Morningstar Equity Research Report 2016.2.2 米シアトルを拠点に眼疾患治療薬を開発 投資判断(2/1) アキュセラ・インク(4589・東証マザーズ/外国株) 株価 投資単位 1,420円 100株 (2/1) 新規 Overweight 時価総額 昨年来高値 昨年来安値 PER (予) 518.5億円 1,540円 (16/1/28) 572円 (15/8/25) - (2/1) 加齢黄斑変性向け臨床結果迫る、 最大の投資チャンス到来 ■ 「エミクススタト塩酸塩」 、 臨床試験の投薬まもなく完了見込み 15 年 12 月 期 3Q 累 計(15 年 1 月 - 9 月 ) の 非 連 結 業績(米国会計基準)は、提携からの収益が前年同期 比 22.4%減の 21,524 千ドル、営業損益が 18,012 千ド ルの赤字(前年同期は 505 千ドルの黒字) 、純損益は 17,228 千ドルの赤字(前年同期は 1,411 千ドルの赤字) だった。提携先からの 3 Q累計の収益、大塚製薬からの 払戻金が臨床試験終了間近なため活動が減少することに より、エミクススタト塩酸塩で前年同期比 22.4%減と なったことが減収の主な要因。エミクススタト塩酸塩で は、ドライ型加齢黄斑変性の適応開発について、13 年 2 月に臨床第 2b/3 相試験を開始し、14 年 3 月には被験者 登録が完了。24 カ月の投与期間があと 1 カ月もすれば 完了する見込み。現時点で安全性に関わる問題は報告さ れていない。 手元資金は 166 百万ドル(約 200 億円)を超えてお り、パイプラインの拡大やインライセンス、社内研究開 発の強化など、より強固な事業ポートフォリオ構築に向 け、当面の財務面は安定している。 ■同業企業に比べ超割安、 今が最大の投資チャンス 加齢黄斑変性で約 9 割の患者数を占めるドライ型の治 療薬として期待される「エミクススタト塩酸塩」の研究 は順調。現在は地図状萎縮を伴うドライ型加齢黄斑変性 の臨床第 2b/3 相試験が継続中で、米国と欧州で 508 名 の患者を対象とした 2 年間の治験結果は 16 年の夏ごろ となる予定。その後は試験結果次第ではあるものの、さ らに 1 ~ 2 年程度の臨床試験を実施する可能性がある。 現時点では大きな安全性の問題もなく、臨床第 2a 相試 験では、少数サンプルであったため統計学的有意差を示 すものではないが良好な結果が得られた。このため、新 たな臨床試験が行われた場合は有効性を示すための投与 期間が FDA( 米食品医薬品局 ) の指定する最短 1 年にな る可能性もある。 一方、パイプラインではエミクススタト塩酸塩の糖尿 病性網膜症を適応とする臨床試験の開始時期にも注意し 3,300円~ 3,600円 想定株価レンジ (円) 3,600 3,200 2,800 2,400 2,000 1,540 1,600 1,200 26週線 800 400 (千株) 13週線 3,000 572 13週平均線 2 3 2,000 出来高 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1,000 0 1 13週移動平均線 26週移動平均線 出来高 (13週平均) 870円 788円 700,092株 ておきたい。すでに前臨床試験済で、エミクススタト塩 酸塩自体の安全性についての懸念は低く、臨床第 2 相試 験から試験が開始される見込み。 当面の株価材料は 16 年夏ごろに明らかとなるドライ 型加齢黄斑変性を適応とする臨床試験の結果と糖尿病性 網膜症を適応とする臨床試験の開始時期。モーニングス ターではその前が1つの買い場と考えている。株価自体 は海外の類似企業との比較でも明らかに過小評価され、 超割安水準にある。 米ナスダックに上場するオフトテック(OPHT)の 時価総額は約 2,300 億円。オフトテックはウェット型 加齢黄斑変性向け治療薬「フォビスタ」の第 3 臨床試 験を進行中で、地図状萎縮を伴うドライ型に対しても 「Zimura®」 (眼球注射)を開発中。臨床第 2a 相試験を 終了しており、今後は臨床第 2/3 相試験を予定してい る。 また、同じく米ナスダックに上場するリジェネロン (REGN)はウェット型加齢黄斑性向け治療薬である「ア イリーア」を開発、11 年に上市させた企業。すでに収 益化が進んでいることから、時価総額は約 5.2 兆円に上 る。