の金融機関では預金金利の引き下げが既に起っているが、この結
果、確定利付での投資を望む個人の資産運用はより困難になること
が想定される。これは少し悩ましい問題である。
一方、債券利回りが低下すると、基本的には利潤証券としての株
式への魅力が相対的に高まり、資金が向かいやすくなると考えられ
るので、その結果、株価が上昇に向かうということであれば資産効
果によって個人の消費が刺激され、企業の資金調達も容易になると
いう効果もあると考えている。
(記者)
MRFのマイナス金利適用外の要望について日本銀行から回答は
あったのか。また、日本銀行が要望を受け入れない場合、MRFを
続けたとき、証券会社の負担になると思うが、顧客から手数料を取
るような可能性は考えられるのか。
(稲野会長)
日本銀行への申し入れについては、現時点では結論が得られてい
ないと思うが、日本銀行においては何らかの形で検討は行われてい
るものと思料している。仮に、このような措置が実現できなかった
とした時、MRFに関しては、運用会社が1口1円の基準価額を割
り込む緊急の事態に際して、自らの資金により補填が可能とされる
措置が既に手当されている。
ただし、これはあくまでも緊急避難的な対応として認められてい
るものであって、これが常態化するようなことは考えにくい。この
ような事態が常態化することはあってはならないが、仮に、マイナ
スのリターンが確実視されるような状況においては、次なる代替手
段も考えていく必要があるが、このような代替手段を考えるタイミ
ングがあるとしても、かなり先のことだろうと思っている。
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(記者)
MRFの代替手段としてどのようなものが考えられるか。また、
MRFやMMFに関して会員から相談は寄せられているか。寄せら
れているのであれば日証協としてどのような対応をしているか。
(稲野会長)
あくまで「思考ゲーム」であるが、変動ネットアセットバリュー
の日々決算型投資信託を新たに導入することがあり得るが、これは
システムの開発も含め相当な時間が掛かる話である。また、「思考
ゲーム」という前提で話をすると、MRFをやめるとすれば、以前
行われていた預り金という形に復することも考えられる。
会員からの相談があるかという点については、様々な証券会社と
意見交換をし、またリクエストも頂戴している。それを受け当局や
日本銀行とも意見交換を行っており、その点では十分なコミュニケ
ーションができていると考えている。
以
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上