生活を見つめ、より良い生活を 創り続ける子どもを育てるカリキュラムづくり

◇家庭科
◇家庭科
生活を見つめ,より良い生活を
生活を見つめ、より良い生活を
創り続ける子どもを育てるカリキュラムづくり
創り続ける子どもを育てるカリキュラムづくり
南
南 千里
千里
はじめに
本校の家庭科研究では,これまで「生活を創り出す子ども」を目指し,実生活と関連を図った問
題解決学習を効果的に取り入れ,身近な生活の問題を主体的に解決する能力を育む授業づくりに取
り組んできた。具体的には,①学習構成の中に,問題解決のプロセスを組み込む②学びの構造図を
取り入れ,子どもたちの思考の変遷を見取る③批判的思考力(ものごとを冷静に,客観的に,論理
的に考え,判断していくために必要な力)を高められる活動を取り入れるといった手立てを講じた。
また,互いの家庭生活での工夫や,子どもたちが発見したコツや知識などを共有できるような,学
び合いの場を設けた。これにより,子どもたちの学びを深めるために,学び合いが非常に効果的で
あることや,子どもたちの学びの深まりを見取る手立てとして,学びの構造図が有効であることを
確かめることができた。
本年度,本校の研究テーマは「学びを創り続ける子どもの育成~学びを創り続けるカリキュラム
づくり~」である。そこで家庭科の研究テーマを,
「生活を見つめ直し,より良い生活を創り続ける
子どもを育てるカリキュラムづくり」と設定し,研究を進めることにした。ここで述べる「より良
い生活」とは,子ども一人ひとりによって異なるものである。一人の子どもにとって,「良い生活」
と思われることが全ての子どもにあてはまるとは限らない。今ある生活を見つめ直し,自分や家族
にとっての「より良い生活」を創り続ける子どもこそ,本校家庭科の目指す子どもである。
これまでの研究で得られた成果を活かし,子どもたちが一単元,一授業の中だけで学びを創るだ
けでなく,これまでに培った学びを次の学びへとつなげながら自ら学びを創り続けることのできる
カリュラムの作成に取り組む。その中で,カリキュラム作成や改善の視点を明らかにしていきたい
と考える。
1
家庭科で育てたい子ども像と育むべき力・教師の役割
本校家庭科では,めざす子どもの姿を次のように定義している。
自分の生活を見つめ,家族の一員としての自分に気づき,自分や家族,まわりの人々にとってより良い生
活を創り出そうとする子 ども
つまり,
「生涯にわたり,学んだことを生活に活かす姿勢」を育むことをねらいとしている。その
ためには,自ら主体的に問題を見出し,関わっていこうとすることが重要である。そして,そのた
めに必要な資質・能力を身につけるためには,効果的な教師の工夫や支援が不可欠となる。
学習指導要領にある 4 観点を元にして,それぞれの観点と身につけたい資質・能力・教師の手立
てを次のように想定した。
—
130 —
表 9-1
指導要領の 4 観点と学びを支える4つの力・教師の手立てとの関連
4 観点
家庭生活への
関心・意欲・態度
家庭生活への創意工夫
身につけたい資質・能力
・自分や家族などにとってより
・児童の生活や他教科のカリキュラムを関
よい生活を工夫し続けようと
連させ,興味・関心のもてる題材や単元
する態度
の開発
・自分や家族などにとってより
よい生活を考え,工夫する能
力
家庭生活に活かす基 礎
的な技能
的な知識・理解
2
・より良い生活を創るための方法を考え,
学んだことを生活に活かす場の設定。
・思考の変遷がわかるようなワークシート
の活用
・必要な方法,情報を活用し,
用具を安全・衛生的に使う技
・情報を効果的に取り入れ,活用する場の
設定
・繰り返し実践できる場の設定
能
家庭生活に関する基 礎
教師の手立て
・家庭生活を支えているものの
・家の人の知恵を知ったり,自分で知識を
要素や活動の意味や大切さへ
得たりしたことを,学級で共有し,学び
の気づき
を深め,生活の中で活かす場の設定
学びを創り続ける授業モデル
家庭科では,自分の生活を見つめ,そこから「なぜだろう。」
「もっといい方法はないかな。」と考
えることから学習が始まる。問題への着目➡めあての特定➡解決方法の検討➡活動➡ふりかえりと
いう一連のプロセスが重要となる。この一連の学習プロセスを「問題解決学習」とする。