ウェット型加齢黄斑変性向けに上市されている治療 薬「ルセンティス」の年間売上高は約 5,000 億円、 「ア 業績動向(2/1時点) 売上高 (千ドル) 前年比 (%) 営業利益 (千ドル) 前年比 (%) 税引き前利 前年比 益(千ドル) (%) 純利益 (千ドル) 前年比 (%) EPS (ドル) 13 年 12 月期 実績 52,947 14.1 6,994 ▲0.6 7,182 5.2 4,299 2.9 0.10 14 年 12 月期 実績 35,396 ▲33.1 -188 赤転 353 ▲95.1 -2,006 黒転 -0.06 会社予想 25,500 ▲28.0 -21,952 赤拡 -21,602 赤拡 -21,727 赤拡 -0.60 MS 予想 25,500 ▲28.0 -21,952 赤拡 -21,602 赤拡 -21,727 赤拡 -0.60 MS 予想 23,000 ▲9.8 -33,360 赤拡 -33,360 赤拡 -33,360 赤拡 -0.92 15 年 12 月期 16 年 12 月期 本資料は投資判断の参考としての情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的とするものではありません。銘柄の選択、投資判断の最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。本資料に掲載された意見 は作成日における判断であり、予告なしに変更される場合があります。本資料に掲載された意見・データは、当社が信頼できると判断したデータ等により作成いたしましたが、その正確性、安全性等について保障するものではあ りません。著作権、知的所有権等一切の権利はモーニングスター株式会社並びに Morningstar.Inc に帰属しますので、許可なく複製、転写、引用等を行うことを禁じます。 (1/2) Morningstar Equity Research Report 2016.2.2 アキュセラ・インク(4589・東証マザーズ/外国株) エミクススタトの開発状況と有用なデータ 地図状萎縮を伴うドライ型加齢黄斑変性治療薬候補 当社が自社開発した視覚サイクルモジュレーター化合物 米ワシントン州シアトルに本社を置く眼科領域に特化 したバイオベンチャー。14 年 2 月に東証マザーズ市場 に外国株として上場し、15 年 12 月に日本法人を設立。 「エミクススタト塩酸塩」を中心とした「視覚サイク ルモジュレーター (VCM) 化合物」などの薬剤開発を主 事業におきながら、メディカルデバイスや医療技術など で事業拡大を図る。 「エミクススタト塩酸塩」は、大塚 製薬と共同開発・共同販売契約を結ぶ。 VCM 化合物は経口投与 ( 飲み薬 ) が可能で複数の網膜 疾患の根本的原因に対応する他、早期介入、広範囲な適 応の可能性を見込む。同社の主要パイプライン「エミク ススタト塩酸塩」は最も開発が進む地図状萎縮を伴うド ライ型加齢黄斑変性向けが臨床 2b/3 相試験を継続。糖 尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫への適応拡大は前臨床 を終えており、現在、臨床第 2 相試験を検討している。 スターガード病への適応も視野に入れている。 ■ 事業環境と展望 14 年の加齢黄斑変性の罹患者は全世界で 1 億 3,500 万人程度いるとされている。加齢黄斑変性にはドライ型 とウェット型と呼ばれる 2 つのタイプがあり、併発する ケースもある。2 タイプのうち、ドライ型が約 9 割を占 める。ウェット型加齢黄斑変性には、眼球に直接注射す る治療薬「ルセンティス」がすでに他社により上市済で、 年間売上高は 42 億ドル(約 5,000 億円)に上る。 一方、ドライ型加齢黄斑変性の治療薬については、 FDA(米食品医薬品局)に認可された治療薬は存在しな い。アキュセラが臨床試験を行っている「エミクススタ ト塩酸塩」は、患者数が多いドライ型加齢黄斑変性向け の治療薬である他、経口剤であることから、幅広い患 者に利用されることが期待されている。また、臨床第 2b/3 相試験の副次的評価項目には、ウェット型への抑 制効果も含まれている。加齢黄斑変性は高齢者に多く、 今後先進国を中心に進む少子高齢化を背景に患者数は現 在の 1 億 3,500 万人から増加することが確実視されてお り、同治療薬のマーケットは今後も拡大しそうだ。 