県内企業の雇用・賃金設定スタンス

まえばし
群馬県金融経済レポート
2016 年 2 月 5 日
日本銀行前橋支店
県内企業の雇用・賃金設定スタンス
群馬県の雇用・所得環境をみると、労働需給は着実な改善を続けており、雇用者所得も
緩やかに増加している。県内主要企業へのヒアリングによると、労働需給の影響を受けや
すい非正規社員(パート)の賃金は、最低賃金引き上げの動きもあって、上昇傾向が明確
化しているとの声が増えている。また、正規社員(一般労働者)の賃金についても、ベー
スアップの影響などから、上昇してきているとの声が多い。
非正規社員
正規社員
・新規採用の困難化を受けて、非正規雇用の需要も高まっており、
人材の確保・繋留を企図して時給の引き上げを実施(輸送用機械、
電気機械)
・同業他社が高い時給を提示する中、パートの時給を大幅に引き上
げて、ようやく必要人員を確保した(総合スーパー)
・最低賃金の引き上げもあって時給を引き上げた(食品スーパー)
・ベースアップの実施や賞与支給額の増額など従業員への利益還元
を積極化(輸送用機械、生産用機械、化学、建設、食品スーパー)
・人材の獲得・繋留を企図してベースアップ等を実施(食品スーパ
ー、建設、自動車販売、飲食店)
正規社員の賃金について、県内主要企業の設定スタンスをみると、今春もベースアップ
等により給与水準を引き上げるとする先が多い。ただし、現状、昨春の伸び率を上回る引
き上げ幅を示唆する先は一部であり、昨春の伸び率を下回る引き上げ幅を示唆する先も少
なくない。こうした先では、引き上げ幅が昨春の伸び率を下回る理由として、①同業他社
の動向、②業績改善の遅れ、③景気の先行き不透明感、などを挙げている。
今春の給与増額に
対する見方
・今春のベースアップは、同業他社の動向に足並みを揃えて、昨春
を下回る引き上げ幅に着地する見込み(輸送用機械、自動車販売)
・今春のベースアップ等は、業績改善の遅れや景気の先行き不透明
感から慎重姿勢(電気機械、大型小売店、食品スーパー)
・景気の先行き不透明感からベースアップ等は見送っており、原則
として賞与の増額で対応(不動産)
多くの企業では、先行きも若年労働力の減少が続き、人手確保がより一層困難になって
いくことを懸念している。こうした先では、人手不足感を緩和する観点から、①採用活動
の更なる強化や人材流出の抑制、②働き手・働き方の多様化による人材の確保、③省人化
投資による所要人員の削減など、賃上げ以外の施策も講じていくとしている。
・新卒採用の困難化を受けて中途採用人数を増員(輸送用機械、鉄
鋼、総合スーパー)
・足もとの受注増に対応すべく、即戦力として活用できる中途採用
採用活動の更なる
を積極化(建設)
強化、人材流出の抑 ・正規雇用の募集エリアの拡充(輸送用機械、建設、宿泊)
制
・自社採用に限界を感じ、人材派遣会社を利用して非正規雇用を確
保している(宿泊)
・人材の繋留を企図して、非正規社員の正社員化に一層取り組んで
いる(輸送用機械)
・正規雇用の獲得困難化を受けて、シニア、女性、外国人の受け入
れを積極化 (多くの企業)
働き手・働き方
・女性労働者の働きやすさ向上のため企業内託児所を新設(卸売、
の多様化
農業)
・専門性の高い人材の確保が困難化しており、実務経験を見込んで
生産現場の作業員を営業・開発部門に抜擢(繊維、その他製造業)
・生産効率の向上を企図して製造工程の自動化を推進(輸送用機械、
電気機械)
所要人員の削減
・賃上げ等による人材確保に限界を感じ、所要人員削減のためセル
フレジを導入(食品スーパー)
以
上