さらに,この問題解決学習は,その中で批判的思考力を培うことができる。現実をあるがままに
受け止めることにとどまるのではなく,
「何のためにするのか?」
「本当に価値があるのか?」
「その
行動が周りにどんな影響を及ぼすのか?」などをじっくりと考える力である。学びを創り続けるた
めには,批判的思考力は不可欠な要素と言える。
問題解決学習では,まず「何が問題なのか。」
「なぜそれが問題なのか。」を子ども自身が考え,
「め
あて」を持つことから始まる。次に「現状はどうなっているか」
「その問題の背景や原因は何か」
「解
決や改善の方法はあるのか」「方法の中でどれを選んだらいいのか」「なぜそれがよいのか」を考え
るのである。最後に必ず自分の学びをふりかえることにより,次の課題やめあてに着目するきっか
けとしたい。そして,このサイクルを繰り返す中で,批判的思考力は形成されていくのである。図
9-1 は,荒井紀子氏(2012)により,批判科学に基づき作成された問題解決の7つのステップを元
に,小学校での活動に適した 5 つのステップの形に作成し直したものである。
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131 —
①
問題への着
②問題(めあて)
の特定
目
(つかむ )
(気がつく)
図 9-1
③ 解決の
④決定と
⑤結果(一連の
選択肢の検討
行動
学び)の
(解決の方法)
(実践)
ふりかえり
「小学校における批判的思考力の育成を目指した学習構成」
このような,一連の学びの流れを反復して経験することで,子どもたちの中に批判的思考力が高
まり,学びを創り続ける原動力となるのである。
3
家庭科における学びを創り続けるカリキュラム
(1)学びを創り続けるカリキュラム
家庭科は子どもの生活と大きく関わる教科である。学んだことを「自分の生活に活かす」
「家族の
生活に活かす」ことができ,喜びを感じることで,
「もっと良くしたい」という思いがより良い生活
を創りだすことにつながる。そのためには,子どもたちにとって,学ぶことが「自分に関わりのあ
るものだ。」という思いが必要となる。これを本校家庭科では「自分事」と捉える。子どもたちにと
って自分の生活と単元や題材が関連し,そこで学んだことが,また自分の生活へと活かされていく
中で実感の持てるカリキュラムになるからこそ,家庭科における学びを創り続けるカリキュラムで
あると考える。
(2)家庭科における「学びの必然性」
「自分たちの生活から学びが始まり,学んだことを自分たちの生活に活かすことができる喜び」
を感じることが,家庭科における「学びの必然性」ではないかと考える。そのために,学ぶ単元や
題材を「自分事」と感じられるような,題材設定や単元配列の工夫といった「しかけ」が必要とな
る。この「しかけ」を活かしたカリキュラムづくりについて以下に述べていく。
4
家庭科における学びを創り続けるカリキュラムづくり
(1)子どもの思いやねがいの連鎖に即したカリキュラムづくり
①他教科と関連した題材設定
本校では 5 年生の総合的学習の時間に,子どもたちが本校敷地内の自然環境に関わる中で,探究
的な活動を行い,自他尊重の生き方を考えるという学習が行われている。その一環として,花や野
菜,米を作っている。そこで,
『食べて元気に』という単元を関連付け,子どもたちが栽培した野菜
の中で「大根」をみそしるの具の中心にすることにした。
子どもたちからは,
「自分たちの野菜をどのように切れば,無駄なくおいしく食べられるか。」
「そ
の野菜に合うみそはどんなものか。」「そもそも,みそ汁の作り方がよくわからないので知りたい。」
など,様々な疑問や知りたいことが出され,その疑問を中心に非常に意欲的に学習に取り組むこと
ができた。実習後,「次は,今回の実習を活かした切り方をしたい。」という声や「今回のことを忘
れないようにするためにも,家でもう一度やってみたよ。」という声が聞かれた。大根の収穫は3学
—
132 —
期となるので,11 月の調理実習を参考にして,3学期、総合的学習の時間に行う収穫祭の中でみそ
しる作りに取り組む予定である。総合的学習とつながりがあったことで,
「自分たちが栽培した野菜
を使うために,みそ汁作りについて知りたい。」という必要感が高まり,学ぶ必然性が働いたと思わ
