2015 年度卒業論文 メディアの観光誘発効果 ─NHK連続テレビ小説と地域の活性化─ 諸田 真奈 近年、日本はおろか世界中でインターネットの普及が急激に進み、もはや 1 人に 1 台ス マートフォンやパソコンを所有する時代になった。このことで、私たちは時間や場所、形を 問わずメディアに接することができるようになり、より密接にメディアと生活を送ってい る。メディアが及ぼす効果は絶大なもので、一瞬にして人間や経済をも動かし、一晩にして 国の行く末をも変えてしまう力を持っている。しかし、その力が時にマイナスに動くことも 少なくないであろう。 では、その絶大なメディアの力を最大限プラスに生かすことはできないだろうか。ここで 注目したいのは、現在あらゆるシーンで利用されている、メディアを観光につなげ、地域活 性化を図る取り組みである。今回私が取り上げるのは、NHK 連続テレビ小説による地域活 性化の取り組みである。連続テレビ小説は、時代背景や内容だけでなく、各作品において 様々な撮影舞台設定がされており、その舞台はしばしば地域に密着したものとなっている ケースが多いため、観光誘発効果が見られるケースも少なくない。中でも、近年話題となっ た島根県安来市を舞台とした「ゲゲゲの女房」、島根県松江市を舞台とした「だんだん」 、北 海道余市町を舞台とした「マッサン」を取り上げる。 メディアを利用した観光誘発のためには観光素材の変化に取り組むことが重要となり、 今回検証した三つの地域のうち、観光誘発のための観光素材の変化に積極的に取り組めて いたのは「だんだん」の松江市、「マッサン」の余市町である。松江市は、もともと様々 な観光地を有するにも関わらず、市の人々は「松江市観光振興プログラム」や「だんだん 応援プロジェクト」によって地域を盛り上げ、結果的に現在も客足が耐えない観光地へと 成長した。また、余市町においては、まだ放送終了後間もないということもあるが、その 可能性を感じた企業や市などの団体が放送前より様々な取り組みを行った結果、放送終了 後から現在も、未だその熱は冷めない。 つまり、メディアによる観光誘致を成功させるためには、その可能性を早くから感知 し、人々が立ち上がり、地域の観光素材の変化を行い、メディアによる放送後も、積極的 に観光誘致を行うことが大切なのであるといえる。 以上より、改めてメディアによる影響は多大なものであると分かるであろう。だが、そ の一方で、その使い方次第では成功だけでなくその効果が単発的に終わってしまうという 可能性も持ち合わせている。しかし、いずれもメディアによっての観光誘致や地域活性化 の可能性は大いにあるということは間違いない。これらを上手く活かし、日本の都市圏だ けでなく、過疎地域へもメディアの目を向け、人々の目を、足を向けさせることが今後の 課題となるであろう。
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