5.将来像 (1)30 年後の市全体の将来像 現在、地球温暖化や化石燃料の枯渇が世界的な問題となっており、持続可能な低炭素社 会の実現に向けた取組が今まで以上に必要となっています。そのような中、様々な環境施 策に取り組むことにより、 「環境先進都市」が実現した 30 年後の本市の姿について以下の とおり示します。 『みんなでつくる 持続可能で快適な 幸せ感じる環境都市』 この将来像は、エネルギーの効率的な利用が図られているとともに、再生可能エネルギ ーや未利用エネルギーなどの地域資源を最大限活用した自立分散型のエネルギーシステム が構築され、災害にも強く、環境負荷が少ない持続可能なまちを産学官民が一体となって 創造していることを表しています。 また、日々の暮らしでは、温室効果ガス排出量を削減するための省エネルギー行動など により耐乏生活を強いられるのではなく、本市の美しい自然や固有の歴史・文化に囲まれた 癒しの空間の中で人が集い、活気とにぎわいのある快適な生活を営んでおり、物質的・経済 的「豊かさ」を実感することができるとともに、精神的な面でも安全・安心、楽しさに由来 する「幸福感」を得ることができています。 (2)将来像が実現した地域の姿 ①再生可能エネルギーが大量に導入されたまち ❏太陽光、畜産・木質バイオマス、小水力などのエネルギーを活用した発電設備が多く の場所に設置され、蓄電設備も大量に導入されています。 ❏太陽熱、地中熱などのエネルギーを活用した設備が多くの場所に設置されています。 ②省エネルギー型のまち ❏多くの住宅・オフィス・商業施設などは、地元産木材を最大限活用し、実質の温室効果 ガス排出量がゼロとなるゼロエネルギー住宅・事業所などになっています。 ❏日常生活・業務における節電・節水など省エネルギー行動が実践されています。 ❏中心市街地では、日常生活に必要な都市機能が徒歩や自転車の移動圏内に形成されて います。 ❏公共施設が適正に配置され、エネルギーの低減化が図られています。また、高等学校 についても駅周辺にコンパクトに集約化され、公共交通を利用しやすい立地となって います。 ❏徒歩・自転車・公共交通・次世代自動車などの利用を優先した環境負荷が少なく、より 安全で利便性の高い総合的な交通体系が確立されています。 ❏エネルギーの効率的な利用などにより低炭素化が進み、エネルギー消費量が大幅に減 少したまちとなっています。 51 ③自立分散型のエネルギーシステムが構築されたまち ❏地域の拠点施設においては、自立分散型のエネルギーシステムが構築され、災害に強 いエネルギーの供給体制が確立されています。 ❏エネルギーをエリア内で効率的に利用するスマートグリッド(次世代電力網)などを 活用したスマートコミュニティが形成されています。 (3)日々の暮らしに関わる分野別の 30 年後の将来像 ①くらし ❏新築住宅は地元産木材を最大限活用したゼロエネルギー住宅になっており、既築住宅 は省エネルギー住宅として改修されています。 ❏日常生活・業務における節電・節水など省エネルギー行動の実践により、エコなライフ スタイルが確立されています。 ❏地域の個性を再認識・再発見し、自然との調和の中で独自の歴史・伝統・文化・産業など を大切にしながらゆったりと暮らす、健康的な「スローライフ」を楽しむ市民や「ス ローライフ」を求める移住者が増えています。 ❏省エネルギー効果や経済的負担の軽減効果のある二世帯住宅や三世代住宅に住むこと により、高齢者世帯の安心した暮らしの確保や子どもの豊かな心を育み、家族の絆が より深まっています。 ②移動手段 ❏市民ニーズに対応した利便性の高い公共交通の充実が図られています。 ❏再生可能エネルギーを活用した電動コミュニティバスが観光などに広く活用されてい ます。 ❏路線バスやデマンドタクシーでは、電気や水素などを活用した車両が運行されていま す。 ❏鉄道では、ハイブリッド車両(ディーゼルエンジンと蓄電池の組合せ)などの省エネ ルギー車両が運行され、再生可能エネルギーも有効活用されています。 ❏鉄道 4 路線が相互に乗り入れる新駅の設置が進められ、公共交通の利便性向上が図ら れています。 ❏自家用車は電気自動車・燃料電池自動車など次世代自動車となり、超小型モビリティな ども徒歩・自転車・公共交通機関の隙間を補完する環境負荷の少ない移動手段として広 く活用されています。 ❏歩車分離・自転車専用レーンが設置され、自転車が走行しやすい安全安心な道路が整備 されています。 ❏充電・水素充填インフラが整備されています(充電インフラには再生可能エネルギーな ども活用されています) 。 ❏次世代自動車を活用したカーシェアリングやコミュニティサイクルが実践されていま す。 52 ③産業 ❏新築の事業所は地元産木材を最大限活用したゼロエネルギー事業所になっており、既 築の事業所は省エネルギー事業所として改修されています。 ❏群馬大学などの知的財産を活用し、最先端技術を駆使した環境産業が地場産業の一翼 を担っています。 ❏環境に寄与する産業の集積(カーボンバレー[炭素素材に関する技術集積地]など)が 図られています。 ❏畜産・木質バイオマス発電所が整備され、市内に電力・排熱を供給しています。 ❏畜産・木質などバイオマス資源の多段階利用が図られています。 (木質バイオマスの例:住宅建築部材→住宅部材→チップ・炭化→バイオマス発電・排 熱利用、ペレットなどの固形燃料) ❏工場の屋根・遊休地などでの太陽光発電や水路などでの小水力発電が積極的に実施さ れています。 ④その他 (公共施設) ❏太陽光発電設備や蓄電設備などが備えられ、省エネルギー設備の導入も併せた災害に 強い施設が整備されています。 ❏エネルギー利用の効率化のため、市有施設に限らず県立高等学校なども含め、施設の 活用状況や地域のバランスなどを考慮した公共施設の適正配置が図られています。 (環境教育・人材育成) ❏太陽光・バイオマス・小水力など複数の再生可能エネルギー設備や省エネルギー設備が 設置されたエネルギー学習施設が整備されています。 ❏産学官民が一体となって地域に根差した環境教育などを幼少期から継続して行うこと により、環境意識が高く、高度な環境技術を備えた人材が育成され、市内の環境関連 企業を発展させる役割を果たしています。 53 (4)地区別の 30 年後の将来像 ①桐生地区 ⅰ)中心市街地 ❏地域生活の拠点として、駅を中心に住宅、商業施設、医療・福祉施設、公共施設など の様々な都市機能が集積したコンパクトなまちが形成されています。 ❏密度の高い商業集積により、商店街が平面的に各種専門店を展開する横の百貨店(一 つのショッピングモール化)として活性化が図られています。 ❏中心市街地の表通りはトランジットモールが導入されています。 ❏再生可能エネルギーを活用した電動コミュニティバスが観光などに広く活用されて います。 ⅱ)中心市街地の周辺地域 ❏地域内での移動は徒歩や自転車が利用され、超小型モビリティも活用されています。 ❏次世代自動車を活用したカーシェアリングが地域単位で実践されています。 ⅲ)その他の地域 ❏木質バイオマスを活用したエネルギーの供給や地元産材の積極的な活用により、林 業の振興が図られています。 ❏バイオマスエネルギーを活用した付加価値の高い農林業経営が行われています。 (例:ペレットボイラーを農業用ハウスに導入し、通年型農業による野菜などの生 産など) ❏遊休地などでの太陽光発電や水路などでの小水力発電が積極的に実施されています。 ②新里地区 ❏家畜排せつ物を活用した低温ガス化技術によるバイオマス発電など、畜産バイオマス を活用したエネルギー供給により、畜産業の振興が図られています。 ❏バイオマスエネルギーを活用した付加価値の高い農林業経営が行われています。 (例:バイオマス発電により得た電力・排熱を養豚場内の施設に使用するなど) ❏遊休地などでの太陽光発電や水路などでの小水力発電が積極的に実施されています。 ③黒保根地区 ❏木質バイオマスを活用したエネルギーの供給や地元産材の積極的な活用により、林業 の振興が図られています。 ❏バイオマスエネルギーを活用した付加価値の高い農林業経営が行われています。 (例:ペレットボイラーを農業用ハウスに導入し、通年型農業による花きなどの生産 など) ❏遊休地などでの太陽光発電や水路などでの小水力発電が積極的に実施されています。 ❏地区内全世帯の電力は全て水力・太陽光など再生可能エネルギーで賄われています。 54 (5)将来像の実現により期待される主な効果 将来像が実現 した地域の姿 ⇒ 直接的効果 ⇒ 2 次的効果 ❏エネルギー自給 ❏エネルギーの地 率が向上します。 産地消により、温 室効果ガス排出量 再生可能エ ネルギーが 大量に導入 の削減や化石燃料 ⇒ ⇒ オマスの活用によ す。 り、農林業の振興 備などの環境関連 臭気の改善や適切 な森林管理が図ら れます。 ❏農林産物の付加 価値が向上しま す。 ❏市民の桐生市に 地場産業の一翼を ❏若年層を中心に 対する愛着が増し ⇒ 担うことにより、 雇用機会の充実が ます。 地域経済が活性化 図られ、後継者の します。 育成も図られま します。 す。 加などにより人口 性化やイメージア ❏公共交通の利用 ップが図られま 増 加 や 徒 歩 ・自 転 す。 車での移動、カー ❏市民同士のコミ シェアリングの実 施、商店街のトラ ⇒ ンジットモール化 ュニケーションの 促進が図られま ⇒ ⇒ が図られます。 減少に歯止めがか 舗の解消、雇用の かり、まちが活気 創出が図られま にあふれます。 ❏地域協働による ⇒ ❏まち全体として コミュニティの醸 の 魅 力 ・ブ ラ ン ド 成が図られ、地域 ❏スローライフの ガス排出量の削減 ❏商店街の空き店 す。 す。 により、温室効果 ❏市外からの移住 者や交流人口の増 ❏中心市街地の活 ー型のまち 波及効果 ❏環境関連産業が 製 品 ・商 品 が 普 及 省エネルギ 最終的な ❏畜産業における ⇒ 活用した電気自動 車や小水力発電設 ⇒ ⇒ 全 ・安 心 が 確 保 さ れます。 が図られます。 ❏桐生発の技術を 3 次的効果 ❏市民生活の安 ❏畜産・木質バイ の節減が図られま されたまち ⇒ 力が高まります。 の絆が深まりま 実践により、市民 す。 の健康が増進され ❏市民は、物質的・ ます。 経済的「豊かさ」を ❏節約した金額を 実感することがで 買い物など他の用 き、安全・安心や楽 ❏節電や節水など 途に活用でき、地 の日常的な省エネ 域経済が活性化し ❏環境意識の高い ルギー行動の実践 ます。 市民が増えます。 により、生活費の ⇒ ⇒ ❏家族が一緒に食 削減が図られま ❏家族の絆が深ま 事をすることなど す。 ります。 により、家族団ら んの時間が増えま す。 自立分散型 のエネルギ ーシステム ⇒ が構築され たまち ❏既存の電力系統 に依存しない分散 型の独立電源が確 保されます。 ❏自立分散型のエ ネルギーシステム ❏日常生活におけ ⇒ の構築により、災 ⇒ る市民の安心感が 害にも強いまちと 高まります。 なります。 55 しさに由来するよ り大きな「幸福感」 を得ることができ ます。
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