れる。その結果,教師から与えられためあてではなく,自分たちの「知りたい。」
「考えたい。」とい
う思いや願いが高まり,より意欲的に取り組んでいく姿が見られた。
②行事・学校生活に関連した題材設定
子どもたちは教科の学習はもとより,行事や特別活動など様々な学校での活動を通して,学んで
いる。そこで行事や学校で全校で取り組んでいる生活目標などを学習単元とつなげることで,相乗
的に子どもたちの学習が深まり,様々な場面で学びを創り続ける姿が見られるのではないかと考え
た。
(ⅰ)学校行事と関連付けた題材設定
本校では,
「じょうずに使おう
お金と物」という単元を,5 年生,6 年生と,どちらの学年でも
扱う。それぞれの実態に応じて,同じ単元でも扱う題材が異なっている。5 年生では,身近な購入
体験や家庭での金銭の具体的な使い方を振り返る。その中で,金銭が自分たちの生活を支えるもの
であることを実感し,自分が実際に買う場面を想定する。より良い買い物やお金の使い方に必要な
要素を考え,日常生活で実践できる力を培う。6 年生では,修学旅行という大きな学校行事がある。
ここで,5 年生での学習を活かして,実際にお金を使った買い物を経験する。子どもたちにとって
も,この買い物は修学旅行の中の大きな楽しみの一つであり,「買い物でいい思い出を残したい。」
「できるだけいろいろな人にお土産を買って帰りたい。」という思いを持っている。そこで,修学旅
行に合わせて,「お小遣いの使い道を考えよう」という題材を設定する。行事と関連付けることで,
子どもたちの中に,学びの必然性が生まれる。また,日々家庭で行われる消費活動とはちがい,子
どもたちが同じ条件の中で活動を行うことで,めあての共有がしやすくなる。そのため,同じ場面
に直面した時に,自分以外の様々な考えや解決策があること気づきやすい。多様な価値観に触れる
ことができるのである。
(ⅱ)生活目標と関連付けた題材設定
本校では,毎月,子どもたちの生活実態に応じた生活目標を設定し,全校で取り組んでいる。各
学年の実態に応じた目標を考えたり,学年朝会で実践できそうなことを考えたりしながら,子ども
たちはこの目標に取り組んでいる。こうした生活目標と「暑い季節を快適に」や「かたづけよう
身
の周りのもの」といった題材を対応させたカリキュラム構成にすることで,学んだことを実際に生
かしたり,家庭科で学んだことを日常に生かそうとする姿勢が芽生えたりするのではないかと思わ
れる。
12 月の生活目標は「身の回りの整理整とんをしよう」である。5 年生でも学年で「なぜ整理整と
んをするとよいのか」
「どこをどのようにするとよいのか」などを学年集会で話し合っている。子ど
もたちの意識は家庭科の時間だけでなく、
「整理整とんをしよう」という方向にむかっている。そこ
で、この時期に「かたづけよう
身の回りのもの」という題材を扱うことで、学んだことをさらに
日常の生活に活かしていくことが自然とできるのではないかと考えた。実際に、児童は、自分の周
りはもちろん、学校全体に目を向けて「整理整とんを広めていきたい。」「これからも続けてやって
いきたい。」という意識をもって、意欲的に学習に取り組んでいった。図 9-2 は、その具体的な姿
である。
—
133 —
12月の生活目標は「身の周りの整理整頓をしよう。」まずは,自分の周りから。
整理整とんをするとぼうしやいろい
ろなものがすぐが取り出せるように
な り ,と て も う れ し い 気 持 ち に な り ま
した。
( 中 略 )続 け る こ と が 大 切 で す 。
5年生らしく意識を高めていきたい
です
学校の中の他の場所も
やってみよう。体育倉庫
はどうかな。
図 9-2
「かたづけよう
自分の机やロッカー以外
にもあるね。チョーク入れ
をきれいにすると,先生も
使いやすいかな。
身の回りのもの」に取り組む様子
(2)学びを創り続ける姿の見取りを活かすカリキュラムづくり
①自らの思考の流れや学びの蓄積がわかるワークシートの活用
ワークシートには,実践したこと・考えたことや友だちと話し合ったこと,今後に向けての課題
などを記述していく。子どもたちの願いや思い,活動中に生まれた問題意識や次の学びにつながる
考えなどをワークシートの記述から見取っていきたい。
5 年生の「はじめてみよう
