2016年2月5日 投資情報室 REITレポート 世界REIT市場の現状と今後の見通し (Ⅰ)世界REIT市場の現状 (Ⅰ-1)世界REIT(除く日本)の市場規模 【図表1】 世界REIT市場の構成(除く日本) (2015年12月末時点) 世界のREIT市場(注1)の2015年末の市場規 模(時価総額)は約1.16兆米ドル(120円換算で 約140兆円)と、5年前の2010年末に比べて約2 倍に拡大しています。指数組入れ銘柄数は約 350銘柄と、5年前より120銘柄程度増加してい ます。 シンガポール 4% カナダ 3% フランス 6% その他 9% イギリス 6% 2015年末時点の最大市場は米国市場で、全体 の約65%を占めます。2位オーストラリア(約 7%)、3位イギリス(約6%)となっています。 米国 65% オーストラリア 7% (注1)S&P世界REIT指数の構成国・地域から日本を除いた数値、 米ドルベース。 (出所)ブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成 (Ⅰ-2)世界株式とのパフォーマンス(騰落率)比較 【図表2】 世界REITと世界株式のパフォーマンス 70 2014年の世界REIT(注2)のパフォーマンスは世 界株式(注3)を約20%上回りました。2015年の 世界REITは米国利上げ観測や中国株安等を 背景に上値の重い展開が続いたものの、僅か に世界株式を上回りました。 60 2016年は1月末時点で、世界REIT、世界株式と も前年末比で下落していますが、世界REITの 下落率は世界株式よりも小さくなっています。 10 (2012年~2016年 2016年は1月末時点 年次) (%) 世界REIT 世界株式 50 54.8 40 30 41.1 39.0 20 31.9 23.9 21.4 1.4 0 -0.9 -10 -2.9 -5.1 -20 (注2)世界REITはS&P世界REIT指数(除く日本、配当込み、円ベース) (注3)世界株式はMSCI-kokusai:日本を除く先進国を対象とする株価指数 (配当込み、円ベース) 12年 一般的にNAV倍率が1倍以上の場合は割高、1 倍以下の場合は割安と判断されます。足元のR EIT市場は中立の状況にあると判断しています。 (注4)株価が1株当り純資産(NAV:ネット・アセット・バリュー)の何倍まで 買われているかを示す。一般的に1倍以上の場合はREIT価格は割 高、1倍以下の場合はREIT価格は割安とされる。 14年 15年 16年 (出所)S&Pデータ、ファクトセットを基にニッセイセットマネジメントが作成 (Ⅰ-3)世界REITのNAV倍率 REITの割安度を示す指標の一つとされるNAV 倍率(株価/1株当り純資産)(注4)は、2015年12 月末時点で約1.0倍と、過去平均(1995年1月~ 2015年11月)の約1.0倍とほぼ同水準です。 13年 【図表3】 世界REITのNAV倍率(株価/1株当り純資産) (1995年1月~2015年12月 月次) 1.4 (倍) 世界REIT NAV倍率 1.2 1.0 0.8 0.6 95/1 98/1 01/1 04/1 07/1 10/1 13/1 (年/月) (出所)UBS、アライアンス・バーンスタインデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価 証券等の勧誘を目的とするものではありません。 ●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しております 1/4 が、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将 (審査確認番号H27-TB185) 来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投 資成果を示すものではありません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 (Ⅰ-4)世界REITのイールド・スプレッド 【図表4】 世界REITのイールド・スプレッド(利回り差) 14 2015年12月末時点の世界REITのイールド・スプ レッド(利回り差)(REITの配当利回り-10年国債 金利)(注5)は約2.4%。過去平均(1998年5月~ 2015年11月)の約1.9%を上回っています。 (1998年5月~2015年12月 月次) (%) 12 10 8 6 4 (注5) • REITの配当利回りから金利(10年国債金利)を引いた差で、REITが 債券に比べて割高なのか割安なのかを示す指標。一般的には、この 数値が大きいほどREITが債券に比べて投資魅力度が高いとされる。 • 世界REITの配当利回りは、S&P世界REIT指数(除く日本)ベース、 世界債券(10年国債金利)はFTSE EPRA/NAREITグローバル指数に 含まれる国(日本含む)の10年国債金利を国別指数ウエイトで加重平 均して算出した値。 