「ル センティス」の売上げ規模から推察されるドライ型加齢 黄斑変性の市場規模は少なくとも数兆円規模に上る。 N = 23 0.2 » » 毒性試験 前臨床試験 探索研究 2005 » » IND申請 ヒトでの臨床 試験を開始 2007 2008 萎縮 病変変化 0.23 mm2 p > 0.05 0.1 0.05 0 -0.05 治療群 2012 » » プラセボ群 最大の解析対象集団(社内資料より) 5件の臨床第1相試験実施 » 臨床第2a相試験実施(GA患者対象) » 合計179例の被験者に 「エミクススタト塩酸塩」を投与 » FDAからファスト・トラック対象に指定 2009 N=8 0.15 » » ■ 会社概要 プラセボ投与を対照群として、エミクススタト塩酸 塩を90日投与し、萎縮病変の変化を比較 (FAF) 0.25 「エミクススタト塩酸塩」開発の経緯 投与後90日の損傷範囲の変化 (mm2) イリーア」が 3,300 億円。ウェット型よりドライ型の方 が市場が大きいことを見込むと、エミクススタトが上市 されれば、これら治療薬を上回る売上が期待される。加 えて、市場規模がさらに大きな糖尿病性網膜症向けの臨 床試験などが近く開始される可能性があることも考慮、 想定株価レンジは現値を大きく上回る 3,300 ~ 3,600 円程度とし、上値余地が大きいことから投資判断を新規 「Overweight」とした。 (宮本 裕之) » 臨床第2b/3相試験 被験者登録完了 (合計508名) 2013 臨床第2b/3相試験開始 投与期間2年の試験 2014 2016 » 臨床第2b/3相試験 トップラインデータの 発表予定 (注)IND(Investigational New Drug) とは新薬臨床試験開始を指します (注)GA(Geographic Atrophy) とは地図状萎縮を指します 出所:会社資料 参考企業 会社名 アキュセラ・ インク オフトテック リジェネロン・ ファーマシュー ティカルズ 上場市場 東証マザーズ 米ナスダック 米ナスダック 時価総額 主力 パイプライン 519億円 2,300億円 ドライ型加齢黄 斑変性向け治療 薬 「エミクススタ ト塩酸塩」 の臨 床試験を進行中 ウェット型加齢 黄斑変性向け治 療薬 「フォビス タ」 の臨床試験 を進行中 5兆2,000億円 ウェット型加齢 黄斑変性向け治 療薬 「アイリー ア」 を11年に上 市 企業価値 (EV) 394億円 1,960億円 5兆1.500億円 売上高 42.6億円 49.7億円 3,399億円 純利益 (2.4億円) (118億円) 446億円 出所:各社資料からモーニングスター作成 リスク要因 医療用医薬品には多額の研究開発費や長い時間を要 するが、臨床試験で有用な効果を発見できず研究開発 が予定通り進まない可能性や、開発の延期や・中止の リスクがある。同社の主なパイプラインはドライ型加 齢黄斑変性を適応疾患とした「エミクススタト塩酸塩」 となっており、この臨床試験で有効な結果が出なかっ た場合は事業リスクとなる。 本資料は投資判断の参考としての情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的とするものではありません。銘柄の選択、投資判断の最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。本資料に掲載された意見 は作成日における判断であり、予告なしに変更される場合があります。本資料に掲載された意見・データは、当社が信頼できると判断したデータ等により作成いたしましたが、その正確性、安全性等について保障するものではあ りません。著作権、知的所有権等一切の権利はモーニングスター株式会社並びに Morningstar.Inc に帰属しますので、許可なく複製、転写、引用等を行うことを禁じます。 (2/2) モーニングスター・エクイティ・リサーチレポートの読み方 特 徴 Overweight (オーバーウエート) 今後、半年間の株価推移が現値水準を 15%以上上回ると 予測される場合 Neutral (ニュートラル) 今後、半年間の株価推移が現値水準の- 15%~+ 15%に とどまると予測される場合 Underweight(アンダーウエート) 今後、半年間の株価推移が現値水準を 15%以上下回ると 予測される場合 (1)第三者機関として中立的な立場を重視 モーニングスター・エクイティ・リサーチレポートは、 モーニングスターが位置する中立的な第三者としての立場 を重要視し、客観的な比較・評価情報の提供に努めていま す。