クッキング」では,5 月に「お茶を入れよう」という実習を行った。
子どもたちはなかなか思ったような味に入れることができず,ワークシートにも「もう一度実習を
したら,もっと○○に気をつけてやりたい。」という記述が見られた。そこで,単元構成を変更し,
2 度目の実習を行った。その中で,子どもたちは,「おいしいお茶」という観点だけでなく,「洗い
物の水を少なくするにはどうしたらよいのだろう。」という新たな疑問を持ったり,「ただつくるの
ではなく,飲むときに楽しい気持ちになるような場の設定をしよう。」といっためあてを自ら立て,
実習に取り組んでいった。
実習後には「良い感じのお茶ができたので,お母さんにつくってあげたいです。」「前よりも机も
きれいでお茶がおいしく飲めました。手際よく進めるためにはコツが必要!」といった自らの生活
や次の実習に活かそうとする発言が見られた。ワークシートから見取った子どもの思いや願いを単
元構成の変更に活かすことにより学びが深まり,次の学びへとつながっていると感じた。
—
134 —
知識理解に関
活動そのもの
する記述
のふりかえり
これまでのふりかえり・今後した
いこと・など
子どもたちの記述より
「次は茶葉を少なめにしたい。」
「お湯の温度を変えたらどうなるかな。」
「机の上もきれいにできたらよかった。」
1度目の実習
➡もう一度,これを活かしてやってみたい!とい
2 度目の実習
う願いや思いを見取る。➡単元構成に活かす。
図 9-3
ワークシートからの見取り
②家庭での実践の場の設定
また,ワークシートの見取りを活かして,子どもたちが特に「家でやってみたい」と考えている
ような題材を元にした課題を各学期ごとに出している。これまでの家庭科の学習で得た学びを活か
し,レポートにまとめるものである。その中で,知識や技能の定着を図るだけでなく,生活に即す
るが故の課題や疑問が見えてくることもあるだろう。それを見取り、活かすことができればと考え
ている。
(3)カリキュラムの見直しと新たなカリキュラムづくり
「学びを創り続けるカリキュラム」を作成するためには,そのカリキュラムが本当に子どもたち
の学びを創り続けることに役立っているのか検証し,常に改善を図っていく必要がある。そのため
の手立てを以下に述べる。
①子どもたちの思考の流れを見取る学びの構造図
子どもたちの姿を見取る中で「学びを創り続ける姿を見ることが難しい」場合や「もっと違った
学習の流れの方が学びを創り続けることができるのではないか」と思われる姿が見られた場合,そ
の都度,柔軟にカリキュラム編成や単元構成は変更されるべきである。子どもたちの思考の流れを
無視して学びを創り続けるカリキュラムを編成することは困難である。そこで,子どもたちの思考
の流れをできるだけ可視化するために,「学びの構造図」を用いていく。
この構造図は,教師が構想した授業の流れを確認したり,児童の思考や活動のプロセスをイメー
ジしたりするための手立てとして北陸家庭科授業実践研究会によって,作成されたものである。本
校では,2010 年度より,この構造図を子どもたちの学びの見取りに活用している。授業の流れにそ
って,子どもが取り組む学習活動や学習内容が示されている。縦軸,横軸に注目すると,縦軸には,
—
135 —
子どもが学習内容をとらえる際の広がりを表わす「学習の視野」を,横軸は,大きく 3 つに分けた
「学習の深まり」を示している。図 9-4 は,「衣服のはたらきを考えよう」という題材を学習した
子どもが学習内容をとらえる際の広がりを表わす「学習の視野」を,横軸は,大きく
3 つに分けた
際に,作成した学びの構造図である。
「今,快適かな。」という問いから出発した子どもたちは,快
「学習の深まり」を示している。図 9-4 は,「衣服のはたらきを考えよう」という題材を学習した
適と感じるには様々な要因があることに気付く。
そこで,
「臨海学校で快適に過ごすためにはどうし
子どもが学習内容をとらえる際の広がりを表わす「学習の視野」を,横軸は,大きく
3 つに分けた
際に,作成した学びの構造図である。
「今,快適かな。
」という問いから出発した子どもたちは,快
たらいいかな。
」という問いかけをすることで,子どもたちの実生活と「衣服」をつなげていくので
「学習の深まり」を示している。図