2 0 イールド・スプレッド(①-②) -2 世界REIT配当利回り① -4 世界債券(10年国債)金利② -6 98/5 01/5 04/5 07/5 10/5 (出所)S&P、アライアンス・バーンスタインデータを 基にニッセイアセットマネジメントが作成 13/5 (年/月) (Ⅱ)今後の見通し 年初下落して始まった世界REIT市場(S&P世界REIT指数、除く日本、配当込み、円ベース)です が、以下の支援材料を背景に再び上昇基調を取り戻すものと見ています。為替については日米金 利差拡大等を背景に、緩やかな円安・米ドル高が続くものと考えています。 1)世界的な金利上昇懸念の後退 →借入費用増加による収益圧迫懸念の後退 2)不動産市況の回復期待 →空室率の低下や賃料の上昇期待 3)REIT業績の拡大期待 →不動産市況の回復継続等を受けたREIT業績の拡大期待 4)主要な収益源である賃料収入の景気感応度の相対的な低さ →世界景気の先行き懸念が強まるケース等での収益の安定性を評価した資金の流入期待 (Ⅱ-1)世界的な金利上昇懸念の後退 【図表5】 米国10年国債金利の推移 (2015年4月1日~2016年1月29日 日次) 2.7 REITは不動産を取得するために金融機関から資 金を借り、利息を支払っています。米国の利上げ 開始が世界的な金利上昇へとつながり、借入費 用の増加がREIT収益を圧迫するとの懸念があり ました。 昨年12月に米国は利上げを開始しました。しか し、原油安や新興国経済の鈍化等を受けて米国 金利は足元低下傾向となっています。 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が近い将来の 追加金融緩和の可能性を示唆したり、日銀がマイ ナス金利の導入を決定する等、世界的な金利上 昇懸念は後退しつつあるものと思われます。 (%) 米10年国債金利 2.5 2.3 2.1 1.9 1.7 15/4 15/6 15/8 15/10 15/12 16/2 (年/月) (出所)ブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価 証券等の勧誘を目的とするものではありません。 ●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しております が、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将 来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投 資成果を示すものではありません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 2/4 <参考:米国REITと米政策金利> 【図表6】 米政策金利引き上げ局面と米国REIT市場 1992年12月以降の米国の政策金利が連続して 引上げられた主な局面における、米国REIT指 数(注6)のパフォーマンス(騰落率)はすべてプ ラスとなっています。 (1992年12月~2015年12月 月次) 1,200 12 (%) 米国REIT(左軸) (ポイント) 米政策金利(右軸) 1,000 (局面②) (局面①) 10 (局面③) 景気に配慮した政策金利の引き上げであれば、 賃料収入の増加が借入費用の増加を補う可能 性があります。 800 8 600 6 【図表7】各局面と米国REIT指数(注6)騰落率 400 4 200 2 期間 政策金利 局面① 局面② 局面③ 94年1月~ 95年6月 3.00% →6.00% 99年5月~ 00年12月 4.75% →6.50% 04年5月~ 07年8月 1.00% →5.25% 指数騰落率 (%) 1.8 14.7 80.5 0 92/12 0 97/12 02/12 07/12 12/12 (年/月) (注6)S&P米国REIT指数、配当込み、米ドルベース。 (Ⅱ-2)不動産市況の回復期待 【図表8】 主要国の住宅価格指数 主要先進国の不動産市況は変動を伴いながら 回復傾向を続けています。 主要国の住宅価格や世界主要都市の小売り施 設の価格は、リーマン・ショック後の2009年7~9 月期に比べ回復傾向となっています。 米国の商業用不動産の空室率は2010年7~9月 期頃をピークに、緩やかに低下しつつあります。 空室率の低下を受け、賃料も改善傾向を続けて います。2015年7~9月期の賃料(1sqf=約0.093 ㎡当り)はリーマン・ショック前のピーク水準近く まで上昇しています。 