モーニングスターがカバーする全銘柄に対し、アナリ スト個人の見解に加え、複数のアナリストから成る銘柄評 価委員会の意見を反映し、投資判断・想定株価レンジ・業 績予想を決定しています。 (2)カバー銘柄のユニバース カバー銘柄は下記対象銘柄から銘柄評価委員会が選出し ています。 【銘柄選定基準】 ●アナリストのカバー率が低い国内新興市場上場銘柄 ●個 人投資家からの人気が高い銘柄(各オンライン証券 のデータを参考) ●時価総額を考慮(50 億円程度以上を目安) ●整理、監理銘柄や継続疑義、債務超過銘柄を除く (3)3 段階の投資判断 カバー銘柄に対する投資判断は、モーニングスターの各 アナリストによる調査・取材・分析を基に銘柄評価委員会 の協議を経て決定しています。下記の基準を基に 3 段階(最 上位から「Overweight 」 (オーバーウエート) 、 「Neutral」 (ニュートラル) 、 「Underweight」 (アンダーウエート) ) で予測しています。 モーニングスターでは業績見通しや財務状況、株価の値 動きなどに関する見解の変更により、機動的に投資判断を 変更します。ただし、影響力のある、新しい情報が明らか となり、判断に時間を要する場合には投資判断を「Under Review」 (保留)とする場合があります。また、取引時間 中の投資判断の変更は行いません。アナリストが退職した 場合などは投資判断をいったん「Suspension」 (停止)と する可能性があります。 (4)中期的な想定株価レンジ 向こう半年間で想定される株価のレンジを示します。株 価指標などを用いた適正株価水準のほか、チャートのフシ 目や直近の高値・安値、トレンドライン、移動平均線など テクニカル面や価格帯別出来高なども考慮して、中期的な 上値メド、下値メドを決定しています。 項目説明 ■ アナリストコメント 直近の業績動向や事業環境につい て、取材に基づいた評価をコメント しています。投資判断の根拠や業績 予想に対する見方、今後の事業展望 などを記載し、株式投資をするうえ で最も重要な情報を掲載していま す。 また、 読みやすさを考慮してテー マごとに 2 ~ 4 つのパラグラフに まとめているほか、重要なポイント を太字で強調しております。 ■ 業績動向 通期決算の実績 2 期分と会社予 想、およびモーニングスターの独自 予想を今期、来期の 2 期分掲載し ております。 各銘柄への取材に加え、 四半期毎での過去の業績傾向やセグ メント毎での分析に基づいて業績数 値を予測しています。 ■ 会社概要 各銘柄がどのようなビジネスを展 開しているのか、どこに収益源があ るのかなどを詳しく解説するほか、 今後どの事業に力を入れていくの か、中期的にはどのような事業展開 を図っていくのかなどの中期的な見 通しも取材を踏まえて掲載します。 ■ リスク要因 各銘柄が有するリスクを解説しま す。事業面でのリスクに加え、業績 面や財務面、株式市場独自のリスク なども考慮して様々な角度から見た リスクを示します。 ■ 事業環境と展望 各銘柄が属する業界について、足 元の状況や将来の成長性などの観点 から解説します。競合他社への取材 も実施することで業界全体を多方面 から捉えるほか、業界団体のデータ など具体的な数値も掲載します。 本資料は投資判断の参考としての情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的とするものではありません。銘柄の選択、投資判断の最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。本資料に掲載された意見は作成日に おける判断であり、予告なしに変更される場合があります。本資料に掲載された意見・データは、当社が信頼できると判断したデータ等により作成いたしましたが、その正確性、安全性等について保障するものではありません。著作権、知 的所有権等一切の権利はモーニングスター株式会社並びに Morningstar.Inc に帰属しますので、許可なく複製、転写、引用等を行うことを禁じます。
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