9-4 は,「衣服のはたらきを考えよう」という題材を学習した
適と感じるには様々な要因があることに気付く。
そこで,
「臨海学校で快適に過ごすためにはどうし
ある。
「衣服」について考えることで,快適に過ごすことができそうだという解決の糸口をつかんだ
際に,作成した学びの構造図である。「今,快適かな。
」という問いから出発した子どもたちは,快
たらいいかな。
」という問いかけをすることで,子どもたちの実生活と「衣服」をつなげていくので
適と感じるには様々な要因があることに気付く。
そこで,
「臨海学校で快適に過ごすためにはどうし
子どもたちは,そこから,
「臨海ではどんな活動があるのか」
「自分たちの行く地域はどんなところ
たらいいかな。」という問いかけをすることで,子どもたちの実生活と「衣服」をつなげていくので
ある。
「衣服」について考えることで,快適に過ごすことができそうだという解決の糸口をつかんだ
なのか。気候はどうなっているのか。
」などを調べながら,学びを創っていく。その中で,「もう一
ある。
「衣服」について考えることで,快適に過ごすことができそうだという解決の糸口をつかんだ
子どもたちは,そこから,
「臨海ではどんな活動があるのか」「自分たちの行く地域はどんなところ
度,自分にとって快適な状態がどういうものか」というところに,戻る子どももいれば,衣服のは
子どもたちは,そこから,「臨海ではどんな活動があるのか」「自分たちの行く地域はどんなところ
なのか。気候はどうなっているのか。
」などを調べながら,学びを創っていく。その中で,「もう一
たらきを学んだ後に,もう一度自分の学校生活の衣服の役割を振り返る子どももいた。そこで,そ
なのか。気候はどうなっているのか。」などを調べながら,学びを創っていく。その中で,「もう一
度,自分にとって快適な状態がどういうものか」というところに,戻る子どももいれば,衣服のは
のような子どもたちの思考の流れを受けて,毎時間,室温と体感温度を確認することで自分なりの
度,自分にとって快適な状態がどういうものか」というところに,戻る子どももいれば,衣服のは
たらきを学んだ後に,もう一度自分の学校生活の衣服の役割を振り返る子どももいた。そこで,そ
「快適さ」を知る機会を設けたり,ワークシートを改良したりしていった。
たらきを学んだ後に,もう一度自分の学校生活の衣服の役割を振り返る子どももいた。そこで,そ
のような子どもたちの思考の流れを受けて,毎時間,室温と体感温度を確認することで自分なりの
のような子どもたちの思考の流れを受けて,毎時間,室温と体感温度を確認することで自分なりの
学習の視野をとらえる軸
「快適さ」を知る機会を設けたり,ワークシートを改良したりしていった。
「快適さ」を知る機会を設けたり,ワークシートを改良したりしていった。
「自分自身や日常のくらし」(私的領域)か
ら「他の人・地域・社会的問題」
(公的領域)
ととらえたもの。
学習の視野をとらえる軸
他の人・地域・
社会的問題
学習の視野をとらえる軸
「自分自身や日常のくらし」
(私的領域)か
「自分自身や日常のくらし」
(私的領域)か
1次
ら「他の人・地域・社会的問題」
(公的領域)
2次
3次
ら「他の人・地域・社会的問題」
(公的領域)
衣服の働き
ととらえたもの。
活 動 に
ととらえたもの。
を 考 え よ
他の人・地域・
合 っ た
臨海学校で
1次
着方って
他の人・地域・
修 学 旅
社会的問題
う。
工 夫 や
の着方をふ
2次
3次
1次
衣服の働き
1次
社会的問題
何で決ま
活 動 に
行 で は
2次
3次
問 題 点
り か え ろ
を 考 衣
え服
よの 働 き
合
臨海学校で
活 っ動たに
るんだろ
どんな,
臨 海 学 校
着方って
修
学
旅
う。
う。
を 考 え よ
工
の着方をふ
合 夫っやた
臨海学校で
う。
服 装 を
で1次
快 適 に
何で決ま
行
で
は
着方って
修 学 旅
う。
問
り の着方をふ
か え ろ
工 題夫点や
るんだろ
す海た学 校
どんな, す る の
1次過 ご 臨
何で決ま
う。
行 で は
問
題
点
り
か
え
ろ
う。
服 装 を かな?
で 快 適 に
めには?
るんだろ
どんな,
臨 海 学 校
ど
ん
な
臨海での
う。
す る の
過 ご す た
う。
で 快 めには?