【図表9】 世界主要都市の小売り施設価格(1sqf当り) (2009年7-9月期~2015年10-12月期 四半期) 350 米国 英国 カナダ 豪州 140 130 120 110 100 90 ※2009年7-9月期を100として指数化 80 09/9 10/9 11/9 12/9 13/9 14/9 15/9 (年/月) 【図表10】 米国商業用不動産(主要都市)市況 (2007年1-3月期~2015年7-9月期 四半期) 30 (米ドル/sqf) NY(米国) シドニー(豪州) ロンドン(英国) 300 (2009年7-9月期~2015年10-12月期 四半期) 150 賃料(左軸) 空室率(右軸) 28 20 (%) 18 250 200 150 26 16 24 14 22 12 100 50 ※2009年7-9月期を100として指数化 0 09/9 10/9 11/9 12/9 13/9 14/9 15/9 (年/月) 20 10 07/3 08/3 09/3 10/3 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 (年/月) (出所)図表6~10はブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価 証券等の勧誘を目的とするものではありません。 ●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しております が、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将 来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投 資成果を示すものではありません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 3/4 (Ⅱ-3)REIT業績の拡大期待 【図表11】 米国REITの収益推移 (2004年~2017年 年次) 140 世界の不動産市況の回復持続等に伴い、世界 のREITの収益は増加基調を続けています。 米国REITの収益は、2016年、17年ともに前年 比で6%程度の成長が見込まれています(注 7)。また、欧州やオーストラリア等米国以外のR EITの収益も拡大することが見込まれています (注8)。 ※2014年を100として指数化 予想 120 100 80 60 (注7、8) • 米国は1株当たりのファンド・フロム・オペレーション(FFO)、欧州、 オーストラリアは営業キャッシュフローを使用。ともに2014年を100と して指数化。予想は米国:ファクトセット、欧州・オーストラリア:ブ ルームバーグのコンセンサス予想。 • FFOは、当期純利益+会計上は費用として計上される減価償却費 等の現金の支出を伴わないもの+特別損益で計算される。本業か らのもうけを示す。 40 04 06 08 10 12 14 16 (年) 【図表12】 米国以外のREITの収益推移 160 (2014年~2017年 年次) ※2014年を100として指数化 予想 140 120 100 (出所)図表11~12はブルームバーグ、ファクトセット、アライアンス・ バーンスタインデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成 (Ⅱ-4)収益の相対的な安定性 60 14 15 リーマン・ショック後の2009年12月末を起点に した推移では、世界株式(注10)のEPS(1株当 たり利益)が上下を繰り返しているのに対して 世界REIT(注10)のEPSは右肩上がりの増加 傾向を続けています。 原油安等により世界経済の先行き不透明感 が強まれば、収益が相対的に安定しているR EITが選好されることも考えられます。 (注9)多くの国の賃料は固定賃料がベースとなっています。 (注10)世界REITのEPSはS&P世界REIT指数(除く日本)ベー ス、世界株式のEPSはMSCI-kokusai ベースで、2009年12月 末を100として指数化。 16 17 (年) 【図表13】 世界REITと世界株式のEPS推移 (2009年12月~2015年12月 月次) 180 REITの主な収益源は賃料収入(注9)であり、 一般的に賃料は景気変動の影響を相対的に 受けにくいとされています。 オーストラリア 欧州 80 世界REITのEPS 世界株式のEPS 160 140 120 100 ※2009年12月末を100として指数化 80 09/12 10/12 11/12 12/12 13/12 14/12 15/12 (年/月) (出所)S&Pデータ、ファクトセット、ブルームバーグデータを基に ニッセイアセットマネジメントが作成 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価 証券等の勧誘を目的とするものではありません。 ●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しております が、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将 来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投 資成果を示すものではありません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 4/4
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