適 に
時 に ど かな? 服 装 を
活動に合
ど ん な
臨海での
す る の
過 ご す た
自分の選んだ
ん な 服
った着方
時 に ど
じゃあ
活動に合
かな?
めには?
服装で臨海学
を 着 て
を考えよ
季節が
自分の選んだ
ど ん な
ん な 服
臨
っ海
たで
着の
方
学校では
じゃあ
校
で
活
動
し
て
い
る
の
快適ってどん
う。
服装で臨海学
を 着 て
時 に ど 季節が 変わる
を動
考に
え合
よ
活
どは
うなの
学校で
かな
な こ快
と適だ
ろど ん
校みよう。
で分
活の
動し
い る の
って
う。
自
選て
んだ
ん な 服 変わる とどう
っ
た着方
かな。
どうな
の
じゃあ
みよう。
かな
う? な こ と だ ろ
服
装
で
臨
海
学
を 着 て と ど う かな。
を考えよ
かな。
季節が
学校では
う?
校で活動して
い る の かな。
快
適
っ
て
ど
ん
う。
自分自身や
変わる
どうなの
みよう。
かな
な こ と だ ろ
自分自身や
日常のくらし
とどう
かな。
日常のくらし
う?
かな。
学習の視野
基本的知識や技術を
ひと・もの・ことをとり
問題の改善や解決の方
学習の視野
自分自身や
基本的知識や技術を
ひと・もの・ことをとり
問題の改善や解決の方
習得する・生活を見直
まく問題や課題を認識
法を考える、実践する、
習得する・生活を見直
まく問題や課題を認識
法を考える、実践する、
日常のくらし
学習 学習
し気づく
する
発信する
し気づく
する
発信する
の深まり
の深まり
学習の視野
基本的知識や技術を
ひと・もの・ことをとり
問題の改善や解決の方
別の単元・行事へのつながり
別の単元・行事へのつながり
習得する・生活を見直
まく問題や課題を認識
法を考える、実践する、
学習の深まりをとらえる軸
➡「寒い季節を快適に」
学習の深まりをとらえる軸
➡「寒い季節を快適に」
学習
し気づく
する
発信する「暑い季節を快適に」
直面する問題を解決する思考・行動過程を学習の進展
直面する問題を解決する思考・行動過程を学習の進展
「暑い季節を快適に」
の深まり
の指標としてとらえたもの。
「修学旅行」
の指標としてとらえたもの。
「修学旅行」
別の単元・行事へのつながり
学習の深まりをとらえる軸
➡「寒い季節を快適に」
図 9-4 「学びの構造図」を元にして作成した「衣服の働きを考えよう」における学びの構造図 「暑い季節を快適に」
直面する問題を解決する思考・行動過程を学習の進展
図 9-4 「学びの構造図」を元にして作成した「衣服の働きを考えよう」における学びの構造図
の指標としてとらえたもの。
「修学旅行」
(出典:北陸家庭科授業実践研究会「家庭科でつなぐ子どもの思考」)
(出典:北陸家庭科授業実践研究会「家庭科でつなぐ子どもの思考」)
図 9-4 「学びの構造図」を元にして作成した「衣服の働きを考えよう」における学びの構造図
このように,学びの構造図を,子どもの思考や行動がどのような流れをたどったのか,今,子ど
(出典:北陸家庭科授業実践研究会「家庭科でつなぐ子どもの思考」)
このように,学びの構造図を,子どもの思考や行動がどのような流れをたどったのか,今,子ど
もたちの意識がどこに向かっていて,どこに興味・関心があるのかを見取る手立てと,そこから見
取ったことを,カリキュラムや授業の中に返していきたいと考えている。
もたちの意識がどこに向かっていて,どこに興味・関心があるのかを見取る手立てと,そこから見
このように,学びの構造図を,子どもの思考や行動がどのような流れをたどったのか,今,子ど
②学びを創り続ける子どもを育成するカリキュラム案
取ったことを,カリキュラムや授業の中に返していきたいと考えている。
家庭科では,昨年度の実施カリキュラムを元に見直し,子どもたちが自分事と捉えられるような
もたちの意識がどこに向かっていて,どこに興味・関心があるのかを見取る手立てと,そこから見
②学びを創り続ける子どもを育成するカリキュラム案
題材設定や単元配列を活かした今年度の計画カリキュラムを作成した。
取ったことを,カリキュラムや授業の中に返していきたいと考えている。
家庭科では,昨年度の実施カリキュラムを元に見直し,子どもたちが自分事と捉えられるような
②学びを創り続ける子どもを育成するカリキュラム案
題材設定や単元配列を活かした今年度の計画カリキュラムを作成した。
家庭科では,昨年度の実施カリキュラムを元に見直し,子どもたちが自分事と捉えられるような
題材設定や単元配列を活かした今年度の計画カリキュラムを作成した。
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136 —
表 9-2 は昨年度まで行っていたカリキュラムと今年度行った計画カリキュラムである。すでに現
在の段階で,変更した部分もある。実施後,
「本当に学びを創り続けることができるカリキュラムで
あったか」を検証することで,さらに有効なカリキュラムを考えていきたい。
表 9-2
5年 年間指導計画
4月
家庭科
単元名
5月
家庭科カリキュラム(上:平成 23 年度~平成 26 年度
(平成23年度~)
6月
7月
わたしと家
家庭科の学
族の生活・
習が始まる
じょうずに
よ!(ガイダ
使おう物や
ンス)
お金
はじめてみ
ようクッキ
ング・はじ
めてみよう
ソーイング
かたづけよ
う身の回
り・やって
みよう家庭
の仕事
9月
やってみよ
う家庭の仕
事・わくわ
くミシン
5年 新年間指導計画 (平成27年度計画・実施)
4月
5月
6月
7月
9月
家庭科
単元名
家庭科の学
習が始まる わたしと家
よ!(ガイダ 族の生活
ンス)
はじめてみ
ようクッキ
ング・はじ
めてみよう
ソーイン
グ・衣服の
はたらきを
考えよう
はじめてみ
ようソーイ
ング・やっ
てみよう家
庭の仕事
実践の場の
設定
「家でゆで野
菜サラダを
作ってみよ
う」
「チャレンジ
カード」を長
子どもが自分事と捉
えられる配列 ① 行
事と関連付ける
臨海学舎という子
どもたちが<自分事>
として捉えられる学
校行事と関連させる
ことにより、子ども
たちの学びの過程に
やってみよ
う家庭の仕
事・わくわ
くミシン
10月
11月
食べて元気
に
10月
食べて元気
に・じょう
ずに使おう
物やお金
11月
食べて元気
に・わくわ
くミシン
食べて元気
に・わくわ
くミシン
子どもが自分事と
捉えられる配列
② 他教科との関
わり
総合的な学習の
時間に行った栽培
活動を関連付けて、
「自分たちで作っ
た野菜を使ってみ
そ汁を作ってみて
はどうか」という
提案をした。「自
分たちの野菜」で
あることが、必要
12月
かたづけよ
う身の回
り・じょう
ずに使おう
物やお金
12月
かたづけよ
う身の回り
下:平成 27 年度)
1月
寒い季節を
快適に
2月
寒い季節を
快適に
1月
じょうずに
使おう物や
お金・寒い
季節を快適
に
実践の場の
設定
「家でみそ汁
を作ってみよ
う」
「チャレンジ
カード」を長
2月
寒
寒い季節を
快適に
快適
〈引用文献〉
家庭科!学びつながり発信する』2012 年 5 月
『日本家庭科教育学会会報誌
『荒井
NO.50』
紀子「子どもの思考をはぐくむ家庭科の授業」』2009 年 7 月
『北陸家庭科授業実践研究会「家庭科でつなぐ子どもの思考」』2014 年 6 月
『研究紀要
第 14 集
平野で育つ学び続ける子ども』2010 年 3 月
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137 —
家族とホッ
とタイム
3月
家族とホッ
とタイム
子どもが自分事と捉
えられる題材設定③
実生活と関連付ける
学校生活目標「身
の回りの整理整頓を
しよう」と関連づけ
て、自分たちの学び
が生活に生かされ、
学校が美しく変わっ
ていくということを
体験することで、達
成感が生まれ、長期
<参考文献>
『荒井紀子パワーアップ
3月
子どもが自分事と捉
えられる配列 ④
実生活と関連付ける
クリスマス・お正
月と子どもたちに
とっては、通常より
も金銭や物にふれる
機会が多くなる時期
である。それを経て、
自分の生活を振り返
り、見つめなおすこ